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表題作つないで イエスかノーか半分か番外篇4

設楽宗介,ゼネラルプロデューサー
相馬栄,チーフプロデューサー

その他の収録作品

  • ひらいて
  • 月光浴
  • あとがき

あらすじ

設楽の計らいで、春から『ザ・ニュース』のCPとなった栄。だが初日のオンエアで早速ワンマンぶりを発揮して周囲を引かせてしまい、以降当たり障りのない行動しかとれなくなる。栄がどんなに無茶をしても責任を持つつもりで、設楽は栄をそばに呼んだはず。分かっていても自由に振る舞うのは難しい。けれど期待に応えなければ…という焦りも消えない。そんな栄に意外な人物から声がかかり…?「ふさいで」続篇!!

作品情報

作品名
つないで イエスかノーか半分か番外篇4
著者
一穂ミチ 
イラスト
竹美家らら 
媒体
小説
出版社
新書館
レーベル
ディアプラス文庫
シリーズ
イエスかノーか半分か
発売日
電子発売日
ISBN
9784403525117
4.6

(152)

(120)

萌々

(16)

(8)

中立

(4)

趣味じゃない

(4)

レビュー数
16
得点
692
評価数
152
平均
4.6 / 5
神率
78.9%

レビュー投稿数16

唯一無二の関係性

前巻「ふさいで」で付き合うようになってからの今作。

表題は「つないで」ですが、中の構成は「ひらいて」からの「つないで」です。ふさいで→ひらいて→つないでの流れがとてもいいな、と思ったのが第一印象でしたが、中を読んでもそれは裏切られませんでした。

設楽さん40代、栄さん30代だし、キャラクター的にもイチャイチャ甘々な展開になりにくい2人ですが、仕事柄ライバルが現れたり事故に巻き込まれたりしながら2人が2人なりの絆をしっかりを結んでいく様子がとてもいいです。

あとがきに変えての「あずけて」にあるエピソードですが、寝る時に抱き合って寝たりしないんですよね、この2人。お互いに背中を預けあって背中を1ヶ所合わせて寝るんだそうです。まさに二人の関係性だな~と思いました。栄の才能に嫉妬を覚えながらも見守りたい設楽さん、設楽さんの言葉が道標(半分呪縛?)になってがむしゃらに働いた栄さん。お互いに依存せず、でも2人でいることが当たり前のような、この空気感は唯一無二だなと思っていて、そこがとても好きです。

1

アップデート

一穂先生の筆の魔法の力で2時間素敵な時間を過ごさせて頂きました。

はぁーーー……本当に凄い。どんどんのめり込んだし、没頭したし、自分自身とiPhone端末(電子書籍です)のみが存在する世界でした。


設楽と相馬の関係がより一層密にアップデートされた番外編4だったと思います。設楽は相馬のことが好きで、相馬からは明確な言葉で設楽への気持ちを伝えてはいないんですが…

その答えは読めば十分に分かる!
そんな番外編でした。

相馬は設楽を好きなのか?なんてのは問題じゃない。相馬にとって、仕事の上司としても同じテレビマンとしてもリスペクトに値するのが設楽。何というか……相馬自身が全部を預けても良いと思えるような存在だと思いました。おそらく、それには「好き」の感情も包括されているのかも知れないけど、簡単に分かる次元じゃないところで設楽を想っているように見えました。
言葉で「好き」や「愛している」を確認し合わなくても深く繋がる関係なんですね、きっと。
でも多分相馬は設楽に「好き」と言うことはないと思います。相馬は職人肌だし、口で言わなくても目で見て分かれよ、って態度だと思うから。


この作品自体が一本のドキュメンタリー番組のよう。BL展開が二の次になったとしても、私はそれを許容したいくらいの気持ちでこのシリーズ作品を読んでいます。それほどに緻密で詳細な情報量に圧倒されどっぷりハマる。だけど一穂先生は、BLのパートも疎かにしません。
ベッドシーンでは、見えない心の動きにも見せ場をたっぷり作り、物理的な行為のシーンに深みも幅も持たせていました。

軽快で読みやすい文章ではあるけど、文章に綴られていない部分のところまで情景が見えるのは、この作品のすごいところです。


今巻はテレビのやらせ演出問題、豪雨災害の現場に遭遇問題……これまたデリケートでスケールの大きい事件に焦点を当てていました。
毎度ながら、その現場に立ち合わせているかのような臨場感がすごく、その詳細な情報量は圧巻です。テレビマンたちの熱い仕事と思いから目が離せませんでした。


実際にテレビ業界で働く人たちがこんな風に汗だくで泥だらけでがむしゃらに働いているのか分からないけど、「イエスかノーか半分か」シリーズを読むようになって、実際のニュース番組に作品を投影して気持ちを移入することが増えました。

