貴方の子供でいる。それが、僕の恋の伝え方だと思った――。

したたる恋の足跡

shitataru koi no ashiato

したたる恋の足跡
  • NOT BL
  • E-BOOK ONLY
  • R18
  • 神6
  • 萌×25
  • 萌5
  • 中立1
  • しゅみじゃない2

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レビュー数
5
得点
66
評価数
19件
平均
3.6 / 5
神率
31.6%
著者
 
イラスト
 
媒体
小説
出版社
フロンティアワークス
シリーズ
ダリア文庫(小説・フロンティアワークス)
発売日
価格
¥620(税抜)  ¥670(税込)
ISBN
9784861347481

あらすじ

貴方に拾われた日から、僕の人生の「おまけ」は始まった――。
身体を売るか、子供のまま死ぬか。そんな世界で生まれた干空は、ある時、ライターとして各国をめぐる澄見に拾われる。その大きな温かい手に甘えることを覚えていく干空は、感謝を身体で返そうとするが、その度に澄見は少し困って笑うのだった。やがて千空の想いは恋へと変わるが、澄見の満たされることのない渇いた、しかし貪欲な心に初めて触れた時、あふれる想いを閉じ込める決意をする――。

表題作したたる恋の足跡

澄見孝太郎,育ての親でライター,27歳
澄見千空,高校生,17歳

その他の収録作品

  • あとがき

評価・レビューする

レビュー投稿数5

静かな作品

随分前に読んでいて、ただ好き過ぎて、なかなか感想を書くことができませんでした。
読み始めた時「あれ?受け一人称?」なんて思い、苦手パターンだけどなぁとぐずったものですが、本編は受け視点の三人称。
ちょっとわかりにくいのですが、受けの回想になると受け一人称になっているようです。
ただその回想はかなりの回数訪れるので、そこは一人称か三人称の違いだけでなく、ちょこっとでも章タイトルか何かでわかりやすくして貰えると良かったかなあ。
ただもーう、こういう年の差大好き!です。
血圧上がりますー。

**********************
受けは幼い頃、母親に売られる寸前だった千空。
片親が日本人でありながら、どこか日本離れした美しさで高校でも浮いている17歳。
現在は養父の澄見と共に日本暮らし。

攻めの澄見は千空を養子として引き取り、衣食住を与えたノンフィクション作家。
世界中を移動する彼は以前こそ千空を伴っていましたが、現在は千空を日本へ残し単身で何ヶ月も留守にすることも。
**********************

千空が澄見と出会った街では、子供が続き体を売るのは当たり前。
そんな境遇に悲観することも逃避したいとも思わず、それはただの日常で当たり前のことであると捉えていた千空の前に現れた澄見。
その歪んだ日常から掬い上げてくれた澄見へ、依存か澄見の言葉を借りるならば刷り込みか、千空はひたむきに彼だけを求め、求められることを望むようになりました。

『自分は恵まれていた』とことあるごとに自分に言い聞かせる千空ですが、それは母親に早々に売られなかったことや、客をとらされていなかったことに対してのことで、そう思わないとあまりに自身が惨めで生きていけなかったからでしょう。
そして澄見はそれを見抜いて、千空へ自分を大事にするのだとたびたび言い聞かせるのだろうと思います。
ただそんな澄見こそが千空の想いや体温から逃げていていわゆるずるい大人なのですが、それには彼なりの信念や背負っている過去があってのことで、それが語られる中盤はひじょうに苦しい。
しかもそこが劇的なものとして書かれるのではなく、澄見の身に起きたことを熱量の低い松田というキャラクターに淡々と語らせるのが良かったですね。

澄見の過去が明らかになるまでは、千空のただただ澄見を追い求める気持ちの必死さに重点が置かれています。
それは千空視点だからではあるのですが、それが『なぜ澄見は大事なものを作らないのか』という疑問の答えを千空が知ったことで変化するわけです。
その変化は澄見の望むような自分(劣情を含んだ愛情を持たない)であろうとするというもので、千空の考えははたから見ると破綻していて、澄見がつねに言って聞かせた自分を大事にしろという言葉と逆行しています。
が澄見自体が、千空の中に自身の幸福を見出してしまった時から破綻していたのですから、仕方ないよ君たち幸せにおなりと思った次第です(苦笑

