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表題作ナイトガーデン

藤澤和章、休業中のプロダクトデザイナー、28歳
石蕗柊、植物園のアルバイト、21歳

同時収録作品ブライトガーデン

藤澤和章、プロダクトデザイナー、28歳
石蕗柊、植物園アルバイト、22歳

あらすじ

静かな山の中で祖父と暮らす石蕗柊のもとに、祖父の昔の教え子だという男・藤澤和章が訪ねてくる。このまま一生山を出ずに生きていく、そう思っていた自分はなんて狭い世界しか知らなかったんだろう……生まれてはじめて触れた人の肌の熱さに和章への想いを自覚する柊。だが彼の瞳はいつも柊ではない“誰か"を見ていた……。「ふったらどしゃぶり When it rains, it pours」から一年、消えない傷を抱えた和章の愛と再生の物語。

作品情報

作品名
ナイトガーデン
著者
一穂ミチ 
イラスト
竹美家らら 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA(メディアファクトリー)
レーベル
フルール文庫ブルーライン
シリーズ
ふったらどしゃぶり When it rains, it pours
発売日
ISBN
9784040669052
4.1

(182)

(103)

萌々

(41)

(16)

中立

(14)

趣味じゃない

(8)

レビュー数
24
得点
741
評価数
182
平均
4.1 / 5
神率
56.6%

レビュー投稿数24

棘を抱えて生きる

帯には三浦しをん氏の「一穂さんに、また泣かされた!」の文字が……
読後の感想を一言で言うと、確かにそうとしか言えない。
大好き故にどうしても評価が辛くなってしまう一穂作品なのだが、
ああ! 竹美家さんの挿絵も美しいこの新たな傑作を
どんな言葉で表現すればいいのだろう……?

『ふったらどしゃぶり When it rains, it pours』を読み終わった時に、
「和章をにも幸せを!」と願った人は多かったことだろう。
そんな読者の声に応えるスピンオフ、和章に新たな世界が開ける物語。

               *  *

前作は、雨の音がずっと途切れずに響くようなそんなイメージだったが、
こちらは静かな緑の匂いがするような世界。
それは、雑物を排して無機的な美の世界に生きる和章とは対象的だ。

整と別れ、後悔と罪悪感の中自らを罰するように生きている和章は、
仕事ができず、眠れず、という状況に陥っている。
そんな状況を、自らしでかした事の報いと淡々と受け入れていた彼は
かつての恩師・石蕗の元で書庫の整理を手伝うこととなり、
そこで石蕗の孫でその地の植物園でバイトしている柊と出会う。
まだ若いのに、何か訳があって両親とも離れ祖父と暮らす柊は、
ドイツ人の祖母の血が色濃く出た深緑の目と金茶の髪を持っている。


何もかもが対照的に見えながら
実は共に傷を負っていた臆病な二人が、少しずつ触れあっていく。
その行く手を照らすのは石蕗の叡智だ。
優しく深い彼の眼差しと言葉に支えられるようにして、物語が進む。
そして……

梢を渡る風のそよぎやページをめくる音、鼓動さえも聞こえそうな繊細な言葉が連なり、
決して一言たりと読み飛ばせないような物語が続く。
過去に囚われ閉じて暮していた二人がゆっくりと惹かれ合い
そしてそれぞれの棘を認めてそれが包まれ、心が解き放たれていく様に、
胸が締め付けられ、知らず涙が流れる。


途中整が登場するのだが、決してもう会う事のない幼馴染み二人の絆の強さ!
想いを残す、とか新たな恋人への不実とか、そんな次元ではない
修羅場や痛みや葛藤を越えて辿り着いた、人と人の深くて誠実な繋がりにも
感動を覚えずにはいられない。
それぞれの人生を変えた、それぞれの事件。
人にとっての「心の真実」や「罪」という真摯なテーマが
容赦なく抉り出されながら、
そんな困難な思いを抱えながら生きていく人々への暖かな視線に
心が光で満ちていくような感覚を覚える。


