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富士見二丁目交響楽団シリーズ第5部 闘うバイオリニストのための奇想曲

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あらすじ

大人気シリーズの最新刊!中堅チェリストのフィリッポ、チェーザレの二人とクリスマス・リサイタルをやることになった悠季。今ひとつ自分の演奏に対して自負を持てない悠季に対して業を煮やした圭が放った言葉と行為とは!ルビー文庫創刊11周年 冬のフェア開催!ラヴァーズ・キングダム2003 今夜、貴方がボクの支配者―

作品情報

作品名
富士見二丁目交響楽団シリーズ第5部 闘うバイオリニストのための奇想曲
著者
秋月こお 
イラスト
後藤星 
媒体
小説
出版社
角川書店
レーベル
角川ルビー文庫
シリーズ
寒冷前線コンダクター 富士見二丁目交響楽団シリーズ
発売日
ISBN
9784044346416
4

(4)

(2)

萌々

(0)

(2)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
1
得点
16
評価数
4
平均
4 / 5
神率
50%

レビュー投稿数1

僕は君の才能に嫉妬を覚えている

シリーズ第5部の2冊目です。通しで24冊目になります。

《出版社あらすじ》
イタリアでの留学生活を送る悠季は、年末年始を圭とともに過ごすため、故郷・新潟へ帰ってくる。少し遅い新婚旅行も兼ね、老舗の温泉旅館に宿を取った二人は、身も心も深く求め合い、満たされた幸せを感じていた。が、温かく迎えられたように思えた実家で、悠季は姉から思いもよらぬ言葉を聞かされ…!?圭の視点から描かれた外伝「ある架空の郷愁について」(原題「形象と音楽と」)も収録。

中堅チェリストのフィリッポ、チェーザレの二人とクリスマス・リサイタルを行うことになった悠季。今ひとつ自分の演奏に対して自信を持てない悠季に対し、業を煮やした圭が放った言葉と行為とは? 二人の思いがぶつかり合う表題作の他、故郷のが、姉から思いがけない言葉を聞かされる「雪の宿だより」、その事件を圭の視点から描いた「ある架空の郷愁について」の全三編を収録。

収録作
・闘うバイオリニストのための奇想曲
・雪の宿だより
・ある架空の郷愁について(原題「形象と音楽と」)

「闘うバイオリニストのための奇想曲」では、音楽家としての圭と悠季の関係に変化が見られます。
 悠季はトリオ・ダ・ガンバの練習やエミリオ先生とのレッスンにおいて自己主張が激しくなっていることを自覚して、自信過剰になっているのでは?と不安になり、そのことを圭に相談します。悠季の「やること」と「言うこと」のギャップに腹を立てた圭は、天才的な才能を持っているのに強度の悲観主義に囚われて猫かぶりするのはやめ、僕と対等のレベルにいる自分を自覚して下さいと叱責し、自分が振るM響との《シベ・コン》共演を要請します。さらに圭は悠季の才能(作曲家との交感能力)に嫉妬していることも告白します。プライド高き圭の膝を折ったも同然の告白により悠季は2人の今後を考えて不安で眠れない夜を過ごします。翌日に圭は高嶺に国際舞台での初共演を攫われた悔しさからくる八つ当たりだったと謝罪していましたが。
 それから、恩師・東田先生の娘の由布子ちゃんが悠季の婚約者だと言って突然ローマに現れます。一騒動の後には、トリオ・リサイタルの稽古で忙しい悠季に代わって圭が彼女の面倒を見てやります。そしてリサイタル当日には、東田先生夫妻&由布子ちゃん、留学から帰る途中の延原さんも聴きに来てくれますが、悠季には納得のいかいものが残る演奏となりました。

「雪の宿だより」は、悠季が芙美子姉さんに強いられてカミングアウトする話です。圭のM響常任指揮者就任に伴って4月からは別居生活が始まるため、圭と悠季は年末年始を新潟の老舗温泉旅館で過ごすべく帰省します。従姉妹の早苗ちゃんが働く旅館では、圭のお祖父様と伊沢さんの仲を知っている女将の配慮により2人は幸せで寛いだ6泊7日間を過ごすのですが、守村家では歓迎されませんでした。31日にフミ姉さんに2人の関係が発覚して、圭は守村家への出入り禁止となり元旦に悠季は1人で実家に出向きます。ちなみに2人のことは悠季の姉たちだけが知っている状態です。

「ある架空の郷愁について」は、圭視点です。圭は悠季の故郷を初訪問して以来、ここを自分の故郷にしたいと思ってきましたが、3度目の訪問にしてその願いは断たれます。しかし、2人の関係に気付いていながら静観してくれていた八重子姉さんは、時期を考えて再訪すれば問題ないと言ってくれます。
 翌日、実家への年始の挨拶から戻ってきた悠季は心中が晴れやかではない様子でバイオリンを弾き始めます。濁りの感じられた音色が途中から澄み切った音色へと変化した時に、圭は悠季の表情を覗き見ます。そして彼の心が現実世界にはないことを知ります。バイオリンを奏でることで幸福な音楽世界へとダイブしている悠季。圭は彼の傷ついた心の拠り所となれなかったことに喪失感を覚えます。さらに、自分が音楽家としてこのままだと、ミューズの申し子であり生まれながらの芸術音楽の使徒である悠季に近いうちに必ず置いて行かれてしまう!という思いに打ちのめされそうになっているところで、話は次巻へと続きます。

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