イラスト入り
『調教は媚酒の香り』の続編。前作を読んでいなくても何とか理解はできると思いますが、出てくるキャラたちの関係性は前作を読んでいたほうが理解できると思うので、未読の方は前作から読むことをお勧めします。
さて内容はすでに書いてくださっているので感想を。
紆余曲折を経て恋人同士になった前作。すでに甘々な二人なので今作はどんなストーリー展開になってるのかな、と期待しながら読みました。
ワイン事業がうまくいかず窮地に立たされている一鷹。そんな一鷹に、経済的な面でも物理的な面でも救済の手を差し伸べてくれるのはSMサロン「アントレヌール」のQ。
ただし、その見返りとして潤音を期間限定で貸してほしいと言うQで。
潤音を駆け引きの道具として使いたくない一鷹。
一鷹を助けるためにQの元へ行くという潤音。
なんというか、よくある設定ではありますが、お互いを想う二人の気持ちにぐっと話に引き込まれました。
今作は潤音がQのもとでボトム(奴隷)として仕えるシーンがメインなので一鷹の登場シーンはさほど多くないのですが、それでも一鷹が潤音に対して行うSMシーンはかなり本格的で濃厚でした。フィスト・ファック(作中では未遂ですが)って、初めて知ったりした私はまだまだ未熟モノなのでしょうか…。
一鷹と離ればなれの間、過去の『ご主人さま』(というにはおこがましい最低男ですが)から捨てられた記憶から潤音が精神的に不安定になったり、Qの「家具」のスペードからいじわるされたり、Q主催の食事会で潤音がピンチに陥ったりするシーンも多く大丈夫かなあなんて心配しながら読みましたが、そのたびに助けてくれるのが一鷹で、二人の絆がより一層深まっているのがとてもよかった。
Qに憧れ彼に仕える、「人間家具」たち。
一鷹を愛し、信頼し、自分のすべてを一鷹にゆだねる潤音。
自分の「Qの元にいたい」という欲求のみでQに仕える「家具」と、「相手のために」という気持ちから行動する潤音の違いがくっきり描かれていて、そこも非常に良かった。
あとQの過去の話が書かれた番外編もすごく良かった。Qにも、自身のすべてをあずけられる相手がいつか見つかるといいなと思いつつ。
小山田さんの挿絵は今回も神でした。特にQのスーツ姿のカッコよさと言ったらなかった。
ただ、このタイトルに、この表紙。リアル書店では買いづらい…(爆)。もう少しマイルドな表紙でもいいんじゃないのかな、とか思ったりしました。
相手を愛し、信じているからこそできるSM行為。痛い行為は数多く出てきますが、二人のお互いを想う気持ちがあればこそのストーリーが非常に良かった。
文句なく、神評価です。
SMを扱った作品は大好きですが、この1作目を読んだときは、単にハードなプレイが好き、というくらいでSMとは何かという知識をほとんど持ってませんでした。
攻めが受けに痛々しいプレイを強いる…くらいに思ってたんですが、このシリーズを読んで、SはMのために存在する、MがSを選ぶ権利がある、、本当に嫌な時はプレイを止める合言葉がある、などいろいろ知ってSMの奥深さに感動しました。
その続編ということでとても嬉しいです。
これ一作ではまったくわからない、ということはないと思いますが、やはり前作を読んだこと前提の内容になっていると思います。
身寄りのない潤音は、Mとして調教されるという名目で一鷹に預けられますが、二人は恋人になり今では幸せに暮らしています。
前回から3年後というお話で、潤音を一鷹に預けたSMクラブのマスター・Qがやってきて、一鷹に取引を持ちかけ、その取引に応じ、潤音はしばらくの間Qのもとに預けられ、2人は離れ離れに・・というお話です。
一鷹視点は一切ないのですが、潤音の主人・鬼畜なSという役柄なのにめちゃくちゃ潤音を可愛がって大事にしている、溺愛しているのは伝わってきます。
ストレートにデレるような台詞はほとんどなくて含みのある物言いが多いのですが、何故かものすごく溺愛心が伝わってきました。
すでにくっついているカップルなのでお話の起承転結は前回ほどでも…という感じです。
冒頭から2人が引き離されてしまうので展開としてはどうなるの?という不安いっぱいな感じだったのですが、Qが意外と優しかったのと、Qにアレコレされるもののめちゃくちゃ酷いこともなく、他の人に抱かれるなんてこともなかったので、安心半面、けっこうライトに難なくさらっと終わってしまった感じもします。
一鷹が潤音の手の届かないところにいるのに、所々に現れては潤音を助けてくれるし…。Qのボトムであるスペードが潤音に意地悪をしてきますが、それも本当に「意地悪」程度なのでそれほど酷いと思うこともなかったです。
せっかくなので、人間椅子など、潤音が連れて行かれた先にあった「理解できない世界」というのをもっと掘り下げて書いてくれたら面白かったなーと思います。
あ、あと個人的にフィストが見たかったです^^;扱っているBL作品が極少なので…途中でやめてしまって残念!