これってばちゃんと最後二人で一緒にいられるんだよねえと初めて読んだ当時ドギマギしてしまい、先にラストを確認したヘタレ読者です。
だってなんというか、ハードルがひじょうに高く設定されているもので。
例えば普通同居していたら見て見ぬ振りするのって難しい。
でも澄見の仕事は定住の必要がなく、かえって国外での方が良いわけで…二人の間に物理的距離を置くのが簡単なんですよ。
そして澄見のセリフがとても少なくて(もっと聞きたかった…澄見好き)、千空を大事にしてはいるけれどそれがどういう種類の愛情なのか計りかねるんですね。
ただわたしは、一から十まで説明されている方が好きというタイプの読者ではないのでこのくらいで良いのかも…
ちょっとしたことから裏読みしたり想像するのが好きなので。
ただ澄見の言葉が本当に少ないので、できたら澄見視点のSSが入っていたら大満足でありました。

そして最後になりますが、この作品に登場する女性や女性の心を持つ人たちは皆優しくて強くて、それに涙が出ました。
わたしは女なので、やはり気分が悪くなる同性はフィクションでも求めていないので。
あ、それから受けが別の人(悪い人ではなく合意です)と寝るというシーンがあります。
わたしは1ミリも気にならないのですが、そういうものが地雷の方もおられると思いますので記しておきます。

0

切ないけど…。(辛口かもです。)

美しい風景描写や素敵なセリフで覆われている作風で、文章が好きな作家さんです。だけど、エロになると途端にAV色が強くなよーな気がするのはなぜだろう…。なんかものすごい落差を感じて冷めてしまうんですよね。最中の受けの喘ぎ声とかセリフでいつも萎えてしまう。。エロシーンの好みの問題なのでしょうけれど。

千空の出自が特殊なこと。彼の保護者となり、千空が十七歳になるまで付かず離れず育ててきた澄見の壮絶な過去。運命的に出会った二人であり、義理の親子としては少々逸脱した特別な関係だというのは、彼らのノマド的生活から窺い知ることができます。澄見と千空がワールドワイドな旅で巡ってきた道程や居場所は、二人が築きあげてきた相手に対する思いの軌跡そのもの。少年から青年へと移ろいゆく千空が、澄見と旅した同じ道を一人で辿り直した後、二人に訪れる変化とは。

先のレビュアーさま方による、とっても素敵なレビューにため息が出ました。うんうん、そうなの、本当に繊細で切ない物語なのです。…が、ちょと待てい!といいところで水を差すのが、冒頭でボヤいたBLの部分。二人のラブのカタチにはあまり入り込めませんでした。

続き
澄見のミステリアスなキャラ付けのためにか、彼の人となりを周囲の人物に語らせるだけで澄見自身の本心は伏せられています。彼の行動で察せよ!というところなのでしょうが、セックスが上手いっていう情報とかいるのか?とか、色んな土地にセフレがいるっていう演出が、わたしには萌えに繋がりませんでした。。なんだい?アムール推しなのかい?千空は千空で、ただ澄見とセックスしたいって言ってるだけってしか記憶に残らず、彼が見せる葛藤とか成長とか大事な部分が全部霞んでしまう。千空の成育背景がエクスキューズになるのもわかるけど、保護者として澄見という男はどうかと思うし、愛を伝える万能な方法がセックスだと思い込んでいるまだまだ未成熟な千空に、フワッとした愛情は与えても、学校以外で継続的にきちんと教育する人間が不在だったのも気になりました。だからなおのこと、千空は澄見に執着したのでしょうし、澄見は彼の保護者となったことを悔やむのですが…。

この親子に魅了されている取り巻きがまた、みんな寛容で大人なんですよ。自分達のことは自分達で決めなさいという意味で、二人を気に掛けてはいるけれど、誰も見苦しい干渉はしない。澄見も千空も彼らの存在によって己の本当の気持ちに気づかされ、これまでの親子関係にけじめをつけることになります。千空の同級生、水谷が巻き添えなのが残念だったなぁ。彼がニュートラルな立ち位置だったらもっと見方が変わったと思います。

ハッピーエンドなんだろうなと思えば、先が読めます。ミもフタもないけど、ヤリたがってる二人が焦らし合ってただけじゃ…、と。もし二人が結ばれるんなら、ヤればお話は終わりなんですもの。そこで冷めちゃうと、二人のナルシスティックなぐるぐるに付き合わされているような気がして、途中から読むのが苦痛になってしまいました。繊細な心理描写は大好きなんですが、BLの部分は個人的に合わなかったのです、ごめんなさい。「しゅみじゃない」寄りかもしれません…。

ビリー・バリバリーさんの挿絵が可愛くてとっても良かったです。

0

世界を旅する青年

ビリーバリバリー先生の表紙につられて買ったこの作品。
買ってから間があきましたが、ふと少年ものが読みたくなりました。
ちなみに葵居ゆゆ先生は初読みです。
いや、前に一冊買ったはずなんですが、読んだ覚えがない…。
未読&行方不明☆申し訳ないです!

