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表題作色街淫花

娼館「蘭華楼」の楼主 国東廉
元大学生の男娼 柚木千郷(深雪)18歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

坊ちゃん育ちの大学生・千郷は、多額の借金のため、国東廉という男の経営する遊郭に身売りする。千郷の美貌は話題を呼び、水揚げは見せ物にされた。たちまち売れっ妓になった千郷だったが──!?

作品情報

作品名
色街淫花
著者
矢城米花 
イラスト
小山田あみ 
媒体
小説
出版社
白泉社
レーベル
花丸文庫
発売日
ISBN
9784592851141
3.5

(18)

(4)

萌々

(4)

(9)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
4
得点
63
評価数
18
平均
3.5 / 5
神率
22.2%

レビュー投稿数4

男前でエロい身体

購入予定じゃなかったのですが、表紙イラストの美麗さに惹きつけられました。
緋色格子の奥にいる二人の艶やかさが際立つ表紙ももちろんですが、何と言っても一番ひきつけれるはカラー口絵!!
絶品なんです☆☆☆
主人公に食い込む荒縄、黒い布でされたさるぐつわ、ほのかに色づく乳首に緋襦袢が♪
最近小山田イラストが神かかっていて、もう眼福ったらないのです!!

さて、お話のほうですが娼館が舞台で主人公は家の為に身売りすることになるお坊ちゃん設定なのですが、これがまた健気なのですが男前強気健気v
自分の身を決して嘆いたりしません。
目標の為にとにかく頑張る。
しかも、エロい身体をしておりまして快感に敏感。
そんなギャップもありまして、エロなシーンは満載なのですが、さほどエロさは感じないのではありますが、とても前向きなキャラクターと展開に、この遊郭モノは素直に「好き」と言える遊郭モノと相成りました。


銀婚式の記念に出かけた旅行の帰り会社を経営する父親は事故で死亡、母親は意識不明の重体で寝た切りのこん睡状態に。
一人取り残された息子の千郷は、会社が倒産に追い込まれたことを知らされます。
全てを売却して借財を返しても残る借金に、相続放棄をして屋敷と土地の売却を迫る債権者である娼館「蘭華楼」の楼主である廉に頑なに拒む千郷。
母親が回復した時に戻る家を残してあげたい。
その一心で、千郷は4億近くになるその金額の返済を蘭華楼に身売りすることで肩代わりすることを決めます。
大勢のお得意様を前に裸に向かれ競りにかけられる千郷の身体。
その日から千郷は意欲的に客をとり、昼夜となく身体を売り続けます。
そんな時、現れた父親を陥れた専務の秘書だった小笠原。
憎い相手が自分を買いに来た事で取りみだしたところへ追い打ちのように知らされる母親の死。
錯乱し精神崩壊の寸前の千郷を引きもどしたのは楼主の廉でした。
その時から千郷は早く借金を返済して父親の汚名を晴らす、その事にまい進すると決意するのですが・・・

とにかく千郷が素晴らしく男前健気で割り切って身体を使っているのがいいのです。
ちょっぴり切ない事情ではありますが、快感に敏感というのは幸い設定なのではないでしょうか?
楼主の廉との接近は前半ではあまりありませんので、恋愛はどうなるのか?と思うのですが、
様々な事情で娼妓となる者たちがわが身を憐れむのと違い、千郷が母親を思いやる強い気持ちがあることが、廉に注目させることになるのです。
この廉がさほど黒い人でなくてよかったという事かもしれません。
千郷に惹かれていったというところでしょう。
何と言っても千郷の父親の汚名を晴らすことが出来た時、千郷は律儀に娼妓をやめませんですから!
きっちり返すのですよ。
いやぁ~なんて男前なの。
さて、その後は・・・

見せ場としては、最初の競りのシーンや、千郷がパイパンであるとか、先輩太夫にお仕置きされるシーンでしょうね♪

作者さんの後書きに、矢城といえば”触手”ですが今回は出てきません…なんてあって、
触手が主人公で、触手が客を取るとか、触手が客で来るとか、触手遊郭ものはお笑い系になってしまいそうな危うさを暴露して笑いを誘いましたが・・・
お仕置きはタコで(城の中のフランス人みたいなw)触手とかあっても~なんて作者さんの触手にまた期待するのでありましたw

