いたぶること 唯一ゆるされた 愛しかた

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夜はともだち

yoru wa tomodachi

夜晚是最好的朋友

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表題作夜はともだち

真澄龍一
飛田白

あらすじ

ノーマル似非S×真性ドM
「SとM」役以上の繋がりを求めてはいけない――?

顔は可愛いのに無口で無表情でミステリアスな飛田(とびた)くん。
実は飛田くんがゲイでドMだと知った真澄(ますみ)は、
好奇心からサド役を演じることに。
『飛田くんが真澄の名前を呼んだらプレイ終了』という唯一の約束。
それは2人のつながりの終わりも意味していたのだが、
真澄はプレイメイトという限定された関係以上を期待するようになり――。

類い稀なセンスで絶妙なバランスの2人を描く注目の一作。

作品情報

作品名
夜はともだち
著者
井戸ぎほう 
媒体
漫画(コミック)
出版社
ふゅーじょんぷろだくと
レーベル
POEBACKS Baby comic
発売日
ISBN
9784893939715
4.2

(442)

(268)

萌々

(82)

(40)

中立

(24)

趣味じゃない

(28)

レビュー数
61
得点
1812
評価数
442
平均
4.2 / 5
神率
60.6%

レビュー投稿数61

今後も作家買いを決定付けた作品

すっ……ごく良かった!あまりSMモノを進んで読まないので、数こなしてるわけではないのですが、私の知るSMをテーマにしている作品の中ではトップクラスではないかと。
プレイ中心というよりストーリー重視で、読み返せば読み返すほど、感動とか新たな発見が出てきます。
そして表紙も扉絵もぜんぶ素敵!

偶然、飛田くん(受•真性ドM)が前の恋人とモメているのに遭遇した真澄(攻•ノーマル似非S)。そこで飛田くんの性癖を知った真澄は、プレイメイトとしてS役をかってでることに。

この飛田くんは普段は常に無表情で無口で変わり者の宇宙人タイプ。でも縄で身体を縛られた途端スイッチが入り、表情を恍惚とさせ感じやすくなり、敬語で懇願する完全なドMになります。
それが、真澄の名前を呼び、プレイ終了を告げた途端、普段の無表情&無関心に戻るのです。

真澄は、器用で物事のさじ加減が分かる八方美人タイプ。好奇心からサド役になり、飛田くんがどんな風なのが悦ぶのか勉強しながらSの腕前を上げていってます。ネット通りの台詞を言ったり、このセリフはここではダメかとか手探りで飛田くんをいじめていますが、それを十分楽しんでいるあたり、Sとしてのポテンシャルは高かったのではないかと。

そんな割り切った関係で、それを楽しんでいた真澄ですが、ちょくちょく前の恋人と比較したり、付き合うというのを意識したり、非道く抱くのに興奮してハマりそうになったり、そうなるのを怖がったりと心情の変化が訪れます。
しかし、笑いかけたり一緒に水族館に行ったりと、もっとまともな関係を望んだ真澄ですが、飛田くんには届かず、無表情のまま。
それが、いたぶられるためなら興奮した表情で土下座も簡単にする飛田くんに真澄はイラつきます。八つ当たりでした非道い扱いにすら恍惚とする飛田くんに、いよいよ真澄のいたぶり具合が本格化してきます。そんな自分に呆れや恐怖を感じる真澄がなんだか可哀想に見える…。

最終的に監禁生活になるわけですが、いままで何考えてるかわからなかった飛田くんの気持ちがここで吐露されます。
関係を終わらせようと言う飛田くん。痛いことをしているのに悦ばす、無表情でやめてという飛田くんに真澄も悟ったんじゃないでしょうか。
飛田くんはただ単純にいたぶられながらのセックスが好きで、それに理由がいるのかと、真澄に問いかけます。
でも真澄が知りたいのは、飛田くんが真澄を好きだと思ったことがあるのかで…。
この夜、真澄は初めて飛田くんを恋人にするように普通に抱きますが、飛田くんは最後までいけなくて…。
いろいろすれ違ってるふたりが切なくて苦しくなりました。真澄がいじめて、飛田くんが悦ぶという行為が成り立たなくなってしまったら、現段階で気持ちが通じ合ってない以上、関係を続ける意味がないですからね…

しかし次の朝、身を引こうとする真澄に、恋人ができても気が向いたら会いにきて都合のいい犬にしてくれ、俺はそれだけを待ってると言います。
でも真澄は飛田くんを好きになってから、飛田くんといて触るのがこわくて、絶対に交わることのないお互いの気持ちがさみしくて、二度と会わないと決意します。
もーここでせつなさMAX!!!

