人狼には忘れられない人がいた……。

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表題作火恋

晋鳳成,医者の息子→人狼
高真永,鳳成の恋人・乾幸真の生まれ変わり,18歳

その他の収録作品

  • あとがき

あらすじ

人は冥土に行く時「忘川河」を渡り、河の番人が渡す「忘情水」を飲む。現世でのことを全て忘れ、新しい生を歩むため。――身分違いの恋から残酷な別れを経験した鳳成と幸真。互いの生まれ変わりを信じた鳳成は、水を飲まない代わりに人狼として百年を生きることになる。やがて月日がたち、幸真の生まれ変わりの真永と出会うが、彼には前世の記憶が無くて!? 忘れたくない、けれど忘れてしまいたい……激しくも悲しい恋の物語。

作品情報

作品名
火恋
著者
千島かさね 
イラスト
yoco 
媒体
小説
出版社
KADOKAWA(アスキー・メディアワークス)
レーベル
B-PRINCE文庫
発売日
ISBN
9784048921695
3.7

(21)

(3)

萌々

(11)

(6)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
4
得点
77
評価数
21
平均
3.7 / 5
神率
14.3%

レビュー投稿数4

タイトルが秀逸

初読み作家さんで作風が分からないながらも、あらすじに惹かれて購入。中華風ファンタジーで、とても良かった。
身分違いと同性という障害により、受を生け贄にするという形で恋仲を引き裂かれた100年後の2人の物語。攻は前世を忘れず転生する代わりに人狼の王として生きなければならない。しかも2人を引き裂いた村を守るという使命まである。受に再度出会うためにその使命を果たす誠実さと健気さにじーんときた。受は前世の忘れているためなかなか攻に応じられないが、徐々に記憶を取り戻していくのがキュンとした。
中華風ファンタジーが受け入れられるなら、良作でおススメです。

9

いたたた……!!

タイトルからしてね、危ない雰囲気ですよね。
表紙もね、何とも言えない耽美な感じですよね。
そんなわけで初読み作家さんですが、タイトル買いしました。
これ悲恋と掛けてるよね、絶対!! と悲恋ものも大好物で飛びつきましたが、もう序盤からぶっ飛ばしてました。

身分差・不憫健気受→受難→悲恋

という本来1冊かけて書かれるであろうお話を、冒頭ですべて纏めてくれちゃって、そこからの転生ものでした。転生ものも大好物なので、この不憫健気受が一体どんな風に再び攻と出会うのかと読んでみると、あら不思議。
不憫健気のはずだった受ですが、転生後は攻のことをすっかりと忘れ果て、自分は生贄だなんだと割と自己憐憫に溢れた自己中ちゃんになってました。
不憫健気の皮被った無神経に、若干の苛つきと攻への同情を覚えつつ読み進める……。
途中から不憫健気は攻の方じゃないか……と、あまりの攻の不憫さに萌えボルテージは急上昇。
前世では悲恋に終わったのに、今世では今度は攻悲恋エンドかまさか!? と胃がキリキリする程終わりの方まで引っ張ってます。
残りのページでどうやって纏めるのかとハラハラしながら読み終わりましたが、結果的にはハッピーエンドなので1冊で2度美味しかったです。

受の性格を受け入れられるかどうかで評価が上下しそうな話ではありますが、あまりに攻が魅力的+不憫健気攻の効果で私は大変美味しく頂けました。
挿絵も非常に美しく、この世界観をよく表せていると思います。
あと狼の子が可愛くて、もふもふ好きさんも楽しめるのではないかと。
終盤はもうずっと胃の腑を掴まれたような痛みが続くので、痛いの好きさんには是非ともおすすめしたいです。

2

切なくも感動的な転生モノ

中国のえくぼ伝説をベースとした転生物。
身分違いの恋が来世で成就する、切なくも感動的な物語です。

舞台は、昔の中国の小さな村。
医者の息子である鳳成(攻め)と、貧しい家の子である幸真(受け)は秘密の恋人同士。
しかし、二人の仲を知った鳳成の父は、疫病を鎮める生贄として幸真を焼殺。
失意の鳳成は村を焼き払おうとするも処刑されてしまいます。

死後の世界で、生前の記憶を消す「忘情水」を飲むことを拒んだ鳳成は、前世の記憶を保ったまま人狼に転生。
生まれ変わった幸真に出会い彼に愛されなければ、100年後飢えて死ぬという運命を背負うことになります。

