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表題作EGOISTE(2)

古谷和臣 37歳 循環器科医長
白井明佳 26歳 医者

あらすじ

全てに臆病だった白井が、強引な古谷に押し切られるように同居を始めて一年――。つかみどころのない男に翻弄されながらも、日常の小さな幸せをかみしめていた白井だったが、あることを境にそれは崩壊してしまった。さまざまな不安に揺れる白井を、つなぎ止めようとする古谷だったが…。
大幅加筆修正を加えた、かわい有美子の代表作、エゴイストシリーズ待望の第二弾。

作品情報

作品名
EGOISTE(2)
著者
かわい有美子 
イラスト
石田育絵 
媒体
小説
出版社
笠倉出版社
レーベル
クロスノベルス
シリーズ
EGOISTE
発売日
ISBN
9784773002911
4.5

(29)

(21)

萌々

(6)

(1)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
4
得点
132
評価数
29
平均
4.5 / 5
神率
72.4%

レビュー投稿数4

冷酷な男と脆弱な男が 辿り着いた関係

冷酷な医師(古谷)×孤独な研修医(白井)の「egoiste」の続編。
同居してから1年が経ったところから物語は再開します。古谷からの「愛している」という言葉はないながらも、うまくいっているように見えた二人。
小さな不安を抱えながらも、古谷との穏やかな生活を送る白井だったが、その古谷に女の影がちらつき始めたことから風向きが変わります。
そして次第に追いつめられてゆく白井は…。

という波乱含みのストーリー展開。
古谷の昔の恋人、白井の母、同僚の医師、そして自然災害を絡めながら、この巻で白井と古谷の関係は大きく揺さぶられ、やがて不動のものへと成熟していきます。
年齢も立場も人間性も全くかけ離れた彼ら。冷酷な男と、脆弱な男。
ただそれだけの印象だった二人の静かな変貌と、最後にみせた抱擁シーンに、込み上げるものがありました。
古谷と白井、二人の人間の救済という側面が、このシリーズをより深いものへと押し上げています。

かわい作品の情景描写の上手さは群を抜いています。まるで映画やドラマの1シーンを見ているような映像的な心情表現に、いつも魅せられます。
例えばこの本の、二人の諍いの後の『よく熟れたマンゴーが床の上で潰れていた。』という一文。
これだけの文に、古谷という男の質、諍いの原因の生々しさ、取り残された白井の表現しがたい気持ちが、理屈をこえて皮膚感覚で伝わってきて、唸りました。

そして、近年のBL作品ではなかなか出会えない、紙面からしたたるようなこの強烈な色香。味わってみてほしいです。
レビューのために久々再読したのに、すっかり頭から抜けてしまっていました。罪な本…
2まで読んだなら、やっぱり短編集も手に入れましょう!

4

少しずつ変化していく関係

前巻の最後で古谷[攻]の元へと戻った白井[受]、その一年後から話は始まります。
同居はそのまま続き以前よりは幸せを感じたりもしている白井の前に古谷の元彼女や別の女からの電話、そして続く外泊と不安にさせる出来事ばかりが起こり、さらに同期医師の不正を白井が発見してしまった事から彼に憎まれる羽目になり、白井に対して愛情の一欠片も持たない美しい母はガンで余命幾ばくもないと知りそれらが白井を打ちのめしボロボロになった彼は、古谷の友人である中西と一夜を過ごすんですが、酒に酔って中西を誘う白井がエロい~~普段の彼からは想像出来ないエロさで俗っぽい表現ですが魔性の男きたよーーって感じ。
対する中西も実にいい男で、白井に対する言動やその後に古谷に潔く謝る所とか白井の浮気相手が彼で良かったと思ってしまう程。
白井が他の男に抱かれたと知って激怒する古谷がいいんです!
普段傲慢で白井はそんな事をしないだろうと思い込んでいるのをくつがえされた時の激怒っぷり。

