”スメルズ ライク グリーン スピリット” スピンオフ開始!

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表題作深潭回廊 1

山田(柳田先生)
尾崎渚、中学生

その他の収録作品

  • モッさん放浪記
  • あとがき

あらすじ

教え子が同性愛者であることを知り、身体を求めてしまった教師。
彼は全てから逃げ出し放浪者となった。



人を放棄したくて、モッさんと呼ばれていた。
同性が恋愛対象であることに苦悩してきた柳田(やなぎだ)。
教師だった頃に生徒相手にレイプ未遂事件を起こす。
彼はその場から逃げて、逃げて、いつの間にかモッさんになっていた。
それは自分の過去も名前も捨てたのに、生き続けるしかない悲しい妖怪。
何もかもを失ったかのように思えたが一人の少年が手を差し伸べる。

痛くて愛おしい青春を描いた『スメルズ ライク グリーン スピリット』から7年。
あの時、こぼれ落ちてしまったキャラクターの物語。

作品情報

作品名
深潭回廊 1
著者
永井三郎 
媒体
漫画(コミック)
出版社
ふゅーじょんぷろだくと
レーベル
POEBACKS Be comic【非BL】
シリーズ
スメルズライクグリーンスピリット
発売日
電子発売日
ISBN
9784865896022
4.6

(103)

(80)

萌々

(14)

(5)

中立

(3)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
13
得点
474
評価数
103
平均
4.6 / 5
神率
77.7%

レビュー投稿数13

あのキャラクターのスピンオフ

レビュー書いてなかったから5巻発売キッカケに
改めて読み返して書いてみます。

スメルズ ライク グリーン スピリットのスピンオフです。
美少年三島くんを拉致、レイプしようとして夢野と桐野に見つかってそのまま失踪した柳田先生が過去に囚われてバケモノになっちゃってるお話。

前作でも頭からモヤモヤが溢れ出てたもんね。パンドラの箱を開けずに自分の秘密を閉じ込めてたら反動がヤバいね。
眼だけギラついた得体の知れない黒いバケモノ【モッさん】と化してしまった柳田。
結局たどり着いた海辺の田舎町で顔が良いもんだからおばさま達のアイドルになるし、謎の美少年 尾崎渚くんと出会ってしまって翻弄されて死にたい気持ちが反転。ウキウキへらへらモードに。
人間って本当にちょっとしたキッカケで落ち込むし気分上がるもんだなー。

しかし、この渚くんただ柳田に好意を持ったって感じではなく、闇深さがあんだよね。
晩御飯作らないと!って毎日言ってるし、中学の友達の父親と肉体関係あるような感じだし。
とっても気になるところで1巻終了。

タイトルが四文字熟語みたいで固い印象あるからかスメルズ〜よりもレビューが少ない。
スピンオフと気づいてない人が多いのかな?
このシリーズも面白いからオススメなんだけどな。

紙本で購入
修正の要らない描写

0

just a few words for this

romanticization of pedophilia in it's finest

1

罪と比例する幸福

本流未読でこちらのみの感想です。内容が分かっていて読む人しかいないにしても、「しゅみじゃない」評価が0はすごいですね。

柳田先生が他の人と同じように憎悪している、自身の“獣”のおぞましい可視化が強烈でした。
ペドフィリアだからといってそれ自体が罪ではない。自分でどうすることもできず、本人すら自身を恐れていることは木原音瀬さんの「ラブセメタリー」にもありました。
彼が自分を理解し抑え付け、普通に見えるよう擬態している時点ではまだ正気があるのですから、読者として辛くとも安心して見られます。
先生の過去の行為(生徒へのレイプ未遂)というのは表紙裏で触れられたのみ。

考えさせられたのは、渚に触れ合うようになってから、柳田先生の足元に花が咲き満開になるところです。思い詰めていた今までとは全く違う満たされたニヘラニヘラする表情は、それだけ見れば普通の人と変わらない。けれどふと気づくと自分が堕ちていると自覚してしまう。
生まれついた(発現してしまった)性癖のせいで幸せが得られないというのは、絶望です。