オーストラリア、スペイン、フランス、アメリカ、イギリス、日本…。
他にも立ち寄った国は数知れず。
血のつながらない二人が、世界を駆け巡るお話です。
ロードムービーが大好きと言う先生の気持ちがひしひし伝わる、素敵なお話でした。
主人公の二人のふわふわした感じの生き方。
その理由、二人それぞれの背景。

面白い、と一言ではくくれないものがあるのですが。
何度も読んでみたい作品でした。
ただし、好きなシーンだけを読み返したくても、探しにくいかな?
時間と場所が行ったり来たりするので。
その行ったり来たりで、一つ一つ何かが解き明かされていくのですよね。

心に残ったのは、幼い千空の家へ向かった時の、赤ん坊の声。
千空みたいな子供が、また一人産まれた事実。
世界を駆け巡るお話として読んでいて。
きっと世界中に続き千空みたいな子供がいるんだろうなぁ、と考えていました。
そう考えた時の、千空が拾われた奇跡。
そして、それは澄見が千空に出逢えた奇跡でもある訳で。

テーマはわりと重たい?
でも、環境や周囲の素敵な人々が沢山登場して。
さらりと流れるように書かれています。
だからとても読みやすい。
千空の気持ちの変化も、変わらず残る芯の部分も。
気持ちよく流れるように染み込んできます。

そして、エロシーンそのものはわりと少ないはずなんですが。
小さなエロエピソードが散りばめられていて、それがめっちゃ色っぽいんですよ。
なんだ?この恐ろしい色気の少年(青年)は!!
ちょっとね、私もクラッ…となりました。
千空の微毒には参りました。

それから、沢山の青が出てきます。
シーンに合った青の色。
それが千空の気持ちに合っていて、とても良かったです。
千空のイメージそのものが青なので。

澄見に関しては、少し掴みにくい人ではあるのですが。
周囲が彼をよく理解しています。
何故、澄見が人と親密な関係を持ちたがらないのか。
ハッキリとした理由を知らなくても、なんとなく感じている。
彼はとても愛されている人だと思いました。

ん~、めちゃくちゃ真面目な感想にならざるをえませんが。
葵居先生の萌えどころてんこ盛りなお話。
興味のある方には読んで頂きたいな。

そういえば、ロードムービー好きな先生。
どんなお話を観たんでしょう?
私もヴィムベンダース、ジムジャームッシュ、テオアンゲロプロスの映画は観ましたが。
先生の好きだった映画、ぜひ観てみたいなぁ。


5

無国籍風ロードムービー

舞台が海外中心で
時間軸も現在と過去を行き来するため
外国のミニシアター系ロードムービーのような
ノスタルジックな雰囲気が漂う作品です。

特定のコミュニティに止まらない二人は
自由であると同時にどこか寂しげで、
そんな二人だから、互いを大切に想い合う姿が
よりひたむきで切ない。


攻めの澄見は海外を飛び回るライター。
受けの千空は母親に人身売買させられそうに
なっていたところを澄見に拾われ
一緒に世界を回ってきたという設定。

やがて千空は高校生になり二人は日本へ帰国。
澄見に想いを寄せる千空は
幾度となく澄見に抱いてくれと迫るが
誰とも恋愛する気のない澄見は応えてくれず…。

この澄見のトラウマが物語の核で
後半それを知った千空が
愛する人のため自ら身を引き、
澄見とこれまで訪れた国々を独りで旅して回る
という千空の成長物語でもあります。

求める愛ではなく、
好きな人を苦しめないための愛を選ぶ千空は
とても健気です。
澄見を想いながら旅する彼の成長が、
回想の子供時代の彼の澄見との思い出と
相まって非常に切ない。
続き


哀しい過去を背負う澄見は
千空の優しい保護者であると同時に
狡い大人でもあります。
千空の想いには応えられないが、独占欲もある。
行きずりの男と寝た千空の身体を
後始末するシーンには
そんな彼の複雑な感情が出ていたと思います。

本書で興味深かったのは
澄見が最終的には千空を受け入れるものの
彼のトラウマが完全に癒えたとは言い難い点です。
千空をとても大事そうに抱くけど
自分から求める情熱的な恋愛感情には
まだ達していないように見える。
それだけ澄見のトラウマは根深いけど
成長した千空と再び生きていくことで
少しずつでも変わっていけるかもしれない。
そんな希望が見えるラストです。


