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表題作はなだま人魚

帆高正梧,24歳,兄,宝石店に奉公
帆高八尋,17歳,弟

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

相次いで親を亡くした帆高兄弟は、身体の弱い弟・八尋の治療費をまかなうため、兄の正梧が教師の道を諦めて宝石商に奉公していた。兄に申し訳なく思う八尋だが、正梧は宝石商の一人娘と婚約する。「おにぃを、盗られる」兄への独占欲に苦しむ八尋は体調を崩し、介抱する正梧に自慰を手伝わせてしまう。ある日、正梧は真珠の不作原因を調べるべく、母の生まれ故郷・常月島へと赴く。亡き母から海に近づくなと厳命されていた八尋も後を追うが、真珠の元締めである常月芳朗から淫蕩な視線を送られて……!? 大正を舞台に紡がれる、妖しき兄弟の物語!!

作品情報

作品名
はなだま人魚
著者
沙野風結子 
イラスト
乃一ミクロ 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫
発売日
ISBN
9784592851158
4.1

(71)

(32)

萌々

(24)

(10)

中立

(3)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
11
得点
289
評価数
71
平均
4.1 / 5
神率
45.1%

レビュー投稿数11

兄弟で弟は人魚で…

本当に萌え要素満載でした。
昔から人魚姫が一番好きな童謡だったので、まさかBLで人魚ものが読めるとは……

異種姦あるかなぁ、BLだし絵面的にちょっと難しいかなぁ…などと思いながら読んでまあびっくり。バッチリありました。
そして、弟の八尋くんの生殖器は人間の姿の時から人の物と形状が違う…!なんとなく説明のあの感じからイルカやシャチとかの生殖器にちかいのかな?と思いました。
異種姦やそういった人と違うものを持つというあからさまな描写がが苦手な方は注意が必要かもです。

お話は先の方々がとても魅力的なあらすじを描いて下さっているので省略。
物語の世界観や、兄弟でありながら恋を自覚して行く過程や、心を通じ合わせてから、そして人魚である八尋が捕まってしまってから、どの場面もとっても魅力的で、読んでいて物語にグイグイ引き込まれました。

何度も読み返したくなるお話でした。


9

お互いを想う愛情に萌え

先日ちるちるさんのBLニュースでお見掛けして、面白そうだなと思って購入してみました。沙野作品で、登場人物が人魚という人外モノ。そして花丸文庫Black。という事で、ある程度予想はしていましたが、やはり重く、シリアスな雰囲気満載の作品でした。

早くに両親を亡くし、二人だけで生きてきた正梧と八尋の兄弟。
正梧は何をおいても弟を大切にする、誠実な人物。
弟の八尋もそんな何が大好きで負担になりたくないと奮闘する健気ちゃん。
もう、この設定だけでツボにはまりまくる作品でした。

兄弟ものってよくありますが、この作品はどちらもはじめから兄弟に対して恋愛感情は抱いていない。というか、自覚していない。
なので「兄弟」という点での葛藤が大きいのもとてもよかった。

人外ものもよくあれど、セックスの時の描写がこんなにはっきり書かれている作品も珍しいと思う。さすが沙野さんというべきか、文章を読むだけで情景が目に浮かぶよう。ゆえに何かいけないものを見てしまったような背徳感を感じたりしました。
終盤、人魚たちに対する非道な行為も描かれています。ゆえに好みがはっきり分かれる作品なんじゃないかなと思うのですが、これだけ踏み込んだ描写を描かれる沙野さんのチャレンジ精神に感服しました。基本的に全体を通して正梧と八尋の、お互いに対する愛情に満ち溢れているのでシリアスなシーンも読み切れました。

最後のイチの元に現れるシーンが印象的。二人の「現在」を上手に表現されていると思いました。

二人の間に流れる愛情、二人の両親の切ない過去の恋、人魚を取り巻く残酷な現在。
「甘い」と「痛い」のバランスが非常に良い、ツボに入る作品でした。

8

人魚伝説

少し古い時代、伝説を絡めた島での出来事、兄弟の禁忌に人外と、それらのバランスがとてもよく、ぐいぐいと物語に引き込まれます。
なんといっても、ラストの終わり方!心憎いではありませんか。

唯一の家族であり兄弟である身体の弱い弟・八尋と、彼の為に教師を諦め宝石商で奉公している兄・正梧。
天然真珠の産地であり、彼等兄弟の母親の地元である常月島で花珠の真珠が採れなくなってきている。
それを調べる為に常月島へ渡る兄を、不調の身体を押して追いかけてくる弟。
亡くなった母親から言われていた、八尋を海に近づけてはいけないという言葉の為に八尋が付いてきた事に兄は困惑するが、海辺で八尋が走れるほどに体調がよくなっていることを知り、二人して常月島へ行くのです。
そこに待ったいたのは、真珠の元締めであり兄弟の親類に当たる芳朗。
彼等の母親に昔執着していたらしい芳朗が八尋に向ける怪しげな目が気になりながらも、島で過ごすうちに、八尋は兄への欲情を覚え、そして島の秘密を、自分の秘密を知ることとなる。

常月島が天然真珠の産地である理由。
それが八尋の出生の秘密と深い関係があるのです!
人魚の泪は真珠、人魚の肉を食らうと不老不死
そういった言い伝えが上手く使用されて、切なさもありながらファンタジーの源になっているのです!
それが、素敵なラストシーンの演出にも繋がっていて素敵だな~と思えたゆえん。

