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やっぱりラストを読むと非BLではないかなと思わされる作品。
母親というある意味愛情の象徴である人を恐れて
食卓を囲むのを拒否していた陸が
形ばかりだった「家族」という箱を抜け出して
新しい場所で自分にとっての本当の「家族」を手に入れる。
ある兄弟の成長の物語としても読めるとおもいます。
本当においしそうにご飯を食べる陸と潮を見ることができてよかった。
虚を受け入れて現実に帰るのが「うつしみの手」なら
次に載っている「帰る男」は現実を受け入れることのできない男を描いたお話。
喪失の痛みのどうしようもなさが胸に残り、なんとも言えない読後感です。
明治さんはひとの無意識領域にアクセスする能力を持ってるんじゃないか?と思っているのだけど、このシリーズはその辺がかなり表面に現れていてすごく面白かった。
まるで文学作品みたいな気配すら感じさせるところがあるけど、受けのかわいらしさや軽やかさも併せ持っていて、重いだけでは無い個性が秀逸。絵のセンスも抽象絵画みたいな無意識に訴えてくるものがあって非常に惹かれる。
その明治さんの作品の中でも「帰る男」という、この本に収録されている作品は…何がツボなのかわからないが…どうしようもなく心に突き刺さる作品で、大号泣…。SMテーマな作品だったのかもしれないが、ただのSMでおさまらない…人間の業の哀惜みたいなものがこの短いページ数で描かれていて…本当に驚いた。どこかの映画監督に映画にしてほしいくらい。
ボーイズラブに於ける性行為とは、こんなに
痛々しいものだっただろうか、とふと思って
しまう一冊です。シリーズ前半を納める
『リアル1/2』と併せ読むと更にそう思えて
くるでしょう。
代償行為としての性行為が展開される中、
得るべきものをきちんと得た人もいれば得る
事の出来た筈のものを逃がしてしまった人も
います。その機運の善し悪しを渦中にいる
その時にではなく、過ぎ去ってから知ると
いうのが余計に苦さを感じさせるのです。
三村家の兄弟とはまた違った感じの兄弟ものですが、わたしゃごっちゃに。
これは2冊併せて読まないと「リアル1/2」だけではなんだかよくわかんないと思います。(私だけですか?
母親は男を作ったりですっかり破綻した家庭。
そんな母親からの抑圧によるストレスが原因で潔癖症なうえ二重人格な弟と、こっちは先天的なのか?やはり二重人格っぽく色情狂な兄の話。
眠っている間は別人格となる弟は、普段人に肩を触られるのも気持ち悪がるくせに、夜な夜な兄の元へ行きひとりでは処理できないことを兄に委ねるというお話で、兄が弟をいいようにしているように思えて実は弟に振り回されているという、ちょっと痛い関係です。
そこにいい感じに挟まってくる兄のセフレ。この人がまたとっても人でなし(笑)
兄弟同士もセフレとの間にもその行為に愛はなく、一種虐待に近い感じでちょっとやだな~と思っていたのですが「うつしみの手」を読んでいくうちに、だんだん兄弟の関係にも変化があり、最後は少し救われました。
「うつしみの手」には、他に3本短編が収録されていますが、その中の「帰る男」が悲しくてよかったな~。途中でドンッと突き放されるこういう感じ、好きです。
前作リアル1/2の陸と潮との兄弟話が完結、それに加えて短編が3作収録されてます。
最後まで陸は己がセックスをしている事に気付かないのだけれど、それでも陸は少しずつ知っていく。
潔癖で、己を責める立場である筈の母の不貞を、そして兄が男とセックスしている事を知って、潔癖さと若さ故の純粋さから陸はそれを本能的に嫌う。
そんな時に、陸は己が犯されている夢を見て夢精をする。
そして少しずつだけれど潔癖性を筆頭にして閉じていた世界から、外へと出ようとする。
そこは潮と陸との世界、その世界にはまだ大きな世界があるけれど陸はまだそこにまでは行かない。
陸は言う、自分の身体はもっと大きくなるのだ、と。
そう、確かに陸は大きくなる可能性を秘めている、おそらくは潮よりも大きく。
それを潮は知っている。
相変わらず潮は何を考えているのか分からなくて、そこは読者へと託されるのだけれど、潮という人間は分からないけれど不可解ではない。
最初は潔癖で夢遊病の陸を潮が一方的受け止めているかの如くに始まったこの話は、陸が潮にとって大きな存在になるだろうという予感を持たせて終る、勿論陸にとっても潮は大きな存在だけれど、それ以上に潮にとって陸は大きな存在になる、多分。
他短編もエロをストーリーに上手く練り込んであって必然性のあるエロになっている月並みな言い方だけれど珠玉の作品集。