BL情報サイト ちるちる

BLニュース

BLニュースは標準ブラウザ非対応となりました。Google Chromeなど別のブラウザからご覧ください。

初期榎田尤利の衝撃的作品 歪んだ愛だからこそ美しい 『明日が世界の終わりでも』

2008/10/14 00:00

他の男に抱かれる恋人を「見る」こと―それが、玲治が望に求めたセックスのやり方だった。毎回違う男に組みしかれて乱れる望を、ただ見つめるだけの玲治。自分では指一本触れない残酷な愛し方に傷つく望だったが、身体中に絡みつく熱を孕んだ玲治の視線は、どんな愛撫よりも望を蕩けさせた。快楽と哀しみに翻弄されながらも、望は玲治を愛することを止められない…。人生を変える運命の恋を描いた表題作他、二編を収録。

この頃はBL以外の作品でも精力的に執筆活動をされご活躍の榎田尤利先生。文章力があり、作品にはずれがないと定評のある作家さんです。なかでも初期にかかれたこの作品は印象的です。
まずは、表紙に目が引きつけられることでしょう。
真っ赤な夕陽をバックにしている主人公達という茶屋町勝呂先生のインパクトのある表紙。しかし印象的な表紙に負けないほど、中身も衝撃的な作品です。
19歳の望は、図書館で26歳の御厨玲治に出会い、一目で恋におちます。知的で経済力もあり、大人の玲治にあこがれる望。そして、手放しで玲治にかわいがられる望、すでにセックスの経験もあり、自然な成り行きでもっと玲治に触れたいと思う望ですが、玲治は決して触れることを許さないのです。
最初は、そういうものかと軽く思っていましたが、言葉では、独占欲をあらわにしてくれるのに、決して身体にふれようとしない玲治の違和感に不安を感じます。
そして、セックスさえも、玲治の指示のもとに、玲治が選んだ男と寝ることが、自分のやり方だと言い放ち、それに従えないなら別れると言われ、玲治以外の男に抱かれ続ける望。
玲治の視線にさらされ、指示されるその行為に、だんだん玲治の真意がつかめなくなり、気持ちを繋ぐことができなくなる望の悲しみが胸をうちます。玲治を愛しているからこそ、その行為がだんだん苦痛になるのです。
望が自暴自棄になり、玲治の見ていないところでのセックス禁止という取り決めを破ったために陵辱されてしまいます。
(ここからネタバレ注意!)
倒れていたところを発見され病院に担ぎ込まれた望。その姿をみた玲治は、自分がそういう形でしかセックスできない、好きな人に触れることができないことに深く傷つき、悲しみます。
なぜ彼は愛する人を抱きしめることにためらうのか?それが、友人の言葉で明かされます。
玲治は大好きな母親に殺されかけたことで、セックスの最中に相手の首をしめてしまうというトラウマを抱えていたのです。
何度も傷つき、愛する人を失い続けた玲治の悲しみ、孤独を知り、そんな玲治だから腹を括って愛し抜こうと望は決心しますが……
玲治は、望の敵を討つために犯人を刺して服役することになります。服役する玲治にずっと手紙を書き続ける望。ラスト、やっと自分を少し許せるようになった玲治と再び望が出会うシーンは、友人視点なのですが、いろいろあったけれどお互いがそれでも求め合っている玲治と望の固い絆を感じさせられます。
と同時に、ずっと見守り続けてきた友人の安堵も味わうことができます。

紹介者プロフィール:はる
木原音瀬、榎田尤利の小説をこよなく愛するお年頃の主婦。運動不足解消を目指すべく犬の散歩にせっせと歩いているが、考えているのはBLの事。 精神的な痛みが伝わる描写に激しくもだえる“精神的”鬼畜な性格。バッドエンド、死別、カップルになれないまますれ違って終わる作品がもっとあってもいいじゃないか!とハッピーエンドオンリーのBL界に憂いを密かに抱く。六青みつみの自己犠牲の受け、真瀬もとの痛さも大好物。

関連作家・声優

アクセスランキング

最新BLニュース

オススメニュース

最新のコメント

PAGE TOP