俺が与える屈辱は、痛みではなく快楽だ

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表題作復讐はため息の調べ

成島正憲,30歳,元軍人
橘道彦,26歳,元軍人

あらすじ

戦争中、大尉であった道彦は軍上層部の命令により人命よりも機密保持を優先し、味方である男達を見殺しにするという苦い記憶があった。それから数年。病の妹を抱えた道彦は、かつて見殺しにした男のひとり、成島の手に落ち、身体を売ることになる。身体は好きにさせてやるが、心までは屈すると思うな。誇り高い道彦であったが、道彦が強がれば強がるほど成島には都合がよかった。負けまいとする矜持の高さは、そのまま折れたときの脆さに繋がるからだ。だが、次第にふたりは復讐という名の甘い檻にとらわれてゆき…。

作品情報

作品名
復讐はため息の調べ
著者
いとう由貴 
イラスト
山田ユギ 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
発売日
ISBN
9784813010357
4.1

(18)

(8)

萌々

(5)

(5)

中立

(0)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
3
得点
75
評価数
18
平均
4.1 / 5
神率
44.4%

レビュー投稿数3

俺が与える屈辱は、痛みではなく快楽だ――

前回読んだ「天涯の果て」も、文章の上手い作家さんだな~なんて思ったんですが、今回も面白かったです。
時代は戦後すぐ。橘道彦には過去、20人の男を見殺しにした経験がある。
お国のため、命令に従ったその出来事を悔いては居ない。
しかし、病気の義妹をかかえた道彦の前に現れたのは・・・!?
復讐というなの陵辱。与えられるのは快楽という名の辱め。

というわけで、陵辱復讐ものです(〃'▽'〃)
助けを請って見捨てられた男が生き延び復讐に。
道彦の周囲を調べ上げ、病気の義妹が居ることをつきとめる。
義妹を病院にいれて、治療をうけさせてやる代わりに、自分の女になれと持ちかけます。
自分の男妾になり、ケツを差し出せと。
食べるものもまんぞくに手に入らない戦後すぐ。
妹の病は悪くなるばかりで、食べるものもおぼつかない。
裕福な叔父でさえ力をかしてくれない。腹をくくり~から始まるお話なんですが、描き方がすごく上手なんです。
エロも当社費数割り増し!!
復讐という名でしばりつけ、陵辱しつづける成島。
そして、陵辱という名で縛られていたはずの道彦は思いのほか親切に囲われていることでゆるやかに変化していく気持ち~などなど。
面白かったです。
贅沢を言うならば、どうせ陵辱なんだから少しくらいは苦しい感じも見せてほしかったかな~と思います。痛いとかなんとかじゃなく・・・初めての情緒ってものが欲しかった。
『・・・・卑しいことを言うぞ。おまえが好きだ。だから、私を愛してくれ』
『馬鹿だな・・・俺はお前を愛してるぞ。だから、『好き』だなんていわずに愛してるというんだ』
ここらへんの雰囲気がすごく好きです。
まっすぐで頑なな道彦の性格も、成島に同調してか、いかんせん可愛くみえてくるから不思議。不器用ってすごく可愛いと思うんだ。
作品の世界観含めて好み的にはすごく好きな作品になりました。

6

お前たちを乗船させる命令は受けていない(>_<)

戦争中に道彦(受)は、上層部の命令に逆らえず味方である男達を見捨てた。
見捨てられ、仲間が死んでいくのを見守ることしかできず生き残った成島(攻)は、道彦に復讐を誓う。
そして、戦後、病の妹を抱えた道彦は、妹を救うため成島の復讐を受け入れ、身体を売ることを決意する。

戦争に心や身体の傷を負わされた人達の話です。
道彦は、戦争の中で仕方なかった自分の行為をだんだんと責めます。それでも、妹の為に成島に従い生きようとし、成島に心を許していく。
だけど、妹が…そして、さらに悲しい事実を突き付けられ自分の命を断とうとします(T_T)。

そんな道彦を最後に救ったのが成島でした。
成島は、道彦の人となりを知るにつけ、道彦の行った行為を受け止め、道彦に魅かれて行く。
そして、孤独を感じ生きる希望をなくした道彦に生きる事を望み一緒に生きて行こうと決意する。

全体的に暗い話です。今の時代だと人道的に許されないことも、戦争ということだけで許され、許さなければならなくなる。
だから、きっと消えない傷とともに生きていこうとする道彦と成島が幸せであればいいなと思いました。

この話の救いは、道彦が日本のお母さんみたいです。山田ユギさんの絵でも道彦には割烹着が似合いそうとおもいました。
どんな境遇でも、自分のやれることはやろうと家事に勤しむ道彦は、栄養のある食事を作り、部屋を片付け、洗濯しと…成島も好きになるしかないですよね(^-^)。

4

優等生の苦悩

昭和19年、戦局厳しい南洋の島、海軍軍人の道彦(受け)は軍上層部の命令により、同じ日本軍の兵士たちを見捨てるようなことをしてしまいます。その時食って掛かってきた一人の兵士が成島(攻め)でした。
終戦後の昭和22年、受けの家は困窮、肺病を患う妹への援助を頼みに親戚を訪ねますが、冷たく追い返されます。そんな彼の前に戦争を生き残り、成り上がった攻めが現れます。そしてなんと自分の妾になるのなら妹の面倒をみてやる、と言われ・・

復讐の為の凌辱、というのはよくあるパターンですけど、この作品の場合恨む理由がかなり重いものなのでどんな恐ろしいことをするんだろうと思いましたが、そこまででも無かった。受けが堅物でほとんど性的な経験が無く、そういう行為自体がキツイ辱めって感じで良かったです。

受けがほんと真面目くんなんですよね~。早々にデレていく受けが多い中で、最後までキャラが崩れないところが素晴らしい。戦時中の出来事にしても、忠実に任務を遂行したことに後悔は無いけど恨まれるのは仕方がないみたいな。軍人らしさが、いいなぁと思いました。妾とはいえ世話になっているのだからと家事を律儀にこなしたり。
逆に攻めが、復讐はもういいのかいって感じで普通に優しくなっていく(笑)

徐々に心を通わせ、後半に運命のイタズラ的な事実も判明して、めでたしめでたしでした。
戦争は全ての人に傷跡を残しますね、ダメ絶対。

セリフもなかなかグッとくるものが多かったです。一番ジーンときたのはなぜか妹さんの「・・きっと天国にあるわあのドレス・・」のセリフだった。

4

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