8

触手は出ません、念のため

 矢城作品には時々妙にたくましい受けが登場します。見た目がゴツイ、とかこわもて、とかいうんではなく、あくまで内面にかぎって。(外見はむしろ楚々とした感じのコが多い)その強さは難局に向かえば向かうほど遺憾なく発揮され、土壇場では出力マックスとなります。全面降伏とか、敵前逃亡という選択肢は初めっからなくて、そのきゃしゃな身体のどこにこんな底力が・・・と思われるほど雄々しく闘いぬくのです。

 本作の受け、千郷も18歳までは社長令息としてぬくぬく育ったボンボンですが、突然の事故で父は死に、母も重体、会社の倒産という不幸に見舞われ、いきなり4億という莫大な負債を背負う身となる。相続放棄すれば楽になるとわかっていながら、母のため、思い入れのある家屋敷だけでも守りたいと、あえて茨の道を選んだのだ。とはいえおぼっちゃまが大学を中退して普通に働いたところでどうにかなる額でもない。千郷は現在家の抵当権を握っている国東の提案をのみ、彼が経営する男専門の遊郭で身売りすることになる。

 矢城流なので、遊郭モノ定番の水揚げシーンも1対1でしっとりゆかしくとは参りません。公開調教の名のもと、荒縄で括りあげられて競りにかけられ、陰毛の処理と称して線香で焼き切られ、挙げ句複数に散々嬲られて、無垢な身心は相当のダメージを受けたはずですが、意外と立ち直りは早い。1日も早く借金を返したいと、昼夜励んでたちまち売れっ妓になります。ただ、経験を積んで、カラダはどんどん開発されていっても、心はきよらか、というのが矢城さんのお好みなんですね。花にたとえれば、豪華な牡丹や薔薇でなく、泥沼に咲く純白の蓮のような。ビッチはお嫌いだし、計算高いタイプには嫌悪を越えて憎悪、というか呪詛に近いものを抱いてるかのよう。なので主人公は身体を張ってもあくまで基本は愚直なまでに正面突破、なんです。途中、父親の会社の倒産を裏で仕組んでた一味の一人が客として通うようになり、手練手管で情報を得ようとしたりもするのですが、結局彼も最後は千郷の純情に絆された感じで「いい夢みさせてもらった」と悪事の証拠を千郷に託して死んでゆくのです。

 受けに比べると攻めの方がバリエーション豊かで(矢城さんに言わせれば、馬鹿と馬鹿以外のふた通りしかないらしいですが・・・)本作の攻め、楼主の国東は自分の頭と腕だけでどん底からのし上がってきたタイプ。なので当初はアマアマのボンボンに必要以上に酷くあたりますが、やっぱり千郷の折れない魂に惹かれて、気づけばはまってました。当人自覚がないだけで、わりと最初の方から読者にはダダ漏れでしたよ。

 ラストで国東と両想いになり、そこで身受けをされればめでたしめでたしの千郷なんですが、いかにもらしいというか、最後まで意地を貫いて、本当に裸一貫、借金を返し終えてから攻めの腕に飛び込みます。さすが矢城さんお気に入りの受け。でも後書きを読むとわかります。矢城さんが一番愛してるのはね、触手。本作には登場させられなかったのが余程無念だったらしく、次は是非とも、と意気込んでおられました。格別触手には思い入れもない私ですが、遊郭で客を取る触手はちょっと見たいかも・・・

6

誇り高き男娼

時代的には現代未来系なのに、舞台が特区内の遊郭だからなのか、
耐え忍ぶ昔の色町の雰囲気も感じる不思議感がありました。
もちろん花blackですし矢城米花作品ですのでエロエロで凌辱系ですが、
受けになる千郷の母親を思う気持ちと己のプライドを感じさせる内容でもありました。

父を事故で亡くし、母は意識不明の重体、大学生のお坊ちゃまである千郷は
パニック寸前の時に霊安室で攻めである廉に出会います。
叔父と勘違いして涙ながらに縋りつき人違いと気がつく、千郷にとっては
自分を慰めてくれた味方的な人だと思ったら、自宅を債権の型で売り払おうとする
ある意味敵方だったりします。