兄弟の絆と結び付きについては、すでにその互いを思いやり情を寄せ合っている部分が最初からちらほらしており、物語の進行と共にそれははっきりと形づけられていくので安心な部分なのです。
注目なのは、交わり方です♪
ペニスの形・・・自分的には猫とか爬虫類のチ○コを連想してしまいました・・・タケノコ?
人魚が登場するのですが、さて、人魚の生殖器は一体どこに?という部分。
文章で想像できるのです☆
ちょっとドキドキしちゃいますv

ともするとおどろおどろしい展開になってしまいそうになるところに、明るさを演出するのが八尋と友達になった子供たちです。
とてもほほえましいのですよ♪

病弱でもう長くはないのではないかと思われるほど弱っていた八尋が、海のある土地に来てぐんぐんと元気になって、
兄への健気で一途な想いは変わることがないものの、
彼が自力で行動し、自分で何とかしようと動く、伏せっていて家事をするだけさえもやっとだった彼が強い青年になっていく様子も見ることができました。

様々な要素が、それぞれに楽しめる。
とてもよいお話でした。

11

人魚の生態

これは前情報一切なしで読んだほうが絶対面白いですね!
詳しいあらすじは他の皆様方が書いて下さっているので、
私は感想のみ端的に述べたいと思います☆


人魚の、人間と異なる生態の描写がとても巧みで想像力を掻き立てられました。
安部公房「人魚伝」や高橋留美子「人魚の森」を彷彿とさせるような
異種生物特有の不気味さ、野性味を感じます。哀しくて美しいけどややグロイ。

そして、人魚の生殖器や排泄のための穴はどうなっているのか?という点。
人魚が出てくる作品を読むたびに気になっていたのですが(私だけ?)
まあ下半身は魚だから人間と交わるのは無理だと思っていたのですが
人間×人魚をまともに書いた作品を読むのはこれが初めてです!
小さな割れ目からタケノコが覗き、さらにその下に排泄のための穴が…
とても狭くて奥まったところにあり、ちょっと怖いけど入れずにはいられない。
そんな蠱惑的な魅力があるんだろうなぁ。
これはぜひぜひ本書を読んで体感して頂きたいです!w


ストーリーとしては、
ガチ兄弟モノだけど兄弟愛がベースにあるせいか、
やることやっててもどこかプラトニックな空気。
設定も特殊なためか、濡れ場もなんだか神秘的です。

身体の弱い弟が、暗い寝床で「おにぃ」を想う下りは
純粋であるがゆえの凄みがありゾクゾクします。
弟が肺・脚の痛みとともに性に目覚めていき、兄が弟に欲情していく過程には時代特有のねっとりした情感があり、とても惹きつけられました。

後半の搾取される人魚の痛ましい描写は沙野風先生の本領発揮?
ハッピーエンドだけど、一緒に生きるため世の理から外れた二人の今後も気になるラストに余韻が残ります。和風幻想ホラーのような素敵な作品でした。

11

大正を舞台に描かれる仄暗く怪しい人魚譚

なんとも暗く怪しく、Blackにふさわしい内容です。
時は大正時代で和風ファンタジー&ホラーなお話でした。
グロい描写もあるので苦手な人はご注意を。

※以下、ネタバレを含むので閲覧注意でお願いします。
人魚好きなもんでまたもや人魚に釣られて手にとってしまいましたが…
この作品は「異種姦+兄弟もの」とゲテモノちっくですが、ちゃんと読ませる内容としての手順を踏んでいて好きでした。
作者さんの「人魚ものが書きたい!」と、「兄×弟が書きたい!」の両方が詰め込まれた内容です。しかし、それらがとても上手く組み合わさっているなと感じました。弟・八尋の体が弱い理由、常月島の真珠の謎などが読者を引き込ませます。展開自体はありきたりに思えましたが、ストーリーの肉付けを丁寧に描こうとする作者さんの姿勢が見えるところが大変良いです。

時々作者さんの「書きたい設定」のみに集中しすぎて、話が暴走していたり、読者に読ませる(納得させる)という部分を忘れている作品がありますが、本作はそういう暴走はないです。設定有りきというよりはストーリーの流れを意識した設定になっていると思いました。人魚ものですからファンタジーという取って付けた虚構が存在しますが、そのこと自体に突っ込んだら話が成立しないのでそこは突っ込んではいけないところです。

また私欲に目のくらんだ悪役が出てきますが、悪役に徹しているので残虐な行為も必然性があるため、悪役の行動自体に破綻はありません。とてもじゃないですが好きになれるキャラクターではありませんが、これぐらい悪役に徹してくれているほうが複雑さがないので良いです。

そして常月島の子供が出てきますが、けっこう重要な役割をしてくれています。
子供が探検する系のホラーが好きなので、イチ・タケ・ヤスの登場は好きでした。常月島探検隊奇譚で読みたいぐらいです。最後にその子供達のその後も入っていて嬉しかったです。BL的にはこの子たちの話は要らないかもしれないですが、一小説として見たときにはむしろここまでフォローが入っているのが素晴らしいと思います!

肝心の兄弟萌えについては今ひとつだったかなぁ…。いや、悪くもないんですが。
兄ちゃんのほうが流され系で、弟が無知ゆえの積極的なともすればビッチ系でまぁ美味しいと言えば美味しいのです。そこまで萌えたわけでもないですが、悪くもなかったです。兄(攻)のことが好き好きな弟(受)が単純に可愛いと思えました。ただ罪悪感に苛まれて~の背徳感は薄かったです。兄弟愛のほうが強い印象でした。でもそれはそれで好きな要素です。
むしろ兄弟であることに納得すらします。人魚の秘密を守り尚且つ需要と供給が成り立たせる存在同士なので。
なんだか色々言っちゃってますが、元々沙野先生の作風は好きですし、求めているものがけっこう詰まっていたので楽しめた作品でした。

9

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