ボタンを押すと即立ち読みできます!
廃校となり取り壊される事が決まった高校。かつては生徒や先生達がいて賑やかだったのに、今はもう静かにただ取り壊しを待つだけの校舎。がらんどうとなった空間。
だけどみんなが過ごしていた痕は完全に消す事ができず、思い出はそこかしこに満ちていて、どこを切り取っても様々なストーリーに満ちている。
そんな廃校にちなんだ3つのお話がオムニバス形式で描かれています。
表題作【エンドスタートライン】
廃校が決まった高校に通っていた陸上部の早川。3年間練習し続けたグラウンドに愛着を持つ彼は夜になるとこっそりとグラウンドで練習を続けている。そんなある日、金髪の自称「幽霊」と出会います。
金髪幽霊が早川の走る姿に熱い視線を送っていたのには訳があります。
廃校になった学校と同様、かつての思い出を残したままゆくゆくは忘れられていく存在だと思っていた幽霊のような青年が、あえてそれらの思い出を捨てて未来を見据えて新しい居場所へと向かっていきます。そして実在する確かな人間として再び現れて…。
【建築する夕暮れ】
かつて生徒として通っていた校舎を取り壊す建設作業員と、先生のお話。
建設作業員のモノローグで出てくる「放課後の校庭から見上げる夕陽に焼けた準備室」このワンシーンが詩情溢れていてとても好きです。
先生が思ったより老けているうえに、意外と積極的で驚きましたが、大人になった今だからこそ始められる関係というのも素敵だと思います。
【ふたり追いし、かの未来】
廃校から転入してきた生徒と、受け入れ先にいた生徒とのお話。
これはちょっと青春なんだけどガチャガチャ感を感じてしまいお話に入り込めませんでした。
【クロスライン】
廃校を舞台とした先の三つのカプ、三つのお話が一つに重なります。
私はやはり表題作の【エンドスタートライン】のカプが一番好きだなぁ。「だろ?自慢なんだ」と言えるまでどんな紆余曲折あったんだろうか、乗り越えてきたものを思うとじんときます。
それぞれのカップルがそれぞれのテンポで愛を深めていっている様子が描かれていてお見事でした。
【フロム・グリーンキッチン】
こちらは廃校とは全く関係ない別のお話です。
2016年に発売された長編コミック【フロム・グリーンキッチン】の短編がこちら。お惣菜売り場で働くスタッフと、そこのお惣菜が気に入っている常連客とのお話です。
こちらの短編は受け視点で描かれています。その為、この短編版では攻め側の心情が捉えづらいのですが、後の【フロム・グリーンキッチン】は攻め視点で描かれており、攻め側の心情が良く綴られているので気に入った方はそちらも読まれる事をお勧めします。
どちらか片方だけ読むと二人の距離の縮め方に違和感を感じるかもしれませんが、併せて読むとその違和感が消えます。
「ちるちるのランキング圏外だけど、心の琴線に触れた作品を教えてください」
http://www.chil-chil.net/answerList/question_id/4967/#IndexNews
で教えていただいたのが、こちらの作品です。
「失うことは、はじまるということ」この言葉が実にしっくりとくるストーリーでした。
教えてくださり本当にありがとうございました。
作者さん買いです。とてもいいです!
タイトルにもあげましたがミニシアター系の映画館で短編映画を観ているような…そんな感覚に浸りながら読みました。
上田先生の言葉の選び方、ストーリーの流れが素晴らしくこちらの作品を拝見してますますファンになりました。
上田先生の描くご年配の方がまたかっこよくてきゅんきゅんが止まりません。そして何より食卓の風景も大好きです!
作者さん買いで時間を掛けてゆっくり堪能させて頂きました!
やはり今の絵柄から見てしまうとめちゃくちゃ作画進化してる…!と思うのですがそれにしたって昔から表情とか感情の動きを表現するのがお上手で…
言葉の言い回しとかコマ割り構成が巧いのは流石です。
私はキャラもお話の雰囲気も表題作が特に好きですね。廃校の物悲しさが絵柄とも作風ともマッチしていて…
フロムグリーンキッチンもお話の流れ的には王道で好きですがこちらは(次回作でわかりますが)こっちが受けなの!?っていう意外性というか…(個人的には逆のがしっくりくる)まぁお話はとても良かったですが…!