中学生の渚は先生を慰める救世主でもあり、死神でもあります。目も怖い(汗)
彼は無邪気に少年同士で遊びおちゃらけもするし、大人に何か言われても飄々と交わします。
柳田に興味を惹かれて同衾し、遊ぶように共犯している危うさは、見てはいけないもののようで目が離せません。

ペドフィリアは性的マイノリティの中でも特に理解されないものです。もうすぐ2巻発売とのことなので、先生がどうこれから生きるのか、見守りたいと思います。

4

好き

元よりスメルズライクグリーンスピリットが好きでこの度購入しました。
1ミリも明るい要素がない。が、闇深い物好きなのでとても満足しました。
早く次巻が待ち遠しいです。

1

表紙から震撼

大好きな「スメルズライクグリーンスピリット」のスピンオフ。
物語からこぼれ落ちてしまった男、柳田の物語です。

前作でも柳田ターンはひたすら怖かったですが、こちらの1話ずーっと怖かったです。絵が。でも読まずにはいられない。
明るい場所で読む事をオススメします笑

前作で教え子の三島をレイプしようとするも、夢野たちの阻止によって未遂に終わり、姿を消した柳田。
死ぬ場所を求めて彷徨っていたが、死ぬこともできずに港町で暮らしている。
ある日、海で「彼」に似た少年と出会い…という始まりになっています。

この少年、無邪気な普通の中学生かと思いきや、色々裏のありそうな雰囲気です。
わたくし、ショタのエロが地雷なのですが、今回は何故かアラーム発動せず。
多分この渚という少年、柳田を食ってしまうくらいの闇深な背景持ちっぽいからでしょうか…あまりエロが気にならなかったんですよね。
描写も濃くなかったし。

物語はまだ序章といった感じです。
柳田は悪態ついたり、人生捨ててる世捨て人だけど根っこは悪人じゃないと思うから、救済の物語になるといいなぁと思っているのだけど…。

2

カテゴリー分けしたらやっぱりBLじゃないんでしょうね

スピンオフがあると知ったけど、電子がなかったので通販で買おうかなーと思った矢先電子で発売されたのですぐさまポチり。
なんでしょうかね、この読後感は。
人の触れてはいけない部分が晒されまくりというか、実際柳田は前作では犯罪者なので、ホントに事件の追跡をしているような気で読んでいたんだと思います。
重いし。

元々スメルズライクグリーンスピリットも最近まで知らなかったので読んだのも割と最近で、そもそも自分が使っているサイトでは女性マンガのくくりだったので完全に見落としてました。
でもBLとしないことで沢山の人に読んでもらえるのならいいのでしょうね。というかカテゴライズが難しい。
まあ、ちゃんとアンテナ張らないと良作もスルーしちゃうなと反省しました。


前にレビュー書かれてた方がおっしゃってますが、柳田が足を踏み外すきっかけになったのは自身の性癖もですが周りの大人、主に母親のせいというのが大きいですよね。
もちろんそれだけではないでしょうけど、周りとの関係性で、その後どうなってしまうのかが変わってしまうんでしょうね。
前作で桐野が言っていたように、あの目の奥に抱えていたものが柳田は自身ではどうにもできず、屈折しまくってあんな目の大人になってしまったんだろうなと。
最初に南條くんに惹かれていた時は、柳田自身も子供だったのでただ同性に惹かれてただけだったのが、その自分をこれ以上ないくらい否定され、その想いが昇華されずにくすぶり続け、ペドフェリアになってしまったのではないかなと。(実際の年齢的にはペドではないかもしれませんが、柳田の葛藤などからあえてペドと言いたい)
元々、死に場所を探して各地を彷徨ってモっさんになってしまったので、やはりそこまで追いやってしまう原因の一つを作った周囲の大人の責任って大きいですよね。
だからといって柳田の行いが許されるわけではありませんが、彼が抱えて苦しんでいる様を見るとそう思わざるを得ません。

