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確かな魅力を感じる短編集
『6under ground』が想像の上をゆく面白さで大好きになった岩清水うきゃ先生。こちらは前出のコミックス『ダブルトラブル』の新装版にあたる、かなり前に描かれた作品を集めた短編集です。拙さと荒さはあるのですが、確かに心を掴む不思議な魅力があります。
・『イナズマン2000』前後編
このお話が大好きです！古本屋の雇われ店長の嵐と、オーナーの甥っ子の蛍。第一印象はどちらもいいものではなかったはずなのに、蛍が拾った子猫のにゃこ太を「ウチで飼うか」と嵐が言ったことから蛍に変化が見られます。毎日一人で粗末な食事をしていた嵐も、蛍の作る豪華な食事に絆され、二人でいる心地よさに「一緒に住まないか？」と同居を持ちかけて…。
引っ越しを手伝ってくれた男友達から、蛍の過去を聞かされた嵐が、蛍のあまりにも衝撃的な過去（３P、４P、クスリに乱交etc）に、昔の話だと言われても簡単には受け入れられなくて、蛍を無視してしまうのですが、そこから仲直りするシーンがすごく好きです。蛍の涙も可愛いし、嵐の素直な「ごめん」もじんわり来る。不思議ちゃんな蛍が本当に可愛いんですよ。過去のことも聞かれたら隠すでもなく「うん」って素直に答えちゃうんですが、「だからなに？そんなことぐらい」って思えちゃう。そのぐらい可愛いのです。
晴れて恋人同士になった二人ですが、蛍が倒れた祖母の面倒を見るために離れ離れになり、嵐は久しぶりの一人を堪能するはずが、蛍と一緒に食べるあたたかい食事や一人の布団が寂しくて一睡も出来ず、翌朝にゃこ太の後押しで蛍に電話すると…。この後のシーンはなんど読んでもうるうるします。大げさな展開もくさい台詞もないけれど、とってもとーっても温かいんです。
・『愛だろ、愛。』
羽純の殺されてしまった子犬のエピソードが悲しくて可哀想で衝撃的でした。作品としては力不足で未熟な感じなのですが、心に残る魅力があります。
岩清水先生はもう商業は描かれていないようで、それがとても残念です。確かな個性のある作家様だと思います。同人でもいいので是非オリジナル作品が読みたいです。
どれも個性がちゃんと生きている佳作だと思います
短編集ですが、どの作品にもこの作家さんの個性がちゃんと出ていてよかったです。
クレイジー感はなくて、ほんのりと病み要素があってちょうど良いスパイスだと思いました。
全体的にこの作家さんにしては薄味で万人受けしやすそうな気がしました。
さらっと読めるのに、ちゃんと味わいもあるので、印象に残らないというわけではありませんでした。
佳作だと思うので、お勧めしたいです。
収録作品
「イナズマン2000」 前・後
古本屋店長・嵐×バイト・蛍
なんとなく流れでくっつく二人ですが、切ないシーンもあったりします。
「careless of venus」「ROCKET QUEEN」
臣×佐倉
「ダブルトラブル」からの抜粋はこれかな？
ストーリを流れを追って書いてあるわけではないので話は飛びますが、違和感なく読めました。二人の一コマを抜書きしたような感じ。
「今宵、月のように」
ノーマルでマイペースを崩さない恋が信条の八尋が佐倉と出逢い、臣に恋する佐倉にきゅんきゅんきて、思いを自覚したとたんに告白するまでもなく失恋する話。
「ベイビィ★ダイナマイツ」「カン太と彼氏の事情」
幼馴染のカン太にこっそり思いを寄せているカナ。カン太を好きになった女の子はことごとく奪って闇に葬り、なおかつ三日に一度は夜這いをかけてカン太が起きないのをいいことにこっそり抜いてあげている（犯罪）。すごいキャラのカナ姉とどたばたしつつも、無事にうまくいくラブコメディ。
「愛だろ、愛」
彼女も車もナイナイ尽くしサラリーマン・源三×つぶれた源三を拾ってくれたちょっとさみしい美人・羽純
羽純がビッチなんですが、純愛に目覚めるお話だと思いました。
イナズママン2000が妙に心に残る
初読みの作家さんです。
全部で大きくわけて4つの作品が収録されていますが、どれも個性があって洗練されているとは言い難いけど、なんだか妙に心に残る作品を描かれる方だと思いました。その中でも巻頭の【イナズママン2000 前編 後編】が一番好きでした。
【イナズママン2000 前編 後編】
古本屋の店長・嵐と古本屋オーナーの甥っ子蛍という接点がなかったはずの二人が拾った子猫を介して少しずつ距離が縮まっていきます。一緒に食事をし、布団とともにし、一緒に生活をする。
そんなある日、4P、クスリ、乱交大好きだったという乱れに乱れた蛍の過去を知ってしまい戸惑う嵐。そんな嵐の戸惑いを知らない蛍は一緒の布団に入りながら「オレね 嵐の匂いって大スキ あったかくてきもちイイ‥」と幸せそうに微笑むシーンが二人の温度差が浮き彫りになっていて妙に切ないです。
子猫のにゃこ太よりも蛍のほうがなんだか猫みたいなんです。傷つきやすくて寂しがり屋の猫。なかなか人には懐かないように見えて気づいたらスルリと懐に潜り込んでいるようなそんな猫のような蛍と、一人暮らしに慣れていたはずの嵐がスレ違いを経て寄り添っていくまでの過程が丁寧に描かれていました。
切なくてあたたかいそんな作品で妙に心に残ってこれが一番好き。
その次に面白かったのが【ベイビィ★ダイナマイツ】【カン太と彼氏の事情】
ラブコメです。幼馴染のカン太の童貞をめぐって争うカナとカナの姉との戦いを面白おかしく描いています。
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