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表題作微睡の月の皇子

夜刀神, 葦原中つ国の国つ神のひとりで蛇神 
月夜見尊, 高天原を放逐された月を司る神

その他の収録作品

  • 月の欠片
  • なかがき
  • 因幡の黒兎

あらすじ

神々の住む穏やかな気候の高天原は、太陽を司る女神・大日霊尊が治めている。
その弟である月を司る神・月夜見尊は、心優しい性格からある罪を犯したため、高天原を追われることになってしまう。
下界である神や人間の混在する世界・葦原中つ国へと降り立った月夜見の噂はその周辺国の荒ぶる神々の間に伝わり、月夜見は追われ逃げるが、
ついに武力に長けた神・夜刀に見つかってしまう。
他の蛮神から守るという名目で夜刀に連れてこられた月夜見だったが、
強引に躰を開かれ半陰陽だという秘密を知られてしまう。
はじめは悄然としていた月夜見だったが、
しだいに荒々しい夜刀の中にある優しさに気づき惹かれはじめていき…。

作品情報

作品名
微睡の月の皇子
著者
かわい有美子 
イラスト
カゼキショウ 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
発売日
ISBN
9784344832022
3.7

(28)

(8)

萌々

(11)

(5)

中立

(2)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
3
得点
101
評価数
28
平均
3.7 / 5
神率
28.6%

レビュー投稿数3

日本神話ファンタジー

2014年発売の本作。
発売当時わたしはこの作品のキモの部分の設定があまり好みでなく、ずっと寝かせていました。
しかしここ数年オメガバースも妊娠出産もBL界に根付き、違和感なく読めるようになりました。
もしかしたら当時はわたしのように受け入れがたい気持ちで避けた方もおられるかもしれませんが、たんたんと書かれるかわいさんの文章がお好きな方はチャレンジされても良いかもしれません。
この4年で色々な作品に触れ慣れたというか、そういう感じになられているようならば。

あとがきにもありますが、なんちゃって日本神話です。
受けは、高天原から下界へ追放された月夜見尊。
攻めは葦原中つ国の荒ぶる国つ神のひとり、夜刀。
そしてサブキャラとして因幡の白兎、因幡彦。

視点はかわい作品でおなじみの、受け攻め交互の三人称。
月夜見は高天原の他の神々よりは他者への慈しみや人間のような感情を持ち合わせてはいるものの、それでも下界では物知らずなおぼこで感情の起伏も平坦。
下界へ因幡彦とともに堕とされ夜刀に騙される形で当初囲われますが、率直でバイタリティに溢れた夜刀に感化され、人形から血肉を持った者へと変化したという感じでしょうか。
最初こそ騙し討ちのような形でことに及んだ夜刀も、自分の命をかけてまで月夜見を守る様は頼もしくそして雄めいていました。

BLでファンタジーというと異世界トリップ物や洋物が多く、ここまでの時代の和物は初読みでした。
もう少しこういう物も増えると、ファンタジーも飽きないのになと感じます。

5

ヤンキーと箱入り皇子

 古代日本神話をベースにしたかわいさんのファンタジー。受け攻めともに神様、でも実は結構身分差のある下剋上カップルだったりします。
 
 受けのツクヨミは、月をつかさどる神。姉が太陽神アマテラス、弟は戦神スサノオノミコトで、天上界でもスリートップの貴いお血筋。ただ性格は「鋼鉄の処女」アマテラスや、暴れん坊のスサノオに比べやさしくて控え目。そのやさしさゆえに、天上界の禁を破って、下界に放逐される。

 お供は忠実だけど非力なイナバヒコ(人間の子どもの姿ですが、正体はちびうさちゃんです)のみ。混沌の大地をさまよううち、その尋常ならぬ美貌はたちまち荒らぶる国つ神たちの格好の標的となってしまう。

 「俺のものになるなら、お前を守ってやる」ツクヨミを助けたのは荒らぶる神の中でもひときわ強大な武力をもつ夜刀。かわいさんいわく「喧嘩上等のヤンキー」。神様なのにヤンキー呼ばわりって、あんまりな気もしますが、熱い地元愛(地酒と温泉が自慢)とか、一度懐に入れた相手にはとことん情が深いとことか、確かにヤンキッシュな薫りが芬々。彼の辞書に「待て」の文字などないらしく、ツクヨミを自分の館につれこむなり襲いかかるがっつきぶり。でも事後ふさぎこむツクヨミにいたたまれず、せっせと花やら美味しい菓子やら、高価な装飾品やら貢ぎまくっちゃう。まるでオオカミがつがいと思い定めた相手に餌をプレゼントするように(夜刀の正体はオオカミよりもある意味もっとデンジャラスな生き物ですが・・・)

 ありのままの夜刀の姿がいちばんよくわかるのは、実は本編ではなく、ちびうさのつぶやく後日談「因幡の黒兎」の方です。いつも思うのですが、かわい作品の魅力は、第三者視点のときもっともよく表れるようです(おなじみ警察独身寮の皆さまの、やくたいもない井戸端会議とか)。
 大恋愛の真っただ中にいる2人の目には、一種分厚いフィルターがかかってて、どんなに見つめあっていても意外と互いの真の姿は見えてなかったりします。そこへいくと、一歩引いたところから冷静に観察している第三者の目というのは、ときに残酷なほど、掛け値なしの真の姿を暴きだしてくれます。まあこのうさちゃんは、ツクヨミ命で少々不埒な願望も抱いてるので、夜刀にはもとより容赦ないですけどね。

 イラストはカゼキショウさん。初めましての絵師さんです。表紙の淡い色調はとても美麗だったのですが、全体にキャラが稚く、柔弱な雰囲気なので、ツクヨミやうさちゃんはともかく、夜刀の破天荒でワイルドなイメージには少々物足りなかったかな。あらためて「銀の雫ー」の葛西リカコさんは神だったと思いました。

 

 

5

ご都合主義に収束。

月夜見尊(つくよみのみこと)は民に対する優しさから罪を犯し、
高天原を放逐される。
お供は、人の形をとったうさぎの因幡彦だけ。
雲の階から降り立った葦原中つ国は、未だ混沌の地。
国つ神達が争い荒廃した世界の中で、
月夜見は夜刀という男に出会い、彼の屋敷に住むことに……


という日本神話をベースにした物語、
月夜見尊はその中でも、凄い姉弟に挟まれてミステリアスな存在だし
筆者はかわいさんとなれば、期待が大きかったのだが
なんとものれないストーリーだった。

もともと古事記の世界の神様達は好き勝手やっているものだが、
その壮大さや荘厳さやは全く感じられず、
薄っぺらでスケールの小さな不良?みたいな印象。

なんだかあれよあれよという間に、粗野だった攻めと
月夜見様はなしくずしにラブラブになっちゃって、
ええ?そんな……いいんですか……?っていう気分。

スサノオとの対決というドラマチックなシーンも
簡単に終了し、オマケは実は月夜見様に邪な野望を抱いている
お供の因幡彦の黒ウサギバージョンの呟き。
それはそれで面白いんですが、全体のバランス的にはマイナス。
月夜見の半陰陽という設定も、必要だったんだろうか……


表紙のイラストはとても雰囲気があって素敵でしたが
中のイラストは子どもっぽすぎて、これまたのれず。

と、どこをとっても中途半端で残念な一冊でした。
かわいさんということもあって、評価は辛口にさせて頂きます。

2

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