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ともさくらの世界に、二人のアーティストが絶賛!!
満を侍してというべきか、待望のともさくらさんの単行本が発売になりました。
OPERA掲載時、最初は少しとっつきにくさを感じてしまったのに読み重ねるうちにグイグイと引き込まれていくその独特の感性と世界。
細密とデザインの多用された絶妙なバランスで表現されるその世界は是非オールカラーで見てみたいと思わせるものでありました。
・・・しかし、残念なことに表紙カバーだけがカラーでちょっぴり落胆がなきにしもあらず。
それでも、自分の頭の中で色が再現されるそれらは、まるで短編のフランス映画を見ているが如くの物語達です。
どのお話にも心を揺さぶられるセリフやモノローグが登場し、彼等の心に自分の心も共鳴して思わず涙があふれてくる。
どれも、少し不器用な男たちが登場し、そしてすごく、すごく素敵なのです。
カフェでギャルソンをするアンリには自分が海底でもがく潜水士のようだと思えている。
潜水服で隔たれたその外の世界では、人々は自由に泳ぎ回る魚。
そんな彼に向かいのケーキ屋の弟子ジャンは光輝きふわふわと漂うとても綺麗なクラゲに見えるのです。
自分の言葉は泡につつみこまれ消えてしまうはかなく届かないものでしかないというあきらめ。
それでも無愛想な自分を変えたいと思い接客の仕事をするアンリと、人当たりがよく店の外で人々の相手をするジャンとの接触から彼等が惹かれあっていく様が描かれるのです。
劇的に何かあるわけではありません。
彼等が求めあうものがまるで正反対のような二人であるのにぴったりとはまりあう、それは互いの観察と二人の会話で成り立っています。
ジャンはアンリを不自由な潜水服から自分と同じ自由な海の中へ解放してあげるのです。
恋とは、愛とは、そんな大仰に考えるものではなくとても感性の部分で自分にふさわしい人として相手の立ち位置がある。
そんな関係が自由で、とても自然に受け入れられるのです。
それはこの表題だけではなく、他に掲載されている2作品についても同じだと思われました。
この表題に連なる2本はその後編的なものを、子供をとおして彼等の幼いまだどうなるかわからない特別な感情の芽生えを上手く”蛹”とかけているのではと思われるプロローグ的描き下ろし【蛹の中】を経て【輝く瞳】へと繋げています。
【熊と小熊】
少年に届いた一通の手紙。
顔も知らない父親かもしれない、その差出人を訪ねて少年が極北の地をおとずれるところから始まります。
少年ミーシャを迎えたのは、生物研究の為冬前までこの地に滞在する学者のニキフォルと、この地で生まれ育った変わった風体のアルテクの二人でした。
氷と雪の表現がとても素晴らしいです!
鋭角を多用した背景とコントラストの陰影で、雪のまぶしさを表現してある様がとても絵画的でもあり、質感と温度を感じさせる。
アルテクの独特な不思議さを醸す雰囲気と、寒さで凍るまつ毛。
物語も秀逸で、この少年の純粋さは第三者であるがゆえにとても聡く、大人の二人がうっすら気が付きながら言葉にできないその感情を感じ取ってしまうというもの。
それぞれの行動は互いをとどめておきたいが為、互いに会うため。この不器用な大人達の展開と結末に、何故だか感動の泪がさそわれてしまうのです。
【アナトールおじさん】
小さい頃、大学の友人の話を聞かせてくれていたアナトール叔父さんが亡くなり、姪は彼の願いにより、友人であったガスパールを訪ねて行く。
ガスパールが学問バカであった為、気が付けなかった特別な感情と、
そんな彼だからこそ、内に思いを秘めたまま去った叔父。
ただ、それだけの短い話なのに、相手への深い愛情がゆえにおきたすれ違いは悲しい結末だが、美しい話として涙をやはり誘われてしまうのです。
表題のアンリのギャルソンスタイルは、まるでウォーリーのようなボーダーのシャツとボンボンの付いた帽子。
登場人物達のしているピアスが目を惹きますが、後書きによると実在のアクセサリーだとか。
眼鏡の人物はみな一様に丸眼鏡。
それもまたアーチスティックで素敵なのです。
とてもシンプルなストーリーと、シンプルな背景、シンプルな登場人物。
