web BABY 執事特集

「執事特集」だと思ったのに…。

「執事」ああ、なんて甘美な響き。もぅ、この字面だけで食指が動く。禁断の主従。
疲れた夜には癒されたい。そんな気持ちで購入したのに。
結論から言うと。「執事特集」では無い。これから読もうと思っている人はご注意を。

◆ そうは言っても巻頭の楔ケリ先生の「under the skin」はさすがだ。
執事のセオリーを踏襲している。
クロエは前当主、ルイの父親に仕える執事だった。早逝した父の跡を継ぎ、次期当主となったルイは、放蕩息子。職務中の時間にも会社には来ず、クラブで女を侍らせてセックス三昧。まるで当主の自覚が無い。前当主に淡い想いを抱いていたクロエは、それでもルイに尽くそうと努めている。
禁断の歳の差。なのに年齢を感じさせない美しい執事。子供の頃からクロエに執着していたルイ。くーっ！ 「主従」以外にも「禁断感」を盛り込む手腕はさすが。
しかし、ラストには意外なダークネス感。

◆ 「王子様の受難3」小宮山こまち先生
オール読み切りと思いきや、続きもの。しかし、冒頭にモノローグでこれまでのあらすじが語られるので、問題は無い。しかも、「執事」モノでは無い！「執事」コスプレものである。これは…。早速の掟破り。高校生、文化祭、執事コスにメロメロ。以上。

◆ 「異常×愛情」lulico先生
ここで。通常運転「執事」に戻る。ホッ。
15歳の頃、家の執事への初恋に気付いた雄介は、素直にそれを父に告げ、叱責される。
それは「異常」なことなのだと。それから10年。家を出て海外で学業を修め、仕事をしていた雄介は亡くなった父の跡を継ぐ為に帰国する。待っていたのは、10年前と少しも変わらない可愛いらしいままの執事、都築だった…。ちょっぴりギャグ要素。父の教えを守り、異常では無い、と踏ん張ろうとする雄介の努力虚しく。執事である都築の方がエロい。エロく煽って来る。都築の方に禁断感皆無。

◆ 「当主様は遠くへ行きたい」一路先生
ん⁈ これ、何か。絵が似てる⁈ と、思って調べてみたら、鶴来いちろ先生の別名義でした。先生のサイトで「別名義で描いてみました。」と告知されてます。おお！「結婚してください！」以来、久々に鶴来いちろ先生の作品に触れて嬉しい。けれど短か過ぎて残念。
当主のギルバートは、勧められた見合いをぶち壊し、叔父の逆鱗に触れ広い屋敷に謹慎中。
常に側に仕える執事・ノアのメガネの奥の表情は読めず、塩対応。しかし、ノアがメガネを取って、オールバックにした髪を下ろすと、それは。当主がずっと愛していた可愛いらしい初恋の人なのだったー。っていう。ぽんぽんと飛び出す台詞がリズミカルなコメディタッチ。

◆ 「うつつのゆめのゆめ」高橋まき子先生
強面でヤクザの様な当主様は、実は甘えん坊。仕事のストレスで酒に酔った夜は、甘えて、泣いて、世話役のちひろを抱く。しかし、ちひろはそんな当主を愛していた。恋人の代わりでもいい、抱かれていたい。そんな切ない想いを募らせていたある夜…。っていう、あるあるもの。女の代わりにして貰おうと髪を伸ばしている、なんて。うーん。BLとしてはどうなの？的な。ファッションならともかく。もちろん女の代わりっていうので愛されているわけでは無いのだよっていうオチですけども。モヤります。

◆ 「猫執事」加藤むう
そしてラスト。ビターな「猫執事」いや、猫って。
ホームレスが救けた猫が恩返しだと言って、執事姿になってやって来る。
それはホームレスが見た一夜の夢？マッチ売りの少女の凍える一夜の夢？
ラストカットにはゾワゾワが止まりません‼︎
これをラストに持って来るなんて。悪気しか感じられません‼︎

癒されたい夜だったのに。
癒されたい夜にはお勧め出来ません。
評価は一路先生と楔ケリ先生の作品に「萌」で。