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この恋を終らせるためだけに、過去に戻った――。
あらすじ:
ニューヨーク在住の由弦(受け)の夢の中に現れた、大学時代の後輩・絢人。
何かのきっかけで人をタイムリープさせる能力を得たらしい絢人は、由弦を大学時代に戻し、後輩で元恋人の慧太(攻め)とよりを戻すよう強く勧めてきて…
現在の由弦の意識が学生時代の由弦の中に入り込み、2年前の恋をやり直すというタイムリープ物。
破局の未来を知る由弦は慧太と距離を置こうとしますが、歴史は変えられず慧太と付き合うことに。
慧太と再び過ごせる幸せを噛みしめる由弦ですが、やがて2年前と同じく失恋の時が訪れ…という甘くも切ない展開です。
一途で純粋で由弦大好きな慧太が、なぜ由弦を振ったのか?
現在の由弦と慧太と絢人は、それぞれどのような状態なのか?
といった謎を内包しながら進むストーリーは、先が読めてしまう部分はありますが、なかなか読み応えあり。
由弦も慧太も芸術学科に所属しており、互いの作品(パラパラ漫画や万華鏡)が後の展開の伏線になっている仕掛けも上手いと思いました。
ただ、ノンケの慧太が簡単に由弦を好きになる流れに納得し難い点と、
慧太を由弦から遠ざけた当事者のくせにキューピッドを気取る絢人の厚顔無恥な言動が作中で全く批判されない点が
個人的にマイナスでした。
タイムリープという大きな設定でごまかせてはいますが、2年後の2人(特に由弦)がアーティストとしてあまりに順風満帆である点も現実味に欠け若干の物足りなさを感じました。
しかし付き合っている頃の、そして復縁後の二人の雰囲気は大変甘く、川琴さんの良さが全面に出ている感じ。
復縁後の二人のエピソードもたっぷりあるため満足感が残ります。
挿絵はyocoさん。
読み終えて改めて表紙を見ると、万華鏡と時計を象徴するかのようなイラストの素晴らしさがより一層感じられました。
所々に引っ掛かりはあるものの、タイトルやモチーフ使いにセンスを感じる素敵な一冊でした。
大学生×大学生のタイムリープ物。ただし過去に戻るのは記憶の中だけで、現在の現状が変えられるわけではありません。ただ主人公はそれでも辛い記憶となった過去の恋愛を「好きにならない」ことにして気持ちだけ変えようとします。
それだけ顔の恋愛が主人公の中で忘れられないものなのです。過去の自分の気持ちに逆らって行動しようとして苦しむ主人公が切ないです。セックスシーンもありますが話の構成上自然で読んでいて、話に無理やりいれた感じはありません。
イラストもyoco先生で美しいです。おススメの1冊です。
ニューヨークで働く由弦(受け)には、かつて訳も分からぬまますれ違って別れた年下の恋人・慧太(攻め)がいた。その想い出が鮮やかすぎて今も恋ができないでいる由弦のもとに、霊体となった友人、絢人が現れる。絢人は、これから由弦をタイムリープさせる、大学時代に戻って慧太との恋愛をやり直すように、と告げる。次に目覚めた時、由弦は大学生に戻っていて…。
タイムリープものです。SF用語ですが、タイムスリップとは違って、同じ時をやり直す、繰り返すのがタイムリープです。
さて大学時代に戻った受け。かつて愛し合った2歳年下の攻めとの鮮烈な出会いからやり直すことになります。
その後別れてしまうのを知っているので、受けはこれ以上傷を広げないために今度は恋人同士にならないでおこう、と決めます。
でも受けをタイムリープさせた張本人・絢人により、人の身体に触れるとその気持ちが読める能力もオプションに付けられていて、攻めの『好き好き』『可愛い』なんて心の声が聞こえてきます。嫌いで別れたわけではないし、好きで好きでたまらない年下の男が、クールな表情の下でそんな事を思っているのが可愛くて愛しくてたまらない受け。必然的に再度焼けぼっくいに火が。
なんて言うか、攻めがすごく可愛いです。ワンコみたいできゅんきゅんしちゃいます。ストーリー的には切ない話なんでしょうが、個人的には切なさよりもきゅんのほうが強かった。受けが必死に「今度は攻めと恋人にならないでおこう」と頑張っていても「え、別に恋人になっても良くない?」と思っちゃいましたし。だって恋心は残ってるんだし、今回恋人にならなくても恋心に苦しむのは同じでしょう。
そんな感じで切ない感は少なかったですが、それを補って余りある年下攻めの可愛げが楽しめたので、読後感は満足でした。万華鏡がポイントアイテムとして使われているので、お高い万華鏡ちょっと欲しくなったりしました。
絢人くんの存在はちょっと切なかったな。ネタバレになるので詳しくは触れませんが、彼のスピンオフなどあったら、内容によっては読んでみたいと思います。
「タイムリープ」ってなんのことやら?だったのだけど、なるほどこういうことなんですね。
大学時代の友人が枕元に現れて、大学時代に戻って過去の恋をやり直せと言われて、二年前に戻る……というもの。
過去に戻った受けは、あの別れの悲しみを二度と経験したくないからと攻めとは恋愛ムードにならないようにあれこれ抵抗するんですね。
だけど、いくら必死に抵抗しても攻めはアプローチしてくるし、恋愛フラグが立ちまくってしまう。
そもそも嫌いになって別れたわけではないので、「彼とは恋をしない」なんて無理なんですよね……。
攻めがワンコで、受けのために世界でたった一つの特製万華鏡を作るというくだりが素敵でした。
こういうエピソードにキュンキュンさせられます。
どーやっても不可能な「過去のやり直し」が題材なので、思わず自分も過去のやり直しをするとしたら……とか考えながらの読書で、なかなか楽しかったです。
最初からもうお話に引き込まれ、取り込まれて後戻りできませんでした。
一気に読まずにはいられない・・・そんな作品でした。
2人はどうして離れてしまったの?
何故由弦はニューヨークにいるの?
絢人に何があったの?
・・と、のっけから気になって、知りたくて・・・
口絵や挿絵もある種眩惑的な雰囲気があるし、由弦がタイムリープ中に感じている違和感や不思議な感覚が、絵からも文章からも読み手の私にシンクロしてきて、自分もタイムリープの世界にいるような何とも言えない不思議な感覚に陥ります。
あっと驚くタネ明かしも用意されているので、もう一度頭から読み直さずにはいられません。
是非、ネタバレを知らないままに読んでほしいです。