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ストーン!! 落とし穴にハマったような”恋”が読んでみたい! 『透過性恋愛装置』

2008/10/28 00:00

若手建築士として注目を浴び、己れのルックスにも自信を持っていた北嶋は、とあるコンペでホテルマンの牧田と出会う。その落ちついて控えめな物腰を軽んじ、コンペで最優秀賞を逃したことで牧田にいちゃもんをつける北嶋だったが、常に大人の余裕を持つ牧田に諌められ高慢な鼻をへし折られてしまう。それをきっかけに牧田の人間性に触れ、恋に落ちてしまった北嶋は、思い付く限りの策を弄するのだったが…。

あの人のことを好きかも知れないと思い悩むじれったい作品もいいですが、ストーンと見事に「恋に落ちる」話も腐女子は大好きです。
そしてこの「透過性恋愛装置」は、まさに、そのストーンなのです。

主人公北嶋は、才能ある若手建築士であり、人目を引くルックスも自覚があるだけに、鼻持ちならない性格です。尊大で傲慢な態度に、話の冒頭で読者はきっと眉をひそめます。同僚でこんな奴がいたらと思うだけで、ぞっとするタイプです。
女性に対しても自分を飾るステイタスシンボルの一つとしか考えていないので、華やかな女性をとっかえひっかえして、周囲の人間から浮きまくっています。
傍若無人でわがままで、思ったことはすぐ口にしてしまう子供っぽさが、どうにも鼻持ちならないのに・・・
老人向けマンションのコンペに同級生から誘われ、そこでオーナーホテルの企画部長牧田に出会ってからこれが、見事に変わっていきます。
老人向けマンションのコンペなど簡単な仕事だとろくに説明も聞かず、自分勝手な設計をたてた北嶋。読者の予想通り、コンペには落ちてしまいます。
最初から採用設計士の決まっていた出来レースだろうと、牧田のところに怒鳴り込んでいった北嶋に対して、礼儀正しく、しかし毅然とした態度で牧田は、北嶋が何も理解できていなかったことを指摘します。
その紳士的な振る舞いに、いたたまれなくなるのは北嶋です。牧田の説明を聞きいかに自分が矮小であったかと恥入り、牧田のためにもう一度設計図を引き直します。もちろん、コンペの結果が覆る訳はないのに、牧田にどうしても自分を誤解されたくないとなぜか必死で設計図を引くのです。寝る間を惜しんで、それでも牧田に自分の本気を見てもらいたくて・・。
さあ、読者の耳には、ストーンと恋に落ちていく音がきこえましたね。

(ここからネタバレ)
それから、牧田が乗る電車に一緒に乗ってちらりとでも見つめていたいと、早起きをします。身綺麗にして毎日毎日、牧田を見つめ、それだけで満足していたのに、そんな北嶋に牧田は気づかないはずはなく、ある日牧田に声を掛けられてしまいます。
舞い上がった北嶋は、つい心のまま牧田に告白をしてしまいますが。。
無謀で謙虚さのかけらもない発言に周りは振り回されますが、牧田への情熱も素直にまっすぐで、時々覗かせる北嶋の意外なほど繊細な感性といい、歯に衣着せぬ表裏のない言動が、なぜか北嶋を魅力的に見せてくれるのです。こんな北嶋なのに、うまくいってほしいと読者みんなが応援してしまいます。
傲慢であるけど、悪意のないそんな子供っぽさをのこしたまま大人になってしまった北嶋を、牧田も読者もなぜかしらかわいらしく思えてくるのですからかわい有美子マジックです。
まっすぐで一生懸命な男にきらきらした目でその気持ちを体中で告白され続けたら、いい大人がほだされないはずはありません。「仕方ないなあ」と苦笑いしながら、半ばあきらめ、振り回されることを半ば楽しみながら牧田が北嶋を懐に収めて作品は終わります。さらりとした読後感は、人を好きになるのっていいよね・・と品の良いフランスの恋愛映画を見たような気分を心にのこします。

紹介者プロフィール:はる
木原音瀬、榎田尤利の小説をこよなく愛するお年頃の主婦。運動不足解消を目指すべく犬の散歩にせっせと歩いているが、考えているのはBLの事。 精神的な痛みが伝わる描写に激しくもだえる“精神的”鬼畜な性格。バッドエンド、死別、カップルになれないまますれ違って終わる作品がもっとあってもいいじゃないか!とハッピーエンドオンリーのBL界に憂いを密かに抱く。六青みつみの自己犠牲の受け、真瀬もとの痛さも大好物。

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コメント2

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匿名さん

この本以前買おうかどうしようか思ってたんですよちょうど。

裏表紙のあらすじ的にもなんとなく心惹かれていたっていうか。(笑)
今度やっぱり読んでみようと思いました。
結構私の中でリアルタイムな話題だったんですよ、だからすごく参考になりました♪

匿名さん

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