つみびとの花

tsumibito no hana

つみびとの花
  • NOT BL
  • E-BOOK ONLY
  • R18
  • 神11
  • 萌×24
  • 萌0
  • 中立1
  • しゅみじゃない1

--

レビュー数
2
得点
72
評価数
17件
平均
4.4 / 5
神率
64.7%
著者
 
イラスト
 
媒体
小説
出版社
心交社
シリーズ
ショコラ文庫(小説・心交社)
発売日
価格
¥720(税抜)  ¥778(税込)
ISBN
9784778119294

あらすじ

北川巽は男手ひとつで育てていた娘を保育園のバス事故で失った。罪悪感に苦しむ保育士の氏家志信を無理やり抱くことで、底なしの絶望と孤独から逃れようとする北川。彼を恐れながらも、償うため身体を差し出す氏家。やがて北川は氏家の生真面目さや優しさを愛しく思うようになるが、彼は頑なな態度を崩さない。氏家には、結婚を決めた女性がいた。二ヶ月後、彼女が海外から戻ったら氏家を解放してやろうと北川は決意するが――。

表題作つみびとの花

北川巽,妻に先立たれたシングルファザー,35歳
氏家志信,保育士,27歳

その他の収録作品

  • 苦しい息もたえだえに
  • うさぎ・桜・ピンク
  • つづく日々、離せないもの
  • あとがき

評価・レビューする

レビュー投稿数2

心理描写に惹かれます

佐田先生のデビュー作に書下ろしを加えた文庫版になります。あらすじから想像したよりもずっと読みやすく、完成度の高い作品だと思いました。
「つみびとの花」は攻の北川巽の視点で描かれています。妻を亡くした後、一人で娘の羽菜を育ててきましたが保育園のバス事故で失い、そのバスを運転していた氏家志信と無理矢理関係に至ります。この最初は本当に無理矢理です。
バス事故が秋の初め、年末までの間を北川は氏家の罪悪感につけこむような形で関係を強いるのです。こう書くと北川がゲスな感じにみえますが、そうではありません。北川は至極まともな男です。佐田先生の文章を読んでいくと何とも絶妙な感じがあります。
絶望、孤独、甘さと切なさが巧みに描かれていて、一気に読めました。
佐田先生というのはネガティヴな感情も自然に読ませることができる作家さん、だと思います。
娘の死からの関係の強要、となると凄く重くなってしまいそうなものなのですが、全編通して不思議に甘いのですよね。甘いのに不自然な感じがしません。
そして、本作のヒールは前園という女ですがこいつは実にイヤな女です。ヒールとしてはバッチリでしょう。何があっても続きこうは振る舞いたくないものです。
前園は置いといて北川と氏家ですが、回数を重ねるごとに北川が優しくなるところがエロくて切ない。年末が過ぎて約束通りに関係が終わった二人、ここもグッとくる展開でした。
この文庫には「つみびとの花」の他、氏家視点の「苦しい息もたえだえに」と、付録掲載されたという「うさぎ・桜・ピンク」と書下ろしの「つづく日々、離せないもの」が収録されています。
未読の方はあらすじから敬遠されませんように、読み応えがあり心に残る作品でした。

2

赦しの物語

佐田三季さんのデビュー作の新装版。
新たに後日談が二篇加わったことで、読後に温かなものがより残る作りとなっています。

小さな町の工場で働く北川(攻め)は、妻に先立たれ男手一つで娘を育てるシングルファーザー。
ある朝、送り出した娘の乗った園バスが事故に遭い、娘は死亡。
失意の北川は、バスを運転していた保育士・氏家(受け)の罪悪感につけ込み、彼を無理やり抱くことで娘を失った穴を埋めようとする……そんな暗鬱な展開。

北川は、一家心中で両親と祖母と弟を失い、妻子にも先立たれた孤独な人物。
最初こそ氏家を乱暴に抱きますが、やがて娘と同じ喘息持ちの彼を介抱したり、手料理を振る舞ったりと何かと世話を焼くように。
娘に代わり愛情を注ぐ対象を求めていたのか、人肌が恋しかったのか。
きっかけはどうであれ、氏家の幸せを願い2ヶ月後約束通り自由にしてやる彼は、不器用ながら愛情深い人物だと思います。

氏家は、父親に連日虐待された挙句捨てられ、教会に引き取られたという過去の持ち主。
幼少期のトラウマ故か暴力を極端に恐れており、北川が優しさを見せ始めて以降もなかなか心を開かない。
続き2ヶ月後、約束通り女性との結婚のため北川から離れて行きますが……
最後の最後で本心を吐露するまで、彼の北川への好意は大変見え辛いです。
しかしその前後のエピソードで彼の生い立ちや気持ちが少しずつ明らかになることで、彼もまた父親からの愛情に飢えていたのかもしれないと思いました。

全体として、お涙頂戴風のエピソードの多さにいささか食傷気味となりますが、伏線使いや構成の上手さで引き込まれる作品でした。
北川が元々そこまで悪い人間ではないという点で、憎しみから赦しへ転じる展開がやや弱くはあるのですが、氏家と前へ進んでいこうとする姿はやはり感動的。

不幸をこれでもかと押してくる作風は木原音瀬さんを連想させますが、木原さんほどの露悪趣味も奇をてらった感もなく、人の本質に優しさを見出している点は木原さんより好み。
氏家の育ての母とのスーパーでの場面が最も印象に残りました。

今後の佐田さんの作品も益々楽しみになる新装版でした。

10

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