特別版
好きだと想う瞬間の感覚は、涙がこみあげてくるときの苦しさに似ている
「Heaven's Rain 天国の雨 Limited Edition」が非常に良かったので作家買いしてみました。今回もすごく良かった。内容はすでに書いてくださっているので感想を。
「Heaven's Rain~」の時も思ったのですが、この作家さんは設定がすごく特殊というか。今回も食事の代わりに人の血液を飲む「吸血種」が主人公です。ファンタジーな設定なのにふわふわしたストーリーではなく、そういう種族として生まれてしまった葛藤を抱える有理(受け)の心情を軸に、どっしりとしたストーリー展開がされています。
人と同じ食事をすることはできるけれど、二十歳を過ぎると血液を摂取しなければ生命を維持することのできない吸血種。けれど有理は血液を飲むことを拒否しているため体力がどんどん低下し視力さえ失いかけます。「吸血種」である以上、血液を飲むしかないのにそれをかたくなに拒否する有理は初めはただの甘ったれに見えるのですが、彼が人の血液を飲むことを嫌悪するのには理由があって。
そうした土台となる設定がきちんと書き込まれているので、読んでいて話に引っかかりがなくどんどん引き込まれてしまう。
対して攻めの犀賀先生。彼も壮絶な過去を抱え、人を愛することなく孤独に生きていくことを選択しています。が、有理と出会い、お互い徐々に心を開き心を通わせていく過程にはキュンキュンきました。
BLでありながら、男同士である葛藤や世間体を気にする心情はあまりなく、どちらかというと「吸血種」であることによる葛藤や、犀賀先生の過去の出来事に比重が置かれているためBL色はあまりない。有理の両親や初恋の彼女、同じ吸血種である犀賀先生の病院のスッタフや患者さんたち、「くつした」の存在。一つの物語としては文句なく面白いですし、ファンタジー設定でありながら人間味のある非常にリアリティのあるストーリーで、どっしりとした話がお好きな方にはお勧めできる1冊なのですが、甘々のエロい、いわゆる「BLな」作品を求める方にはちょっと不向きかもしれません。
が、「ずっと一人でいい」と思っていた犀賀先生が、有理にどんどん惹かれていく姿や、ゲイである自分とは異なり女のことも恋愛のできる有理をこのままこちらの世界へ引っ張り込んでもいいのだろうか、目が視えず、初めて心を許せた自分に対し、恋愛感情と信頼感情を勘違いしているだけなのではないか、という葛藤には萌えMAXでした。
ただ一点。
犀賀先生の初恋の相手である小野瀬の愛娘のマユ。マユのあの設定はちょっとどうなのかな、と思ってしまった。
恐らく、マユのことを気に掛ける犀賀先生=小野瀬に対してまだ気持ちが残ってるからなんじゃないか、という有理の心配の答えにしたかったのだと思うのだけれど、ちょっと設定が重すぎた気がしました。
有理と犀賀先生の、少しずつ心を許し、愛情を育てていくという純愛のストーリーに、あのマユちゃんの出生の秘密は重すぎるんじゃないかな、と。実は桃が吸血種でしたという方がよかった気がします。まあ、あくまで個人的な感想ですが。
けれど、設定、キャラ、ストーリー展開、どれをとっても素晴らしかった。
文句なく、神評価です。
朝丘先生の作品本当に好きです!
死にたがっている吸血種の有理くん
医師で吸血種の犀賀さん
頑なに血を飲むことを拒み、視力が
落ち、このまま死んでも良いと思っていた
有理の前に現れた犀賀先生。
先生の前では、冷静な態度が崩れてしまう
その、会話の中で欲しいと思っていた
言葉をくれる先生に
少しづつ心開き惹かれていく有理くん。
有理に仔猫の世話を進める先生
手の中の小さな生命の重さに、自分の
生命を重ねることで生きようとする
二人が抱える暗く辛い過去
でも、その過去が二人を惹き寄せる…
bl小説には珍しい厚さの本です。
お話もゆっくりとココロの動きに合わせて
進んでいきます。
透明な優しさと太陽のようや希望
そんなものを読後に感じました。
今朝丘先生の本を集めていますが、
また、読みましたら拙いレビュー書きます。
優しくて切なくて…機会がありましたら
是非 読んで頂きたいです!