私が勝手に「ザ・ニュース」っぽいなと思っている報道番組があるのですが、プロデューサーの名前のエンドロールを見ては、設楽はあの位置か、相馬はあそこに名前が載るのかと勝手に妄想しています(笑)


「イエスがノーか半分」の世界、全編通して最高でした。何度も読み返していきたい素晴らしい作品に出会えたことが、私はとても嬉しいです。

2

怖いものなしカップルへ

イエスノーシリーズ7作目、設楽×栄カプとしては「ふさいで」に続く2作目です。

前半「ひらいて」
設楽がPを務める夜ニュースのCPとして報道に移った栄。初日、全体を見たいとフロアDをするもののいつもの独断専行が出てしまいスタッフ間に微妙な空気が生まれる。前までとは違う、ここは設楽の番組だと我を殺して無難な仕事をこなすが周りからは「相馬栄の仕事が見たい」とプレッシャーをかけられ、葛藤する。そんな時、思いも寄らぬ人物から声をかけられ…。

という感じで始まります。
無理をして身体を壊すのも見たくない、けど相馬栄としての仕事を熱望する周りの期待にどうすりゃいいんだと悩む栄さん。なにより、対等になりたいから、と自分の言動の責任を設楽さんに取らせたくない、「また新しく楽しいことを探そう」と言った設楽さんを失望させたくない。
前とは違って大切な存在が出来たからこその悩みが人間らしくて栄さんのいじらしさがたまりません。設楽さんも、「俺のことなんか、いくらでも踏みつけにしていいんだ」と栄さんへの愛情が溢れてます。
意外な人物からのタレコミによってやる気を見せた栄さんを見て「面白いことを見つけた時の、俺が最高に好きな栄の顔だ」って設楽さんが言うんですが、こういう公私で互いを認め合う関係性が、このカプの素晴らしいところだと思います。尊い。

後半「つないで」
講演会の依頼を受け、動画配信事業「GRAPE」からの出向・基と共に広島へ向かう栄と設楽。しかし災害級の雨に見舞われ講演会は中止、代わりに地方テレビ局のピンチヒッターを担うことになる。停電が起こり電波の送信が危うい状況が迫る中、テレビの威信をかけ、未曾有の大雨による放送断絶の危機を乗り越えられるか…?

という感じで始まります。
「ひらいて」で栄さんが作ったVに魅せられた青年・美作基くんという新たなキャラと共に奔走します。Vを見てから作った本人に会った基くん、明らかにがっかり&ドン引きしてるのが面白いです。最初は仲悪いですが徐々に打ち解けてきて新たな親分子分?師弟?のような関係を築いていくのが微笑ましいです。
「ひらいて」で絆を深めた設楽さん栄さんカップルの信頼関係にも滾ります。「俺には相馬栄がついてる」「俺には設楽宗介がついてる」…ここやばくないですか?基くんからの(栄さんに)腹立たないんですか?的な質問にも「言葉遣いや態度とは関係ない。そんなのは問題じゃない」と答える設楽さんもやばい。

そして今回、前回ほどシリアスは多くないので比較的ほのぼの?なんですが、やりとりが一々悶えます。煙草一本を交互に吸い合うとかハァ???萌え殺す気か!前回はちゃんとくっつくまでのお話だったので、こいつらくっついた途端にラブラブしやがって…と何故か恨めしくなりました(笑)
「身体で慰めてほしい」「身体で払ってやるから」この軽くてエロいアダルティなやりとりが好きでたまらないです。9歳も歳の差があるカプだってこと忘れそうなくらい対等ですよね…!
濡れ場は、今回も勿論濃厚いちゃいちゃしてます。さりげない事後のシーンももれなく興奮します。

あとオマケとしては、国江田さんが放送で見せたナイスアドリブに関して、栄さんが国江田さんに放ったとある一言が…!なかなか衝撃的でした。「ふさいで」「つないで」では国江田さんの本性が表れることってないんですが、知ってる身としてはニヤニヤが止まらないですね。

やっぱり最高なこのシリーズ。前作を読んだ方は絶対に今回ものめり込みますので是非!

