そんなにも俺は、孤独だったのか――

  • 電子書籍【PR】
  • 紙書籍【PR】

表題作Don't look back

マイケル・グリフィン,LA市警殺人課の刑事
ピーター・キリアン,35歳,美術館のキュレーター

あらすじ

――甘い夢からさめると病院のベッドの中だった。

美術館に勤務するピーターは頭を殴られ意識を失い、そのショックで記憶障害を起こしていた。警察の取り調べが始まり、ピーターは自分に容疑がかかっていることに気付く。

自分は犯罪者なのか――そして夢に出てくるあの魅力的な男の正体は――。

記憶とともに甦る、甘く切ない思い出…M/Mロマンスの旗手がおくる、極上のミステリ・ロマンス。

作品情報

作品名
Don't look back
著者
ジョシュ・ラニヨン 
イラスト
藤たまき 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
モノクローム・ロマンス文庫
発売日
ISBN
9784403560132
3.6

(45)

(10)

萌々

(17)

(12)

中立

(5)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
14
得点
159
評価数
45
平均
3.6 / 5
神率
22.2%

レビュー投稿数14

堅実に手繰り寄せる過去

ジョシュ・ラニヨン作品二作目の邦訳。
事件を追う展開のなかで二人の関係が明らかに…という展開や
カップリング(皮肉屋で男前×傷心の意地っ張り)が
少し『フェア・ゲーム』と似ていて、作家さんお得意のパターンなのかなと思うものの、前作がチラついて集中できない程ではありません。本書は本書で面白かったです♪


男と身体を重ねる、甘い夢から覚めると、病院のベッドの中にいたピーター。
職場である美術館で何者かに殴られ記憶を失い、壁画盗難の容疑をかけられていた。
度々訪ねてくる、いけ好かない刑事・グリフィンと接触しつつ、盗難事件の謎を追うなかで、少しずつ失った記憶を探っていきます。


「記憶喪失」はミステリやサスペンスでよくある設定ですが
本書ではピーターが今までの人間関係を見つめ直し、本当に好きな相手と結ばれるというパーソナルな問題に関わるところが大きく、「失われた記憶」や「思い出すこと」により一気に謎が解け…というような派手な展開はないです。
犯人も早い段階で予想がつくので、ミステリよりドラマ部分を楽しむ作品かと思います。

記憶を失ったピーターは自分という人間を新たな視点で捉え、他人との関係を再構築していきます。
かつての想い人・コールに前ほどの魅力を感じないばかりか、自分の好意を利用し支配しようとする狡猾さが見える。
そして、威圧的で好みでない筈のグリフィンに強く惹かれ、夢のなかで自分を抱く相手がコールでなく彼だと気付き、かつての恋人を思い出します。

記憶が偶然パッと戻ることはあまりなく、ピーターは今ある情報を一つひとつ整理することで事実を確かめていきます。
もし自分が記憶を失い、事件に巻き込まれたとしても、こうやって記憶を手繰り寄せていくほかないだろうなと思います。地味だけど、堅実でリアリティある展開です。

記憶喪失の元恋人を前にしたグリフィンの対応も、ご都合主義すぎなくて良い。
かつてピーターを手放した選択はシビアですが、
まだピーターを好きで放っておけなくて…という点はいかにもロマンス。
リアリティと甘さのバランスが絶妙です。

ただ、もう少し掘り下げてほしかった部分もあります。
ノンケなのに、ピーターを手元におき支配したがったコールの真意。
記憶を失う前の、ピーターとグリフィンとの蜜月。
これらがもっと書き込まれていれば、
切ない過去を経てやっと幸せになれたラストにグッと深みが増したんじゃないかな~
想像で補えるので、消化不良という程ではないですが。

エロは『フェア・ゲーム』よりハッキリした描写があり濃いです。
ユーモラスながら愛が詰まった会話、生々しくも上品な行為描写(攻の体毛が尻に押しつけられ…の一節に萌えv)、体も心も重なり合うような感覚…。
受の派手な嬌声がなくとも十分エロいし萌える内容でした☆

10

過去からの脱却

前作『フェア・ゲーム』が大変に面白くて関係性の描き方が好みだった作家さんの2冊目になるのだが、この2冊でこの作家さんの傾向がわかったと断言してしまってはいけないのかもしれないのであろう。
しかし、主人公はゲイであり、そしてこだわりとわだかまりが二人を阻むという距離があるところから、謎解きの進行とともにそれがほどけていく、という進行パターンは似ているかもしれない。

事件的には犯人は容易に予想がついてしまうのですが、本格的な推理小説を求めてはないので、その部分にはこだわる必要はないのです。
ただ、その謎解きの中での心理描写と変化が見せどころなのだと思うのです。

