電子限定特典漫画付き
歩田川節炸裂の作品でした
代表作「友人関係」
10年前に初恋で振られた相手はいまの友人兼任セフレの和久井
それ以後10年色々な相手に振られ続けてる相原
和久井は振られる相原の心も体も慰めてくれる
何度でも振られてこい、俺が慰めてやるからと
相原は俺を振ったお前が何故そんなに優しいんだ
と頭の中は和久井への猜疑心で一杯
でも、和久井は相原を振った後に当時の恋人との関係を清算し「別れたから付き合う?」と尋ねました
それを、とりあえず感が出ていたとか卑屈になって
振ったのは相原の方でした
そう、相原は恋してるけど、恋愛関係とはどうして築いていくのかという現実的な知識や情緒が成長してなかったんです...w
とても可愛く、純粋な相原だけど、相手の表情や態度を過去の出来事に縛られまくった間違った解釈をして常に和久井を勝手に怖がり自分を弄んでると卑屈さ満開で悶々と過ごす面倒くさい一面も持つ相原なんです
その相原がきちんと成長して恋愛とは何たるかを友達という位置から根気よく教えて導いて、時に遊んでwいたのは和久井でした
相原の恋愛の芽は和久井が刈り取って摘み、柔らかく束縛してました
この、和久井は相当な執着心の持ち主です
でも、これくらい重くて怖い相手じゃないと
幼すぎて拗れた相原の面倒は見れません
和久井もなかなか健気で相原の恋愛の芽を潰すためとりあえず付き合った恋人と別れる度に、「恋人になる?」と相原に聞きます
それでも、頑なで卑屈な相原は断り続けてました
自分を振った和久井を責め恨んでいたから信用しません
でも、和久井はそれ以後もっと相原に振られていたのです
この、二人しか成立しない形、台詞、空気感が歩田川さんの独特な世界でしか出せないなと思います
そんなややこしい相原を導き懐柔した和久井の根気と執着愛がとても好きでした
相原のあほさも可愛いです!
他の人では書けないセオリーのない恋人関係に胸が高鳴りました
歩田川さんの詩的な台詞も堪能できた素敵な一冊です
季節外れですけど、表題作は冬に読みたい作品ですよね。先生のお話、しみじみとしていて大好きなのです。目を引くようなポップなキャッチーさやトリッキーな斬新さには欠けるかもしれないけれど、噛みしめるように、一人静かに楽しみたい内向きなBLといった感じです。
表題作と三つの短編が同時収録。
中学生の時、相原は和久井に告白してフラれたのに、社会人になっても二人の関係は微妙に続いている。セックスをしても友人だという和久井。ではなぜ、あの時相原を振ったのだろう…。結局、お互いを思っていたのに、意地を張って回り道。でもそれは相原が自分の感情を整理するために必要だった時間だった。それだけ、和久井は相原のことをよく「見ていた」から…。
同時収録されている短編もすべて王道なテーマですが、やっぱり先生の描き方が好きなのでどれも萌えました。淡々としたセリフの中に、人物の行動に、表立っては見えてこないけれど、深いところで滾っている相手への熱い思いが表現されています。
「双子の頭」 双子座をモチーフに、二つ年の離れた兄弟を描いたお話。いわゆる近親相姦がテーマですが、なんでかドロドロしていません。いつかは、それぞれの道を歩いて行かなければならない。でも、ずっと兄さんのココにいるよ…。弟の強い思いがちょっと怖いけれど印象的。
「ひつじ雲」 子供の頃はみんなとつるんで遊んでいたけれど、俺は一緒にいられない。だって俺は…。大学に進学した颯太は、一番会いたくなかった蓮と再会する。彼と過ごすうちに、颯太がそれまで抱いてきた迷いから解放されていく物語。
「0.8」 タイトルが示す数字は何でしょう?高校の美術部で一緒だった洋平と千喜(かずき)。その後洋平はアーティストに、千喜は私立高校の非常勤講師として美術を教えることに。二人はつきあっているけれど、千喜はいつも汚れた洋平の手が気に入らない。それは彼を好きになったキッカケでもあり、彼の才能への嫉妬の象徴だった…。
歩田川先生のお話はいつも人物の会話が面白く、会話というより対話に近い深さがあります。お互いが相手に心中を暴露していくプロセスを楽しませてくれるんですよね。相変わらず絵柄が独特ですが、ブレを微塵も感じさせず、表題作では目の表情に色気マシマシです。内省的な心理描写がお上手なので、文学テイストがお好きな方や、アートな雰囲気がお好きな方にオススメしたいんだなぁ。あと、やっぱり吹き出しが可愛いかったな。
