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世界から年下攻めが消えたなら

2018/01/07 10:35

BL大隆盛の原動力になった年下攻めの魅力とは



大ヒット作品『囀る鳥は羽ばたかない』『年下彼氏の恋愛管癖』『抱かれたい男1位に脅されています。』『テンカウント』『やたもも』『憂鬱な朝』
に共通することってなんでしょうか?

すべて「年下攻め」作品ということなのです。

ボーイズラブ作品がジャンルとして認められ始めた90年代から「年下攻め」はありました。
しかしBLの王道は俺様年上攻め作品が多く、
BLイコール“スーパーダーリン”というのが2000年半ばまでのBLのイメージでした。現在でもBLをテンプレとして語るときは、この時代のイメージで語られることが多いと思いますし、BLを知らない人もこのイメージで理解していると思います。
お金がないっ』『ファインダーの標的
など、攻めはけっこう鬼畜で横暴なところがあるかわりに、受けがやんちゃしたり、わがままを言っても常に守ってあげる!という存在が代表的でした。
攻める側と受ける側、守る側と守られる側がはっきり明示されている関係性が主流だったように思います。
ほかにはライバル、バディというお互いが均衡関係で、立場的に安定した関係性の作品が多かったように思います。

そこに風穴を開けたのが2000年代なかばから頭角を表しはじめた、「年下攻め」というジャンルです。

この「年下攻め」が大いなるダイバシティーをBLに与えてくれました。
「年下攻め」ジャンルの開拓がなければ、今のBLはなかったといっても過言ではありません。
そんなわけでBLの大本流ジャンルとなった「年下攻め」。その「年下攻め」がいかにBLジャンルで天下取りをしたか見ていきたいと思います。


学園系年下攻めが人気シリーズに!


年下攻めがBLに本格的に攻め込む準備が整ったのが2005年です。

2005年にスタートした学園ジャンルの年下攻め
生徒会長に忠告』『恋する暴君
は今でも大人気のシリーズです。
どちらも1年年下の攻めが、積極的に年上の受けにアプローチする展開になっています。『生徒会長に忠告』の知賀安広はクール系、『恋する暴君』の森永哲博はワンコ系とタイプはことなりますが、アグレッシブに先輩に迫っていきます。
広くとらえると先輩後輩ジャンルともいえますが、どちらも先輩の受けが攻めの熱意に徐々に後輩にほだされいく過程が描かれています。
両シリーズは学生モノらしい勢いある展開の王道年下攻めといえるでしょう。

恋する暴君シリーズ


 

生徒会長に忠告シリーズ

 



これらの作品は発売年が古いにもかかわらず、最近BLを読み始めた若い層も読者になっている年下攻めのシリーズです。
 

社会人年下攻めBLは「あんた呼び」でBLバリエーションを拡大


年下攻めは学生モノがかつては多かったのですが、2000年代半ばに社会人にも「年下攻め」の波がきます。ここからが年下攻めの本領というべきでしょう。

 

最後のドアを閉めろ!

 

2000年代はじめに出版された『最後のドアを閉めろ!』(山田ユギ)は男気あふれる本田賢三と美人な永井篤のカップルが中心となって進行する物語です。
押しの強さで受けに迫ってくる攻め。微妙な駆け引きと力関係の揺れが読者を飽きさせない超名作です。

本田は永井にいつもは敬語で接しているわりに「あんた」呼びするなど、この言葉使いが非常に巧みなわけです。
学生モノでも、先輩を「あんた」「あなた」呼びしますが、社会人になると、だんぜん萌えのスイッチが入ります。
ちるちるの掲示板でも
あんた呼び」について語られていますが、年下攻めが年上受けを「あんた」呼びするのは、どうしたわけか味わいがより深く感じます。

攻め=ワンコ  献身的 執着攻め
受け=性格にちょっと難あり ツンデレ 美人 

学園年下攻め作品のカップリングはこうした属性が多かったように思いますが、舞台を社会人に移すとかなりキャラクターに幅を与えることが可能になってきました。

「あんた」呼び 言葉使いの妙味の発掘


社会人モノになると、学生モノに比べてキャラクターの幅が格段に広がり、かつ萌えの幅も大きく広げてくれることを教えてくれたのが以下の作品です。そして丁寧にみえて慇懃、荒っぽい言葉責めの魅力を教えてくれたのもこの作品たちです。


