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人を「愛する」ことを描いた13年分の想いの記録

シリーズ3作を総括してこのタイトルを付けさせていただきました。
出会い~学生時代を描いた「檻の中の王」、
卒業と別れを経て再会を果たした「群れを出た小鳥」、
結ばれたがゆえの障壁と共に生きていく二人の課題を提示した本作「八年後の王と小鳥」……。
ただ「圧巻」の一言に尽きるシリーズです。

偏見ではありませんが、BLというある種限定された市場にこの作品が置かれている理由が私には分かりません。
確かに同性愛が含まれていますが、それは要因の一つでしかあらず、仮にこれが男女だとしても「愛」という普遍的なテーマを扱っている傑作ではないでしょうか?
誰かを愛することだけが生きるよすがである礼と、
この世の全ての富と権力を得て愛だけを持たずにいたエドという対照的な二人の愛し方。
それを突き付けられた読者はそこに本質的な「愛」の姿を見られると思います。

メリットデメリットなど考えず人の弱さに寄り添って愛を注ぐ礼と、
その愛を受け取ったエドは持てる権力の全てを使い策略を巡らせて、
あらゆる火の粉(庶民やアジア人、ゲイであることに対する批難)から礼を守ろうとします。
礼が少しでも傷つけられれば、
「俺はあなたを何度でも殺します」
と言い切って、実の叔父に銃を突きつけ手を汚そうとする――。
王室とも繋がる400年の歴史を棒に振り、たった一人を愛し抜く彼の姿は、
とてつもなく重いと同時に一途でもあると思わされるのです。

礼がエドや他者へ注ぐ愛、エドが礼や他者へ注ぐ情に「人間愛」を見たのは私だけでしょうか?

何も持たない、ただ互いの人格に恋い焦がれた末結ばれた二人の人生。
波乱は多いと思います、不安やすれ違いも多々あると思いますが、
生涯寄り添って生きていってほしいと切に願っています。

蛇足になりますが……

今後シリーズ4弾、5弾と続くなら、大変楽しみにお待ちしておりますのでご検討下さい樋口先生。

お前だけが、俺の弱さを、愛してくれていた。

『檻の中の王』と共に1日1回は読まないと気が済まなくなってます。
読めば読むほど深みにはまる、どの場面も愛しくなるような作品です。

『檻の中の王』が礼の変化を描いているのに対し、
本書は礼とエドの変化、それに伴う二人の関係の発展を描いているように思えます。
序盤で投入された伏兵美男子・ジョナスがどのような役割を果たすのか見物でしたが、礼の立場に沿って接している姿を見ていると、たおやかで根がいい子なんだとしみじみ感じさせられました。
……中盤以降は「ジョ、ジョナスさん?」っていうほどある意味逞しくなりますけどね(笑)

礼が舞台美術の授業で世界を広げれば広げるほど、エドの精神バランスは段々と崩れていきます。
「リーストンの王様」が誰の目から見てもおかしいと分かるほど感情のコントロールが効かなくなる、
それほど礼は彼にとって特別な存在だったんだなと後々分かりました。
その想いが集約された一言が……

「俺の前で、他の男を、愛さないでくれ」

これはエドの切なる悲鳴だったんだと思うと、息苦しくなり、抱きしめたくなるほどの愛おしさが湧いてきます。

その他にも、クリスマスのシーンでエドとギルが礼の隣の席に座ろうと争ったり、雪合戦で気を引こうとしたりするのを見ると「可愛いなあ」と笑ってしまいました。
兎狩りの最中エドが礼に迫っているにも関わらず、礼は呑気に「コマドリの声だ」と言って嬉しそうに耳を傾けるのを見るとほのぼのし、直後にエドが礼にもたれて泣くのを見ると胸に熱いものが込み上げてきます。

そして、イギリスの街の美しさを語る文章。
その地で生きるティーン達の一瞬の輝きと切なさが凝縮されたようなモノローグで学生時代が終わりを告げます。
物語が大人編へ突入する前に余韻を残す形で終わるイメージが鮮烈に心に刻まれます。

8年後、大人になった礼は自社ビルでエドと再会し、真意が分からないまま逢瀬を重ねます。
尊大で気位の高い王様である部分は相変わらずでも、
一人では生きられないことを大人のエドも知り、礼との距離を縮めていく。
働きづくめの8年を費やし、若干26歳で世界的企業の次期社長のポストに就いたのは、この世でただ一人愛する人を守れる権力と財力を手に入れるため。
最後の迷いを振り切って、生涯添い遂げたい人が礼であるという想いを打ち明けます。
すれ違い、不安を抱え、戸惑いながら結ばれたシーンは感無量と言っても過言ではありません。

出会って12年、永遠の別れを決意して8年互いを想い続けてきた二人の少年の純愛の遍歴、ぜひとも読んでもらいたい1冊です。

ドSな王様 vs 穏やかな策士

購入から一週間が経ちますがもう何周してることやら……。
好きすぎて苦しい。
ジャケ買いした本にまさかこんなにハマるとは思いませんでした。

本屋さんで表紙のエドと目が合い一目惚れ。
着こなされたスーツに鋭い流し目、ホワイトブロンドの髪、エロティックに噛まれた手袋……と、しばらく見つめた後であらすじを読むとあまり読んだことがないジャンルでした。

既知のBLのイメージは「ダメダメ」言いつつ数ページ後には行為に至っているというものでしたが、
この小説はむしろ禁欲的と言ってもいいくらい描写が少ないです。

少年時代の穏やかな二人の関係はリーストン入学を機に一変。
エドは礼に「自分(エド)を含め他者との一切の関わり」を禁じます。

そんな礼の救いはストーリー中盤で登場するオーランド(オーリー)。
孤独な学生時代を送る礼の世界を広げるきっかけを作る人です。
拒絶と抑圧で礼を傷つけるエドに対し、
穏やかな態度と心に踏み込む言葉で礼を解放していくオーリーが対照的です。
終盤の二人の対決で、礼を掴みながら
「これに触れるな」
というエドに対し、オーリーの反論は……

「一人の人間を物扱い? そうやってずっと、恐怖で彼の意志を抑え込んできたわけだ。実にお貴族様らしい、傲慢なやり方だ。でもね、それを人は暴力と呼ぶんだよ!」

これぞ紳士!!
エドがどれだけ礼に圧力をかけてきたか分かるからこそこの一言は重い。
(風呂入ってる時に執拗にバスタブ蹴ったりするところとか見ちゃうとね、うん)

その後激情に任せてエドが礼を犯すところは、エドの雄々しさにドキドキしつつ切なくもあります。
礼への想いを素直に認められず、かといって手放すこともできずに揺らぐ18歳が唯一取れる策が
「強姦」
という最悪の結果だったわけで。

ただ、強姦の最中泣きじゃくる礼に「泣くな」と抱きしめながら囁くエドの姿に彼なりの不器用な気遣いが垣間見えて愛おしくも感じるのです。

礼以外に自分を深く愛してくれる人間がいないため愛情が裏返しになってしまう。
エドが知っているのはいかにして人の上に立つかだけ。
血統や人種、性別という障壁の前で悩み続けてきたエドの苦しみを読んでいて痛感させられました。
――だからって食堂で飯食ってる時に犯すのはさすがにやりすぎだと思うけどね。

……あなたはレイ様のことになるとどうしてそうダメ男に(ロー○リー風)。
注)この人はこの巻の時点では登場しません。

とにもかくにも片想いの少年「二人」と、彼らを取り巻く魅力的なキャラが描かれている
閉ざされた男子寮の世界。

お気になった方は覗いてみて下さい。