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表題作鬼火 ホラー競作集

複数(アンソロの為)
複数(アンソロの為)

その他の収録作品

  • 12ートゥエルヴ
  • むかさり
  • 返却
  • 七番目の恋人

あらすじ

霧のような灰色の瞳を持つ、謎めいた美貌の青年、花村朗。猛暑の中、12人の児童が連続して失踪する事件が世間を騒がせていたが、それは花村が封印した忌まわしい過去にあまりにも酷似していた…花郎藤子・著「12―トゥエルヴ―」を始め、吉田珠姫、峰桐皇、美樹静の実力派執筆陣が織りなす、4組の恋人達の美しくも禍々しいお伽話。人々を狂わせる夏の夜、蒼い焔がまたひとつ…。

作品情報

作品名
鬼火 ホラー競作集
著者
花郎藤子  吉田珠姫  峰桐皇  美樹静 
イラスト
波津彬子 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫
発売日
ISBN
9784592871859
4

(2)

(0)

萌々

(2)

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中立

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趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
8
評価数
2
平均
4 / 5
神率
0%

レビュー投稿数2

神評価をつけたいところなのですが

とても読みごたえのある短編集でした。
これ一冊で長時間かなり楽しませてもらいました。
タイトル通り、ホラーをテーマにしたBLで、どの作品もしっかりしていて面白い。一つ一つがどれも引き込まれるストーリーでした。
お話として楽しめたという意味では神評価でも遜色ないのですが、萌えたかどうかというと萌えを重視では書かれていないと思います。
そういった意味で星4評価にしました。

「七番目の恋人」美樹静/著
美樹さんの作品は今まで読んだものはすべてミステリーだったので、これは初ホラー(?)と楽しみに読みました。
このお話は、今まで付き合った彼氏が全員死んでいるという美青年に、興味本位から近づいた主人公のお話です。
本当にただの事故死なのか、それとも裏があるのか調べていくうちに、主人公は死んだ元彼氏たちの奇妙な共通点に気がつきます。

読んでる時はホラーでなくミステリーじゃないか?と思うのですが、最後には少しどんでん返しが…。
ベッドシーンの描写は色っぽくて素敵でした。しかし、個人的にはちょっと腑に落ちないお話だったかもしれません。もやっとしたものが残りました。美樹さんはやはりミステリーのほうがしっかり描けるのではないかと思います。
これは最後に無理にホラーにもってこようとしてこんがらがってしまっている気もしました。

「むかさり」吉田珠姫/著
これは唯一(?)本格的なホラー作品でした。思いを寄せられていた知人男性が亡くなり、しばらくしてからその男性の気配を後ろに感じるというもの。映像にしたらかなり怖いのではないかと思います。
しかし、残念ながら、ホラーってやっぱり視覚的な要素の効果が大きいのですよね。
小説で書かれると、突然背後に表れたときの、バン!とかいう感じが自分の乏しい想像力で補うしかないため物足りない感じになってしまいました^^;

タイトルになっている「むさかり」は、とある伝統行事の事なのですが、この設定が非常に恐ろしく、BLなんだけど本格的なホラー作品にひけを取らない雰囲気が出来上がっています。
ホラーが苦手な方はご注意な作品だと思います。

「返却」峰桐皇/著
これもサスペンスよりはきちんとホラーよりな作品でした。設定や人間の関係性も面白かったです。ただ短いお話すぎたので多少自分の想像力で補わないといけないところがあって消化不良気味でした。
カップリングを楽しむお話ではないのですが、このカップリングがなかなか萌えそうだったので…個人的には少し残念でした。

「12」花郎藤子/著
これは個人的にはカップリングで唯一萌えました。
お話もおもしろく、また初めて花郎藤子さんの作品を読んだのですが、文章もこなれていてとても良かったです。
子供の連続誘拐殺人事件に巻き込まれる謎の能力をもつ主人公と、アメリカから帰国した義理の弟のお話です。
ホラーというより超常現象と刑事サスペンスが混ざったような作品でした。

