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『蟷螂の檻』の1巻と同時に発売された2巻。なので、うん、2巻で完結だと思ってたんですよね。それが読み進めるうちに新しい登場人物が出てきたり、エピソードが出てきたり。え、まさか…?と思いつつ。はい、完結じゃありませんでした☆
という事で、2巻のレビューを。ごめんなさい、ネタバレ含んでいます。
育郎が大学生になったところから2巻は始まります。
何事にも興味が持てず、日々淡々と過ごす育郎。
そんな育郎に、名家のボンボンという事で、お財布目当てで声をかけてきた大学の同級生の飯田くん。
イケメンで、今でいうところのリア充の彼。
様々な遊びを育郎に教えますが、その過程で自分が育郎に恋愛感情を持っていることに気付くのですが。
ある日、深酒をした彼らですが、寝ているときに自分(飯田くんのことね)の股間に顔をうずめ自慰にふける育郎に、飯田くんが気付きます。
もしかして、育郎も自分のことを好きでいてくれてるのではないか、と一瞬浮かれる飯田くんですが、「ごめんなさい」を連発する育郎に、何か事情があることに気付き…。
そんな最中に育郎の父親の訃報が届き、育郎は大学を辞め地元に帰り、典彦が決めた女性と結婚するのですが。
と、そういう流れでした。
飯田くんを典彦の代わりにして自慰をしていた育郎。
妻を娶っても、彼女を抱けない育郎。
そして、自分を顧みることのなかった父親と、父親の愛情を一心に受けてきた蘭蔵への複雑な想い。
そして、そんな育郎を、自分にだけ依存するよう育ててきた典彦の執着心。
耽美な世界へようこそ!
って感じでした。
2巻では1巻で謎だった部分が少しずつ明らかに。
なぜ蘭蔵が知的障碍児になってしまったのかも描かれていました。
これがまた切ない…。
育郎のお母さんの気持ちも分からなくはないのだけれど、それはしたらあかんよ。と切なくなった。
けれど、それ以上に彼女をあそこまで駆り立ててしまった父親の業の深さにぞっとした。
父親の、蘭蔵への執着心も、なぜそこまで強かったのか。
そして、育郎を愛せなかった理由は何だったのか。
と、まだまだ謎だらけなのに、最後の、あのシーンはいったい何なんですか、でりこさん…。なぜそこで「次巻へ続く」になるの~~。
そして、自分の意志で典彦を最後まで受け入れてしまった育郎ですが、奥さんとの関係はどうなるんだろう。
出てくる登場人物たち、みんながいい人なんです。
育郎の妻のさち子も。
蘭蔵も。
蘭蔵を守ろうとする西浦くんも。
なので、なんとも哀しい気持ちになります。
飯田くんも、また出てきてほしいな。
もう、次巻が待ち遠しすぎます。
内容も神ですが、表紙がまた良いんですよねえ。
育郎の表情も、少しだけ見えている典彦の描き方も。
紙質とか、色遣いとか、もう素敵すぎました。
育郎の大学時代のお話から始まる2巻。この時代の男子大学生の雰囲気がいっぱいで背景もとてもリアルです。後ろに見える時計塔は多分○○田大学の大○記念講堂だと思う。
御曹司と噂される育郎を金づるにするべく遊びに誘う飯田と連れの男。育郎は財布ごと「やる」「好きに使え」と渡します。ただの御曹司には無い何かを感じた飯田は、それだけのことですっかり育郎を気にいり…。
飯田がとてもいい男です!遊び人で強引でずうずうしい。それでいて人好きのする男で、育郎も「くだらないな」などいいつつも、飯田と行動を共にするようになる。飯田はどこへ連れ回しても退屈そうな顔を見せる育郎の、笑った顔が見たいと思うようになります。
この作品、飯田のモノローグがすごくいいのです。1巻のレビューでちるちるインタビューから引用した「昭和の映画の様な」に同意したけど、これは映画と言うより小説です。
静かに語られる飯田の物語は、彼の中に小さな種火が生じてそれが燃え盛ることも出来ずに、種火のままずっとそこに残ってしまったような切なさと熱を感じます。飯田は再登場の予定があると言うことなので活躍を期待したいです!
