―― 帰る故郷はない。でもペアがいる。

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表題作彩雲の城

谷藤十郎 「彗星」の操縦員
緒方伊魚 「彗星」の偵察員

その他の収録作品

  • Cloud9~積雲と天国

あらすじ

太平洋戦争中期。
婚約者に逃げられた谷藤十郎は、外聞から逃れるように志願したラバウル基地で高速爆撃機・彗星と共に着任した優秀で美しい男・緒方伊魚とペアになる。
伊魚は他人を避け、ペアである藤十郎とも必要最低限しか話さない。
しかし、冷たいようで実は生真面目で優しい男を、藤十郎は嫌いになれなかった。
そんななか、不調続きの彗星は偵察機の転用を命じられるが――。

「碧のかたみ」「天球儀の海」に続くシリーズ第3弾。

作品情報

作品名
彩雲の城
著者
尾上与一 
イラスト
 
媒体
小説
出版社
蒼竜社
レーベル
Holly Novels
シリーズ
天球儀の海
発売日
ISBN
9784883864355
4.4

(128)

(93)

萌々

(19)

(6)

中立

(4)

趣味じゃない

(6)

レビュー数
14
得点
563
評価数
128
平均
4.4 / 5
神率
72.7%

レビュー投稿数14

主人公たちの魅力にはまってしまうのです

伊魚は今までにない「静」の子。
養子として、転々と家庭を渡り歩き、
養子先の家族に優しくされながらも、愛情に飢えている。
ようやく得たと思った、愛情は、裏切られ戦地に送られた。
藤十郎は、逆に「社交的」。
どうして 伊魚が 孤立するかがわからない。

さんざん藤十郎を 振り回すが、
振り回しても自分についてきてくれる
藤十郎を 一緒に家に住みたい「家族」
と認定。
此れも呪いの仏像 効果かな

やっぱり、戦場という生死を分ける危機感の中で
同じ機で運命を共にする。吊り橋効果もあるのかもしれない

どのシリーズも、読み終わった後の余韻がおおきくて
この後 彼らはどうなるのだろうと、
しばらく ボー としてしまう。

私としては
このシリーズの中で 一番強烈な印象が残っているのは、
「天球儀の海」です。
「手首の切断」は残酷というより、すごく悲しくて。
このあと、続編をからめた「碧のかたみ」つづいて、HPでSSが掲載されて、
今回の「彩雲の城」。

 私は戦争もの、特に実際にあった戦争を舞台にしているものって、
苦手です。
でも、なぜか 尾上与一氏の このシリーズは、
つい読みこんでしまいます。
それぞれの、登場人物の戦争に到達するまでの生き様や、
戦場での生死をかけた戦い。
戦争が終わっても、みんなすぐには帰ってこれない事情。
登場人物が増えるたびに、興味が尽きません。

この登場人物たちの、その後や 戦後の日本に帰るまでのストーリー、
続きが出れば 絶対読みます。
できれば HPに無掲載された「捕虜編」のストーリー、
製本されるとうれしいなーなんて思っています。

8

表紙が印象的なシリーズ

購入したものの、ゆっくり時間が出来たときに大事に読みたいと思い寝かせていましたが、我慢できずにあっというまに読了。
【碧のかたみ】に続き、今回もラバウルが舞台です。
ちょこっと月光ペアも出てきたのも嬉しかった。

今回は内地で婚約者に逃げられ、失意のうちに逃げるようにラバウルへとやってきた藤十郎と、同じく内地で想い人に捨てられ、左遷のような形で厄介払いされてきた伊魚の話です。
同じような境遇でありながら性格は真逆、明るく誰とでも打ち解けられる藤十郎に対し、他人を全て拒絶する伊魚。
でもそんな伊魚も、本当は寂しくて人の愛情に飢えてる可愛い子でした。

名前の通り、体温低めのお魚のような伊魚が、逃げても逃げても追いかけてくる藤十郎に捕まえられたときには、心の底からほっとしました。
ペアっていいなぁ……と前作でも思ったものですが、今回は擦り傷から切り傷まで、深く浅く傷ついた伊魚の心の傷を、大切に大切にひとつずつ丁寧に軟膏を塗って埋めていくような、そんな藤十郎の愛し方に胸が温かくなりました。
そして一見冷たく思える伊魚も、藤十郎の気持ちに応えようと、不器用な優しさを見せるのがいじらしく、健気で何ともいえず可愛かったです。

