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表題作甘えない猫

長田和朗,カフェの雇われ店長
夏原葵,洋館の同居人で大学三年生

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

長田和郎は叔父・玄二と二人暮らしをしている。玄二の所有する洋館の一階はカフェになっていて、和郎はそこの雇われ店長だ。ある日、事情があって預かったと玄二が新たな住人を連れてきた。和郎が卒業した大学で孤高の麗人として有名な夏原葵だ。戸惑う和郎に玄二は釘を刺す。葵には手を出すな、と。確かに葵の外見は好みだったが、無愛想で常識外れな態度に和郎はがっかりしていた。そんなとき、いつものように玄二を起こしにいった和郎は玄二と同じベッドに裸で眠る葵を見てしまい――!?

作品情報

作品名
甘えない猫
著者
成瀬かの 
イラスト
高星麻子 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
ISBN
9784813012832
2.8

(24)

(0)

萌々

(10)

(7)

中立

(1)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
4
得点
62
評価数
24
平均
2.8 / 5
神率
0%

レビュー投稿数4

情の深さを感じます

シリアス気味のラブストーリー、受けになる葵のたった一人の身内だった母親を
亡くしてしまってからの葵の生きているのに全てに無気力で死に急いでいる、
そんな精神的に壊れているような、まるで野生の野良猫以上の行動が悲しく感じます。

母親を事故で亡くし、その車に同乗していたことで大好きな人の体温が奪われていく
瞬間を傍で見ていることしか出来なかった葵、そしてその事故が自分のせいだと思い込み
愛情も優しさも全て壊れてしまったみたいで外見がたおやかで美しいのに中身は刹那的と
かなりギャップありの葵です。

攻めになる和郎は大学卒業後に叔父と共に暮らしながらカフェを営んでいて、
その叔父が葵を引き取ってきて、同居することになります。
もっとも、葵は和郎の大学の後輩になるのですが、孤高の麗人ながら怜悧だと言われる
葵は有名人で和郎も外見が好みだったゆえにもちろんその存在は知っている。
けれど、同居してみれば、その刹那的で壊れた精神状態を見て厄介だと思うが、
和郎は口では文句を言いながらも面倒な相手の世話をするタイプなんです。

始めは叔父との関係を誤解しますが、それも直ぐに違うことが解るが、
とらえどころがない気ままな猫のように擦り寄っては手痛い態度で離れる葵に
かなり振り回され気味になるのです。
葵が過去のトラウマを乗り越え、大好きだった母親と同じくらい、それ以上に
大事な存在を見つけた時に壊れた心が再生されるような話です。
壊れておかしくなっているような葵ですが、無意識で大切な存在や場所を守ろうと
行動するのですが、それもかなりデンジャラスで、和郎は気が気でない様子。
タイトルに甘えない猫ってあるけれど、確かに猫っぽいのだけど普通の野良猫って
感じよりもやさぐれ過ぎた豹みたいな雰囲気もありました。
ラストは周りに明かりが差すような穏やかなイメージで素敵でした。

7

傍にいたい。

どこまでの人のいい喫茶店マスターと気まぐれにもほどがある!野良猫のお話。

まず和朗のキャラがすんごくいい。
誠実というか真面目というか。
一見草食なんだけども実はそうでもない男らしさがあり。
優しくてどうも世話をやいてしまうそのお人好し加減がツボでした。

一方葵ですが、警戒心バリバリでフシャーっと威嚇したと思いきや気まぐれにすり寄ってきたり。
感情はまるでなく、コミュ障気味。
過去にあった出来事のせいでどこか壊れてしまった葵は刹那的で、見ていて苦しいくらいでした。

だからこそ、和朗がピッタリだと思いました。
和朗はどんなに難しい奴でも、途中で放り出したりしないおおらかさと優しさがあるから。
葵もそんな和朗の持つ魅力に本能で察知し、不器用ながらも近づいたのかもしれません。

