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最後に『幸せ』と言える強さ。
強がりでなく強さ。
ハピエン!!と手放しでは言えなくて、幸せには人それぞれのかたちがあることを思い知らされます。
この作品は好き嫌いが分かれるんでしょうね~。
右介は高校時代に図書室でたまたま出逢った大和と穏やかな時を過ごしていましたが、ある日、わけもわからぬまま無理やり犯されます。
その後、実家の跡目を継いでヤクザの組長となった大和と彼の子飼いの闇医者兼愛人となった右介のおよそ20年に渡る関係を描いた話です。
大和は右介に執着しているのに敵対する組長に右介を情夫として差し出し、代わりにその組長の娘を抱きます。
人質ってことなんですが、右介の諦めた風情が切ない。
右介は大和に恨み言を言いますが、それはあくまでも自分の存在についてであって大和との関係を言及してるわけではありません。
大和の妻となる敵対するヤクザの娘ですが、これがまた一見、ふんわりしたイメージなんですが他の女にはハナもひっかけないのに対し右介には何かを感じとり粘るような視線を投げる。
その本能に背筋が寒くなります。
女(妻)が女(牝)に火花を散らす。
彼女の父親が女の闘いについて語る場面がありますが、よくわかっていらっしゃる(笑)
でもこの妻、男同士の絆に気づいても大和は責めずに自分が入り込めない、やるせなさは右介にあてつける。
頭は悪くないんですよ。
底意地の悪さはあれど嫌いじゃなかったなぁ、この人…イヤミすらストレートでした。
突然、暴力的に人生を奪われ精神的に虐げられている右介は己の現状を憂えても表向きは受け入れています。
でも事故的に居着いた奥村という青年の素直な明るさに自分の失ったものの大きさを思い出していた矢先、大和に子どもが生まれることを知ります。
失われた自分の存在意義を取り戻そうと大和に決別を乞う右介。
ここで奥村との会話にも出てきた『キス』が重要な役割を果たします。
あのキスは狡くて誠実で切ない~!
耳打ちされた言葉に大和の目論見を半信半疑ながら気づいた右介が『一緒に汚れていく』ことを選んでからの表情、特に瞳が良いです。
大和の妻とのやりとりにも選ばれた者特有の余裕が出ています。
描き分けが巧すぎる~。
大和は、父親にとっての菊地(側近)のような最後まで側にいる唯一無二の存在が欲しくて右介を巻き込んだわけです。
図書室で右介と過ごした穏やかなひとときはそれだけ大和の心をとらえて離さなかったんでしょうね。
右介の人生を奪ってでも大和には必要だった。
自分のために犠牲になってほしいって、なんて残酷なプロポーズだろう。
ラスト怒濤の10ページに心をわしづかみにされました。
この一冊の中で一番、穏やかな10ページ。
そして一番、あたたかい10ページ。
そこには彼らの静かな意思が花咲くまでのおよそ20年が凝縮されています。
大和の爬虫類っぼい切れ長のさめた目つきはなかなか感情を読ませませんが、ふっと、わずかにやさしく緩む。
右介の20年は報われた…んでしょうね。
きゅん、とする萌えやラブぃ雰囲気、甘さなんてカケラもない。
すご~く暗くて陰湿な執着の話です。
でも私にとっては間違いなく胸アツな神作品でした。
これぞBLではなかろうかと。
自分の趣味がメインストリームから外れているのは百も承知ですが、これ読んだらそう言いたくなりました。
自分がなんでBLを読んでるかって言ったらこういうのが読みたいからに他ならなくて、
良かった凄く。
男同士+ヤクザという組み合わせの妙が作り出す二人の関係性が良いです。
反吐が出そうなほど苦々しく、その一方で二人の歪んだ結び付きにある種の羨ましさも覚えるような。
描き下ろしの『19XX年 長雨の候』で大和の父親の側近がまだ幼い大和に語る「男はそんなに軽薄なものじゃありませんよ」という台詞がこの物語の全てのように思えます。
右介の対比として描かれる大和の妻の存在が、位置付けとして非常に巧みでした。
男女の違いを実感させられます。
男と女は別の生き物なんだよと。
で、ついつい女性目線で読んでしまっていた自分の思考回路を上手く軌道修正してもらえたり。
右介が大和に奪われるだけの立ち位置に二十余年も甘んじれたのは右介が男だったからでしょうなぁ。
女ならばまず無理でしょう。
というか私なら絶対嫌です。
高2で出会って、大和の心の内が明かされるのがそこから24年後ですから、その時点で二人は40歳を超えている訳です。
気の遠くなる年数です。