はつこいの死霊



2004年に発売された『はつこいの死霊』(草間さかえ) はこれまでの王道展開と違うNEWウェーブBLということで話題を集めました。
とにかく下衆BLを10年先取りしたような表紙の年下攻めの目つきが普通じゃありません。

この作品は草間さんらしい複雑なストーリーラインを見せ、今読んでも全く色褪せない名作なのですが、攻めの執着と計算高さがこれまでの作品に比べるとかなりレベルアップしています。
さらに年上の受けをどう手篭めにするかという過程も物語のポイントとなってきます。

攻めは名前が明かされないドSキャラ(学芸員/中学時代、受けの隣人)は、受けに対して慇懃な敬語で接しているわりに、ふつうに「あんた」呼びします。
このみかけの丁寧さとやっていることクズさのギャップがすさましいのです。実は人気となった原因はここにもありそうです。
『はつこいの死霊』は多くの腐女子に「あなた呼び」にドS敬語責めのすばらしさを伝えた作品といえるかもしれません。

くいもの処 明楽



「っす!」「「っすよ!」荒っぽい言葉の年下攻め

2005年から数年は「年下攻め」成長期といっていいでしょう。年下攻めはこの時代に出版された作品をベースに発展してきたと言っても過言ではありません。

社会人年下攻めの醍醐味は、先に記しましたが言葉使い。
敬語と荒っぽい言葉のミックスでギャップ感を出す。ときおり熱い気持ちをおさえて「あなた」という敬称でクールに受けを呼ぶところにあるのかもしれません。
しかしこれまたNEWウェーブBLの代表選手といわれた『くいもの処 明楽』(ヤマシタトモコ)は、敬語ルールからすると違反しているけど、最低限相手を立てていますよ、という荒っぽい言葉使いで年上を攻略していきます。
鳥原泰行は明楽高志に「◯◯っすよ」という、ぶっきら棒で不満が感じられる口調で、容赦なく心の中にも踏み込んでいくのです。
こうした無遠慮な言葉つかって受けを余裕なくさせながらも、要所では年上受けが余裕をチラチラみせていく展開。力関係があっちにこっちに振れてラストに向かっていくのが、この魅力となっています。

 

ドS敬語責め年下攻めスターは小説から誕生


癖があってスター的素質がある年下攻め。小説からそんなキャラを生み出すのは本当に至難の技です。その癖の部分をうまく味付けして大スターにしたのがこの作品です。


交渉人シリーズ


 
ついに2007年、小説からドS敬語責めのスターキャラが現れます。
小説『交渉人シリーズ』

ヤクザの若頭・兵藤が榎田尤利先生の筆から生み出されました。シリーズ継続中はBLアワードの攻めキャラ部門で毎年1位を獲得した年下敬語責めキャラの代表格です。
執着と甘い言葉で受けのツンツン交渉人・芽吹を籠絡していく過程がこれまた白眉です。
本当の交渉人は兵藤というオチかもしれません。

年下+敬語にスマートなS性が加わるとそれまでの何倍もの破壊力になることがここで実証されました。
年下攻めの最大の魅力は「敬語責め」という腐女子は多いですが、2000年半ばでこの法則が確立されたように思います。

その後、敬語執着攻めの系譜は『抱かれたい男1位に脅されています。』の東谷や『テンカウント』の黒瀬に引き継がれていきました。


テンカウント

 

 

年下攻めはなぜ魅力的なのか?その根本


今まで「年下攻め」の需要はありながらもそのニーズに気づけていなかったのか、時代が「年下攻め」を求めていたのかはわかりませんが、2010年をまたいだのを機にして「年下攻め」BLは増加の一途をたどることになります。
それでは年下攻めの魅力とは一体何でしょうか。


ちるちる答えて姐さん!のスレッド
年下攻めの魅力をまとめてみますと


1)見た目と実際の行動の意外性が楽しめる(攻め受けどちらも)
2)立場上、外では年上を立てるがプライベートで主従逆転的な瞬間が楽しめる
3)面倒くさい年下でも逆にかわいいと思えるし、受けの経験値をここぞと見せつけられる
4)年下攻めの熱意や突飛な行動が、さいしょ余裕な受けを次第に追いつめる、または攻めを大人として認める過程を楽しめる
5)ヘタレでときに突っ走る攻めでも、受けが大人だといい関係に思える
6)逆に頼りない受けでも、年下がリードしてくれるといい関係に思える
7)なんといっても敬語責めが楽しめる

とこれだけの利点があります。もっと細かく見ていくとさらに増えそうですが、根本的な部分をまとめてみると

魅力1 年下攻めということで、キャラの欠点もリカバリーされ、逆にそれを魅力にできる点
魅力2 年上が受けになることでキャラの自由度が上がる。
魅力3 年下攻めの意外な行動により年上が攻めだと固定しがちな関係性が局面局面でゆらぐ点


この3点にまとめられます。

 

年上攻めはスパダリ要求がきつすぎて窮屈?


