• 紙書籍【PR】

表題作明日が世界の終わりでも

御厨玲治・26歳・プログラマー
辻堂望・19歳・学生

その他の収録作品

  • 約束
  • 集い
  • あとがき

あらすじ

他の男に抱かれえる恋人を「見る」こと―それが、玲治が望に求めたセックスのやり方だった。
毎回違う男に組みしかれて乱れる望を、ただ見つめるだけの玲治。
自分では指一本触れない残酷な愛し方に傷つく望だったが、身体中に絡みつく熱を孕んだ玲治の視線は、どんな愛撫よりも望を蕩けさせた。
快楽と哀しみに翻弄されながらも、望は玲治を愛することを止められない…。
人生を変える運命の恋を描いた表題作他、二編を収録。

作品情報

作品名
明日が世界の終わりでも
著者
榎田尤利 
イラスト
茶屋町勝呂 
媒体
小説
出版社
笠倉出版社
レーベル
クロスノベルス
発売日
ISBN
9784773002614
4.1

(19)

(10)

萌々

(5)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
8
得点
76
評価数
19
平均
4.1 / 5
神率
52.6%

レビュー投稿数8

好き過ぎてヤバイ

表題作、受けの「望」視点で語られていながらも、話が進むにつれて、攻め「御厨(みくりや)」の静かでもってマグマの様な恋情に、心が揺さぶられてどうしようもなかったです。
この2人の愛の形が歪(いびつ)だと、お互いが分っていて苦しんでいて。
愛されているのは分っていても我慢を強いられた愛だから、若い望の渇望が破裂してしまった結果が、痛すぎて悲し過ぎました。
ため息を吸い込んだ位に深く沈みました。
だけど、表題作のタイトルが、その心を掬ってくれるのです。
愛し合う2人の心と体の距離が出来てからの望の恋心が、その希望を語ってくれて、本当に嬉しかった。
「明日が世界の終りでも」の次には簡単には言えない愛の言葉が続くのです。
これ、本当に大好きです。

次2編が、表題作の希望をより繋いでくれています。
榎田先生は本当に優しい。
城下(御厨の親友)と悠一(城下の顧客)の恋を、御厨と望を少しずつ絡ませて、表題作の尖った狂気とは違う優しいテイストで進ませています。
絶妙な辻褄合わせが心地良くなって、この2編が、表題作であんなに沸き立っていた灰色の心を、ドゥドゥと落ち着かせてくれているようでした。
4人の生い立ちや戸惑いや決意が説明される度、1人1人の気持ちを大切に抱いている自分がいて優しい心にさせて貰えるのです。

自分の強欲と相手への思い遣りのバランスが不安な時、この赤い表紙を思い浮かべたら良いと思う。
この1冊全てが「神」でした。

3

大好きです。

愛する者に触れてもらえないなんて、他人にだかれるなんてあんまりだ!
たとえ、幼児期の虐待が原因だとしても、代償として視力を失ったとしても・・・・・

と悲壮観を感じていましたが、長い間辛抱強く玲を待つ望の姿や、大人になった望の姿を感触でしか確かめられない玲の心情を思うと、胸が締め付けられるようです。結果的に、涙を流しながら起きる事がなくなった望が作中にいて良かった~
もう1cpの話も大好き。確かにメインよりも地味な話ですが、グッとくるものがあります。思わず泣いちゃいました。
茶屋町さんのイラストも素晴らしい。余談ですが、新装版(未読ですが)より絵は好きです

3

もし明日世界が終わったら

抱いてくれないどころか、触るのさえも許してくれない彼氏のお話。
救いようのないわけではないのですが、最初から最後まで甘くて幸せなシーンが一度もない(甘ラブな描写がない)作品て珍しいと思います。
なので、明るいお話が好きな方には向かないかもしれません。

玲は望を好きで、望も玲を世界一好きなのに、どうしてもこうならないといけなかったのかな、とせつないお話です。
望が何故抱いてもらえないのか、触るのもダメなのか、時間をかけて聞いていたらもっと違う結末になっていたと思うのに、何故ずっと玲の言うとおりにしていたのかなあ、とも思います。

玲が望を他人に抱かせる事を望が拒まずここまできたのが不思議でした。
自分では抱かないのに浮気はダメ、て、玲のほうが上の立場にいるようでちょっと恋人として変な感じがしました。

暗い結末のお話はあまり好みではないんですが、これはこうなってしまったのは仕方ないのだからとこの先を考えている前向きさがよかったかもしれません。

玲は望のために命をかけ、望は玲のために残りの時間をすべてかけます。
世界が終わるその時まで、その日まで全てを君に費やす覚悟があるというある意味で究極の前向きかもしれません。