潤音に始終女性のドレスを着せているQの趣味(?)はなかなか面白かったです。
内容は意外と前向きなものだと思ったんですが、やっぱりぐっときたのは何のために生きているのか、という事を、潤音が一鷹のもとにきたときから考えていて、その答えを今はっきり持っている事だと思います。
前は潤音の事については曖昧でしたが、潤音って戸籍がなかったんですね。勿論本名も年齢も国籍も不詳・・。
一鷹は潤音に戸籍を与えるために奔走します。どんな複雑な手続きがいるか想像できないんですが・・・。
「自分に何かあったときのため」という一鷹の真剣さや、「一緒にいるだけでいい」と思っていた潤音だけど「一鷹は宝物で命そのものだ」という言葉と、今はちゃんと役に立ちたいという願いから互いに本気で心から、自分の命と同じかそれ以上に相手を思い、大事にして、向き合っているのが伝わってきます。
こういう作品を読むと本当に「同性だから」という事は本当に頭に入らないというか…こういうカップルを生み出せる事って本当にすごいと思います。
戸籍をもらってこの世にやっと誕生したという事が胸にずしんとくるというか、あなたに与えてもらってばかりいるという潤音の涙につられて涙を誘われます。
悲しいとかせつないという、じ~んとくるシーンは何度も体験していますが、嬉しさに涙を誘われるという感動を久々に味わった気がしました。
おまけでQの裏側をえがいた短編と、前作の特典ペーパーが再録されています。
Qの裏側はなんだかすっごく…やっぱりSMの世界って奥深い・・・と思うものでした。
この2人のお話はもっと読みたいけど、幸せになってくれたのならこれでよかったと思います。
BLを読む上で出会ってよかったなぁと本当に思う作品です。
前作が良かったので続編出て嬉しいなって思って読みました。宗司さんと潤音くん、あれから幸せになったのかなあ?って思っていたけど、SM関係のまま幸せな生活を送ってくれてて良かったな、と笑)
さて今回はそんな二人の関係に危機(?)が訪れるんですけど。
まあ危機ってほどの危機ではなく、最終的にはハッピーエンドでしょうってわかりきってる感じのストーリー展開なんですが、それでも引きこまれるこの不思議さ。潤音くんのマスターに対する純粋な気持ちが、読んでいてきゅんとなりました。
読み切りショートの2つも良かったです。SMなのに幸せな読後感を味わえる、ほんとに不思議な作品、大好きです。また続編読みたいです。
あと、私としてはQがすっごく気になるんですけど…。Qの話とかでないのかな?ぜひ出てほしいですね。
小山田あみさんの挿絵も、前より艶っぽくなってる気がしてゾクゾクしますっ!
調教は媚酒の香りの続編です。
一作目のお話しで、ラブラブに結ばれた一鷹と潤音。
お互いがSMのマスター(主人)とボトム(奴隷)の関係でありながら、恋人同士。
前の方々のレビューでSM調教の様子は書かれているので、あえてお話しに重点を置いて、レビュー書きます。
容姿、地位、経済力、愛情と完璧な主人の一鷹に愛され、幸せに蜜月を過ごす潤音ですが、一鷹に仕事上の事で危機が訪れます。
その危機に手をかしてくれると名乗りをあげたのが、前作で登場した会員制SMクラブの女王様Q。
このQはただの女王様じゃなくて、すごいセレブで経済界などにも顔のきく人物。
一鷹の事業に手をかす条件が、愛奴潤音の貸し出しです。
当然、一鷹は断りますが、一鷹に今までの恩を返して力になりたい潤音は一鷹に嘘をついてまで、Qのもとへ行く事を決意し、一鷹を説得します。
愛しあう夫婦に割り込み、お金を条件に妻を借りる富豪、そんな設定の映画があったけど、まんまですね。
その映画は最後に夫婦はギクシャクして別れたような結末だったけど、一鷹と潤音はお互いを信じきっていてQの妨害にも負けません!