書き下ろしでは各々の主人公達が各々の時間を刻んでいてそれを上手く正にクロスさせて描かれてるのが良かったです。
正直ストーリーで読ませられる上田先生なので過度なラブシーンがなくてもむしろそっちの方がこのお話には合ってたなとつくづく思いました(勿論なくても色っぽく描けるのがすごいんですが!)
4CPのお話が入っていますが、エッチシーンは1CPのみ。
他は攻め受けがどちらなのかもはっきりしません。
でも、雰囲気とまとめ方が素晴らしくて、十分魅力的な本でした。
最初の3作品は、廃校になったある高校にまつわるお話です。
■表題作「エンドスタートライン」
高校3年の夏に学校が廃校になり、別の高校に移った早川(表紙右)。
陸上部の彼は、愛着があったその廃校に夜ひとりで忍び込んでは、
グラウンドで陸上の練習を続けていた。
校舎の窓から、その早川の走る姿をじっと見ている、
金髪でタバコをふかしている男(表紙左)、自称「幽霊」の三咲。
壊われる時を待っているその校舎で、
ふたりは共にくだらない話をし、穏やかな時を過ごす。
でもある日、
三咲が幽霊と名乗ったある秘密を語り出す…
どうして、早川の走る姿に、熱い視線を送っていたのかも。
それと同時に、将来を見据えた別れの決意も……
■「建築する夕暮れ」
廃校の校舎を重機で壊しながら、
昔そこに通っていた学生時代のことを思い出す、吉沢。
そして、いつも窓から見ていた、ずっと年上の教師のことも。
残骸になった校舎の写真を撮る吉沢の隣りに、
ふと現れたのは、その時の密かに想いを寄せていた教師で……
■「ふたり追いし、かの未来」
廃校になった学校から、別の高校に転入した黒宮。
ときどき突拍子もないことを言う、
前の席に座る明るいクラスメイト、木下のことが気になり始めるが、
その木下は黒宮が通っていた高校に好きな女の子がいたと話出し…
描き下ろしでは、この直接の繋がりがない3組の明るいその後が、
うまく絡み合って話が進み、巧い。
それぞれの時間の中で、それぞれのペースで愛が育まれている様子が、
とてもあたたかで、心を満たしてくれました。
上記の3つの作品とは切り離されたお話もひとつ入っています。
■「フロム・グリーンキッチン」
スーパーの総菜売り場でマスクをして働く名切は、
常連客で人懐っこいリーマン高野にいつも声をかけられ、
体調に合わせておすすめ惣菜を選んであげたりしていたが、
ある日、客としてスーパーに来た名切は、高野にばったり会い…
一方だけが初対面と思いこんで仲良くなっていく様子が面白い。
素直な褒め言葉と、美味しそうな食事、そして真っ直ぐな好意に、
とてもあたたかな気持ちにさせられるお話でした。
絵の感じは違うのですが、
少しのレトロさと雰囲気と、明るさのスパイスが素敵で、
草間さん作品が好きな方に好まれそうな1冊だと感じました。
カバー下の漫画まで含めて読み通して満足の溜息を
吐いた後、ふと老婆心ながら思ってしまいました。
デビューの一冊にしては一寸ハードルを上げ過ぎたんじゃ
ないでしょうか?
いや、ここから更に跳んでみたいんです!と言う
意気込み込みならむしろ背中を押しますが。
多分この作者さんがその気になればカバー表の
二人の話だけで全てを押し通す事も出来たでしょう。
でも敢えてそれをしなかったのは、物言わぬ主役の声を
きちんと反映させようと言う心意気の現れなのでしょう。
その上で全ての時間を足並み揃えて再び動かして
いるのは、剛毅な力量かと。