そんなところに現れたのが渚少年ですが、彼が柳田を受け入れてハッピー、とはいかず、渚もどんな事情からはわかりませんが、おそらく周囲の大人と複数関係を持ち、その鬱憤ばらしなのか柳田をペットとして飼う(関係を持つ)というかなり癖の強い少年です。
またそれが悲愴な感じがしないのが怖い。目も怖い。
渚の背景はまだ一巻では見えないのでわかりませんが、私は昔の寺院における稚児を思い出しました。
渚と出会い、初めて自身を受け入れられた柳田はこれ以上ない幸福感を得るのですが、それは幸福とは違っていて…、という感じで一巻は終わりです。
続きが気になります…


画力が圧倒的で、所々笑えますが、テーマがBLに収まりきらず重いので、人を選ぶ作品かなと思います。
でもモっさん放浪記は単純に笑えました。
江戸川先生やタロウの父ちゃんが恋しい…

あとカバー裏なのかな?バスの中の風景がなんなのか気になります。

3

もう1人の物語

スメルズライクグリーンスピリットが大好きだったので購入しました!
まず最初に思ったのは長い先生の絵は「すごい!!」ということです。(語彙力皆無ですみません) 柳田先生や渚はかっこいいより美しいという言葉が似合います。そして、先生の性癖の苦悩の表情からは何かうったえてくるものが感じられます。
私は先生のしたことは許されないことではありますが、先生自身も被害者の様な感じがするし、性癖のせいで一生好きになった人を愛すことも愛されることも世の中では認められない、独りぼっちだと思うと先生を憎むことはできませんでした。
2巻が出たら渚の裏が判明するのかな、と楽しみにしています。スメルズ…で3人はそれぞれの幸せを掴んだと思いますが、次はどうか先生なりの幸せを見つけてほしいと思います。
スメルズ…があんなに人気だったのにあんまり知られてないのが悲しい、、私が使ってる電子には載ってなかったし、、スメルズ…すきだった人は読んでみて欲しいです。

3

こぼれ落ちてしまったキャラクターなら

すくい上げて欲しいなぁ。
母親達から否定された少年時代で成長が止まってしまったような柳田(山田)
やってしまったことも、今現在の生き方も褒められたもんじゃないけど、
そんな自分であることに誰よりも苦しんでるのは柳田自身だと思うから、
もう周りの人たちから糾弾されるような展開にはなって欲しくないなぁ。
渚少年の方がしたたかで生きる力がありそうだから、柳田がこの先渚少年に引き摺り込まれても、そっから一緒に這い上がって欲しいなぁ。

1

まさかの番外編があるとは

「スメルズライクグリーンスピリット」で生徒の三島を襲って捨った後に、捨て台詞を残して行方不明になってた柳田先生のお話です。

あの後の彼の行動が明らかになっています。日本全国をあちこち放浪して辿り着いた小さな島で、山田と名乗って暮らしています。柳田がいつも夢見ていたのは三島では無くて、初恋の南條君なのが業が深いと思いました。SIDE:Bの番外編に彼とのお話が載ってます。
島で出会った渚もまだ謎の多い人物です。柳田の家に押しかけて渚の主導でセックスしたり、友達の父親とも関係があるような表現もありました。夕飯を作らせている親とはどんな人物なのか?