冷たい兄とワンコのような弟の関係がとても萌えました。
しかし、100ページほどの短編におさめるにはストーリーが飛躍しすぎていて、周りの脇キャラも個性的すぎます。
これは一冊で書いてもいいくらいの内容だし、また、続きも書けそうな設定です。それが本当にもったいないなあ~と惜しむ気持ちで読み終わりました。

BL楽しむというより小説を楽しむという類の一冊。
テーマがテーマなだけに、ハッピーエンドは期待半分で読まれるのがよいと思います。
萌えを堪能できる作品集ではありませんが、ストーリーはとても楽しめます。ホラーやミステリーサスペンスが好きで、こなれたしっかりとした文章を好まれる方にはすごくオススメしたいです。
(*蛇足ですが、挿絵はありません。)

2

レベルの揃ったホラーアンソロジー

花丸文庫の中でもこれは珍しく4人の作家によるホラーアンソロジーです。
これがですね、実に出来が良いんですよ。
ホラーというテーマのチョイスがいい具合に働いていて、各作家の色と持ち味がよく出ていて、夜寝る前に1話読んで寝るにはぴったりな一冊。
文中に挿絵が一切無いんですがこれはむしろイメージを膨らませる効果に繋がっていてそこがいい!
その代りイメージフォトと各話の前に黒地に白文字で作者の言葉が入っているのがホラーアンソロっぽい編集でよろしいです。

「12ートゥエルヴ」花郎藤子著
集団幼児誘拐事件の生き残りの謎の青年の不思議な一種不可解でもある世界観。これは内容を説明するのはちょっと難しい雰囲気のある謎めいた話。

「むかさり」 吉田珠姫著
この話が一番好み。
知り合いの母親と病弱な息子、その息子に無言の執着をされ、彼の前でその母親に裸体図を画かれるそんな異様な光景。
その時点で既にうひゃーなんですが、本当の怖さはその息子が亡くなってから始まります。
息子に内心嫌悪感を持っていた主人公ですが、彼の死後に誰かの存在と感じる様になります、それはどんどんエスカレートして一人きりになるとその姿さえ感じ取れる様になる辺りが怖い。
そして原因は、死んだ息子を溺愛していた画家の母親が描いて納めたむさかり、だったのです。
「むさかり」とは死んでしまった人の連れ添いとして人物などを画いて納める絵馬なのですが、これにはタブーがあって生きているものを描いてはいけない、何故ならそれをすると死者が画かれた相手を連れにやってくるから-。
田舎の古い風習と現代学園生活との組み合わせ、ともかくその死んだ息子の執着が怖いです。

「返却」峰桐皇著
拒否しても拒否しても長年言い寄られていて迷惑をしていた相手が病気で亡くなる。
残された物の一つに、かつて田舎の村で代々使われていた人減らしの為の鉈の柄の棒が納められた箱があり、主人公はそれに嫌な物を感じて己が引き取ります。
そして彼の部下であり、主人公が可愛がっていた後輩は彼の死後に様子がおかしくなり問いつめれば「返さなければ」と。
その返すものとは-。

「七番目の恋人」美樹静著
親族を始めとして、付き合う相手が次々に事故で死んで行くという曰く付きの美青年。
それを知りながら、彼と身体を合わせ付き合いながら彼の謎を調べていく主人公。
その謎は一度は解かれたと思われ、主人公は青年と別れて別の男と付き合い初めて終るのかと思いきや、最後にはやはり悲劇が待っていました。
死んでも尚、恋人に執着しつづける魂。

これだけたっぷり読めてページ数は大ボリュームの354ページ。
このメンバーでは峰桐さんと美樹さんは読んだ事が無い作家さんだったのですが、このアンソロを機会に読んでみたりもしました。
企画としてはひじょうに面白かったので、出来ればこの形式でもっと色んな作家さんで続けて欲しかったなあ。
レベルの安定した出来の良いアンソロです。

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