攻めを年下に設定するだけで物語にかなり自由度が出てきます。
たとえばガッツキエッチを年上がしたら、とたん幻滅されそうです。もしやるとなればかなりおもしろいキャラ設定、または筆力が必要そうです。

しかし年下ががっついても逆にかわいいと思えますし、受けへのひどい仕打ちもある程度許せるでしょう。

たとえば2009年から連載の貴族社会を舞台にしている『憂鬱な朝』も年下攻めですが、シリーズ前半は攻めの久世暁人が未熟ということで、受けの桂木智之がいろいろフトコロの深さを見せつつ成長していくのが興味深く、物語のおもしろさとなっています。

また完璧な年上スパダリのキャラを設定しても長時間その超人度を発揮するのが難しいのです。物語を動かそうとすると、受けに異変が起こる以外あまり手段が多くありません。
攻めが強引に動かそうとすると、スパダリは普段と異なる行動に出ないとならず、それがスパダリにふさわしくない行為につながりやすいので、厳しく読者に咎められがちです。

ただでさえ「スパダリだからこそ受けにしたい」、という“ 腐女子慣性の法則”が働いていますので、その力に抗うのは相当な体力と精神力が必要になります。

 

年下の受けは自由度がない

 
対して年上の受けは年下受けに比べて行為の自由度が高くなるという現象があります。
年上の受けが自由すぎて年下の攻めに負担をかけても、それが個性だからしょうがない、で許せてしまうケースが近年多いです。受けを年上にすると個性の幅がこれまた大きく広がります。

逆に年下の受けが年上攻めを振り回していると、あまり好い印象を抱かれなくなっているのも近年顕著です。
現実世界では年下だからわがままを言ってもいい、もっと自由いいと思いますが、物語ではなぜかいい子を求められてしまいます。

たとえばツンデレキャラ場合、年上受けなら、大幅に「ツン」の度合いが広がります。年下が同程度の「ツン」をすると「いい加減デレろ」とさっそくツッコミが早く入りそうです。
年上受けは許容度が高く、それだけでいろんな部分で得をしているような気がします。


年下攻めは リバ、下克上に半歩踏み込める“ 徳俵


攻めが年上でリードしている場合、上下関係性にゆらぎはありませんが、年下攻めは、いつもは攻め込まれている年上が、何かのきっかけで放つ一言の決めセリフで、年齢による上下関係の関係に戻ったりします。そしてしばらくするとまた年下がリードしたりと、関係性を比較的たやすく揺るがすことができるのが魅力です。

いったん関係が覆ると、そのまま精神的立場が固定してしまう「下克上」作品より自由度が高く、「リバ」まで許容できない腐女子には、ちょうどいい範囲になっているのだと思います。
相撲で言う「徳俵」的な存在が「年下攻め」といっていいでしょう。

 

振り子のような関係性ダイナミズム 


「年下攻め」の発見は、これまで物語に起伏をつけるわかりやすいイベントである、当て馬、すれ違い、嫉妬などの要因とはまたちがった軸「関係性のゆらぎ」が楽しめるようになったのです。
「関係性のゆらぎ」はこれまでの少女漫画やTLで表現するのが難しい要素であったと思います。
「関係性に萌える」という腐女子は多いと思いますが、振り子のように行ったり来たりする関係性をもっとも作りやすいのは「年下攻め」という設定なのかもしれません。

2013年から年下攻め大爆発


こうした下地のもと、2013年から2014年にかけて、現在のBLブームをつくった大人気作品が続け様に出版されます。年下攻め爛熟期に入ります。
囀る鳥は羽ばたかない
年下彼氏の恋愛管理癖
抱かれたい男1位に脅されています。
テンカウント
やたもも
イベリコ豚と恋の奴隷。