ふたりが搭乗する彗星は、水に溶ける砂糖菓子のように海の底深くに沈んでしまいましたが、いつ死んでもいいと思っていた伊魚が、最後まで生きようと足掻いた姿に涙します。
靖国での待ち合わせは、涙で紙面が霞んで先に進めませんでした。
そして作中、藤十郎は一体何度「伊魚」とその名を呼んだのか、思わず数えたくなるような愛しい名前。
伊魚も一体何度、藤十郎とその名を呼ぶために練習したのでしょう。
かけがえのない存在であるふたりの行く末を、読者として一緒に見守ることが出来て本当に良かった!
それにしても伊魚の辞世の句、あいかわらず酷い(笑)
藤十郎じゃないけど、どっかで見たような句になってて、真面目なシーンなのに笑いが出そうになりました。

表紙がまさにタイトルの通りで、美しさに溜息がでます。
抜けるような青は作中の空気やにおいを感じさせ、毎回次はどんな青色かと楽しみになってます。

5

「彩雲の中に住もう」

尾上先生の戦争シリーズ第三弾。「碧のかたみ」に次ぎ、南国の最前線ラバウルで戦う航空隊のペア二人の話です。
今回も巧みで美しい文体と愛しいペアのやりとりに魅せられました。
「彩雲の中に住もう」「待ち合わせ場所は靖国の右手の柱」…生きて果たす約束ではなく死後の待ち合わせ場所を決めて、そこで会う約束を交わす。そのやるせなさと二人の確固たる恋心に胸が痺れました。
儚い彗星、未来を信じられないでいる伊魚、そんな機体と男を理解して寄り添う藤十郎。
単純な起承転結ではなく空の上と下でのエピソードが二人の関係性と共に変化しながら続く展開に引き込まれました。モールス信号、呪いの仏像に下手な俳句、非常の事態の中で垣間見える人間くささが愛しい。
拠り所がなく家に焦がれていた伊魚。坂道の途中、二人の帰る「家」での生活は彩雲のように柔らかく美しい日々だろう。

5

二人だけの彩雲の城

冒頭の伊魚の内心の言葉から、なんとなく肉体関係かな?とは思っていたものの、明かされるまでに時間がかかったために過呼吸の原因はレイプなのかな?いやでも冒頭と矛盾するよな??と考えながら読めて、楽しかったです。麗人と言われたくてトイレを我慢したという伊魚がいじましくもあり面白くもあり…
帰るところをもたなかった伊魚と藤十郎が、帰るところを見つけられて本当によかったです。戦時中の、ペアという関係だからこそ、一緒に死ぬ覚悟をするからこそ、出会えた二人だと思います。きっと平時であれば、伊魚が愛人になり傷つくこともなく、藤十郎と出会うことも、結ばれることはなかったのでしょう。
何度ももうダメかと思いましたが、一緒に住んでいて、一緒に生きていてくれて、本当に本当に安心しました。先にローレライを読んでいたので、この二人も……と怖々読みました。
無人島や助けられた先での生活では、戦争が終わったことを知らずにいた軍人の話を思い出してしまいました。
積雲と天国のあとの空の写真が、二人の見た美しい彩雲のように色付いて見えて、思わず号泣したほどです。
美しい二人だけの彩雲の城で、幸せに暮らしていること、本当に嬉しく思いました。

5

めでたしめでたし

どうなることやらと読み進めていたのですが
シリーズ中で一番好きな攻でした。
惚れた相手のためにめいっぱいな攻が好き。
愛を糧にする感じがなんともいえず。
故に、この受にはあってたのかなと思うのです。
「全部やると言った」と激怒するシーンが好き。
思わず涙ぼろぼろ出てしまいました(ノД`)・゜・。

さて、メインの二人は操縦士×偵察員。
最初から願った相手ではなかった。
けれど一生この相手と添い遂げようと誓った。
そんな背景ストーリーもそうなんですが
雰囲気というか、キャラクターがいい作品だったかなとおもうのです。
ちょいちょい登場する「呪いの人形」が笑いを誘い
ツンケンして見えて、モールスで名前を呼ぶ練習をしてみたり
一緒に住みたいなんてかわいいこといちゃってみたり。
攻が好きだと冒頭で言いましたが、受もこれまたかわいいなと
思うのです。
強くないからこそ支えあう二人の姿が微笑ましい。

出雲の地での待ち合わせはもう少し先になりそうですが
一緒にいられて良かった。
心からそう思えるお話でした。ふいー癒された

4

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