それでさらに「あと8年待ってくれ」と言われた日にゃあ、はァ?!お前こっちの歳分かってんのかよふざけんなよ!ってなりますよ。
そんなのもう子供も産めないじゃん!ってなっちゃう。
悲しいかなそこはどうしても女性につきまとう女性の性(さが)の部分だと思いますし。
薔薇の咲き乱れる美しいラストシーンがその美しい光景のままハッピーエンドとなり得るのは「相手が女性ではないから」だよなと。
最後の光の射し込み方がやばいです。
暗闇が長ければ長いほど射し込む光は眩しく見えるというか。
ページを捲る手がちょっと震えてしまいました。
大和の身勝手さはどう読んでも理不尽ですし、右介はあまりにも不憫なので、攻め側や第三者視点ならいいでしょうが、受け側に感情移入して読まれる方だとこれはダメな気がします。しんどすぎるかと。
それくらい右介が辛いです。
評価がバラけてるのもなんか分かる気がします。
自分に与えられた義務(ヤクザの組長の家に生まれた者として組を次の代に繋ぐこと)を完璧に果たしきるまで相手を待たす大和を漢らしいと取るか否かもまた評価の分かれ目なのかも。
ところで、雑誌は読まないのでアレなんですが、大和の子供を主役にした続編がこれまた非常に面白そうで。
私の中で三角関係といえばシビトさん!くらいの勢いなので、単行本になるのはいつなのかと期待が天井知らずにムクムクと膨らんでおります。
評価が分かれる作品ですが、
個人的には神作品の一つだと思いました。
一度目は受け目線で読み、二度目は攻め目線で読んでみました。
一度目は、高校時代に出会ってしまった攻めに人生ごと持っていかれてしまって、なんて最悪な話なんだとショックを受けました。
二度目は、攻めが受けだけに執着したが、育った環境ゆえ歪んだ接し方でしか表現できなかったんだのではないかと感じました。
そして、何よりノンケや女性が出てくるのでリアリティがあります。
BLは毎日1冊は読んでいますが(笑)、受け目線・攻め目線両方で楽しめる作品にあまり出会わないので、本作品は永久保存版です。
欲を言えば、攻めがヤクザ業を引退(?)した後、ただの人になった時
受け攻め逆転しないかな~という願望があります。攻めが色気あるので。
ただの願望ですので、無理があるのは承知です。
シビトさんの本はほとんど読んでいますが、この作品が一番好みでした。
普通のハピエンじゃ物足りない、ドロドロの愛憎劇が好きならオススメです。
攻めが昔のヤクザというのが、この愛憎劇のポイントです。
鬼畜なヤクザの攻めに振り回される可愛そうな優等生の受け。
攻めに執着されてる受けの二人の長い人生。受けは絆されたのかな。
攻めの奥さんも絡んできて、、、。
奥さんは天然のように見えて、実は気が強く正にヤクザの姉さんです。
ヤクザばかりの血生臭い世界に似合わない普通の受け。
でも、ヤクザではない普通の受けが攻めには必要だったんだろうなぁ。
恋煩シビト先生の作品は読後に棘を残していくので、ゆっくりと読破を目指しています。
今回は比較的読みやすい作品だったかな。
今作はヤクザ+執着ということで、もう最高でした。
男同士の繋がりが異常な世界。これこそが私の読みたかったヤクザものです。ありがとうございます。
攻めはヤクザとして生まれ、利用し利用されで成り立つ世界で生きていかなきゃいけない人。
そんな人が、受けのような一緒にいると安心する存在を欲しがってしまうのは仕方ないことで……。
序盤の受けはひたすらに可哀想で、攻めに安心されてしまったばかりに巻き込まれて人生をメタメタにされてしまった人だと考えると、どうしようもない気持ちになります。
でも最終的には自分の足でその場所に立って、攻めが組の駒としての役割を全うするまでの途方もない時間を待ち続ける選択をするのが……もう……。
自分ではもうどうしようもないほど大きくなってしまった感情を、抱え込んで生きていく選択をする。本当に素晴らしい。
また、攻めの、汚れていく自分と相反して綺麗なままの受けを吉原の組長に差し出して汚して、かと思えば背中に墨を入れたことに怒って……この不安定な感じが、とっても滾りました。
他の方もおっしゃっていますが、この関係性は男同士だからこそ成せるもので、結婚相手である吉原の娘さんとの関係性の対比が本当に素晴らしかった。
もし私が姐さんだったら発狂していたので、姐さんは強いな〜と思います。
攻めの受けに対する執着は所有欲で、愛というには酷すぎるのですが、受けが自分の足で立った瞬間に愛に昇華するんだな、なんて考えたり。
愛とは、幸せとは、そんなことを考えさせてくれる作品でした。
面白かったです。ありがとうございました!