書き下ろしの『ブライトガーデン』は、それから暫く経った二人が
本当に光の中に歩み出す物語。
仕事を再開した和章が作ったグラスのシーンでは、再び泣いてしまった。
後書きのSSも、植物の神秘に準えて人が生の根源に触れる美しい話。


ところで、一穂先生が描く最近のHシーンには、
力作だが乗り切れない思いがあったのだが、これはすごく良かった!
不器用な和章の中に抑えて秘めた熱が溢れ出す様も、
柊の若くてまっすぐで無垢な様も、本当に愛おしい。



※新島ガラス
 http://www.niijima.com/kankou/niijima/active/2014-0313-1003-90.html

※『In The Garden』
 web連載中、最終回を前にした2014.5.13の作者のブログに
 http://ichimichi.exblog.jp
 石蕗邸からの帰り道の整の話が載っている。
 これがまたいいので、未読の方は是非お読み下さい。

 『ミッドナイトガーデン』
 2014.7.15の同じくブログに、おまけ短編も載っています♪


27

Krovopizza

snowblackさま、こんばんは!
コメントありがとうございます。

そういえば、私も初期の作品では
そこまで気になりませんでした>ラブシーン
『林檎』くらいさらっとした描写の方が
読みやすいし萌えるのにな~と時々惜しく思います。

和章はフェチ傾向強そうですよね!
ブログSSでは、匂いフェチにも思えて…。
何にせよ柊限定なのでしょうね♪

あ、レビューでは触れませんでしたが
整の登場もすごく良かったですね!
あの一気飲みシーン、
整の優しさが感じられてとても好きです。

yoshiaki

snowblackさま

コメントありがとうございます☆彡 さっそく読んでしまいました(*'ω'*)
とても素敵なご本なので、書きたいことがたくさん湧いてきますね。
私はヤンデレ好きなもので、ついあらぬ期待をしてしまったのですが、蓋を開けてみたらこれ以上なく一穂先生らしいやり方で和章を蘇らせた作品!
「一穂さんに、また泣かされた!」(帯)というよりも「一穂さんに、また一本とられた!」という感じです。
しかし手練れであるらしい和章が一体どこで勉強したのか、それだけでも教えていただきたかった・・・案外、実践じゃなくてゲイビかもしれませんけどねw

snowblack

yoshiakiさま、こんばんは、
コメントをありがとうございました。

和章が気になっていらしたとのこと。
これは彼の再生の物語ですが、読むと改めて「ふったら〜」では脇役だった彼が
何を思い何を考えていたかが見えて来て、前作への思いも深まります。
お勧めです。



yoshiaki

snowblackさま

これ和章の話だったんですね。
私も「ふったらどしゃぶり」では和章が気になってしまった一人です。(病みBL好きの私としては一番惹きつけられるキャラでして)
和章と整の息苦しい過去の関係を読んでみたい・・・と思っていたんですが、こちらは和章のその後のお話ですか。
でも、あの彼がどんなプロセスを経て新たな一歩を踏み出せたのか・・・
面白そう。これは読みたいです。

スピンオフの枠には収まらないくらい、とても大好きな作品。

一穂さんの作品の中では「雪よ林檎の~」や「ふったら~」がとても有名ですよね。自身も「ふったらどしゃぶり」を読んで一穂さんの虜になりました。でもこの作品を読むまでにはしばらく時間がかかりました。
というのも、「ふったら~」の和章(攻)があまり好きな人物像じゃなかったから。

でも、少し時間を置いてから読んだからでしょうか。
「ふったら~」よりも、こちらの作品のほうがハマってしまい、何度も何度も読み返すほど好きな作品になりました!
ストーリーの視点が変わると人物の印象までがこうも変わるもんかと・・・!改めて一穂さんてすごい作家さんだなぁと思いました。

前作では語られなかった和章の抱える闇や罪悪、そして和章は本当はとても情熱的で優しい面があるんだなと驚きました。自分の中で勝手に結論付けたり、好き=執着型なのは変わらないけれど(笑)
前作も今作もずっと過去に囚われながら生きてきたけれど、柊と出会えたことで、過去の痛みとともに生きていこうと思えた和章に読んでいて涙がでました。
受けの柊もとってもいい子。実は柊も過去に受けた傷をずっと抱えて生きてきたけれど、和章と出会えたことで人と愛しあうことや新しい世界に飛び出す覚悟ができた。
出会うべくして出会った2人なんだなあと思いました。

