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小説試し読み!無遠慮年下男子×盲目鍼灸師ラブ♥

2018/08/16 17:25

宗川倫子デビュー作 小説『触れて、感じて、恋になる』8/31発売



幻冬舎コミックスが定期開催している新人賞「第24回リンクス新人大賞 小説部門」(2017年11月号発表)において、『見えない恋、甘やかな声』で奨励賞を受賞した宗川倫子先生のデビュー作触れて、感じて、恋になるが8月31日(金)にリンクスロマンスより発売されます!

カップリングは、少し無遠慮だけど垣根のない言動で主人公の内側に自然と入り込む年下男子(攻)×視覚に障害を持ちながら自立し前向きに生きる主人公(受)。本作では、二人の想いを丁寧に綴りながら、彼らの「出会い」から「友情」「恋愛」に至るまでを描きます。


主人公の二ノ瀬唯史は、後天性の病で高校二年生の時に視力を失った鍼灸師。自立し、穏やかな生活を送る彼のもとへ、日根野谷という男性患者が訪れることで物語はスタートします。

二ノ瀬に対し、遠慮ない物言いをする日根野谷。第一印象は最悪でしたが、それは自分を視覚障害者として扱っていない自然で対等な言動だと、次第に二ノ瀬は気付きます。

彼の中で「垣根のない彼と友達になりたい」という欲求が膨らみ、日根野谷も屈託なく距離を縮めてくる日々。一緒にいる時間が増すごとに、徐々にときめきめいた感情が二ノ瀬に芽生えはじめて……?

視覚障害を持つ主人公を物語の視点に置き、透明感のある文章と巧みな表現で“見えない世界”を描写。いったい、どんな読み心地が得られるのでしょうか!? このたびは、本作の試し読みと、小椋ムク先生が担当するイラストの一部を入手しました! ぜひ、お楽しみください!


試し読み
 マアブルに残って千景ママともうすこしおしゃべりをしていくという愛子を残し、一平と二人で外に出た。帰る方向は逆になるが、一平は二ノ瀬の自宅まで送ってくれるという。
 昼を過ぎ、小雨が降り出していた。運動会は中止になってしまっただろうか。
「雨なのにごめんね。あと、さっきは助けてくれてありがとう」
 速度を合わせて隣を歩いてくれている一平に礼を言うと、「唯史」と真面目な声音で呼ばれて立ち止まる。
「あのこと、まだ忘れられない?」
「…………」
 あのこと、と言われて、それがなにを指しているかはすぐに理解できた。けれど、どう答えていいかわからず黙りこんでしまう。
 一平は二ノ瀬の緊張した気配に気づいたのだろう。励ますように肩を優しく叩くと、先ほど問いかけたことなどなかったようにふたたび歩き出した。
 小・中・高と同じ学校に通い、上京のタイミングまで合わせてずっと一緒に過ごしている一平は、二ノ瀬が過去に負った心の傷を知っているため、積極的に恋愛や結婚を勧めてこない。あれから十年以上が経過しているのだから、いい加減忘れてしまえばいいと本心では思っているのかもしれないが、二ノ瀬がかたくなに孤独を貫いているのを知っているからか、そっとしておいてくれている。
 折りたたみ傘をはじく雨が、柄を持つ二ノ瀬の右手に連続で小さな振動を与えている。傘を差すのはひさびさだった。
 雨の日は危ないので普段はほとんど外に出ないが、一平が一緒にいてくれる時はこうやって多少の無理ができた。一平や近所の人たちが親切にしてくれることで、二ノ瀬は視覚障害がありながらもひとりで生きていくことができる。
 二ノ瀬は幸せだった。この小さな世界の中で人と触れ合いながら、これからものんびり生きていけたら他になにも望むことはない。
「あ、ところでさ」
 二ノ瀬鍼灸院が近づいてきたあたりで、一平が思い出したように言った。
「今度またひとり、紹介したい人がいるんだけど、診てもらえる?」
「うん、いいよ。愛子さんのお友達?」
 一平夫妻からは、時々新規の患者の紹介があった。そのほとんどが、交友関係の広い愛子の女友達だった。
 肌寒くなってくる秋口は、冷え性や不定愁訴など婦人科系の悩みを抱える女性が多い。一平がまたと言ったので、今回もてっきりそうかと思ったのだけれど。
「ううん、おれの会社の後輩。男だよ」
「一平の、後輩の男性? めずらしいね」
 というか、はじめてのことだった。
「会社の人には、幼なじみが鍼灸院やってる話ってしてないからね。でもその後輩が最近、すごく疲れてるみたいでさ。普段からがんばり屋のいいやつだし、一度連れてこようかなと思って」
「一平も一緒に来る?」
「うん、明後日の会社帰りに寄ろうかと思ってるけど、どう?」
「もちろんいいよ。待ってる」
 その後輩についてすこし聞いてみると、一平の勤務する文具メーカーで社外広報をしている、二ノ瀬と一平よりひとつ下の二十九歳の男だという。仕事のやり方がスマートで、性別年齢問わず慕われているらしい。
「夏にあった会社のバーベキュー大会で愛子がその後輩に会ったんだけど、彼女曰く、唯史とは違ったタイプのイケメンらしいよ」
「ふーん」
 見た目の情報に関しては、見えないため特に思うところもなく、一平の後輩はがんばり屋で人の好い人気者、と二ノ瀬の頭に記憶された。

 

小説『触れて、感じて、恋になる』作:宗川倫子/イラスト:小椋ムク

 

レーベル:リンクスロマンス
発売日:2018年8月31日(金)
定価:本体870円+税

STORY
視覚に障害を持つ鍼灸師の二ノ瀬は日根野谷という患者に出会う。無遠慮な日根野谷の言動に戸惑うが次第に彼の心根に惹かれていき…?

購入特典
電子限定:書き下ろし番外編
honto限定:書き下ろし番外編

(C)SOUKAWA RINKO,OGURA MUKU, GENTOSHA COMICS 2018

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