夜空の灯・星は、人の想いを映して創られる──。

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表題作ステラリウム

同時収録作品ステラリウム【埋み火】

後輩研究員 キケ
星製造工場の先輩研究員 レオシュ

同時収録作品真空庭園

透の体から生える植物で生きる はるか
はるかの呼気で生きる 透

その他の収録作品

  • 窓辺にて
  • あとがき

あらすじ

星の製造工場に勤めるカナタは、亡き恋人を想い残業中にもかかわらず酒に溺れて、涙を零した。
すると、研究していた素材の中から少年が生まれ出る。
星以外の製造物は破棄する決まりだった。だが人の形をした彼を破棄することはできず、アルレシャと名付けて育てることに。
喪失感で苛まれていた日々に、そっと寄り添ってくる無垢な瞳にカナタは……。

作品情報

作品名
ステラリウム
著者
青井秋 
媒体
漫画(コミック)
出版社
プランタン出版
レーベル
Cannaコミックス
発売日
ISBN
9784829685372
4

(105)

(52)

萌々

(22)

(19)

中立

(7)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
27
得点
412
評価数
105
平均
4 / 5
神率
49.5%

レビュー投稿数27

ほんのり灯る星のように

やさしく、静かな物語が三編ありました。

言葉を伴わない音楽、まるでインストゥルメントのような作品集でした。
そう感じるのは、おそらく文字情報以外の要素が大きな意味を持つ作品だからだろうと思います。
コマや言葉が足らないのではなく、あえて想像を掻き立てるような描き方をしているのだろうと思います。
従って文字情報に頼るタイプの人にはよく理解できない部分もあるかと思います。
ノンバーバル(非言語/見た目・しぐさ・表情)を読むのに長けた人向きだと思います。
最大限に想像をふくらませ、その世界に飛び込めばとても楽しめる作品だと思います。

今回も表紙が素敵でした。
カバー表紙の落ち着いた銀箔の色合いが、絵の雰囲気にとてもマッチしていてお洒落でした。
ページのナンバリング横に小さな挿絵が載っているのも気の利いたお洒落!
もちろん背景や人物の丁寧な描写は健在で、ぬかりない書き込み具合に感嘆するばかりです。


『ステラリウム 夜明け前 前後編』
星の製造工場に勤めるカナタは、ある日、星を作ろうとして失敗してしまい、「星の子」を創り出してしまいます。
失敗作とはいえ、人型をしているので破棄はやめて「アルレシャ」と名前をつけて様子を見ることにします。
アルレシャはいつもそっと寄り添うようにカナタの傍にいます。しかしアルレシャが傍にいてもカナタは亡くなった彼女・エレインのことを思い出し、喪失感が拭えません。お酒に溺れるも、その悲しみを癒すことはできずにいます。
そんな中、カナタの傍にいると徐々にアルレシャにも誰かの声が響いてくるようになります。
それはカナタの亡くなった彼女・エレインが伝えたかった想い。
アルレシャは、自分がエレインがよく見ていた海にいた「何か」だったことを思い出します。そして頭の中に流れてくるエレインの想いをカナタに告げます。そのことによってカナタは想い人を亡くした悲しみが癒えていきます。
次の日、カナタとアルレシャは海に向い、カナタは海に向かって弔いの花束を投げます。ずっと受け入れることができなかった恋人の死に、カタナがようやく向き合った最後でした。
星を作る時に、エレインがよく眺めていたあの海の中にいた貝殻と、エレインの幻と、カナタの涙が融合して出来た奇跡がアルレシャでした。アルレシャの存在は失敗ではなく、必然だったように思いました。
一人ぼっちだったカナタの心に、アルレシャという星の光が宿ったようです。
静かに寄り添う二人に、切なくも暖かい気持ちになりました。

『ステラリウム 埋み火 前後編』
前作と同じ星の製造工場に勤めるキケとレオシュのお話し。
レオシュは小さな頃、工場見学に来た時に、子供達に工場の案内をしていたキケに憧れて星製造の仕事に就いたのでした。
そんなわけでレオシュはキケに憧れと恋心を抱きながら、でもどうすることもできないと思いながら一緒に仕事をしています。
ある時、主任のカナタとキケが、何やら親密な雰囲気で話をしており、キケがカナタをそっと抱きしめているところを見て、レオシュは嫉妬します。
そしてレオシュは思わずキケにキスしてしまいます。ここはちょっとBLらしい展開にドキドキ。
その後、キケは仕事を休んでしまうのですが、そこにレオシュがお見舞いにきます。
キケはレオシュの想いに答えることはできないと思いながらも、何故か胸に小さな火が燃えるような痛みを感じます。
このキケの胸に埋まる火、これがタイトルの「埋み火」の意味だと思いました。
お話しはここで終わっています。その後キケとレオシュはどうなるのでしょうか!?
続きがあったらぜひ読みたいです。