南條君との関係がバレてバケモノにならざるを得なかった柳田に救いはあるのか、これからの展開がとても気になる作品でした。

1

あの時手を差し伸べなかった大人達に、責任はまったくないのだろうか

 『スメルズライクグリーンスピリット』は今でも大好きで、度々読み返す作品です。あの上下巻に溢れそうなほどいろんな要素が詰まっていて、私にとっては最も性について考えさせられた作品の1つ。あちらでは悪役に徹していた柳田ですが、下巻の描き下ろしではそんな彼の幼少期が描かれており、彼にも当然純粋な子供時代があったことを突き付けられましたよね。化け物なんかになりたくてなったわけじゃない。あの時誰か1人でも、端から拒絶するのではなく、話に耳を傾けてくれる人がいれば、彼はもっと違った人格になっていたかもしれない。立場の弱い人への性的搾取はけっして許されることではないけれど、彼の場合は、少なくとも最初に限って言えば合意だったし、彼自身も手を差し伸べられるべき子供だった。これを読んだ大人は、その事実に向き合う必要があるのではないかと思います。

 自分を見失った、他人に呪詛を撒き散らすおぞましい人間・山田。そのおどろおどろしい風貌に、つい飲み込まれそうになってしまうけれど。彼の1つひとつの台詞やモノローグを拾っていくと、あの頃の感情はまだ彼の中に燻っていて、そこから彼が精神的にはほとんど成長していないのではないかという気もしてくる。彼の心は玻璃のように繊細なままなんだと。渚のような中学生にすら簡単に依存してしまえるほど、壊れていたんだなぁと。弱者への性的搾取を楽しんでいるわけではなく、理性と欲求の間でどうしようもなく踠き、身動きの取れなくなった人間の末路。これがサイコパスだったら多少遠い存在にもなるでしょうけれど、彼はけっして私達からそんな遠い存在ではなく、実は誰よりも一般的な感覚を持った人間なのだと思います。前巻のファンとして、いちBL読者として、彼の行く末を是非見届けたいなぁと強く感じました。

3

回廊の行き先は…

あの、アノ「スメルズライク〜」のスピンオフ、しかも、三島を犯そうと襲った教師・柳田を主役に据えた作品、と聞いて…
まず読む前から震撼する。
そして表紙の男の眼を見てゾッとする。
もうここでバイアスがかかっている。これは凄い傑作なのだと。凄いに違いないのだと。
だがしかし。
もっとフラットに読んでみようよ。

冒頭。
怖い妖怪みたいな男がいるよ。子供達の間に広がるそんな都市伝説。
真っ黒でモジャモジャで、追っかけてきて食べられちゃうんだよ…
そんな伝説の妖怪男、それが「モッさん」。
だが次に現れるのは美貌の流れ者・山田だ。
山田はその美形ぶりから、住民のおばさんたちからはチヤホヤされている。
山田は表面上、ごく普通の人間。だが心では周囲に呪いを吐いている…

帯/粗筋にてこれはあの時の柳田と明記されているけれど、実際作中では「柳田」とは出ていない。だからただの「山田」として読むならば、心に鬱屈を抱えている人物という設定は何も目新しくはないわけで。むしろそれはあなたでありわたしでもある。
だが山田の目の前に一人の少年が現れる。
全裸で、挑むように目だけで嗤う。そんな少年を見た瞬間、山田の内なる何かが爆発するのだ…
ここで、山田は「柳田」と知っている私たちはギクッとする。
何かが起きる。
柳田が少年をどうにかするのではないか。犯すんじゃないか。今度は殺すんじゃないか。
だが、今回は少年の方も普通ではないのだ…

どうやら山田=柳田にフィットする相手が現れた。ならハッピーじゃないか。だけど作品に漂う空気感は陰気そのもので、救いは無く、柳田は逃れようとしていた自らの闇にズブズブとはまり込んでいく…

柳田とは。
彼の罪は何?
同性愛?小児性愛?頭の中だけなら罪ではなかったのに。
妄想あるいは願望、欲望、それを現実に行動してしまった事なのだと思っている。
柳田はそこを自覚しているのかどうか、今回の渚との行為は受け身で完全マグロ的。
渚が柳田を犯している、ような。
後半、渚の存在感が柳田を食ってしまっているわけだけど、これはこれから渚の物語に変化していくんでしょうかね…
自ら大人を喰う少年の存在は、小児性愛をぼやかす事になるような気もする。

