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表題作鳥籠

福岡凌平・サラリーマン
盈・16歳

あらすじ

福岡凌平は社命で地方に調査へ向かう。そこで地元の十和田家に世話になるが、そこで蔵に閉じこめられた盈という美貌の男を発見し…。

作品情報

作品名
鳥籠
著者
和泉桂 
イラスト
雪路凹子 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
発売日
ISBN
9784344839304
3.6

(12)

(4)

萌々

(3)

(3)

中立

(1)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
3
得点
42
評価数
12
平均
3.6 / 5
神率
33.3%

レビュー投稿数3

耽美な世界へようこそ

作家買いです。和泉さんに、雪路さんの挿絵、表紙の絵柄。読む前からお耽美なかほりがしてましたが、その期待を裏切ることのない耽美な世界満載の作品でした。

内容をざっくりと。すみません、ネタバレしてます。




時は大正時代。とある製紙会社に勤めるサラリーマンである凌平が主人公。
ストーリーは彼視点で進みます。

新たな製品開発のため信州に工場をつくることが検討され、その調査のために凌平が現地に赴くところから話はスタートします。
工場建設の候補地では地域発展のために工場誘致を積極的に行っていて、その兼ね合いもあり信州での仕事の期間中はその村の村長さんの家に滞在することになる凌平ですが、ある日蔵に一人の人物が閉じ込められていることに気付き…。

というお話。

凌平は父親が美術商だったことから子ども時代からきれいなものを目にすることが多く、「美」に対する探求心が半端ない男性です。理想とする女性像もそれに相伴っていて、自分の求める「美」を兼ね備えている女性にしか食指が動かない。

今まで自分が求める女性に出会ったことのなかった彼が、蔵に監禁されている人物・盈(みちる)を一目見たときから心奪われてしまうシーンが印象的。初めて凌平が盈に出会ったとき、盈は村長さんに抱かれているところだったのですが、和泉さんの文章と雪路さんの絵柄が相まって盈の人離れした美しさが端的に描かれていました。

盈はなぜ蔵に監禁されているのか。
そもそも盈はどういう人物なのか。
盈が自身の境遇について不満も持たず悲観もしていないのはなぜなのか。

その謎を軸に、凌平があっという間に盈のとりこになり引き込まれていくストーリーにページを捲る手が止められませんでした。

盈の存在はとても不可思議なものですが、彼がなぜそうなってしまったのかが読んでいくうちに透けて見えてくるので盈が気の毒で仕方なかった。

そして、「魔性」という形容詞がぴったりな盈に絡めとられてしまった凌平が、徐々に壊れ、闇におちていく様は圧巻。盈を哀れに思い、盈が自分の横にいてくれるだけでいいと願い、外の世界へと連れ出した凌平が、どこまで堕ちていくのか。

視点が凌平であること、盈があまり自分の気持ちを話さないこと、そして盈自身内面が成熟していないこと。それらが絡み合い、盈の気持ちが分かりづらい。それゆえに凌平も盈を信じ切ることができずに堕ちていってしまうのですが、最後は彼自身の力で戻ってきてくれて本当に安心しました。

物語の中盤に、凌平が子どもの頃に父親から見せられ講釈を聞いた「アダムとイブ」の絵についての逸話が書かれていますが、それが盈のすべてを物語っているような気がしました。

無知ゆえに、善も悪も分からない。
ゆえに盈は神々しい美しさを秘めているのだけれど。

最後に盈視点で、彼の気持ちが描かれています。
タイトルが『籠の鳥』というのがこれまた良い。
盈は盈で、彼のすべてを懸けて凌平を求めているのだと。
それが分かって本当によかった。

盈は子どもの頃から母親から受けていた虐待(あえてこう言いたい)のために、健全な人間関係が築くことができません。
彼が持つ魔性性のために異母兄である村長さんによって監禁されていたことにより、「世間」というものを知らずに育っています。
彼のそういった生育環境ゆえに、他人と性行為をするという事がどういうことなのかという倫理観を盈は持ち合わせていない。ゆえに、凌平以外の男性とのセックスシーンが何回かあります。地雷な方はご注意を。

自分が求めていた「美しさ」をもつ盈に惹かれた凌平。
自分を初めて外の世界へと連れ出してくれた凌平を、子が親を求めるような純真さで追い求める盈。
一見歪んだ関係のように見えて、二人にしか理解しがたい純愛が、とってもツボな作品でした。

それと雪路さんの描かれた挿絵がこれまたとっても良かった。
イメージにぴったりで、萌え度は確実に上がりました。

8

無垢な美少年と大正リーマン

匂い立つような色香の漂う作品です。

和泉ワールド全開♡(´˘`๑)

1

「聖」なのにエロい、っていうのが最強だと思います

電子書籍で読了。挿絵なし(雪路画伯のイラスト効果がないのが評価に影響している様な気もします)。

私にとって和泉さんのお話は「大メロドラマ」なのです。上手く塡れると怒濤のような「グォ~ッ」っていうのが攫っていってくれるのですが、何かで引っかかるとどうも上手く乗れない。
今回のお話は、悪くはないんです。どっちかって言うと好みの設定なんです。
うーん、でもどうして「グォ~ッ」が来なかったんだろう……

多分私は「ファムファタールに振り回されたら、もっとボロボロになって欲しい」と思っているのかもしれません。「福岡よ、堕ち方が足りん!もっとどん底まで堕ちて、インテリっぽい言訳をグズグズしろっ」っていう感じでしょうか。

盈が福岡をどう思っていたかが明かされるラストは美しいです。なので、お話を包む耽美な匂いに反して爽やかな読後感です。

5

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