父親は社内の重役に陥れられるように全ての罪をなすりつけられ亡くなり、
後に残ったのは莫大な借金、そして母親も未だ危篤状態の最中で、
廉から自宅の売却を聞かされ、味方だと勝手に思っていた相手に母親の帰る場所を
奪われてしまう事態になるくらいならと廉の経営する店で男娼として働く事に。
内容的には痛くて凌辱塗れ、そこに父親を騙した相手への報復、
娼館楼主の廉は男娼になって借金を返そうとする千郷へ罪悪感を感じている。
それは、ビジネスとかけ離れた廉自身の怒り的な私的な感情で千郷を男娼に
してしまったと言う事でもあり、お坊ちゃまなのに、何事にも逃げ出さず
男娼として働く千郷に心を持っていかれるような感じでした。

結果的にはハッピーエンドになりますが、相愛になっても己の借金を自分で返す
それまでは廉との関係も持たないと言い切るプライドと責任感がある素敵受け。
男娼として客を相手にするときと相愛になった相手に抱かれる時の違いが
恋する人間の思いを感じられる感じで良かったです。
悪者たちも、きれいさっぱり消え去ってくれたのもすっきりして楽しめました。

5

遊郭設定にしない方が…

矢城米花先生初の遊郭もの。発売前から期待していました。

舞台は風営法が廃止された現代日本。主人公・柚木千郷の両親が旅行中に事故に遭い、会社社長の父は亡くなり、母は昏睡状態になってしまいます。時期を見計らっていたかのように会社の幹部たちが動き出し、千郷の会社は倒産。千郷は借金に追われることになります。そのとき彼の前に現れたのが国東廉。国東は千郷に相続放棄をして屋敷と土地の売却を迫ります。しかし千郷はいつか母の意識が回復したら、母を生まれ育った屋敷に帰してあげたいという思いから屋敷の売却を拒否しました。すると国東は借金を返す方法として、国東の経営する見世〈蘭華楼〉で男娼として働くことを勧めますが…。


「借金を返すために身売りする」。遊郭もので定番の設定ですね。そのまま遊郭ものならではの展開になるのかと思いきや、矢城先生の作品らしい公開凌辱へ。見世に入店した次の日、千郷のお初を頂くための公開競りが行われ、千郷は衆人環視の中、口と尻を犯されてしまいます。個人的な感想としてはこの公開凌辱に違和感を感じてしまいました。遊郭は格式がある場所。客と娼妓が疑似夫婦となって夜を過ごすのが作法であって、こんな風に格式もあったもんじゃない下品な客たちによる下品な水揚げは遊郭の誇りに反する気がします。これでは性奴隷オークションと変わりない。〈男娼もの〉としてはよくても〈遊郭もの〉としては評価できません。

また〈蘭華楼〉のシステムにも違和感がありました。この見世では18歳以下は就業禁止の法規制によって、通常の遊郭にはいる禿・新造は置かれていません。男娼たちはそれぞれ独立した部屋を持ち、個人個人についた付き人が身の回りの世話を焼いています。つまり先輩の世話を焼く後輩娼妓、後輩の面倒を見る先輩娼妓という娼妓ー新造ー禿の上下関係がないということ。遊郭もののお楽しみとして、客×娼妓の恋物語だけではなく先輩後輩同輩同士のやり取りも好きなので、本作の設定では楽しみが半減しました。いや、千郷の先輩格である紫という人もいるにはいるのですが、千郷を幼少時から直接指導したわけではありませんし。新人の千郷にさえ部屋や付き人が与えられるというのも郭内で集団生活というより、高級男娼たちが個人でアパートの一室を借りているイメージに近いです。遊郭ものに登場する遣り手(遣り手婆)好きなんですけどね。今作には登場しなくて残念です。

なんだか遊郭ものについて自分のこだわりが強すぎて、本作「色街淫花」を楽しく読めませんでした。遊郭にこだわりはないという人には面白いのではないでしょうか。誰が黒幕なのかというサスペンス要素もあります。

ちなみに本作、凌辱シーンが多いですが、本命の国東とのラブは少なめ。そもそも二人はいつごろから恋愛を意識したのかもはっきりしません。千郷は名もなき男たちに犯されますが、作中で描かれる国東とのHは1回だけです。恋愛要素は薄めと言えるでしょう。
個人的には楼主が見世の商品に手を出すのは嫌です。

7

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