6

出口の見えない深淵で……

すごい!
流石としか言えないほどグッと胸を鷲掴みにされました。
『スメルズライクグリーンスピリット』のスピンオフです。
主人公は、三島を襲った教師の柳田。
本作では山田と名乗っています。

あらすじを読んで、もしかしてファンタジー?と思いましたが、
〝モッさん〟という妖怪になってしまった人間・山田のリアルでダークな人生を描いた作品です。
死場所を探して、それでも生き続けてーー
生きる意味とは?
妖怪のような存在になってしまった山田は人を呪って、
過去に自分を変えてしまった初恋相手〝南條〟を憎んでいます。
だけど、本当に憎んでいるのは自身なんじゃないのかな?

山田が少年性愛なのは山田自身の問題です。
その責任を誰かに転嫁しないと生きてこられないほど、
実は悩んで苦しんでいるーーそんな気がしました。
これはただのボーイズラブじゃないと、そう思います。
レイプ未遂犯の気持ちに共感したくはないけど、
でも知りたいと思うし知らなければならない。


山田が生きることに悩んでいて、
それでいて必死に生きている様にも見えます。
セリフは少ないけど表情や心情から読み取っていく作品です。
辛くても簡単に死ぬことなんてできないと、
山田自身が身をもって語ってくれています。

そんな山田に興味を持った〝渚〟
夜な夜なやってくる渚を待つようになる山田。
渚と身体を重ねるたび、
山田がちょっとずつ浮かれていくんですよね。
だけど、ラストにドーンと突き落とされる感覚が……

足元に咲き誇る花、宙に浮く体ーー
だけど実際は水の中に沈んでいるーー…
この不吉なラストにゾクゾクしました。
ここから、もがきながら生きようと必死になる山田の姿が見られるのでしょうか?

渚も一筋縄ではいかない少年。
本心も見えないし家庭環境も謎、
村の人と関係を持っていそうな雰囲気もある。
とっても怖くて危うい存在だと思うんです。

この作品は山田(柳田)の救済に繋がるものなのでしょうか?
それさえも分からない一巻でした。
怖くててゾクゾクして、今から二巻が待ちきれません!

山田がモッさんになってしまった過程は、
同時収録の『モッさん放浪記』で明らかにされます。
こういうところも上手いなと。
比喩が本当に素晴らしい!



3

『スメルズ ライク グリーン スピリット』のスピンオフ作品。

永井先生の作品は、BL、非BL共にすべて読んでいてどれもとても好きなのですが、中でも一番好きなのが『スメルズ ライク グリーン スピリット』。全BL作品の中でも群を抜いて好きな神作品です。今回スピンオフ作品が出るということで読み返しましたが、やっぱり最高な神作品でした。未読の方はぜひ手に取ってほしいです。

今作品はその『スメルズ~』のスピンオフ作品です。
『スメルズ~』の主人公・三島を襲った、高校教師の柳田先生のお話。柳田先生を救済するスピンオフ作品を描いてほしいと切望していたので、今作品が発売になると聞いて発売日を心待ちにしていました。

ペドの性癖を持つ柳田先生が主人公、ということで、このご時世に敢えて今作品を描いた永井先生に敬意を払いたい。永井先生というとコミカルで、パンチのきいたギャグを盛り込んだ作品を多く描く作家さま、のイメージが強いですが、今作品はそのイメージを大きく覆す、ダークでシリアスな作品です。

ショタ。
ペド。
子どもを性の対象にする。

そういったものに耐性の無い方にはお勧めしません。が、今作品は、「子どもを性の対象にする」ことを許容した作品でもありません。柳田先生の葛藤と苦しみがしっかりと描かれた、骨太な内容でした。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。





とある町に「モッさん」と呼ばれる人物が現れた。

もじゃもじゃしたおじさん、から、モッさん、と呼ばれるようになったおじさん。
モッさんに襲われそうになった、口が裂けていた、といううわさ話が広まり、妖怪かもしれないと子どもたちから恐れられるように。そしてその後起きた残虐な事件の犯人はモッさんではないか、という憶測まで飛び交うようになった。