これで一体どーなんねん!って思ってたら、なんとついに飛田くんから行動を起こします。待ってると言ったのに、真澄がいないのがさみしくて、一目会いたくてと、真澄の前に現れます。やっと気持ちが通じ合ったふたり。セックス以外で涙を流す飛田くんに真澄も私もジィンときました。

最後まで飛田くんから好きだとかいう言葉はなかったけど、星好きな飛田くんの、金星を使っての気持ちの表現に作者さんの巧みさを感じました。
わたしの説明だけ見てたら、飛田くんがかなり勝手なヤローに思えますが、飛田くんはもともと変わり者の宇宙人なので、それが他人を思って涙を流すまでになった変化のほうが感動なのであります。

書き下ろしでの、待ち合わせ場所で真澄のほっぺに飛田くんがキスするお話はすんげー萌えた!
監禁生活で、「普通ってなに」「俺、どうしたらいいの」と言ってたあの飛田くんが、真澄が喜ぶからとした突然の行為。しかも笑顔で!あの飛田くんが!
あの監禁生活、普通のセックス、会えない期間を含め、真澄と過ごした時間で飛田くんにも大きな変化があったんですね。
飛田くんは普通のセックスじゃイケないから、いまもSMプレイはやってるんでしょうか。でもこの書き下ろしには、以前のふたりには全くなかった感情や空気があるから、せつない展開だった本編の読後をほんわかとさせてくれてとてもよかったです。

SMモノなので、暴力シーン(多少流血有り)、首締め、吊るし、オモチャもあるけど、そこまで過激ではないと思います。(私比)夢の中だけどグロシーンっぽいのは出てきますが一瞬ですし、それ以上にストーリー、心理描写に引き込まれる作品なので、SMがNGな方にもオススメしたいです!

タイトル通り、次回作もおおいに期待して待ってます!!

42

夜「は」友達

二人が同じ場面に登場するのは、夜。
二人の関係の転換期のみ、昼間の描写がある。
心理描写がメインのSM。
痛くないとイケない、飛田君。
ノンケノーマル、真澄君。
二人の夜の関係。

読むたびに、解釈が変わるので、あんまり書けることがない…

最後の夜、「あの人と同じキモチだったんじゃないかな。」とそれだけの告白。
ーなんて言ったと思う?「愛してる」って言ったんだよ。ー
飛田君の耳には入らない。独白。

「真澄は目がきらきらしててきれいだね、金星みたいだ」
「また 来て」
「真澄にだからしてほしくないこともあるよ」
「行っても いいかな」
「それだけ 待ってる」
「約束 守れなくてごめん」
「あんなに きれいな金星は 見たことがなかった」
飛田君なりの告白だな、と感じた台詞。
最後まで、直接的な台詞は出てこない。気持ちを伝えるのが下手だし、最初の方は「伝わらなくていい。」ぐらいに思ってそう。「伝わればいいのに…」というのを挟んで、「伝えよう」に変化していったような気がする。
彼は、モノローグもなければ、発話以外の思考がない。ほとんどとかじゃなく、ない。

真澄君は、思考もモノローグもあるから、読者側にはキモチ伝えてるけど、なかなか飛田君に対しては、言葉にしない。
だから、すれ違うんだよ。
怖くて、大切にしたくて、だから、言えない。
言葉って怖いな。

何度読んでもずっと切ない。
切なくて、若くて、苦しい話。
個人的にはすごく好き。

16

読み返して味が出る作品

結末が完全なハッピーエンドなのか読む人によって感じ方が違うと思いますが、
私は前向きな方でとらえました。

最初飛田くんという人が何を考えているのか分からず、攻めの真澄と夜外で待ち合わせした時の背景のように暗くて飛田くんの周りにだけ音が無いイメージでした。
人付き合いの上手な真澄のように愛想笑いは一切せずに、自分が興味を持てないことには人に合わせるフリすらもしない様子は我が儘なようにも自分をしっかりと持っているようにもみえました。

そんな飛田くんのこころが真澄に向いたのは、真澄の目が金星みたいに綺麗だと飛田くんが言った頃からでこれがラストに繋がっています。
真澄に感情が芽生えてからの飛田くんは彼なりの愛情表現をしています。
誕生日プレゼントとして自分の好きな星の本(ぱっと見価値があるとは分からない)を渡して自分が好きなことを真澄にも知ってもらいたいと思うようにもなりました。ただ無表情で口数が少ないから分かりにくいのです。

