視姦(み)ていてあげますから——ほら、自分で触って?

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表題作鑑賞倶楽部

真崎はるか,オナニー鑑賞クラブ店員
一之瀬京也,軽薄を装うサラリーマン,29歳

その他の収録作品

  • 独占欲求
  • 溺愛願望

あらすじ

中学校時代のトラウマを引きずり、他人に触ることも触られることも嫌悪している一之瀬。見られて蔑まれることに快感を覚え、欲望を発散させるために通う会員制オナニークラブ「スティル」で、従業員の真崎と親しくなる。彼の冷ややかな眼差しの合間に見せる年下らしい可愛い表情に、やがて真崎の手に触れて欲しいという気持ちが抑えられなくなった一之瀬は、ある日「スティル」で自分のオナニーの相手に真崎を指名してしまい……?

作品情報

作品名
鑑賞倶楽部
著者
マキ 
イラスト
山田シロ 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA(メディアファクトリー)
レーベル
フルール文庫ブルーライン
発売日
ISBN
9784040676814
3.4

(15)

(3)

萌々

(4)

(5)

中立

(2)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
3
得点
48
評価数
15
平均
3.4 / 5
神率
20%

レビュー投稿数3

シリアス純愛

「鑑賞倶楽部」というタイトルのイメージとは違い、しっかり読み応えのある純愛ストーリーでした。
高級オナニークラブという設定でエロ重視かなと気軽に手に取りましたが、この舞台は主人公のトラウマに関連した味付けをしているくらいで、本題は違うところにありました。

イケメンで人当たりのよい人物を演じるリーマン、一之瀬。しかしゲイであるがゆえに人に言えない傷をかかえ、唯一の発散場として会員制のオナニークラブに通う。
そのクラブの店員、真﨑は壮絶な美人(当然男ですが)。仕事上は慇懃な態度をくずさないが、あるときふとしたきっかけから秘密の喫煙所でプライベートな時間を共有することになる。
二人は肩肘はらずにつきあえる関係として次第にうちとけてゆくが、真﨑も実は大きなトラウマをかかえていてー

というあらすじ。

あらすじを読んで、初読み作家さんということもありかなり気軽に手に取ったんですが、なかなかシリアス路線でしっかりしてました。
二人のトラウマは、出会いによってどう昇華されてゆくのか、お互いがお互いの人生カウンセリングをしているような、そんな関係でした。
そして、二人を近づけるきっかけとなった煙草、お酒などの小道具の設定がよく活かされています。
少し駅から遠い一軒家のクラブ、そのそばに真﨑が作った林の中の秘密の喫煙所、そして、葉巻とお酒を楽しむための隠れ家のようなバー。どれも内面をさらすのに適した二人だけの個室空間を提供する場として機能します。

最後は読んでいる方が照れるくらいのあまあまに。一途な真﨑の敬語責めに萌えます。

ちょっとくどいかな、という繰り返し表現はあるものの、なかなか最後まであきずよかったです。


6

人と触れあうのって恐いですよね

オナニークラブなんてあるんですねぇ……検索してみたら某有名辞書サイトによれば別名が『プラトニッククラブ』!結構長く生きているつもりでしたが、まだまだ知らない事が沢山ある。世界は広いです。
このお話、シリアスなトラウマものです。題材ででキワモノ扱いしていた私は、途中で一之瀬に対する罪悪感のあまり、土下座して謝りたくなったほど。極めて真面目なお話です。

詳しいあらすじは、私の前にレビューされているお二人が大変綺麗に紹介されているので、感想のみを。
一言で言えば「性的なものを伴う恋って恐いものだなぁ」でしょうか。
考えてみたら、恋って『剥き出し』ですもんね。その人の核みたいなものが。
たとえ実らなくとも、認めて貰えればこのお話の二人の様に踏みにじられることはなかったんだと思います。でも、恋した相手だって人間だし。神対応をしてくれるとは限りません。

一之瀬はオナニークラブで蔑まれないと達する事が出来ない自分の事を「変態だ」と言いますが、自分が育ててきた想いを守る為にはそうするしかなかったんだろうと思うのです。
これがね、哀しいのよ。
「あんたは悪くない」と側によって言ってあげたいけど(そういう関わり方をしてくる同僚もいるんだけれど)過去の経験の所為で『陽気な遊び人』の仮面を被り、おまけに接触恐怖症になっちゃった彼を救う術がないのです。
いや、これは哀しい。

冷静に考えれば、このお話は「一種のピアカウンセリングだなぁ」と思います。
読んでいる最中、冷静になれなかった自分は、鎧を脱ぎ捨てて真崎に手を延ばす一之瀬の姿に胸が絞られました。
一之瀬に感情移入して読むと、本当に辛いお話です。
いや、だからこそラストのカタルシスが半端ないんですけれども。

3

過去をこじらせた同志の恋愛出発点

まず目を引くのは主役の一之瀬がオナニークラブなる店に通っているという設定で、そこから過去の苦い思い出に触れていく内容になっている。

見た目はいい男で仕事もそつなくこなしている一之瀬は、週一で会員制オナニークラブに通い、過去に植え付けられた苦い思い出をさらけ出す事が習慣となっていた。
大人になっても抱えている過去を心の中で掘り起こすばかりで進歩せずに踏みとどまっていたところに、行きつけのクラブでいつしか顔見知りになった年下の従業員・真崎と些細なきっかけから打ち解けていく。

彼をよく見ている周りの人達には、一之瀬が苦悩を背負っているのがバレバレで、何となく目を離せない一面があるみたいだ。
そんな一之瀬を見つめている一人、真崎自身にも過去に何かのトラウマを抱えているのが伝わって、彼をなんとかしてやりたいと思ったところから一之瀬が立ち直っていくきっかけとなっていく。

二人が抱えているトラウマといっても、作中では具体的なドロドロ描写を抑えているせいか、こじらせ度が浅く感じる。
ただ、話が進行していく中で二人だけの時間の共有として煙草を吸ったり葉巻を嗜むシーンが出てきていい雰囲気だなと思った一方で、一之瀬の内面では新たな恋愛に踏み出そうとするまでの戸惑いを<遊園地>やら<儚い花>に例えていて、その様子はまるで10代の子供のような葛藤に感じてしまった。

でも、こじらせた時点から立ち直っての再出発なのだからと考えると、かえって中身10代のような初々しさが顔を覗かせるのも良いかも、とも見えてくる。
だとすると、捉え方によっては心の中の<遊園地>と現実で味わう<煙草・葉巻>って、年齢が合わないギャップを象徴するものになり得るかも知れないな、と閃いた。

3

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