再会を機に、密かに慕っていた兄への恋心があふれ出す──センシティブLOVEストーリー

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表題作息もとまるほど

彰彦,ひとつ年上の従兄弟
逢坂透,28歳,百貨店販売計画部勤務

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

幼いころに両親を亡くし、従兄の彰彦の家で育てられた透。
年上でなんでも器用にこなす優等生の彰彦に、いつしか恋心を抱くようになるけれど、家族として一緒に暮らしている以上、想いを 伝えられずにいた──。
大学進学を機に家を離れた彰彦とは疎遠になっていたけれど、ひょんなことから彰彦が実家に戻ってくることになり…!?

作品情報

作品名
息もとまるほど
著者
杉原理生 
イラスト
三池ろむこ 
媒体
小説
出版社
徳間書店
レーベル
キャラ文庫
発売日
ISBN
9784199007132
3.5

(35)

(5)

萌々

(14)

(13)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
6
得点
122
評価数
35
平均
3.5 / 5
神率
14.3%

レビュー投稿数6

ゆっくりと

杉原先生作品というと、ゆっくりと恋愛感情を意識して、どんなに時間ががかかっても、とうとう思いを成就させるお話のイメージ。
この作品も、
出会ってから、いつしか恋情を意識して、でも、ずっと思いを秘めていて
その思いが、ようやく通じあっても、色んなしがらみを絶ちきる勇気が持てなくて、一度離れてしまうけど、長い時間をおいて再会した時に、結局、本当に必要で、本当に欲しいのはお互いだけだと、ようやく決心する話。

この作品の二人の場合は、両親を亡くして伯父の家に引き取られて、兄弟同然に一緒に育った従兄弟同士。
ただの幼なじみよりもずっと濃い。
そこが、いい味付けになっていました。


6

静かで優しい執着

「幼い頃から(実は)受に恋している攻」というお題で、答姐トピでご紹介いただいて読みました。まさに息もとまるほどドキドキしたシーンもあって、とても面白かったです。彰彦の静かで優しい執着ぶりに「そう、この感じ!」と思いました笑

家族愛と恋愛――人によって価値観は違えど、この二つは基本的には別の感情だと思います。どちらも厄介で、面倒で、けれど欠けがえのない存在。その二つをただ一人の相手に感じてしまったら?どちらか一方を取ればもう一方を失うとすれば?…そんな苦悩が全編に散りばめられているお話でした。そういう意味ではとてもリアリティーがあって、何もかもがスルスルっと進むような浮ついた印象のない作品です。

とはいえ、決して暗くて重い作品ではありません。幼い頃の無邪気な二人と、思春期の余裕のない二人、そして大人になって嘘を吐くことや駆け引きを覚えて素直になれず、色んなことに怯える二人。それぞれに萌えが沢山詰まっていました。

クライマックスできちんと行動に移す二人が好ましかったです。明るい未来が待っているといいなと思いました。

4

静かな執着の歴史

静謐な文体で、家族と恋人の間を行き来する二人の10数年越しの微妙な関係が描かれています。


両親を亡くして小学生の頃伯父に引き取られ、ひとつ年上の従兄弟と育った透。
17歳の夏、彰彦から求められる形で二日間だけ関係をもった。
自分との関係を密かに続けるため、伯父家族と疎遠になる覚悟の兄。兄にそんな負担をかけたくない透は、家族に戻ろうと別れを切り出した。
11年後、疎遠だった彰彦が実家に帰ってきて、離婚したことと会社を辞め起業することを告げる。家族と揉めた彰彦がしばらく透のマンションに住むことになり、二人の関係が再び動き出します。


幼い頃から想い合っていた二人ですが、互いの将来や人生、二人の家族のことなど様々なしがらみがあり、それらを投げ打って一緒に生きるという選択は難しい。
しかし、大人になって人生の選択肢が広がったこと、気持ちを押し殺すも共に生きるも苦しいことに変わりはないと気付いたことで、ようやく二人の道が重なったのだと思います。
東京で彰彦の会社を手伝うという形で、一緒にいられる方法を見つけた二人。
先が見えないことは昔と変わらないが、二人で歩むことでそれまでの息苦しさはきっともう感じないであろうと思われる、靄が晴れたような爽やかなラストでした。