8

前作以上に好き

一穂先生の作品とは相性が悪いのですが、フルール文庫の作品だと何故か相性が良いので不思議です。
同じシリーズだからかな。
前作は、奇を衒った内容ではないのに今までに読んだ事のないBLだと感じ衝撃を受けたのですが、今作はジワジワと染み渡る感覚でした。
柊の魅力によるものでしょうか、前作以上に今作が好きです。
とにかく柊に魅了されました。森そのものみたいな子ですね。マイナスイオンを放っていそうです。
整への負い目や後悔で頑なだった和章が、自分で自分を幸せに出来るようになるのも良かったです。
それから、柊の祖父がとても素敵でした。

今作を読んで、花の咲かない季節の木々にも注目したくなりました。
ヒイラギモクセイや抗火石のガラスも検索してみました。
「ナイトガーデンシリーズ」は、整が見たら何をイメージして作ったのかバレてしまいそうですね(笑)

竹美家らら先生のイラストもピッタリで、相乗効果で素敵な作品でした。

7

整と交わした約束のゆくえ

「俺を支えてくれた力で、ちゃんと自分を幸せにしてほしい」
整が和章のために残した約束のゆくえはー。

藤澤和章は変な人だ。(変=普通と違っているさま)
手先が器用で、小学校の頃作った貯金箱で総理大臣賞をもらい、
プロダクトデザインの仕事は顧客の心を掴み成功をおさめている。
けれど本人は自分が欲しいもの、使いたいものを気ままにつくってきただけでそれに一定の需要があっただけだという。
テレビがきらい。ビニール傘・煙草・生成りか白以外のタオルやリネン・
無地じゃない洋服(ワンポイントも駄目)・写真や絵入りのカレンダー・
携帯ストラップ全般・隙間収納用品・突っ張り棒・フェイスブックがきらい。
あやふやや曖昧、社交辞令がきらい。他人に無関心だが、まじめで融通が利かない。潔癖で頑なな自我を持ち、低体温で平坦・・・。(ふったら&本作参照)

そして、ずーーーーーっと半井整が好きだった。
和章は自分が嫌いなので、好きなものは自分よりも大事。
整をイメージして製品を作っていたので、別れて以来制作活動は停止。
整を傷つけた自分自身を許せないし、許したくない。

しかし石蕗柊と出会って和章は変化していく。

石蕗柊は可愛い。
金茶の髪と緑の瞳。基本的にポジティブで素直。心優しい。
祖父と植物が大事。
頭で考えるより、身体感覚を尊重する野性的な面をもつ。
無防備で、世間知らずな青すぎる潔癖を内包している。
和章のにおいに反応したり、嘘を見抜いたり、
信頼した人には一切警戒せず、まっすぐに信じる強さがある。

石蕗次郎も藤澤和章も柊に好意的な視点なので、その可愛さが尋常じゃない。
好きになりたくないと思っていても抗えなかったのは無理もないと思う。
(恋に落ちた和章の甘さは予想を上回る糖度、柊の羞恥と素直さに悶絶)

約束は守られ、整には一顕がいて、和章には柊がいる。
裏切りと別れによる悲しみ、許しと出会いの喜びが詰まった一冊。

7

スピンオフありがとうございます!

前作からフルールで楽しみにしていた作品です。
ふったらどしゃぶりも好きですが私はナイトガーデンの方がもっと好きです。
柊と祖父との繊細で暖かい関係が大好きだったので、突然の死にリアルにショックを受けてしまいました。
WEBで読んでショックを受け、文庫化で読んでもやっぱりショックを受けてしまいました。

作品を通じて厳かで透明な空気に心があらわれるような気持ちになります。
竹美家さんのイラストもとても素敵です。

4

この作品が収納されている本棚

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