これら人気シリーズはどの作品も例外なく「年下攻め」ジャンルに分類される作品だったのは特筆すべきことでしょう。
上記のラインナップから年下攻めジャンルは今のBL人気を源となるジャンルであることが理解できると思います。

近代BLの年下攻めは保護者的に


2013年からの作品の特徴は、これまでの年下攻め作品と違い、受けのバリエーションに特徴があります。

ツンデレ、美人というより、生活環境や子供時代のトラウマや病的な性癖により、誰かの助けを必要としていたり、心の癒やしを渇望している受けが主力になっています。一筋縄ではいかない受けばかりです。
これまでの女性向け漫画では、ほぼ幸せになれないネガキャラなのですが、「BL」特に「年下攻め」ジャンルであるとそれが許されやすいどころか、逆に萌えるという発見が大きかったのです攻めキャラの性格も献身・執着といった性格から、オカン・世話焼きといった精神的保護者になり、年下でありながら精神年齢がかなり大人のタイプが多くなってゆきます。
『囀る鳥は羽ばたかない』の百目鬼、『年下彼氏の恋愛管癖』の平坂泉、『やたもも』の八田、『イベリコ豚と恋の奴隷。』の源路も徹底的に受けに尽くし保護者的な振る舞いをします。

受けへの献身度で年下のスパダリ度が計られる


「スーパー攻め様」という用語がありますが、ここで上げたキャラは一癖ある年上の受けの保護者として、実に「スーパー攻め様」していますし、受けの変化にしっかり対応して相手をしていかないといけません。
本当にがんばりすぎじゃないでしょうか。

このように。今のBLは、「年下攻め」が主流となりシリーズ化されるような人気作は「年下攻め」がかなり優勢です。
同じ年下攻めでも、かつてのワンコでがむしゃらな年下攻めから、大人で頼りがいのある年下攻めに人気作品が移行しているというものおもしろい現象です。


以上、年下攻めのすばらしさと年下攻めの作品を追ってきました。
年下攻め+BLという組み合わせで、手詰まりだった女性向けのコミックは新たな可能性を手に入れたと思います。
また今後もBLジャンルで新たな発見があると、いっそう市場が拡大するのではないでしょうか。

コメント8

投稿順 | 最新順

匿名7番さん(1/1)

年下朴訥黒髪包容力攻めが好き

匿名6番さん(1/1)

年下攻めとかいらん。あんたらとはいいお酒は飲めなさそうね。
年上攻めにある搾取感・背徳感が最高にいいんじゃないの。
ちょっと小生意気で可愛い年下を大人の力でねじ伏せてヒーヒー言わせるのとかたまらん・・・・。

匿名5番さん(1/1)

年下攻め好きです...
ステレオタイプになってしまうけど、年上受けは年の分だけ落ち着きと過去があるし、年下攻めは受けに並ぶことができるように一途に頑張るところが、いい。下剋上でもオイシイ。
スパダリ攻めも好きだけど、無駄に偉そうな攻めと尽くし系の健気受けみたいな、共依存?亭主関白?みたいな構図はちょっと苦手だし、時代的にも流行らないのかも。
可愛い攻め、ショタ攻めは少数派だけど、なくはないですね。これから増えてくるのでは。

匿名4番さん(1/1)

年下攻めもスパダリ攻めもどっちも等しく好き

匿名3番さん(1/1)

年下攻めいいですよね。敬語責めもいいし…。受けに若くて綺麗な男をあてがってあげたい母のような気持ちです(笑)

私も年上のスパダリに魅力を感じなくて、
これはBLだけじゃなくて、
同性愛ものの映画やドラマ(男女問わず)
でも同じなんですよね。
自分がババアになったからだと思いますw

匿名2番さん(1/1)

年下攻めがメジャーな時代で本当にうれしい!
攻めが若いのが大好きで年上スパダリ攻めが苦手なので、昔は読めるBLに限りがあっていまいちBLにハマれずにいました。
「マザーズ スピリット」と「ROMEO」、「スニーキーレッド」、「俺と上司の~」シリーズも大好きな年下攻め作品です♡
立場的に上のほうが受けというのがいいんですよねー!

匿名1番さん(1/1)

年下攻めは多くなりましたが、ショタ攻めはあるかというと大体ないわけで、
体格だったり精神的にだったりなんか攻めの方が優位であることが年下攻めを成立させてると思います。

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