安心して読めるというか、妨害にあってもお互いの信頼の気持ちや行動で、乗り越えていく様子に読みながら萌えまくりです。
最後は無国籍だった潤音に誕生日を与えて、籍を同じにして(マリアージュ)、まさにシンデレララブストーリー展開に、最後まで萌えまくりです。
潤音は生い立ちが大変だったけど、純粋で一途で可愛い良い子だし、一鷹もスパダリなのに愛情溢れてて一途で頼れる攻めって感じ。
2人のキャラが良いので、応援して純粋に楽しめる作品です。
そのお話しにQのお屋敷の「人間家具」や調教、食事会、など本格的SMの濃い世界観が加わって、王道ラブストーリーですが、飽きさせないのが流石です。
Qのお屋敷は、ルイス・キャロルの不思議の国のアリスの、不思議の国に迷い込んだようでした。
女王の独白
SMは歯止めがきかないと恐ろしいことになるなと思いました。
Mを殺してしまったSのお母様が、精神的に病んでいくのが、リアルで悲しいです。
公開調教
潤音のマスター当て、ブラインドテイスティング。
読んでて潤音の一鷹への思いが溢れていて、萌えました。
私にとっては、SMものへの扉を開いてくれた特別な思い入れのある作品です。
「調教は媚酒の香り」の三年後のふたりを描いた、愛に満ちた淫靡で甘いお話、ぜひ二冊セットで読んでほしい。
冒頭、いきなりフランス語のレッスンをしながらの調教シーン。
前作で恋人同士として結ばれたふたり、もうSMプレイはしないのかな? という心配は早々に吹き飛びます。
宗司は新しい事業に着手していますが、なかなか思うようにいっていない様子。彼に救いの手を差し伸べようとしたのは、前作にも登場した、SMサロン「アントレヌール」のオーナー、絶対的支配者のQです。
そんなQの出した条件は、新しいワインが完成するまでの間、潤音を自分のところに預けろ、というもの。
当然宗司は断りますが、潤音はそれが主のためになるのなら、と条件を飲みます。そして潤音は、Qのお屋敷で彼の調教を受けることに…。
そこからはじまる、Qによる調教がこのお話の肝になります。
あくまでもQは、「宗司の奴隷としての潤音」を見たかったんでしょうね。Sの女王様だから言葉はきつくて、なにを考えているのかわかりにくいけれど、主への忠誠心を試したかったのかも。
このシーン、相当ハラハラしたけれど、無理矢理犯されるというような鬼畜展開もなく、そういうのが苦手な私は、心底ホッとしました。なんだかんだ言って、Qは潤音を気に入っているし、優しいんじゃないかな…。
Qからの苦しい責めを耐え抜く潤音。主と離れている間の彼の様子はいじらしく、胸が締めつけられます。手紙を受け取ったシーンや、晩餐会に呼ばれた宗司との束の間の再会…寂しさをこらえ、一途に主を想う健気さに、なんども涙が出そうになりました。
けれど、結果的に離れていたこの時間は、ふたりの絆をさらに強固なものにしたことは間違いありません。
それにしても、宗司が持つ主としての愛情はスケールが大きく、今回も読者の予想を超えてきます。
前作で、彼は潤音に居場所と仕事を与えましたが、今回はそれを上回ったのでは…。
物語終盤、ようやく完成した純国産ワインを飲ませてもらう潤音。そのラベルに隠された、自分へのメッセージ。愛する人に祝ってもらう、初めての誕生日、そして…。
いやあもう、Sなのに、こんなに甘くていいのかな?っていうくらい、宗司は甘いです。
彼は溢れる愛情を、言葉じゃなく行動で表せる人。ちょっと、スーパー攻め様すぎやしませんかね。文句のつけどころがないんですけど。
さらに、前作のレビューで宗司はムッツリだと書いたのですが、やっぱり今回もそのムッツリぶりは健在。
どんなにクールぶってても、やっぱり潤音のことが心配でたまらなかったっていうのが伝わって、萌えて萌えてしょうがなかったです。
言葉の端々にQへの嫉妬が見え見えだし、「指一本入れられてないし、射精もしてない」とわかった後は……もう、このムッツリが!と言いたくなるがっつき具合でした。
潤音は本当に、いいご主人様に巡りあえてよかったなあ、と思います。いつまでもお幸せに。
巻末にSSが二編。
「女王の独白」は謎めいたQの生い立ちに触れた一編。
「公開調教」はサロンで潤音のお披露目をします。M奴隷として、とっても優秀な潤音です。