ここで終わりならそこまで好きだと思えなかったかもしれませんが、この表題作には続きがラストにあります。
結末は是非本で読んで欲しいなあと思います。

「約束」 「集い」
表題作「明日が世界の終わりでも」の他に入っている2編、これがとてもよかったので神評価にしました。
地味な話ですが狂気をはらんでいます。遊びなれた城下と初めての恋愛をする悠一のお話。
出会いから付き合って、その後二人がどうなったか…
最後はハッピーエンドなのですが、甘くて幸せなだけがBLの楽しさじゃないなあと思える作品でした。

この作品には会いたい人に会いにいけない、そんな臆病な人達が出てきます。
世界の終わりとは、地球が滅亡するという意味ではありません。
もし会いたいのに会いにいけないでいた好きな人が明日死んでしまったら。自分が死んでしまったら。
明日も同じ日がくるとは限らない。
明日もし世界が終わったら、とはそんな臆病な人達に一歩を踏み出させる合言葉として使われています。
途中苦しくて紆余曲折ありますが、幸せな終わりを迎えます。
命懸けの恋愛をしているカップル達のお話を、是非是非読んで欲しいと思います。

3

愛の形

かつて茶屋町勝呂さんの挿絵に惹かれて手にとった、榎田本。
榎田先生は、BL界きっての安定した暖かい世界観のエンターテイメントを送り出す大作家さんだが
このところ続いている新装版の流れのお次は、この「明日は世界の終わりでも」とのこと。
この古い作品に再度脚光が当たるのは歓迎なのだが、新装版になるにあたり挿絵が変わる模様。
藤たまきさんも好きな作家さんではあるのだが、この作品には茶屋町さん!と思っていたので
それを惜しみ、旧版も手に取って欲しいとレビューを書くことにしました。

出会い、愛し合いけれどそれは痛みを伴い、それに耐えきれず別れ、事件が起こる。
不可思議から凄絶へ、でも最後にそれを越えて光が見える…そんな物語です。

              :

大学生の望の恋人は、図書館で会った美しいプログラマーの玲。
二人は確かに愛し合っているのに、彼は望を抱こうとしない、
「望が誰より大切なんだ。だから僕には絶対触れちゃいけない」と。
そしてやがて、彼は望を自分の親友である坂下に抱かせるようになる。
それを見て「視線でセックスをする」…と言う玲。
玲の真意に不安を抱きながらも、玲を愛している故にそれを受け入れる望だったが、
やがてそれに耐えきれなくなり…

玲の過去、そして玲の起こした事件、劇的な展開とで物語は終わっていく。
「たとえ明日が世界の終わりでも 僕はきみを待ち続けている」と、希望を残して。

後半はスピンオフ、『約束』。
事件から6年後、玲の親友だった美容師の坂下と中学教師・森野の話。
客として出会った真面目な森野と付き合うとうになった坂下だが、
自分の方が彼に魅せられたことを認めたくないが為に浮気をしてしまう…

最後の『集い』は森野視点。
坂下と別れて半年、定期的に送られてくる坂下の手紙に返事こそしないが、
彼を忘れられずにいる森野は、点字教室で玲とお互い縁があることを知らずに出会い
互いに怖くて待っている人に向けて一歩が踏み出せないことを話し…

そして、最後はまるで映画のラストシーンのようなエンディングに繋がります。

2

切なくて温かい

表題作は玲[攻]と望[受]との切ない話、「約束」はその6年後で玲の友人の城上[攻]と悠一[受]との話、最後の「集い」はその4人が出会うエピソードで締めくくられています。

心にずしんと来るのは表題作。
玲と望は恋人同士なのですが、玲自身は決して望を抱かずに城上を始め他の男に抱かせそれを見ているだけ。
SMプレイのそれではなく玲は過去のトラウマからそうやってしか愛せない人間。
望は次第にそれに耐えきれなくなって行き、そして悲しい事件が起きます。
刑務所に入る玲に望は待っている、いつまでも待っていると伝えるんですがそれも他人を通じて伝えるのが切ない。

しかしこの話はそれだけでは終りません。
その後の2話は遊び慣れた城上とノンケで初心な悠一との恋を書きながらも同時に6年たってもずっと待っている望の姿も登場し、「集い」では出所した玲がまず悠一と出会います。
玲と望との再会シーンはあえて書かれてはいないのですがそこがまた良い。
6年の間での望の成長っぷりは城上との会話で読み取れるのですが、その望と玲がこれからどう共に歩んで行くのか。
最後のページを読み終えて、目を閉じてふうと静かに息を吐き出したくなる作品でした。

白と黒とが印象的な茶屋町さんの挿絵も見事。
挿絵はこうあって欲しいなーと思う挿絵作家さんの1人です。

1

この作品が収納されている本棚

マンスリーレビューランキング(小説)一覧を見る>>

PAGE TOP