お互いが少しずつ相手を知っていき、理解を深めると共に感情も深く繋がっていく。
最後まで白井を愛さなかった母は亡くなり、彼の父が誰であるのかを古谷は知りますが最後まで白井はそれを知らずに終ります。

そして神戸という地に訪れる大震災。
かわいさん自身が体験しているだけにその部分は重みと臨場感があり、崩れた家屋で必死に白井の名を呼ぶ古谷、その後病院の屋上でそれが嬉しかったと古谷を抱きしめる白井と抱き返す古谷。

作中、2人で京都に旅行に行ったり、かつて白井を落としたプールで美しい水中を見せてくれたりするシーンは2人の関係も変わったなあ、としみじみしたです。
一応本編はこれで終りますが、彼等をもっと読みたいという方は是非3巻を~。

4

試練を超えて美しい主人公の姿

電子書籍で読了。挿絵なし。あとがきあり。

前作ラストの『ドラマチック古谷』に絆されて、彼の元に戻った白井。研修期間が終わり、勤務医となっています。平然と二人の日常は続いていくのだけれど、この関係は不確かなものだと時折、白井は感じてしまいます。何故ならば古谷からの言葉がなく、古谷の周りに幾人かの女性の影がちらついているから。頃を同じくして、外来診察の代理をおこなってやった同僚が睡眠薬の横流しをしている事に気づき、古谷に報告したことで逆恨みを受けることに。また、愛されたいと切望したのに決して自分の方を向いてくれなかった母が末期癌の宣告を受け、勤務する病院に入院することにも。それに加えて、連日、帰宅が深夜に及ぶ古谷。白井の心は憔悴していきます。耐えられず、夜の街で飲めないお酒を飲んで泥酔する白井を呼び止めたのは、古谷の親友であり同じ病院に勤務する中西でした。追い詰められていた白井は中西を誘ってしまって……母の死、同僚からの脅迫など、そしてラストは……

そうか、あの、あれが最後に来る訳ですね。
ネタバレがダメな方は本編の前にあとがきを読まない方が良いと思います。
大なり小なり似た様な経験をされた方が今では多いのではないかと思うのですが、あれをラストに持って来たのは、当時としては勇断だったのではないかと思うのですね。配慮が必要なことですから。私は成功していると思います。切なく、美しく、そして全ての生きとし生けるものを愛したくなる様な圧巻のラストでした。

もう一つ、もう既に書かれている方もいますので書いちゃいますが、この巻では白井が自分の意志で古谷以外の人と関係を持つシーンがあります。
「そういうの、ぜったーい許せない」という方もいると思うのですが、そういう方にもそれほど嫌な感じがしないんじゃないかとも思うのです。「白井が古谷の思う通りに動く人形じゃないことを示す、必要な展開だったんじゃないか」と、私は必然の様に受け止めました。

お話の冒頭では、おどおどして背を丸め、人目に付かない様にしていた白井が、数々の辛い出来事を超え、古谷の愛情も勝ち取ってすっくと立っている、そんな姿が目に浮かぶ様な終焉でした。肩肘を張って立っている訳ではないのです。なよやかなのですがスッとしている柳の木の様な美しさで立っています。
ああ、綺麗なお話でした。

4

傲慢ドS医者 続編

この話のラストの感想は 書けない。
現在 まだ多くの方が苦しんでいらっしゃるからだ。
小さくても 希望の光が見える事を切に願う。

前回のプール突き落とし事件からの続巻です。
幸せそうな二人に また怪しいカゲが・・・・。
傲慢な古谷(攻め)は ホンマ腹立つ。
白井(受け)が あんだけ尽くしているのに。
おかげでキレた白井が浮気するのです。
ざまあ。古谷め!ちょっとは思い知れ!!
でも お互いなんとか努力をして気持ちを繋いでいく。

かわい有美子作品の代表作であろう。
読めば必ず本に 引き込まれる事まちがいありません。
背景を取り込んだ表現力 脱帽です。

1

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