この物語は、いきなり主人公は何ものかに襲われて記憶喪失になってしまう場面から始まります。
事件現場の当事者であることは勿論ですが、自分自身についての記憶を喪失、もしくはあいまいな記憶でしか戻ってこないのです。
ですから、お話事態が主人公の自分探しの側面を持っているのです。
着せられた美術館の品の窃盗容疑を晴らす為に積極的に動くわけでなく、自分を取り巻く人々との接触の中で、事件の容疑について多少の調べを入れながら、記憶の断片を多少取り戻しながら、過去何があったのか、自分がどうだったのか知っていくのです。

ひょっとすると記憶を失ったピーターが、それによって過去のピーターと決別して新しい門出をする話だったのです。
そこには本当に求めていたコイビトを得て。

日本のBLのようにキラキラした主人公ではないです。
服装の描写からもわかるようにかなり地味で堅実、そしてどうやら人がよさそうな?
過去について、どういう性格だったのかと見えるのは、叶うはずのない思いにしがみついてその相手のいいように使われてしまい後悔するような、若干ヘタレた人物であることを感じます。
「惚れた弱みを握られる」そんな人だったのかと。
だからこそ、新しい自分に変われてよかったのですね。

相手となるグリフィン。
彼の心理状況については、まったく同調できるものでした。
相性の良い、長く付き合えそうな本気の恋だったのに、ピーターは自分より友達を選んでしまったのですから。

キャラクターというより、心理描写と展開に魅力を感じるというところでしょうか。
それの人物の動かし方が実に的をえているというか。
本当はどうありたかったか、どうなりたかったか、一度壊れたものが偶然とはいえ一つの事件により再び寄りあう形の恋愛は、それでも充分に甘さを感じるものもありました。
やっぱりロマンスですね☆

今回は藤たまきさんのイラストでしたが、表紙のカラーといい文庫らしい雰囲気で、この採用もとても成功していると思います。

6

体毛に萌える?

ジョシュ・ラニヨン作の邦訳2作目。
前作が結構ミステリー寄りで、主人公の描き方もじっくりリアルな感じだったのに比べると、こちらは随分とロマンス寄りで、サックリ軽く読みやすい印象。
主人公が巻き込まれる事件も、謎と言うほどのこともなく犯人はすぐ想像つくし、主人公が記憶喪失になる設定も、事件の謎を盛り上げるためとは言え、ちょっと安直な感じ。
でも、ロマンス小説としては、このくらいシンプルな方が萌えるかも。
何より、ピーターとグリフィンのセックスの描写が、体重がしっかりと重そうで、日本人じゃなくて、ちゃんと欧米人なんだなぁって感じがよかった。

5

洋物の記憶喪失作品

基本、海外物は翻訳次第だと考えています。
日本の小説とはかなり文章の作り方も違いますし。
ただ、他の作品も読んで冬斗さんの翻訳は嫌いじゃないなあと感じました。

********************
受けのピーターは美術館のキュレーター(学芸員)、35歳。
とある事件をきっかけに、自分と周辺の記憶を無くしていますが、自分がゲイだとか部屋の位置だとかは覚えているようです。

攻めはロス市警強盗殺人課の刑事、グリフィン。
ネタバレになりますが、半年前までピーターとは恋人同士でした。
年齢ははっきりとは書かれていなかったと思います。
********************

ピーターが美術館の盗難事件に巻き込まれ病院で意識を取り戻した辺りからのスタートで、ピーター視点のためこちらにも事件のあらましのような細かいことは語られません。
記憶を無くしていますし。
先を察することはできますが、それでもピーターと一緒に自分探しのような気分を、味わうことはできます。

萌え要素はグリフィンのちょっとした、ピーターへの愛情に裏打ちされた行動。
まだ記憶を失っていたピーターがショックを受けた時に、自分の胸へ引き寄せたり。
ただ、どうしても事件メインなので甘さは少なめです。
考え方によっては、少ないから萌えるとも言えますが(笑

最後の方でピーターの病気(例えですが)が再発してイライラするところもありますが、終わらせ方もなるほど国産とは本当に違うなという感じ。(でも、バッドエンドではありませんのでご安心を)
海外物にしては、本当にスイスイ読める気軽な物かと思います。
当たり前ですが、BLで良く見られるラノベのような文章ではありません。
ただ、BL以外の小説も読む方には受け入れることができるのではないかと。

2

薄い分、読みやすい

外国小説(翻訳版)を久しぶりに読んだので、「そういえばこんな感じだった」と思い出しました。言い回しとかちょっと癖があるように思えるんですよね。

昔読んだ本は、登場人物の愛称やミドルネームが出てきて何人いるの?状態でしたが、こちらはピーター(主人公)、グリフィン(刑事)、コール(上司兼大学のルームメイト)と友人くらいなので読みやすかったです。

ピーターの視点で進んでいくのですが、最後まで読んでからもう一度読み直すと、グリフィンの態度がよりニヤけてしまいました。可愛げのない感じで可愛い、という表現も面白かったです。

1

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP