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すごく拙い感じのする絵。題名もまるで手描き。
でも、赤がとても印象的でそしてこの本の厚み。期待していいんじゃないだろうか?
・・・ああ、今自分が欲しているお話でした!
最近ルチルのコミックは現在の自分のツボど真ん中を突き刺す作品が多くて、こういう誠実系にはまる時期がめぐってきたんだな~としみじみ実感します。(歳のせいかw)
父親の海外単身赴任で、義理の母親と離島にやってきた高校生の真。
しょっちゅう、船で本土へ遊びに出かける義母に一人ぼっちで取り残される真はトマトを盗もうとして、その家人に呼び止められ家に連れて行かれる。
そこで待っていたのは島の特産であるトマトを作っている3世代の大家族。
大勢の家族に囲まれ歓待され面くらう真だが、次第にうちとけ、長男である星子(せいじ)と近しくなっていく。
島に来て2年、更にその先2年、さらにその未来のお話もあり、じっくりとじんわりと2人の仲が葛藤や迷いを経て進行していくのがよい。
恋愛の元にある、自分に何ができるか、何をしたいか、そういった地に足のついた着実なモノの下、家族も含めて2人のあるべき姿へといざなわれていく展開が、自分のツボにはまったようです。
こうやってみると、すごく色々な要素がテンコ盛りで入っているのに、散漫な感じがしなくて、芯が一本きちんと立っていてそれに肉付けがされている様子が伺える。
それがぶれない引きこまれる魅力になっているのかもしれないです。
真の家族は個々がバラバラで心の交流がない感じがします。
義母の様子も、最初の頃のだととてもいい加減で仕方なしにという感が満載で、父親はどうしてこんな女と?と思うほど。
その父親がまた冷たそうな人で。
本当の母親とは離婚したようなのですが、そこでの母親の幸せな姿を見て真がショックを受ける様子も挟みこまれていて、彼の寂しさが一層倍増しに強調されているような。
星子は、いや星子も始めきっと両親も星子の弟を亡くした事を忘れられないでいて、それにこだわっている部分が伺える。
特にそんな亡き弟へのこだわりを、真がとっぱらってくれた。
彼の真摯で一途な想いが星子の心を動かしたのが、真を特別にかわいいと思えるきっかけになったのだと思う。
島の段階ではまだ特別な友達のような存在。
真が大好きになった島に戻る為にどうしたらよいか、自分で考えて行動して自分で切り開いて、そんな一途さがとってもよかったのです。
雑誌掲載は、2人が晴れて好きという思いを通じ合わせたところで終わっていたようですが、描き下ろしにてその後が描かれました。
これがあって、すごく完結したなという満足に繋がります!
大家族だからこその、避けて通れない家族の問題。
上手くいきすぎではなく、親もちゃんと考えて悩んで若者たちに答えを出させるという、その展開がとてもよかったのです。
キュン萌えとかそういう次元を飛び越えて、ストーリーとして登場人物達全てが愛おしいような、そんな物語。
家族のアリガタミ、そんなものも感じさせる大きな愛がそこにありました。
波乱含みの内容を上手く淡々と描ききった、
そう言う作品だと評者は読み取りました。
淡々とした理路整然の中に句読点として
折々に登場するトマト。
その意味する所は物語の中でさりげなく
語られていて、総タイトルに更なる深みを
与えています。
カバーと帯の赤のさりげない違いは偶然の
産物なのでしょうが、そこにも何かが込められて
いるのだろうかとふと考えてしまいます。
同じ赤。でも違う赤。だから恋をする。
そう言う風に評者は装丁に対して勘繰りました。
正解ではないでしょうけど。
結局の所、この1冊しかコミックスのない作者さんの本。
このコミックス、丸々1冊費やしても、星子と真の二人の関係をなぞるのも駆け足で、二人それぞれの、家族との関係とか過去とか、いろいろ語り足りていないところもあるけれど、それでも、これだけは伝えたいんだっていう、物語りたいことがはっきりしているので、読後の満足感は高い。
絵も、はっきりいって、きれいとか、こなれているとかとは言いがたいけど、ストーリーを追う方に心を持って行かれるので、細かいことは気にならないかな。
エロやいちゃいちゃを求める方にはお勧めしないけど、こういう作品、私は結構好き。
トマトが食べたくなる(*´ω`*)
こちらのレビューを拝見して読んでみたいと思って購入。
これはBLなんだけど、それより家族の話って感じがした。
みんなが笑っていられますように(*´∀`)
メイトで分厚さにびっくりしたけど、厚さを感じさせない内容だった。
むしろもっと高校時代のエピソードあってもいいのよ?って思ったくらいw
あと中曽根家の家族それぞれもうちょっと詳しく知りたい。
舞台は離島のトマト農家。11人の大家族。義母と2人で越してきた主人公の孤独な心と島の人達との交流。大切なものを見つけて、それを守るために自分がどう成長できるか。いい事ばかりじゃないけど人の数だけ暖かみがある物語でした。
表紙のどぎつい赤と大きく描かれたタイトルには雑な印象を受けましたが、中身は素朴で丁寧。白を基調とした扉カラー絵のほうが作品のイメージに合っていて好きでした。2人の笑顔と少しだけ触れている手にぬくもりを感じ、トマトの赤とネクタイの赤とひっそり添えられたタイトルに力強さを感じます。
家族がバラバラになり現在は義母と2人暮らしの主人公・真と、大家族の中で育った星子(せいじ)。
2人の出会いと、少しずつ通う心。離れて揺れる心。恋心に気付いて戸惑い、弱くなったり強くなったり。覚悟と決意。心の動きが丁寧で優しく、押しつけがましくなく自然だけど芯のあるストーリーに慰められ、力づけられました。
離島の風景描写が美しいですし、ゆっくりと惹かれあい、じっくりお互いの将来を考える2人の真摯さが絵柄によく合っています。
約70ページの描き下ろしでは、星子の両親が見せた甘やかさない優しさに心うたれました。
「みんなが笑える選択を」
家族を傷つけないよう、お互いの気持ちを犠牲にしかけた2人。けれど母の望みはそんなことではなくて。家族のために2人が我慢するのではなく、「みんな」の中には真と星子も入っている。狭い島の中で2人が愛し合って生きて行くのは容易ではありませんが、暖かい愛情に包まれて安心できるラストでした。