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表題作最後の夏休み

葛城平/サッカー部エース
遠野旭/サッカー部エース

あらすじ

葛城平と遠野旭は、共に中学3年生で、サッカー部の良きライバル。中国遠征を目標に日々の練習を頑張ってきた。そんなある日、旭の母親が失踪し、母子家庭だった彼は一人ぼっちに。平は、なんとかして旭の力になってやりたい。が、旭が夜のアルバイトをしているのを、平が知ってしまい、二人の関係はぎくしゃくしだす。平と旭の厚い友情の行方は…。

作品情報

作品名
最後の夏休み
著者
倉科るり 
イラスト
穂波ゆきね 
媒体
小説
出版社
小学館
レーベル
パレット文庫【非BL】
発売日
ISBN
9784094206715
4.6

(3)

(2)

萌々

(1)

(0)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
2
得点
14
評価数
3
平均
4.6 / 5
神率
66.7%

レビュー投稿数2

大切な一冊

読み返す度に、まだ読めるかな?と不安になるけど、毎回そんな気持ちを見事なまでに打ち砕いてくれる一冊です。といいますのは、文章が主人公・平の話し言葉だから。

でも、中学生が友人の耐え難い不幸に一緒になって対峙し、葛藤する様をリアルさをもって表現するなら、こういう手法が効果的に思えます。そして、かわいい文章なのに視点が鋭く、そのギャップに唸らせられます。
さすがはコバルトでもご活躍された方です。今はどうされてるのかなぁ。。

サッカーを通じて唯一無二の友人となった平と旭のお話です。
旭の私生活のおいて非常に辛い状況に追い込まれるのですが、平の目線だったからまだこの程度で済んだのでしょう。そう思うくらい、旭の心の傷の描写は容赦なく痛い。
どうすれば旭の力になれるのか必死に考える平、そして同時に旭に対する気持ちが友情と呼べる以上のものだと気付いてしまう平の苦悩。平はとても頭のよい子で、中学生という自分の立場を理解してるところが、この作品のよさにも繋がっていると思います。

そして旭。
彼は自分の存在自体が否定されてしまうような時点まで追い込まれてしまうのだけど、彼の強さをもってなんとか前を向こうとするのですが、、その強くあろうとする姿が痛々しくてやるせないです。
そんな旭も平の存在に救われていたのですよね。
自分のために泣いてくれる平に。

素敵なセリフが沢山あります。
「いつだって誰かが旭のことを考えているよ」
「大変な仕事も大変じゃない仕事もないし、立派な仕事も立派でない仕事もないのよ」
じんときます。読むたびに初心に戻れる気分になります。

キスすらなしなのでBLとしてはイマイチなのかもしれませんが、そこまでに至るまでの過程が丁寧に書かれてる恋愛未満の名作として是非読み継がれていって欲しい作品です。
何はともあれ、私は旭と平が大好きです。彼らの幸せを願ってやみません。

穂波ゆきねさんのイラストが、また非常に合っているのですよ。なっっんて可愛いんだ。

蛇足ですが、、
ここでは平がかわいくって旭が大人っぽくあっても、将来は平×旭なんだから、素敵。
実は作者さんのパロディと称するそんな話もあったりします。
本当はパロディだけで終わらせて欲しくないのが願いなんですけどね。。

5

お互いが好きって気持ちがいっぱい

可愛くって可愛すぎて恋愛云々の感想を書こうとしても難しいお話でした。
男の子のほうが女の子より大人になるのが遅いって言いますが、BLでたまに中学生のものを読むと実際よりは大人びてる気がします。

これはまさしく、恋と言うものがまだ実体として感じられる前、友情と区別がついていないような頃の等身大の男の子を描いている作品だと思いました。
主人公の平も、君は好きより優位にいる、というふんわりとした感覚をつかむ程度です。

中学生でともにサッカー部のエース・平と旭は親友で、仲がよくてこれからもずっとそうだと思ってきたのに、ある日子供の力ではどうにも出来ない不幸が旭を襲います。
中学生に耐えられないような境遇に頑として立ち向かう旭は、心配する平の気持ちもはねのけ、2人の仲は次第にすれ違って行きます。

心配する平は旭に幸せになって欲しい、笑って欲しいと願いながら同時に
自分には力がないという子供の立場もわきまえています。
子供なりに一生懸命なところが、ただ単に気楽なハッピーエンドを目指していないという深い作品です。

文章は子供の日記を読んでいるような語り口調(それもかなり子供っぽい)なので、もしかしたら読みづらいと感じるかもですが…
私はBLと念頭において読み始めたので、子供だということを意識してしまうこの書き方は若干苦手に感じました。
(恋愛だと意識しなければ素晴らしいお話なんですが)
対象年齢が低いのかもしれない内容なので、できればもっと若いときに読みたかったかも…。

旭の境遇と強さがホントに壮絶で理不尽さになんとも言えなくなります。
辛い境遇にあえて立ち向かった旭は、最後は立ち向かわず受け入れることを選ぶのですが、この境遇を受け入れるという事こそが大人にだってなかなか出来ない強い決断です。
自分は「旭」という1人でしかないと気づいたから、受け入れることにしたという旭と、黙って旭の決断を受け入れるしかない平。

2人とも、「君が泣くと僕は悲しい」という純粋な「好き」を相手に対して持っています。
ちょっとだけ気になるのは、友情と恋の境目はどこなのかな~と感じてしまう事。
平がこれは絶対恋だと言い切るんですが、旭はどう思っているかは曖昧なまま。「好き」よりも「上位にある気持ち」だと表現していますが、ただの好きよりもっと上だというこの感情が「恋」だと言い切るには、友情とはっきり差別化した感情を描いてほしかったと思います。

旭に対する、笑ってほしいや傍に居てほしい、幸せになって欲しいを「友愛」とみることもできて、しかも最後まで俺たちは親友だから、と言っているので、ここに「恋」をとってもお話としては成り立ってしまうんですね。
あえてBLにしたのは書きたいことがあったからなんじゃないのかな?と思うのでBLでなければ成り立たなかったお話として読んでみたかった気もしました。

2

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