育郎の嫁のさち子は、育郎に未だに抱かれることがなくても、典彦に當間家の秘密を知らされても、淀みのない瞳で育郎を見つめる姿が健気で、もしかしたら亡くなった育郎の母も、最初はさち子のように育郎の父を見つめていたのかな?と思うと苦しくなります。さち子もまた母のように狂ってしまうのでしょうか…。
典彦の育郎への執着は長い年月をかけて成就しようとしています。育郎自ら求めさせて彼の身体を手に入れて、次に手に入れるものは何なのか?はじめから縋るものは典彦しかなかったのだと思う育郎が、このままではまったく幸せになりそうもなくて悲しいですが、表情を崩さずに淡々と事を成している不気味な典彦の思惑が明かされる時、どんな衝撃的な展開が待ち受けているのだろうと、弥が上にも期待が高まります。
幼い頃の育郎のエピソードも悲しいばかりで、子供の育郎がとても可愛らしく描かれているため、不憫さも倍増です。狂い始めた母と、無関心な上に育郎への憎悪すら感じる父と、本心の見えない典彦に囲まれて、跡取りになることだけを矜持に生きてきた育郎が、父の遺言を見たときの衝撃を考えると、蘭蔵に対する仕打ちも仕方がないことのように思えます。蘭蔵を打ち、蹴って、暴言を吐いても、気持ちは沈むばかりなのです。全てを理解できてここに生きる育郎と、何も理解できずにここにいる蘭蔵。どちらも同じ闇の中にいるのです。
一途な気持ちが物語の清涼剤になっている西浦と蘭蔵が、事件に巻き込まれて?というところで続きになります。1巻で感じたメリバの予感が一層色濃くなりました。このまま突っ走って欲しいです。
人間関係も複雑に絡まってきましたね。
結局のところ、深山は育郎が生まれる前、後それからに
どういう風な立ち位置で、何を考えてどう動いているのかが
まだ読み切れない。
とうとう育郎と身体の関係を結んでしまった深山なのだが、
育郎をどうするつもりなのかもまた。
兄に関して。
弟のことを可愛いとおもっているであろう表情がすごく好き。
幼い頃から現在に至るまでの境遇。
育郎視点からしか見ていないが、実際どういう経緯でどのように過ごしてきたのか
そこも見てみたい気もする。
新たな登場人物も増え、
どういう顛末を迎えるか。
気長に待とうと思います。
せめてラストはみな幸せになっていただきい。
2巻で終わらないことがうれしいような切ないような。もっとこのお話が読めるのはうれしいんですが、まだまだどう転がっていくのか予測がつかないので、生殺し感に悶えてしまいます。早く続き読みたい。
ちゃんとお話は進んでいろんな疑問の理由も明かされるのに、関係の不安定さは1巻となんら変わらないというこの不思議なバランス。そういえばバランス感覚が異常に優れた作家さんでしたね。それが魅力でくせになってしまう。入れ物に入った色とりどりのとろりとした流体の動きを眺めているときのような感覚で酔わされます。
いやほんと、早く続き読みたいです。
昼ドラか!ってくらいドロドロなお話です。
登場人物はそれぞれ辛い境遇や過去があり闇をかかえている人が多い気がしました。蘭蔵を西浦が守りたいと思うのは彼のハーフであるという生まれからですし、育朗が典彦にだけ抱かれたいと思うのも彼には縋る相手がいなかったからです。例え、育朗の気持ちが依存であり、典彦に仕向けられたものだとしても、二人の関係を美しいと思いました。不穏な空気しか漂っていないお話ですが、最後まで見届けたいです。