それでもやっぱり飛田くんは真澄の望むようなSMのない優しい触れ合いではダメで。
真澄を好きになったからこそ、自分のSMプレイに付き合わせたくないと決断した彼のシーンを見て、わたしはやっと飛田くんのキャラクターが分かりました。

最後のシーンでは今まで真澄ばかり行動していたのが、初めて飛田くんの方から感情をあらわにしています。
無口で無表情な彼だったからこそラストが際立ちました。

その後の話では真澄と過ごした過去のことをしっかりと覚えていて、真澄に喜んで欲しいという飛田くんの気持ちも感じられました。

ちょうど今日8月31日は飛田くんの誕生日だなと思いレビューしました。

14

感性の地軸が傾くほどのインパクト

井戸ぎほうさんの作品は線、色、シナリオ、コマの流れ、どれも素晴らしくセンスに溢れていますね。
特にこの作品との出会いは自分の感性の地軸が傾くほどのインパクトがありました。約23.43度ほどグイッといかれました。
その時は心持っていかれすぎて、読んではぼんやりしてまた読んでで丸一日この本を読み返していました。
この感動を表現するにはちょっと自分の語彙力が拙すぎて言葉にならないです。
ぬーんでざららですんっのダーンなアレがキラーンでドワーンジワー、ニッ!でわはああん、はぁ…
なんて残念な私の国語力。

BLというジャンルはその業の深さ故閉鎖的な面があると思うのですが、その中にはBLの範疇を超えて素晴らしい作品も多く存在していて、このジャンルの特性上認知されにくいのが実に残念です。
もし、BLに興味がない、もしくは毛嫌いしていたらこういった本を手に取ることはなかったのかなと思えば、多少の偏見(嗜好丸出しすぎて周囲に言えない)や犠牲(購入、保持、破棄の難易度の高さ)を払っても腐人で良かったと思うのです。

14

きみは美しい明けの明星

表紙は金星を背景に鎖で縛られた飛田くん、
裏表紙には花を手に持ち、口角だけが上がった真澄くん。

SM作品ということで、読む前は気が張っていたのですが
読み進めるうちにどんどん物語に引き込まれていきました。

低体温、ローテンションが通常運転の飛田くんは真正のM嗜好で、
そんな彼に興味津々の同級生・真澄くんがS役を買って出ることで
ふたりの不思議な関係がはじまります。

何かと自分を気にかけてくれる真澄くんに対し
飛田くんは、はじめは戸惑い訝しげな態度を取るけれど
少しずつ、気持ちの変化を表します。
ほくろを褒められて照れたり、真澄くんの瞳を金星に喩えたり、
誕生日に自分の大切な星の本を贈って、笑顔を見せたり...
特にベランダで髪を切るシーンはとても印象的です。
(あと、よく作り笑いをする真澄くんに、そんな必要ないよって
飛田くんは伝えたかったのにうまくいかないシーンも良かったな...)

逆に真澄くんはうまくこなせるSの役割とは裏腹に
気持ちが中々ついていかず、不安になったり悩んだりしています。
真正のMという性癖を理解できない真澄くんは苛立ってしまうけど、
低体温の飛田くんにとって、唯一夢中になれるのが
夜、Mでいるときの自分だから、どうしようも仕方なくて...
でも、真澄くんがS役でいることに疲れたのなら
もうやめようと終わりを提案する飛田くん。
その後『約束』を乞う飛田くんの姿が、とても哀しかった。

そして圧巻のクライマックス。
約束を守れなくてごめんと涙を流す飛田くんが、
さみしくて、会いたくて、と真澄くんに気持ちをぶつけるシーンに
胸が抉られたように熱くなりました。
抱き合いながら金星の話をするラストシーン、
ふたりの涙に、読み手のわたしも一緒に泣いていました。

巻末の『bonus track』も最高でした。
相手の喜ぶことをしてあげたい、という気持ちが
いつもはしてもらう側の飛田くんに芽生え、
それを受け取る真澄くんは照れるというやりとり...とても微笑ましかった。

絵もコマ割りもストーリーの筋も心情も、丁寧に整えられていて
本当に素晴らしい作品だと思います。
わたしにとって、出合えてよかったと心から思える物語でした。


11

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