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神がかった作品

長い間、待ち望んでいた歴史とBL要素の一致、私の心のなかの的、そのど真ん中を射当ててしまった作品です。Amazonのただごとならぬレビューに引き寄せられて買って、一章を読み終えてすぐ「あぁ私が望んでいた場所にたどり着いた」そう思いました。

時代は前漢。高名な項羽と劉邦の戦い、煮えたぎった男達のドラマが終わった長安が舞台です。

劉邦、夏侯嬰、張良、そして女傑呂雉。たそがれの英雄達のかたわらで静かに育まれる通貞と呼ばれる、美少女と見まがうような美少年宦官小青胡・張釈の恋。

二人の蜜月時代がありし日の華やかな宮殿の様子とともに本当に夢のように描かれていて、そこばかり見返してしまうこともあります。

でも、時代の流れは否応なく彼等のささやかな恋心を押し流し、小青胡は二代目皇帝恵帝のもとへ、そして張釈はその母呂雉のもとに。

この立場の違いがじょじょに二人のなかを引き裂いていきます。金髪碧眼の小青胡が恵帝の健やかさに惹かれながら、どんどん悪に墜ちていく張釈にもまた気持ちを残すのが卑怯だなと思いつつも、でもよく分かったりして何だかとても切なかった。

終盤の有名な事件を典拠にした展開も、小青胡の見た夢も、そして誰もが鳥肌のたつであろうオチも、何もかもが素晴らしかった。読み終えたあと、ありとあらゆる感情が怒濤のように胸のうちに流れ込んできて、最後秦の滅んだあとの廃墟にポツンと残されたようなそんな気持ちになりました。

確かにBLなんだけど、でもそんな枠に収まりきらない。ただただ涙したいとき、この本を開いて欲しい。そんな作品です。