葵に振り回されながら、それでもかまいたおす和朗が素敵。
最後、少しは葵も素直になったようで、なんとも微笑ましい結末です。

好きとはどういうことなのか。
雷鳴でかき消えてしまった葵の本音を、和朗が知る日も近いかもしれません。

3

儚さと獰猛さを併せ持つ、アンバランスな猫

先の姐様も書かれていますが
『甘えない猫』なんて可愛いモノじゃなかった…(゚Д゚)oh

表紙の線の細い繊細そうな佇まいから想像できないほどの野性味で
シャッと爪を立てて攻撃するまでが異様に早い;;

最初のインパクトに呆気にとられてしまう反面
儚げな空気感と獰猛さを併せ持つアンバランスさから目が離せませんでした。
生き方を知らない不器用さが愛おしく感じられます。

そんな受けとの距離と取りあぐねながらも
手探りで愛情をかけている攻めの優しさもとても良かったです。


お話は攻め視点で展開されます。

攻めの和朗はカフェの店長をしています。
お人好しというか器用貧乏というか…;
気になるとほっとけない性分でつい世話を焼いてしまうタイプ。
ただ"ほっとけない"だけで包容力攻めとはちょっと違うかな?
葵に振り回される様は等身大の男の子でした。

受けの葵は学内では「孤高の麗人」などと言われますが
ひとたび近寄れば牙をむいて獰猛さをみせ…。
しかし1人でいるときは消えてしまいそうな儚さもあり。
義父とのエピソードを見ると根は優しい子だと思います。

叔父が葵を連れ帰って突然同居することになり振り回される和朗。
同居開始時には生活能力のない葵の世話を焼く姿は飼育員さんのようw

でも葵は「出来ない」のではなく「知らない」だけなのですね。
教えればきちんと応えてくれる。
けれど笑顔だけは作ることすら出来ない。
不器用でほっとけないヤツほど和朗は目が離せなくなる。
愛情も生き方も知らない葵を見て、和朗はどんどん惹かれていきます。
そして葵は、和朗と接していると自分の中に知らない「感情」が芽生え始めてーーー。

身体が繋がるのは割合早い段階でしたが(襲い受けだ!)
身体を何度も何度も重ねながらゆっくりと感情が追いつく。
愛情に鈍い葵に、和朗は何度も何度も教え込むように。

次第に獰猛さが削がれていく過程がなんとも言えないうれしさ…!(∩´///`∩)
過去の出来事を乗り越えて、これからもっと幸せな経験をしていってほしい。
和朗と一緒なら安泰だと思える頼もしさも見られて良かったです。

1

どヘタレ世話焼きお人好し×礼儀知らずな野生児

カフェの雇われ店長 和朗が居候している叔父の家に美形の大学生 葵が引き取られた。

超絶美形だけど口は悪くめちゃくちゃ手が早いんです。
猫というより手負いのトラです。
『ごめんなさい』と『ありがとう』が言えない人は人として最低だと思っている私にとって、この獣じみた非常識さ加減が我慢できず好きになれなかった。
だから132ページでありがとうと言ったときにはびっくりした。
野生動物が芸の一つも覚えた!と。

殴られても蹴られても許して世話してあげちゃうお人好しな和郎の魅力もよくわからなかった。
とてつもなく優しくていい人ではありますが…
とか思いながら読み進めたのですが、このちょっと壊れ気味の王子さまの背景はとても気になりました。
12のときに母親を亡くしたということはそれまではまともに育っただろうに、ここまで壊れた異常性にどんな育ちをしたのか、母の死にも何かあったのか、と。

そんな、並外れたいい人な和朗だからこそ葵の壊れた心を癒し包み込んであげられるんだと思います。
母親の死以来、無気力で死に急いでいた葵だけれど、和朗に出会って孤独の寂しさを知ったり誰かを守る強さを持ってちゃんと生きていけるようになれたんだと思いました。

5

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