しかし真犯人(モッさんではない)が逮捕され、気づいた時にはモッさんはいなくなっていた。

モッさんはどこに行っちゃったのかな。
と再び人のうわさ話に出るころには、モッさんは違う地にいた。

「モッさん」は、かつて高校教師だった。
教え子を襲い、未遂に終わり、そして逃げた先でモッさんと呼ばれる浮浪者になっていた。

「モッさん」。彼は柳田先生。

彼は新たに逃げた先で、「山田」と名乗り、そこに住み着いていた。
生きていくことに疲れ、けれど死ぬこともできない。

そんな「山田」のもとに、一人の中学生が近づいていくー。

モッさん、もとい山田は、無駄に顔がいいのでその地で女性からの援助もあり何とか生きている。けれど、彼は、自分自身を愛し、許容することができない。そんな彼のもとに近づいてきたのは渚という中学生。

山田に追い払われても、怒鳴られても、渚は山田のもとへと足繁く通ってくる。
そしてある日、無防備に寝転がっていたところを山田が手を伸ばし…。

山田は、自身の性癖に葛藤を持ってるんですね。
初恋の相手だった南條くん。
教え子だった三島。
彼らを愛したのは本当で、でも、それが許されないこともきちんと認識している。かつての自分自身も含め、南條くんも、三島も、すべてを封印した。

この描き方が非常に秀逸です。
山田は、南條くんの顔を思い出せない。南條くんのことがどうでもいい存在だったから、だとは思えない。
自分の性癖、三島への贖罪の気持ち。
そういった葛藤から、彼はすべてを封印してしまったのだと、感じました。

が、それでも子どもに対して欲情してしまう。

渚は中学生、ということもあるのかな。詳細な描写はありません。
が、致してるんだろうな、ということは分かる。苦手な方は注意が必要かもです。

渚に受け入れてもらったことで山田は少しずつ明るさを取り戻していくが―。

でもね、永井作品なので。
これでハピエン!というお話ではないのです。

渚が中学生、ということで倫理的な問題はありますが、今作品の軸はそこではありません。

渚もなにか抱えてる…。

山田の鬱屈、葛藤、苦しみ。
そういったものに、唯一気づいたのは渚。
なぜ、渚は気づいたのか。

渚自身、何かあるんですよ。
あるのですが、それが何なのかは、今作品では描かれていません。
描かれてないんですけれども、いやでも、これ私の推測が当たってたらめっちゃ嫌だな…。

渚は、大人の喰い物になってる子どもなんじゃないかなあ…。

だからこそ、「何か」を抱える山田に気づいた。
同じ匂いがしたのかも。
闇の匂いが。

山田も、渚に受け入れてもらって幸せ、とはならない。
彼もまた、現状が良きものだと思っていない。

子どもが大人の慰み者になっている、という王道のストーリーではなく、渚が、山田を取り込んだように、見える。

うわー、これ、どうなるんだろう…。

ペド、の性癖を持つ方は、恋人が大人になったらどうするんでしょうかね。
そこも気にかかる点ではあるのですが。

通常運転のギャグ色満載の永井節を求めて手に取られる方には肩透かしを食う作品かもしれません。
子どもを性の対象にする、というお話が苦手な方には回れ右をお勧めしたい作品です。
甘々で、優しいお話を好まれる方にも、正直不向きな作品です。

が。

それを遥かに上回る骨太なストーリーが描かれています。
「BL」という括りで読むべきではないのかも。

どうかどうか、柳田先生には幸せになってほしい。
そして、渚も。

それと、山田(モッさん)が柳田先生だと書かれている文章はありません。
渚が中学生だとも描かれていません。

が、それでも、山田が柳田先生であり、渚は中学生だということはちょっとした描写だったり、表記でわかるようになっています。そういった描き方も素晴らしい。

次巻が既に待ち遠しいです。

25

この作品が収納されている本棚

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