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甘いだけの話でないことはわかっていて、尾上先生の初期作品のシリアスぶりもこちらのサイトのレビューから見知っており、なかなか手が出せずにおりました。
が、ついに、開けてしまいました。
ギリギリ明治かという時代設定で、身分差が厳然とある中での主従の想いが、切々と語られます。
哀しさがどうしても拭えないので、完全なハピエンとは言えないかもしれません。ただ、社会構造の壁や、この時代には不治の病等を乗り越えて相手を求めよう、愛そうとする主人公達の熱、想いの迫力が凄いです。
恋愛本来の姿とは、こんなに哀しく激しいものかと、教えられる気がしました。
甘いだけのお話ではないけれど読めてよかった。そして、こんなに激しく相手を愛する人物像は、最近の尾上先生作品でも息づいているから、花降るシリーズにもあんなに心打たれるんだなあと、源泉をたどれたようにも思います。
それでも、1945年シリーズはまだ手に取れない。。
まずは本作品を繰り返し読むところからです。
変革の時を迎えた明治大正という時代と家に翻弄され、罪を共有して生きるしかすべがなかった少年たちの激動の物語。
激しくも狂おしい2人に寄り添うのは、飴色をした小さな木箱が奏でる素朴なトロイメライ。
愛して、焦がれてやまないけれど絶対に許されない。
朗らかに笑い、同じ夢を見たあの頃には戻れない。
港に押し寄せる荒波のように苛烈な彼らの人生と、儚さと懐かしさを感じさせるトロイメライの曲調の対比が物悲しく、そしてどうしようもなく胸が締め付けられるのです。
ただお側にいさせてほしい。
それだけを望む、弓削の執着をも超え狂気を孕んだ鉄真への深愛に、人はこんなにも人を愛することができるのかと息を呑まれます。
普通の恋をすることが叶わなかった鉄真と弓削の、罪を共有している彼らにしか分からない不器用な愛の伝え方に魅了されてしまいました。
決して綺麗ではない、それぞれ形が異なる様々な人の情が入り乱れた非常に重みのある1冊です。
表現のひとつひとつが素晴らしく、知らないはずの景色が浮かび上がる印象的な情景描写と、美しくも重く苦しい純愛に没頭してページを捲ってはため息が出る。
しばらく忘れられそうにありません。
1本の壮大な大河映画を観たような余韻が残る作品でした。
名作ですね。ただ、わかりやすいハッピーエンドやラブラブ感、エンタメを求める方にはお勧めしません。ストーリー重視で切なさ痛さ耐性高めの方にはめっちゃお勧めします(読んでください!)。評価は”神”or"しゅみじゃない”の2択、と思いました。
ギリギリ死にオチじゃないあたり(これも捉え方による…)、結末は読者の想像にお任せします的な余韻が残される読後感、”しゅみ”なんかじゃ割り切れないない作品そのものの素晴らしさ、これ以上はまるイメージはないくらいの笠井先生のイラストもあって、”神”のほうの評価です。
前半がしんどくて、、うっかり寝る前に読み始めて後悔する重さでした。ただね、私は大好きなんですよ、世界中の男の嗜虐心をあおる無自覚エロスを宿命的にまとう薄幸受。凌辱も嫌いじゃないんですけど、これは、作者様の筆力のなせる技というか、描写に臨場感がありすぎて、読みながらつらくなりました(;;)
情景描写が素晴らしくて、色とりどりの花々でにぎわう庭園が目に浮かぶようでした。攻受の心も景色の一部のように美しい言葉で切々とつづられていて、彼らが目にする光景とともに、状況も感情も洪水のように押し寄せきて、それらに感情を侵食されていくような読書体験でした。怒濤の展開は一気読み必須です。
印象的な場面はたくさんあるのですが、お互いが見えていないところで、どれだけ相手を思って辛いか!という心情描写が素晴らしくて何度も抉られました。特に、弓削が鉄真からもらった桃を食べようとしたときに、その果実についている指のあとに気づいて、鉄真がどんな想いでもってきてくれたのかを察するところ、そこから鉄真に対する気持ちのあまりの強さに怖くなる弓削の心の動きが、死ぬほど切なかったです。
ラスト、見開きの笠井先生のイラストが圧巻でした。二人が幸せな心持で過ごしたであろう、その後の日々を推しはかれるようです。
一気に読みたかったけど、最後少し残しました…。結末が知りたいようで知りたくないような無意識の葛藤があったからかもしれない。
デビュー作で心が折れて、暫くして『彼岸の赤』を読んでみて、やっぱり少し苦手だと感じていました。それから作者の作品に免疫がついて少しずつ読んでいるところで、本作にぶち当たりました。圧倒されました…!!