無駄をそぎ落として見せるそれぞれが紡ぐストーリーは感性に訴えてやみません。
丁寧
慎重
緻密
繊細
パーフェクト
美術館でじっくりとゆっくりと『ともさくらの世界』を一日中見ていたい。
凄い。たまげた。
特に44ページの丸メガネに映る【蛹】の描写に鳥肌がたった。
どのページを見ても
ただただ美しくて。
読み返すごとに新たな感動がふわりと降ってくるよう。
ケーキの先生の言葉がとても心地いい。
「恋をして初めて」
「恋する瞳の輝きに気付く」
「世界で一番美しいものを知れば
嫌でもすべては美しく輝きだす」
少年の瞳の先には恋の予感。
甘い余韻が読み終わった後、ずっとずっと私の中でくすぶっています。
表紙の絵から漂うアーティスティックな印象そのままの、実に味わい深い一冊でした。
帯、表紙、中の書体、絵柄、物語、ページのナンバリングその他全ての部分に“こだわり”が感じられました。
まず帯の推薦文が中村明日美子先生ということで出版社のこの作品に対する力の入れ具合を感じました。
もう一人の推薦者ブブ・ド・ラ・マドレーヌさんは美味しそうなお名前ということだけは分かりました。
存じていない方だったので調べてみたらアーティスト&社会派ドラァグクイーンの方だそうです。
次に表紙・装丁はchutteさん。
著名な方の小説やコミックの装丁もされておられるかたで、これまた装丁にも力が入れてあることが伝わってきます。(全然BLとは関係ない作品ですが、私の好きな小説の装丁もされておられたことをこの機に知りました)
帯や装丁等からだけでも、この作家さんが周りから期待されている「才能のある方」ということが感じられます。
また中のフォントも凝っています。
ト書きの部分に映画の字幕のようなフォント(おそらくしねきゃぷしょん辺り)を使っていたり。
こちらは作者さんの指定なのかよくは分かりませんが、物語の雰囲気を考えて選び抜かれたフォントだと感じます。
また、作中、虫眼鏡のレンズを通した部分のセリフ文字の部分が、拡大されて大きな字になっているところなど、遊び心とセンスの良さを感じました。
ほぼ全ページに加筆修正が施されたというこの凝り様に、作者さんの絵に対する情熱や物語を大切に描いておられる姿勢が伝わってきました。
絵柄に関しては背景の書き込み具合が詳細ですごい!と思うのですが、それだけではなく人物の書き込み具合も丁寧で素晴らしいと思いました。
こんな風に詳細な背景の書き込みをされるかたで、たまに人物の絵がやけにあっさりしていてアニメちっくでガッカリなんてことがあったりするのですが、
ともさくらさんの絵は人物にも書き込みがしっかり入っているところも魅力的でした。
お話は淡々としているようで「あ」と思わされるような内容だったり、実に味わい深かったです。
静かで優しい物語が丁寧な絵で綴られていました。
空にふわふわと浮かぶクラゲ。
水泡となって消えていく言葉。
突き刺さるような白い世界。
子どもの頃何度も聞かされた物語。
どこか遠い世界の、まるでおとぎ話のように感じるのに。
それなのに、人物たちの確かな息遣いを感じます。
そこに温もりを感じました。
じっくりコトコトと煮込んだスープのような、とても丁寧に作り込んだ、味わい深い一冊でした。
4、5回は読み直したと思うのですが、まだまだ読み込んでいけそうな気がしています。
中村明日見子さんが帯に「美しい標本箱のよう」ってコメント寄せてたけど、本当にその通り。
画面も美しいけど、登場する人たちのなんと美しいこと。
詩的で絵画的で、漫画ってこういうこともできるんだなって思った。
アルテクとニキフォルの話が一番好きですが、アナトールおじさんの話でぐっときた。
いやはやこれはA5で出してくれたオペラさんナイス。
これも独特の世界観ですね。
何十年も昔、自分が漫画を読み始めた頃に
こんな感じで描いてる人がいたような???
(タイトルとか覚えてないや…)
それに昔は外国モノと言ったら、
ヨーロッパ系を舞台にして描かれるのも多かったし
BADエンドも珍しくなかったですし。
懐かしい感じのストーリーにも思えました。
(全てというわけではありませんが)
後は途中途中で描かれる緻密なイラストと言えばいいのか
最近で言えば青井秋さんを思い出すような…