ここまでが序盤で、以降は幸真の生まれ変わりである真永(受け)視点。
人狼となった鳳成(攻め)と再会し、前世の記憶がないまま彼に惹かれていき…という展開です。

王道の感動物に仕上がってはいますが、
真永に愛されなければ死ぬと分かっていながら、会って間もない彼を無理やり抱く鳳成の行動にはやや違和感が。
幸真を死なせてしまった罪の意識に今も囚われている、という設定の割に二度も真永を無理やり抱いているため、いまいち健気攻めとは認定し難いキャラクターでした。

真永は、前世でも現世でも心優しい好青年ですが、小さな村に祖母と二人で暮らす苦労人…という境遇が前世と全く同じでやや出来すぎ感が。
人狼の鳳成にすぐに会えてしまう環境に転生しており、ご都合主義を感じてしまいました。
時代を近代寄りにするなり、家庭環境を変えるなり、何らかの変化があった方が転生モノとして楽しめたかと思います。

ツッコミどころはあるものの、真永が記憶をた後の二人はラブラブで、読後は幸せな気持ちに包まれる一冊でした。
「悲恋」と「火」をかけたタイトルや、
えくぼ(中国の伝説上、忘情水を飲むことを拒んだ者につけられる印)の使われ方など、
そこここにセンスが感じられる点も良かったです。

8

愛は転生しても変わらないか否か

中国のロマンティックな“えくぼ伝説”をベースになさったのを存じ上げず
(あとがきはパラ見しませんでしたw)
カバーのあらすじとyocoさんの美しいイラストに興味を持ちました。

“忘川河”を渡るとき、河の番人がよこす“忘情水”を飲むと
それまでの哀しみも苦しみも全て忘れ
来世でまっさらな心で生きてゆく。
そんな話を誰より大事な幸真から聞き、
医者の息子で
自らも父のような立派な医者になると決めている鳳成は
そんな言い伝えなどありえないと笑います。
でももし、自分が忘川河を渡る時は
「忘情水は飲まず、幸真をずっと想うよ」と約束しますが
非情な別れが二人を裂いてしまい……。

なんといいますか……とても苦しいお話でした。
愛し合っていた二人の別れもそうでしたし
鳳成が約束どおり忘情水を飲まず
生まれ変わる幸真に再び出会い愛し愛される為
人狼として100年生きることを選ぶとか…。
ファンタジーにしても悲しかったです。
いくら罪人となってしまっても
それは鳳成が悪かったわけではないのに。
でも、何をおいても守りたかった幸真を
残酷な目に遭わせてしまったからにはいたしかたないと思えるのは
彼の底知れぬ愛情だったのでしょう。

幸真が生まれ変わり真永となっても
生まれも育ちも劇的な変化もなく
優しい気持ちはそのままで嬉しかったです。

待ち焦がれた再会のあと真永の気持ちが全く伴わないままに
無理矢理抱いてしまった鳳成ですが
私は咎める気にはなれませんでした。
それこそ100年近く待っていたのですから
我慢もきかなかっただろうな、と。
その後は時折優しい眼差しも見せたり
真永の為を思って厳しい物言いをしたり。
そしてツラそうな面持ちをする姿にも胸を痛めました。
真永は昔の幸真のように薬草の場所も知っていて
祖母を思いやる優しい青年なのに
自分とのことを一切忘れてしまって
鳳成を思い出してくれもしないなんて…。

鳳成のお付きの(?)狼が真永に懐き、
ほのぼのとしたモフモフも時折楽しめましたが
やはり切なさと重みがずっしり襲ってきました。
最後には真永もちゃんと思い出してくれて
今度こそ二人で幸せになれるので
もしこれからお読みになる方々には
安心して読み進めていただきたいと思いますw

もし自分が忘川河を渡る時は、忘情水を飲むだろうか。
忘情水を飲まずに苦しみを背負ってまでも
忘れたくない人がいるだろうか、と様々な想いが渦巻きました。
人間の愚かさも決して他人事ではありませんし
何が正しいのか決断する時に間違えない自信もありませんが
後悔はしたくないなぁと私は改めて思いました。
人生までも考えさせられてしまった今作、
難しいお話が苦手な私でもすいすい読めて
物語に入り込めました!!

ちなみにネットで少し調べたら
“忘情水”は別名“孟婆スープ”とも呼ばれているらしく、
別名はちょっと…美味しそうなのかどうかww
えくぼのある人を見かけたらなるべく顔に出さないように
にやっとしたいと思います。
さすがに背中の北斗七星はそうそう無いでしょうから。
でも作中では非常に美しい描写でした。

火恋とは、悲恋でもあり、緋恋でもあるんだろうな。
萌×2寄りの萌です!

4

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