萌え、というより、
「人間」がしっかり描かれている、という点で
読み応えある作品でした。
メインの二人だけでなく、
二人が海外で出会う様々な人々の描写も
非常に生き生きとしています。
回想で彼らとの思い出が描かれ、
その後千空が一人で彼らを再訪することで
彼らのそれまでの人生も透けて見えてくる。
そういう点でも、冒頭に述べた映画的な奥行きが
感じられる作品でした。

挿絵のビリー・バリバリーさんは初見でしたが
美しくアンニュイな雰囲気の絵柄が
物語によく合っていたと思います。
10/22発売のビリーさんのコミックにも
興味が湧いてきました♪

10

心情を壮大なスケールで

澄見と訪れた国、そこで知り合った友人達、千空の現在と記憶のフィルムを通じて鮮やかに切なく描かれるロードムービーを彷彿させる物語。
どこか無機質で自由な空気は美しく透明感あって、今度はセンチメンタルな面も顔を出す…様々な感覚を同時に刺激されるような素敵な作品でした。
しかしながら、スケールは大きいし核心を故意に避けまくってるところがあったように思えて、独白的な文体や何となく入り込めないような会話も多く、途中でダレそうになりました。
スケールが大きい分、サブキャラもたくさん出てきます。
サブキャラに関してはきちんと描き込まれているので、どのような環境で澄見と千空が暮らしていたのかは想像できます。

劣悪な環境下におかれた自分を引き取ってくれた澄見をひた向きに想い続ける千空。
触れたことのない感情を身体で返そうとする千空。
無償の愛の脆さと恐ろしさを成熟する前に悟ってしまう千空がすごく切ないです。
幼少期の環境もあるのでしょうけれど、千空は年齢のわりには危うい程にアダルトで艶めいているように感じました。
その大人めいた隙間に、幼さの断片を強く見え隠れさせているので、それが続きより一層そう感じさせるのかもしれません。
何かあればすぐに壊れてしまうような繊細さと傲慢さが作中にしっとり、そして力強く描かれてました。
澄見を追いかける無謀さ、幼さ、何もかもが、全身で恋を物語っているんです。
千空は、デリケートな部分こそ見せませんが、心の奥底ではいつか澄見に捨てられるんじゃないかと怯えているところがあって見ていて悲しくなってきます。
澄見を追いかけて自らも旅にでるのですが、訪れている場所を過去と重ね合わせてみれば澄見に対する千空の気持ちは募っていくばかりでして。
中間辺りで澄見の過去にスポットがあたります。
これがまた重い過去で、千空から逃れようとする澄見の気持ちが見えたような気がしました。
澄見と親子という関係じゃなくて恋人になりたいと願う千空。
どんなに追いかけても捕まらない澄見の広い背中。
澄見が誰とも特別な関係にならない、同じ場所に決して留まらない理由を掴んだ千空は結果として失恋を味わうのですが、その失恋が一般的なそれよりももっと深いどうにもならないことの意味を実感するんです。
それが千空を大人へと成長させたように思えました。
澄見といろいろな国を巡っても、千空の中には澄見と自分の世界しかなかったんじゃないのかな。
そうして、千空は澄見と行ったところをもう一度巡る為に一人旅立つんです。
あんなにも恋焦がれていた澄見を父と呼びながら、澄見の残したもの、軌跡を自分が残していく…千空なりのナチュラルな精一杯のお返し、それがすごく切なくて綺麗で思わず涙が零れそうになりました。
だけど、その旅にはもう一つの目的もあるんですね。
この千空の旅こそがタイトルを物語っているんじゃないかと思います。

こちらの作品で一番臆病でずるいのは澄見だったんじゃないかなと感じました。
直接的な説明はありませんが、澄見の過去がやはり大きな足枷になって、自分も同じことをしてしまうんじゃないのか、大切なものほど壊したくなる衝動の荒々しさのようなものが見てとれました。
自ら距離をとった挙句、どこか千空を手放せないでいる。それなのに…。
澄見自身の重たい過去と重ねても、自分の気持ちを抑えることができなかったんでしょうね。
お互いを求めるままシンプルに受け入れることができたということでは、決して無駄な遠回りじゃなかったと思えます。

萌えとはちょっと違う感覚ですが、心に残るストーリーだったので萌×2に。
長々と偏ったレビュー失礼いたしました。

9

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