優しい気持ちになれる、すごく素敵なお話でした。
本編の内容の前にまずこの本の厚さ。なんと1冊で380ページ!(笑)こんなにページ数のあるBLは見たことありません(笑)電車などで読み進め、読破するのに3日ほどかかりました。
朝丘先生の作品は、サヨナラ、リアル 坂道のソラ に続いて3作目です。今作も朝丘先生らしい、丁寧で優しい文章。2人の抱える過去は辛く暗いものです。重たい話は断念してしまうほど苦手なのですが、こちらはそのしんどい気持ちとともにほんのり優しい含みがあって全然平気でした。
現実社会に、吸血種が紛れているという世界観。彼らは人間食を好まず、3日ごとに血を摂取するだけで生きていけます。吸血種同士は匂いで互いを判別出来ますが、ほとんどの人間は吸血種が存在すること自体知りません。200人に1人くらいの割合で吸血種は存在しますが、社会にその事実が浸透していないのが少し不思議に思えました。
視点は章ごとに移り変わるので、目の見えない受けだからこその気付きと、医者である攻めの気持ちや葛藤などがストレスなく伝わってきます。他の朝丘作品では受けに感情移入しがちでしたが、今作は攻めに近い気持ちで読んでいました。
ゆったりとした日常の描写が続くので、退屈に思う人もいるかも。中盤の250ページくらいが、2人が共に暮らす2週間の描写に尽くされています。エロは最後にほんのちょこっとだけ………。しかもいやらしさも全くない、心の通い合いの果てと言えるような描かれ方をしています。ふたりが「本当の意味で出会う」瞬間は、こちらまで緊張させられました。色々と重たいものを乗り越えて、最後には感極まり、甘く優しい気持ちに。展開に凹凸がないので、朝丘先生1冊目には少し向かないですかね。ファンなら楽しめると思います。独特の甘い語り口が堪りませんでした。
以前、朝丘戻さんの作品を読み、すごく気に入ったので他の作品も読もうと、今回購入しました。
結論。やっぱり好きです。
ハッピーエンドなのか、そうでないのかも、あえて調べずに読み始めたので、かなりソワソワしました。
この世界には吸血種も紛れていて、有理は人間と吸血種のハーフ。二十歳になったら、血を飲まなければ生きていけない身体なのに、血を飲むことを拒み続けた為、身体が衰弱し目が見えなくなってしまった状態からの物語です。有理の父親に頼まれ、診察に来た医師が深幸で、こちらは血しか飲まないで生きてきた生粋の吸血種。
最初は敵意丸出しでの出会いでしたが、そこから一転、静かな雰囲気で二人の距離はゆっくりと近づきます。でも、それは患者と医者。これが恋心になる過程が、本当に自然過ぎて違和感がありません。
医者と言う立場や、男同士で相手は何も見えていない。色々な事が重なり踏み切れずにいる深幸。
有理はかなり積極的に深幸に好みのタイプとかを聞いたり、電話ごしにチュウをせがんでみたり、自分の気持ちをぶつけるけれど、人見知りな彼がどうしてそこまでできたのか?が後半に出てきて、すごく納得しました。そういう感覚って、自分が同じ立場になってみなきゃわからないものだなぁと感じました。
吸血種のハーフの寿命。。。先を読むのが辛くなる事もありましたが、幸せな終わり方で良かったです。
不思議で綺麗な物語でした。
”主人公は吸血鬼と人間のハーフ”、”人間の血を飲まないと死んでしまう”というファンタジー設定でありながら、
人としての、吸血鬼としての、非常にリアリティのある日常風景が丁寧に丁寧に描かれていきます。
そのため、するりするりと世界観に入り込み一気に読むことができました。
タイトルの『アカノイト』もよく言うロマンチックな”運命の赤い糸”に絡めて、吸血鬼ならではの意味もあって、読了後しっくりきました。
攻の御幸は、純血の吸血鬼。両親を人間に殺され、親友に失恋し、それ以来恋人を作ることもしなかった。
一方で人間とのハーフとして生まれた受の有理。吸血鬼の血を恨み、主食である「人間の血」の摂取を拒み続けて死にむかう。その症状で目が見えなくなっている。
と、二人の背景はとても重たく不幸なのですが、しかし読み心地は優しくて、二人のやりとりが可愛い。朝丘先生、スゴイです。
「納豆の口でキスするのはいや?」「恋人だったらいいかな…」「じゃあ納豆キスは大好きのキスだね」
お互いの頑なだった心をほぐし合い、次第に惹かれ合い、キスをして、じゃれ合うようになる。
優しく可愛く、でもどこか寂しく切なく物語は進んで行って、
そして最後、30ページほどの破壊力が心臓撃ち抜かれました。
「目が完全に治ったら、再び会おう」そう言って3か月の間、距離を置く二人。
自分の容姿を一度も見ておらず、ゲイでもないのに一途に自分を慕ってきた有理。若い彼が、ひとたび自分を見たら幻滅するんじゃないか……でも有理だった受け入れてくれるかも……イケメン医師の深幸がビクビクしたり淡い期待を抱いたりしている様がいじらしい。
そして感動の再会、と思いきや、深幸の危惧した通り、逃げ出すように消える有理。この場面で激動する二人の心中にある落胆や高揚感がひしひしとこちらに伝わってきて、震える手で本を読み進めました。
そして結末は、きっと読む人によって感じ方が違うのではないでしょうか。
”吸血鬼と人間のハーフは短命”という事実があり、有理が死ぬことを示唆するような地の文もあります。
しかし最後、吸血鬼の少女が言います。有理と深幸、吸血鬼特有の匂いが「ぴったりだね」と。
山の草木の香りと川水の香り、互いを必要とする者同士が交じり合ったとき、つまり、互いの血を飲んだ今、お互いを生かすことできるのではないか。ハッピーエンド脳の私は、ふたりの優しい生活が怯えることなく、続いてくれると予感しています。