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表題作四季無情

風祭夏緒 元F1レーサー・自動車教習所の教官
遠野春日 実業家と美人女優の息子・大学生

あらすじ

遠野春日は女優だった母親譲りの美貌で、どこにいても一際目立つ存在である。通い始めた自動車教習所では担当教官に襲われそうになったところを間一髪で元F1レーサーの教官・風祭夏緒に助けられる。夏緒から教習指導を受けるうちに、春日の心は急速に夏緒に傾いていく。

作品情報

作品名
四季無情
著者
神崎春子 
イラスト
笠井あゆみ 
媒体
小説
出版社
ミリオン出版
レーベル
DEEP collection
発売日
ISBN
9784886722683
3

(4)

(1)

萌々

(0)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
2
得点
11
評価数
4
平均
3 / 5
神率
25%

レビュー投稿数2

愛の臨界点。

今年に入り著者の作品がレビューされたのを拝見したのがきっかけで、笠井あゆみ先生の挿絵目当てに本書を入手しました。耽美とJUNEのボーダーに位置する作品ですが、さすがにゲイ小説に転向した作家さまだけあって、ただただ美しいだけのお話では終わりません。巻末に著者顔出し写真付きでインタビューも収録されており、BL小説のルーツに興味があるわたしとしては、当時を知るにはありがたいおまけでした。

主人公は高校卒業を間近に控えた遠野春日。実業家の父と元美人女優の間に生まれ、過保護に育てられた青年というよりは熟す前の美しい少年。通学途中ですら男女関わらず劣情を煽ってしまう彼は、大学進学後は車で通学しようと教習所に通いはじめる。そこで運命の男となる風祭夏緒との出会いを果たすのだが…。シリアス過ぎると逆に笑いに転じてしまう悪癖が邪魔して、「かざまつりなつお」のネーミングセンスに千鳥のネタを思い出してひゃっひゃしてたんですけど、こいつがとんでもねぇ男だったわけです。

無垢で世間知らずな少年が悪魔的な男に魅了され、弄ばれて堕とされる。タイトルにある「四季」は、四人の男の名前によって比喩されており、春日と夏緒の他、斗志秋と冬司が登場します。夏緒は実に悪魔のような男で、彼と関わる人間は悉く身を滅ぼされる。春日も例に漏れず彼の毒牙にかかっていくわけですが、夏緒には斗志秋というセフレがおり、夏緒をめぐって「春」と「秋」が反目する三角関係に。夏緒はウブだった春日を斗志秋との3Pに誘い、やがて春日と斗志秋の間にも親密な感情が生まれます。その後、突如襲った夏緒の窮状を助ける名目で複数の男達に身体を蹂躙されていた春日は、かつて女優時代の母親と通じ合っていた芸能事務所社長の不破冬司と出会い、一度は救い出してもらう機会を得る。そして最終的に春日が選んだ道とは…。

冬司と春日が出会った場所が「煉瓦館」といって、煉瓦造りのホテルを一部改装した背徳的な臭いがするその道の隠れ家なんですけど、もう、森茉莉嬢が描いた世界なんですよ。回数はあれどプレイ描写自体は意外とサラッとしていて短いです。なのに濃くて淫猥…。やはり古い作品のせいかな。先生の技量かな。笠井先生の挿絵がこれまたデザイン画のようで美しい。耽美です。世紀末芸術です。挿絵そのものにも大変価値があると思います。

作中に出てくるふとした表現、音楽やファッションなどに時代を感じ、序盤は苦笑しつつ結構軽いノリで読んでいました。ブレイクの絵画が出てくる時点で、そんな己の軽率さへ天誅が下るハメに陥るとは…。先生、ごめんなさい。敬意を欠いておりました。。このようなゴイスー小説、今の時代ではなかなかお目にかかれません。これぞやおい!体験をありがとうございます!!

最後に巻末収録のインタビューで印象的だったお話を少し。著者の描く世界はいわゆる耽美路線とは一線を画し、リアリティを重視している。その理由としてご本人が幼少時に中東で過ごした経験が影響していると語っていらっしゃいます。蛆がわいた人間の死体を目にすれば、やおいが理想とする永遠の魂や愛なんてきれいごと。『四季無情』の結末は悲劇ではありませんが、その後は誰も天寿を全うはせず、それぞれ適当な時にみんな死んでいくんじゃないかなーと思って書いていたそうです(怖)けれど、観念的な愛より性愛を信じる先生のスタンスがむっちゃカッコイイ!セックスによって剥き身にされる人間の姿こそがリアル。惚れます。

ちなみに主人公と同姓同名のBL作家さまがいらっしゃいますが 、全くの偶然だそうです。

評価は初読みのインパクトと貴重すぎる作家さまの存在そのものにつけさせていただきました。

11

救いのない話

95年の作品なので今のBLとは全然違います。一言で言うと最後に悪が勝つ、というか攻めに当たる男が本当に酷い奴でサイコパス・犯罪者で最後まで改心とか反省は皆無で美しい受け2人を自分の物にして支配するという話です。今でいうメリバかな。

攻めというより自分の気に入った者を徹底的に破壊する破壊神のような人。思考回路が理解不能です。年上の美人受けと年下の可愛い受けの持っている物全てを奪い去って2人の人生をズタズタにします。話が怖すぎてなかなか読み進められませんでした。

受け2人は教養があって話も合い、恋敵のはずなのに仲良くなって攻めと3Pとかもやっちゃいます。でも2人の愛する男は2人を他の男に犯させたり、輪姦させる事を何とも思わず寧ろそれを商売にする男。なんで高学歴なのにあんな男に惹かれるんだか、と昔あった悪い宗教集団を思い出します。

登場人物の誰にも共感できないので内容は完全に「しゅみじゃない」のですが、ストーリーは破綻してはいないしラストにもあっと驚かされたし、最後の作者の顔写真付きの対談も時代を感じて面白かったです。

ただ笠井あゆみ先生のイラストは素晴らしかった。今とはちょっと表現方法が違っていて、濡れ場も直接的ではなく植物のモチーフを使ったりしてキャラクターの心情を表す感じで耽美で芸術的でした。今のエロエロな感じもいいけどこれはこれでイイ!と思いましたよ。

イラストは神なので中和されて評価は萌です。でもこの作者の刑事物の話もあるとの事なので刑事受け大好きなんで買ってしまいました。なんかエロそうだし。また過激なのかなあ…ドキドキ。

2

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