『真空庭園』
混じりっけのない二人だけの世界を意味するようなタイトル。
はるかと透は循環するひとつの器官のようなもので、はるかは透の葉を、透ははるかの呼気を吸い、循環し合って生きています。
相当ファンタジックな二人の不思議な関係です。
循環するためにキスするシーンはBLらしくて萌え萌えします!!
けれど透はふたりの関係に、それ以上のものを求めてしまい辛いので、
循環しあわなくても良い方法を川端という研究者と研究していました。
そのことをはるかが知り、透が自分から離れていくのではとショックを受けて、暴言を吐きます。それに反応して、透の体から珪素が放出され、透は仮死状態に。
透の体から生えているシダ類の描写が美しくも不思議でした。
六年後、透が目覚めると、はるかは男らしい青年に育っていました。大人なはるかの姿に萌えてしまいました♪
はるかは目覚めた透に「好きだよ、きみに伝えたいことがたくさんあるんだ」と言います。
六年前、お互いに伝えあうことが出来なかった思いをたくさん伝え合って欲しいと思いました。
今度は二人の気持ちも循環しはじめる予感です。

私にとってはもうBLかどうかなんて、カテゴリーなんてどうでもいいと思えるほど好きな作品でした。しかし普通のBLらしいBLを求めている人には勧められない作品です。私にはBL要素もかなり感じられたのですが、多分この作品は一般的な萌えは得られない内容だと思います。そのあたり、求めるものを間違うとハンパない外した感が出てしまう作品ではないかと思います。ファンタジー要素が強めですので、ファンタジーがお好きな人、そして絵から何かを想像することがお好きな人にはお勧めの一冊です。

個人的に大好きな神絵師さま、青井さんの2冊目が読めてとても幸せです。
次回作も楽しみに待っています。

10

うつくしい

あちこちで書かれている発売日と入荷の予定日との入れ違い食い違いで「こんなにも読みたいのに手に入らない~!」状態に歯ぎしりをしていた一冊です。
カバーイラストは青井先生独特のイラストでweb上の参考画像を見るだけでも美しいのですが、こちら実際のものも綺麗です。厚めの紙に印刷されてあり、ところどころ金・銀色のインクが入っているのでななめに光をあてるとキラキラとして、まさに星のきらめき。

サイエンスファンタジーと、いうのでしょうか。
ボーイズラブという観点を抜きにしたらこの方は絵本を描けるのじゃないかと思うほど幻想的な世界です。ステラリウムも、収録されている真空庭園も。
(男性同士の恋愛を好んで読むということは万人に受け入れられるというわけでもないので)特殊な嗜好ですから、子供に見せられるかと言えば難しいです。でも星がどうしてまたたき輝いているかという理由が“夜光虫を使ったり発光プランクトンを培養させたり、様々な配合を試しながら人が作って空に送っている”なんて設定、すごく夢があってそれが正解なんじゃないかと望んでしまいます。
化学反応で燃えてるとか、他の恒星の光を受けて光っているように見える、とかよりもずっと夢がある…子供の頃にそんな話を読んだら星を好きになると思うんです。

前作【爪先に光路図】もそうでしたが、今作も性的接触はほぼありません。一切ないわけではないのですが、回数に含んでいいのか…と感じるような淡いものばかり。
ステラリウムのほうは確かに恋愛感情ありきの接触ですが、空中庭園は「循環している」からこその接触ですし、ぎりぎりのラインをゆったりとたゆたうような世界観。
JUNEに近いと思います。退廃的とも耽美とも違う、ぼんやりとした…うまく言い表せませんがだがしかしそれがイイのです。
収録作の【ステラリウム】と【空中庭園】。
そのいずれもが現実に存在するものなのかと錯覚します。いやファンタジーだからと考えるのですが、例えば電線があったり電子機器があったり電車が走っていたりと、そういうところは現実的だからです。

【ステラリウム(夜明け前・埋み火)】
星のもとと愛おしさの涙から生まれたアルレシャがきれいです。くりくりの双眸がカナタをじっと見つめる姿もまた美しい。
カナタが、名を与えたときのあの喜んだ様子が特にいいと思います。喋れたのは、名を与えてもらったからなのでしょうか。
逝ってしまった恋人エイレンとの思い出のなかに生きてそこに活路を見出そうともがいていたカナタを救ったアルレシャ。エイレンは、海のなかのなにかだった頃からアルレシャに想いを託していたのかもしれません。

年の差好きとしては、埋み火も良かったです。
心追い詰められたときにこそ、過去のふとした優しい思い出に救われますよね。キケにとってもレオシュにとっても、互いがそうだったのかなと思いました。
結局、キケはカナタに恋愛感情を抱いていたのかどうかは定かではないのですよね。なんとなくそうなんじゃないかなぁなんて思うのですが、作中でキケ自身の口から語られているようにカナタが壊れかけていたときに支えられなかったことに対する申し訳なさかもしれないし、ただ友人が遠のいていってしまったことに対する漠然とした喪失感かもしれない。
キケとカナタの会話を、恋愛のソレと思ったのかレオシュは少し強引で可愛らしいと思います。きっと彼はまだ子供なのでしょう。
願わくばキケの心に宿った甘いちいさな炎が恋のそれでありますように。