1945シリーズは未読で、おそらくそのシリーズ群こそが作者の本領なのかと思いますが、本作は『彼岸の赤』系列の耽美系ど真ん中。笠井あゆみ先生のイラストがこれ以上ないってくらいマッチしていて、あああ〜久々に興奮しました〜!!!
まだ少年だった頃に出会った二人。宗方家を背負った嫡子・鉄真は、実父に犯され慰み者にされた初恋の相手をどうにかして家から解放してやりたかった。しかし弓削は命を賭して鉄真に仕えることでしか生きる意味を見出せなかった…
互いに思い合っているにもかかわらず、相手の意に沿わない形でしかその思いを表すことしかできない二人。弓削は過酷な運命を受け入れながら、執事としての矜持に縋ることで愛を手に入れるのです。その道のりはもう、壮絶の極みでした。
優しいお話も癒されるけれど、時にはこういう愛も読みたかったのだと気付かされましたね。ありがたいことに、その欲求を心ゆくまで満たしていただいちゃいました。本作でやっと作家様の魅力がわかったような気がします。素地が耽美だったのかも…と。
尾上先生の作品は様々な花と赤い色が意図的に描写されている印象で、きっと何か思い入れがあるのだろうなと思います。先生の作風って重厚で暗めで、個人的にBLを読み出したのが耽美方面からだったもので…もしかして若かりし自分に寄りすぎているから苦手だったのかもしれないなと思いました。同族嫌悪みたいな笑
久しぶりにそんなちっぽけな自意識を凌駕するような大作に出会えて、しばし余韻に浸っています。BL小説ではあれど、安易なハピエンに持っていかない結末が素晴らしかったです。
尾上先生を最近好きになったので、後追いで・・と思ってたら、なんと紙も電子も無い!ホリーノベルズさん、後生ですから、そこを何とかならないものかと強く思った一冊です。物理的に入手困難という飢餓感のみならず、読んだ後の飢餓感が凄い。読むんじゃなかったというものではなく、どっかに救いを求めて彷徨う感じです。入手困難な本、レビューすんなよとのお叱りはあろうかと思いますが、自分の気持ちを吐き出さないとやってられん!と思ったのでお許しください。大正時代のある商人と執事の長いお話。
14歳の時に父が亡くなり、宗方家の家令見習いにとの申し出に従って着の身着のまま引き取られた晶(あきら)。海外貿易も行っている大商人の家で、そこの兄弟、鉄真、一誠と触れ合いながら、少しずつ仕事に馴染んでいったが、ある日、「旦那様の仰る通りにしなさい」と言われて、主人のいる離れに行き・・と続きます。
攻め受け以外の登場人物(結構多い)
一誠(攻めの弟、無敵の人たらしの模様)、黒田(宗方家家令)、久松(家令候補)、三鈴(家令候補)、久保田(西園家番頭)、中根伯爵家の方、チギタ(台湾の通訳)、栄仁(台湾のマフィア)ぐらいかな。一誠が好きでした。黒田についてはなんと同人誌があるとのこと。
**以下 より内容に触れる感想
淡い想いを寄せていた鉄真をかばって、阿片漬けで正気を失った主人を殺してしまった晶。自分たちの思いとさまざまな事情から翻弄される二人の話を読みながら、「何とかならないのか」と考える暇もなく号泣の渦に巻き込まれて読了する感じのお話です。甘く幸せなところが無い!!!!!!!
最後は思いが重なって幸せだったと思うのですが、平穏無事な日常が無いんです。だから読み終わった後の「何か幸せな箇所はないのか?」という飢餓感が凄い。先に購入していた同人誌を読みましたが、それでも満たされることが無かったので、救われないこの想いをどう昇華したものか・・・。
晶と鉄真の狂気とでもいうべき思いにやられたのかな。
普段幸せ満点、にまにま読了タイプの本を読むことが多いので、久しぶりに「やられたー」と思いました。「お前は俺を連れていけ」というこのセリフ、この飢餓感のために何年たっても覚えている一冊になりそうです。にまにま幸せ本でないとイヤ!という方には難しいと思います。ご注意ください。