気になったのは、彰彦の心中が分かりにくい点。何でも一人で決める性格は男らしいといえばそうですが、その決断に至った過程や理由がないため行動に共感しづらい。
離婚や起業、家族に戻った透に再び手を出すきっかけなど、ストーリー上重要なあらゆる行動のプロセスが分かりにくいため、何故今更このタイミングで?という疑問が最後まで解消されませんでした。その場の雰囲気や巡り合わせによる始まりも人生には付き物かもしれませんが、物語なので何らかの決め手は欲しかったです。

9

穏やかなる時の流れ

嗚呼、杉原理生先生の世界だなぁ、というのが真っ先に浮かぶ感想です。
あの表紙絵の背景は、ちゃんと物語にリンクしていて。
そういう細かい事も含めて、静かに感動します。

この物語では、主人公の透が幼い頃に両親を亡くし、東京から伯父の家(日本海側)へ引き取られるところから始まります。
幼少期、小学校、中学校、高校、そして十一年後の現在と、様々な時代にお話が前後して進みます。
伯父さんの家には年の離れた長女と、一つ上の長男の彰彦がいて。
伯母さんとお祖母さん(途中まで)もいます。

伯父さんの家族も皆良い人で、家庭も裕福で、田舎ののんびり空気で幸せな毎日。
それでも透は、知らず知らずに気を使いながら生活をしていて、それが癖のようになっています。
透が唯一気を使わず甘えられる存在、それが彰彦でした。

この物語は女性が何人か出てきます。
家族でボス的存在の、七つ年上の雪絵ちゃん。
幼馴染みで透と大の仲良しな、一つ年下の加奈ちゃん。
いつもは優しいが、切れると実はかなり怖い(?)伯母さん。
透に教訓のような事を語ってくれた優しいお祖母さん。
などなど…。

私、実はこういう「家族」だとか話し合う話とか、「女性」とのやり取りの話が大好き。
もう、男前すぎな雪絵ちゃんには惚れてしまいそうです。
伯父さんの優しい気の使い方も好きです。
加奈ちゃんも愛すべき存在でした。
なにより伯母さん!こういうお母さん沢山いるよな。

このお話、全体的にはかなり大好きなんです。
ただ、個人的にはちょっとお話に乗りきれない場面がありました。
彰彦の心情が意外とサラッと書かれるというか。
よくわからないまま進んでしまう場面が。
ちょっと、置いてきぼりをくった感じになりました。

だから、本当は萌×2にしたかったのですが。
萌と、萌×2の間くらいなので、萌に。
立ちはだかる家族という壁、己の弱さとの戦い。
そんな設定が大好きな方には、オススメ致します。

8

家族

自分の好きな「スローリズム」とか「恋の記憶」とかその辺りをほうふつさせる、派手さはないがじっくりと進む物語。
激しい萌えはないもののこのテンポと紡がれる気持ち。
何よりも主人公達の障害となる背景が実に身近で突飛でない、家族や幼馴染やそういう人間関係が過去の積み重ねもあいまって
誠実に向き合う現実として表わされるのがとても良いのです。

両親を亡くし引き取られ実の子供のように育てられた透。
10年以上疎遠になっていた従兄弟の彰彦が突然仕事を辞めて帰ってきた。
しかも離婚もしたという。
新しい仕事を立ちあげるという彰彦は、長男でありながらもう家を継ぐ期待は両親にはされておらず、それが透へ向いているというしがらみ。
兄弟のように一緒に育った仲だから、
二人の想いも関係も明かすわけにはいかない、そして地元を出ることも踏ん切りがつかない。

彰彦が帰ってきたところから、過去の積みかねられた思い出が挟まれて、彼等がどういう関係だったのか、
どういう気持ちでいたのかという事が挟み込まれていきます。
それはあまりに自然で、彼等の想いを感じるのに充分すぎるほどの切なく幼い思いのやりとり。
だからこそ、透のためらいがとても身近に迫ります。
彼等の伯父や伯母、姉の雪江、幼なじみの加奈の絡みも、ほんとうに現実に、すぐそこに落ちている3次元を生きる自分たちにもスルリとあてはまるそれぞれなのです。
現実的といってしまえば、そうなのかもしれませんが
切ないというよりも、こうした現実を現実的に受け止めて決める決意。
親からすると悲しい決断なのかもしれないのですが、きっと姉や幼馴染がうまくとりなしてくれると思うのです。
そういう救いがきっとある。

透が中心の為、彰彦の結婚の理由など彼自身について不明な部分は否めないのですが、全体から見るとスルーできてしまうのでした。
等身大の彼等が、とても愛おしいと思えるお話でした。

7

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