アーモンドの花って、桃のような桜のようなきれいな花なのですね。
ふたりによく似合う。

【真空庭園】
循環する器官であるにせよ、依存しあう関係というのは惹かれます。
目の中に虹が見えるというあたりもまさに青井ワールド。透青年は結局人なのでしょうか。(某11人で宇宙大学テストを受ける漫画の、体内に葉緑素入れてアレコレのキャラクターを思い出しました、彼もまた人でしたよね)
依存しあうばかりではいけないから、天才のはるかを解放してあげなくちゃ。きっと彼のなかでものすごく葛藤があったんだろうなぁ。疑似光合成の薬もあるし、離れても大丈夫って、思ったのかな。
大人になったはるかがすごく男前で、きっと透はふたたび彼に惚れてしまったろうと思います。

全編通して青井先生の世界が存分に染み渡っています。
とにかく、ファンタジーです。触れる触れないくらいのギリギリのラインです。カバーイラストのイメージそのまま。
とても満足しました。この方の描かれるイラスト、お話は植物の根のようにみっしりとゆっくりと私の胸に広がります。次作もこのうえなく楽しみです。

7

美しく無垢な星の子

いったい、どうレビューすれば伝わるでしょうか・・・

「星」を製造する工場に勤める、繊細でやさしい人々と、
「星」になる筈だった「もの」と想いのこもった涙から生まれた、無垢な少年。
大切な存在を亡くして深い悲しみに沈むカナタを、星の子が癒していきます。

儚く美しいストーリー。本当に素晴らしかったです。
そしてこのお話のやさしい世界は、美しい青井秋先生の絵があってこそでしょう。
どこもかしこも、すごく繊細で感動的だったのですが、
私が一番好きなのは、夜の海辺のシーンです。
これといって何もなく、ただカナタがアルレシャを迎えに来ただけの場面なんですが、
アルの表情と夜の風景が、胸が締め付けられる程の静かさと美しさでした。

そして島での休暇。
アルの「ぼくがまだ海の中のなにかだったころ」のセリフが印象的でした。
最後にアルを通して蘇るエレインの言葉。
――どうか、あなたの心のまま――
じんわり涙が出るほどの、静かな感動のあるお話でした。


表題作の『ステラリウム 夜明け前』以外の他の二編も、良かったです。

『ステラリウム 埋み火』は、カナタと同じ星の工場に勤めるキケとレオシュの話。
キケの、カナタに対する長い間の想いが。
レオシュの、キケに対する子供のころからの憧れが。
『夜明け前』程ファンタジー色は強くありませんが、
やはり美しい絵とやさしいストーリーに、しみじみとした感動がありました。

『真空庭園』も、不思議でやさしいファンタジーでした。
――僕らは循環するひとつの器官だ――
お互いが生きるために、なくてはならない存在である、はるかと透。
だからこそ、相手を想うあまりの苦悩があって・・・


ここ暫く、なかった種類の感動でした。
私はやっぱりファンタジーが好きなんだなぁ・・・と改めて実感。

BL的な萌えは期待せずに、ぜひ読んでいただきたい作品です。

7

美しい画面で綴られる淡々とした物語に癒されました。

青井さんの(当時)新刊を発売日に買ったにもかかわらず、何故か読めないでおりました。
忙しいのもあったんですが、何故かファンタジー設定のBLって苦手な事が多くて。
多分、設定がファンタジーだと人外とか平気でいるので、ゲイなんてなんでもないじゃない!人間なだけマシ!という事になってしまうからじゃないでしょうか、何となく。

それで読んでみましたが、普通に良かったです!
もう少し早く読めば良かった!
よくよく考えてみたら、青井さんの著作でゲイだからっていう葛藤はほぼなかったですね。それよりも個人が受け入れてもらえるかとかそっちの方向性でした。
星を作る工場の話でしたが、美しい画面で綴られる淡々とした物語に癒されました。
あらすじ読んだ感じだと長野まゆみが好きな方にはいいかなあと思いましたが、あそこまでこてこてじゃない上に少年趣味でもないので、ちょっと外れてしまうかも。
逆に長野まゆみは卒業してしまった私には、とても好みです。

でも、青井さんの著作は「爪先に〜」の方が好きかなあ。
どちらも素敵ですけれど。

6

ステラ(星)+リウム(~に関する、~の為の場所)

題名の《ステラリウム》は、造語だそうです。
青井秋先生が【ステラ(星)+リウム(~に関する、~の為の場所)】で【ステラリウム】とつけたことをツイッターで呟いておられました。
私は《ステラリウム》という言葉の響きが、すごく綺麗で題名にぴったりだなあと思いました。
青井秋先生、暴露してすみません。
《ステラリウム》《窓辺にて》《真空庭園》
何度も何度も繰り返し読む事をおすすめします。
すべてが美しいファンタジー。心にじんわりと心地よく沁みていきます。
読む度に感動がジワジワと湧き上がってくる本。大切にします。

うお座の人、テンション上がりますよー。私、グワッと萌えました!(うお座の私)

5

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