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艶やかな江戸の世界が広がる!浮世絵から読み解く江戸BLの世界 

2020/08/10 18:00

『百と卍』とともに読み解く!!浮世絵が織り成す江戸ワールド!



江戸BLの火付け役といっても過言ではない『百と卍』シリーズ。江戸期の風俗が忠実に描かれ、江戸の世界を存分に感じられる一作となっています。また作者の紗久楽さわ先生は浮世絵や浮世絵師にも造詣が深く、個人サイトで公開していた江戸の浮世絵師たちを描く『当世浮世絵類考猫舌ごころも恋のうち』は書籍化がされています。

そんな紗久楽さわ先生が描く『百と卍』、実は浮世絵をオマージュしたコマや表現が満載なのです! 浮世絵といえば現代の私たちに江戸の風俗を語り掛けてくれる美術。浮世絵世界を交え江戸文化を伝えたいという先生の想いが伝わってきます!
そこで今回は紗久楽さわ先生が描き出す江戸BLの2つのポイントをご紹介し、最後に江戸の男色についても探っていきます!


ポイント① 細かい生え際


浮世絵の彫りの技法として「毛割」というものがあります。そもそも浮世絵は分業で制作された印刷物で、絵師の他に、版元、彫師、摺師と役割分担がされています。彫師は絵師が描いた絵(版下絵)を版木に貼り付け、彫り進め、彫った版木で摺師が摺りの作業を行います。彫師の作業の中でも大変難易度が高く技術力を要求されたのが生え際の毛を彫ること。このことを毛割といいます。

喜多川歌麿『婦女人相十品 ポッピンを吹く女

『百と卍』で描かれる生え際も細かく繊細に描かれ、人物や着物の輪郭線も浮世絵のような線の強弱があります。卍の少し乱れたほつれ毛も色気がありますよね。江戸っぽさと、現代風のキャラクター絵が融合されたような画風です。


ポイント② 浮世絵風景画を取り入れる

 
浮世絵の風景画家として有名な歌川広重の名は、皆さんも一度は聞いたことあるのではないでしょうか。『百と卍』に描かれている江戸の風景には、広重の風景画がオマージュされたコマがあります。なんとも粋な演出です!! こうした浮世絵へのオマージュを通じて、私たちにはもう見ることの叶わない江戸の暮らしや町並みに思いを馳せることができるなんて素敵ですね。

歌川広重『江都名所 洲崎しほ干狩』国立国会図書館デジタルコレクション


また、潮干狩りは江戸庶民の遊びの一つで洲崎は潮干狩りの名所です。
百と卍(3)』の冒頭シーン、潮干狩りを楽しむ百と卍のバックの風景は歌川広重『江都名所 洲崎しほ干狩り』を元に描かれているのでしょう。
他にも1巻では歌川国芳の『通俗水滸伝豪傑百八人之一個 浪裡白跳張順』が部屋に飾られていたり、『男女色交合之絲』と思われる艶本でイチャイチャしたりと各所に浮世絵が隠されています。こちらも是非探しながら紗久楽さわ先生の浮世絵江戸ワールドを味わっていただきたいです!


ポイント③ 男色の世界


日本の男色の歴史は奈良時代まで遡ることができます。男色は特に女色を禁じられた僧侶の間で盛んに行われ、年上の僧侶は稚児(年下の少年)をかかえ、性的関係を持つこともありました。そしてその流れは武家社会にも繋がっていきます。江戸時代では歌舞伎との深い関わりの中、性風俗、商売として受容されました。

江戸初期に「かぶき踊り」が流行し、その後、男装の女性が踊る「女歌舞伎」が現れますが風俗の乱すとして幕府に規制されます。「男の子ならいいだろ!」と「若衆歌舞伎」へ形を変えますが、舞台で踊る少年が裏で体を売るようなこともありこれまた規制。そして現在の成人の男性による「野郎歌舞伎」が生まれます。しかしその後も女形の少年による売春は続き、加えて少年の売春が専門の陰間茶屋も登場します。
 
男のたしなみの一つとして男色が流行し、男色、女色のどちらが良いかという優劣論争などもされました。その後、江戸後期から明治期にかけて西洋の価値観が流入するなどし、男色文化は衰退の一途をたどります。
まさに『百と卍』の百が元・陰間として描かれていますが、男色は当時の春画や文学の中で描かれ、当時の性風俗をうかがうことができます。
 
喜多川歌麿『願ひの糸ぐち

春画の特徴の一つとして、ほとんどが「着衣」での性行為を描いているというのがあります。衝動にまかせ、着たままで…なんてこともあったでしょうが、それにしても服は脱ぐというのが自然です。
春画の着衣に関しては、「衣装の美しさ、流行を絵に組みいれるため」や「チラッとみえる裸体がエロスをかきたてる」、「関節の曲がりや難しい体位を衣装で隠すため」など様々なことが言われています。
 

『百と卍』でも着衣セックスが描かれますが、柄物の衣装と覗き見える裸のコントラストがよりエロスを感じさせます。いちぶのりなどの性玩具も登場しています。セックスにも江戸時代の春画のエッセンスを加え、当時の性風俗を描き出しているのでしょう。
 
柳川重信『天の浮橋 陰間買い

男色を描く春画において受け手側は年下の少年、挿入する側は年上の大人という上下関係のようなものが明確に存在していました。また陰間は男性にも女性にも利用され、中には男性、陰間の少年、女性で3Pものまであるほど。受け手となった男性は少年であり、中性的な魅力が求められたという点も重要です。当時の性倫理に関しては現代の感覚と切り離し理解する必要がありますが、男色文化における負の側面は『百と卍』でも描かれます。


『百と卍』の第一巻では百の過去が過酷な性労働として切なく描かれています。
 
 
本作では男色文化を提示した上で、江戸世界の「BL」としての表現が模索されています

いかがでしたか? 多くの江戸BL作品の中から今回は『百と卍』を紹介しましたが、他にも火消が登場したりと、作中に織り込まれ江戸の風俗が盛りだくさんです。皆さんも作品を読みながら江戸に思いを馳せてみませんか!
 

 最新刊三巻 絶賛発売中!

百と卍(3)』作:紗久楽さわ

 

あらすじ
江戸の季節はひと巡り。いっそう深くつながり合ったふたりに二度目の夏がやってくる。昼夜ふりそそぐ、卍からの蕩けるような愛撫と睦言は百樹の心を癒やし、甘やかな暮らしを守るように卍は笛指南の仕事をはじめた。
そんな蜜月のなか、百樹は偶然再会した陰間時代の先輩・十六夜に昔も今も囲われ者のまま、と言い放たれ、「卍に見合う己になりたい」と憤りを感じる。そこへ、再び千と相まみえることになった百樹は―ー

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