表題作が終わって、後半分は違うお話なのか〜全部表題が良かったな…と思っていたら他の3作品も好きでした。短いのに濃かった。
◾︎表題
◾︎和久井×相原 幼馴染
「俺は何があっても友達だから」という、幸せなようで、相手によっては残酷なセリフ。ただ、どちらが残酷だったのか…という構造をしています。
歩田川先生は長い片思いが好きだなぁ。それ程長く思い続ける割には、下が結構ゆるかったりする笑
◾︎双子の頭
兄弟モノがそこまで好きではない私にヒットした実兄弟モノです。しっかりしたラストを見たい方はモヤモヤするかも。星座との絡め方がロマンチック過ぎず、斜に構えた自分のような人間にもじんわり伝わるいい作品でした。
◾︎ひつじ雲
短いのに大満足!!歩田川先生の作品は言葉の掛け合いが心地いい作品ばかりで、こちらもまさにそんな感じ。人を食った話し方をする2人が空を見上げながらあーだこーだ言ってます。
◾︎0.8
別れかけてるお話、大好きなんですよ。別れかけたところで、やっぱり彼が好きだと気づくお話も。その気づき方がまた…愛しさで泣きたくなる。
電子限定おまけ 表題1頁
ゲイである相原(受け)は、昔からノンケを好きになっては振られてばかり。そんな相原を慰めてくれるのは、中学校からの友人である和久井(攻め)で、相原がかつて初めて振られた相手だ。振られたけれどもずっと友人で、しかもいつしか身体の関係までできた。そんな折、先日振られた別の男に「やっぱり付き合いたい」と言われ、悩む相原だったが…。
中学卒業の時に、後悔しないようにと思って、ずっと好きだった攻めに告白した受け。その時攻めには彼女がいて、当然のように受けは振られました。
なのに、同性の友人に告白されても距離を置くどころか、攻めはずっと受けのそばにいて、受けがノンケに告白して振られるたびに慰めてくれる。そしてお決まりのようなセックス。
受けは、攻めの気持ちがわからず、拒みながらも拒みきれず、流されるまま抱かれます。抱かれたあと、自己嫌悪からウダウダ言う受けに、攻めは毎回「じゃあ恋人になる?」と軽く言います。
恋人がいるくせに受けを抱き、冗談のように「恋人になる?」と聞く攻め、それを本気だとは到底思えず断る受け。そのまま、初めて振られてから10年が経過しています。
最初は軽くて何考えてるかわかんない攻めにも、流されてはグダグダしている受けにもハマれず、うーん…と思いながら読んでいたのですが、ある箇所でその印象が一変しました。
受けと攻めがそれぞれの想いを打ち明けるシーンの、攻めのセリフ。その重さと痛さが、それまでの軽さを塗り替えた気がしました。そしてその重いセリフを、「そうしてくれたらよかったのに」って受け止めた受けのセリフに萌えました。
恋人になって2人の関係は変わったけど、2人の日々のコミュニケーションや過ごし方は変わらない気がします。素敵なお話でした。
同時収録がガチの兄弟もの、大学で再会した幼なじみもの、同じ美大出身のデザイナー×美術教師というラインナップの3本。
うち、ガチ兄弟の『双子の頭』。タイトルは双子ですが、2歳年の離れた兄弟で、弟×兄です。
弟の執着と、兄の煮え切らなさがなかなか心地よかったです。昔から寝ているのですが挿入はなし。背徳感がなかなか良かったですけど、くっつき切らずに終わっていて、続きが出るのだろうか…と気になりました。
表題作は、愛し合っているのに「友人」という言葉に縛られて、セックスありの友人関係のまま十年を過ごしてしまった二人の物語。
「友人関係」と「恋愛関係」
この言葉の間に差をつけて、自分で自分を縛り付けていた相原が、二つの関係の間にあると思いこんでいた溝を飛び越えてくるまで、執念深く十年でも待つ和久井。
自分が和久井に、どれほど愛されて執着されていたのか、考え無しの最初の告白で振られて以来、その事に気付きもしなかった相原。
結局は和久井の粘り勝ちだったのね。
同録作品は、更に長い執着愛の実兄弟物(双子の頭)と、幼なじみを追いかけてくる話(ひつじ雲)と、才能への嫉妬から愛を見失いそうになる話(0.8)。
どれもみんな、愛したら絶対離さない深い執着のお話。
歩田川作品の登場キャラって、線がサラッとして、空間に抜け感があるから、どんなキャラでも切ない気分で読めるけど、この絵じゃなかったら相当怖いよね。