7

フェイドアウトしていこうかな…

さらっと前のレビュー読ませていただきましたが皆好評で、めっちゃ…書きづらい…
元々このイエスノーシリーズ、スピンオフのたびに私の熱はどんどん下がっているシリーズであります。
計は小説としての人物なら面白いけどとっても嫌な人だなぁと思ってるし、皆川大嫌いだし、前作のレビューでも書きましたが、「設楽x栄」と聞いたときに「え…⤵︎」でしたから。
嫌なら読むな、だろうけど、もしかしたら好きな作品になるかもしれない、と思って読むんで。
で、読んだ結果好きになれなかった。非常に残念。
本作は大きく2作品の構成。

「ひらいて」
設楽に引っ張られて報道畑「ザ・ニュース」に移った栄。
今までと同じ自分ならまた今までと同じ道、でも他の自分にはなれない…
そんな栄の、揺れながらもどこか開き直って、それでも少し縮こまっているような描写は読み応えがあった。
そして設楽の友人の有名プロデューサー・三芳が手を染めてしまった「ドキュメンタリーでのヤラセ」事件へ。
これは…麻生のイヤラしさをすごく感じてしまった。
俳優が出てた。と栄にタレこむ。その先は栄にオマカセ、丸投げ。なんだそれ。ただ自分は安全圏にいるだけ。
栄は、久々の生きている実感的な?

「つないで」
今度は講演会への出席のために設楽と栄とで向かった広島で大雨災害に遭遇する、という展開。
これがまた…
災害報道の重要性は確かに。緊迫度もわかるけど。
こりゃまた随分大きく出たね…という印象。こんな何日も現地スタッフが局にも戻れないの?とかヘリ手配とか。パニック映画BLだったっけ?
で、穴を開けていた東京の方は「特に何事もなく、粛々と」だって!そんなもんよ。
策士の設楽Pも敏腕相馬Dも、替えはきく…虚しいねぇ虚飾のTV業界は。

「月光浴」
私がこのイエスノーシリーズで唯一ファンなのがなっちゃん。この子はイイわ〜。
だけどなっちゃんには皆川がセットなんで、そこがどうにもこうにも。

4

天才プロデューサーの苦悩と成長と活躍

久々に戻ってきたスタジオで神がかり的に活躍してしまった栄が周りから引かれたくらいで、次からは当たり障りのないようにするという展開が、なんだかずいぶん丸くなったような…

あらすじを読んで、設楽の期待の応えなくてはという焦りもいやいやそんな可愛い性格じゃないんじゃないの?とは思いましたが、読んでみたら確かに彼の性格ゆえにというところかもしれないと思えるようになりました。
設楽さんにはこれからも暴れ馬をしっかり制御していい仕事させてあげてほしいと願わずにいられません。

国江田さんの活躍が少しでしたがとっても光ってました。
難しい話題で前振りなしに求められたコメントに自分の経験を含めて素晴らしい回答をしてとてもかっこよかったです。
テレビを見ていた潮も惚れ直したことでしょう。
帰宅してどや顔で自慢したり愚痴ったりする国江田さんが見えるようでした。

7

大人の恋、と思いきや

設楽Pと相馬栄のお話のつづきです。
あらすじは割愛します。

栄って好きじゃないんだよね〜、と思いつつ、つい買ってしまったイエスノースピンオフ。
だって計に会えるかもしれないじゃない❓

ストーリーはさすがの一穂ミチ先生、スラスラ読めて面白かったです。栄が栄らしく突っ走っていくのかと思いきや周囲にあわせて自重したり、大人になったねぇ、という感じでしたが、やっぱりそんなことはない‼️
設楽Pとのエチシーンは大人な感じでした。
ラストの「月光浴」の深ちゃんが新キャラに嫉妬してて、可愛かったです。

そして計様がちょっとしか出てないけど、さすがの主人公‼️ 
でも潮が出なかった〜、ということで今回は萌です。

1

仕事メインだけどラブもある

私の中では、ちょっと危うい関係なイメージの設楽と栄。
互いに好きだけど、そんなことはっきり言葉になんてしないでも、身体だけは繋がっているから、そのままなんとなく一緒にいる2人。
でも、今作では設楽ははっきりと栄の良さや、仕事をしている時だけでなく栄だから好きと言ってます。
栄も設楽しか自分を解放?してくれる相手はいないとか、自分を委ねてるみたいな態度もあり、凄くすっきりする内容でした。

少しですが計の出番があり、放送中の大事な場面でサラリとコメントするところが、カッコイイ!それを、きっと帰って潮に散々愚痴っているのかと想像するとニヤニヤしてしまいます。
栄に対しての深の反論や嫉妬なども垣間見れ、色々な意味で楽しめました。

14

愛が重いぞ

お買い物をしたものに対してレビューを書く、ということ自体が初めての試みになります。
そのため、レビューとは??? 外向きの感想って一体何を書いたらよいのだ?? とめちゃめちゃ動揺しているのですが、かっ、神率に貢献したい一心で(超率直)……という気持ちと、ちょっと公平で客観的な目線である方がレビューっぽいよな! とかっこつけたい気持ちが合わさって、セルフQ&A形式でゴリ押ししていくスタンスをとりたいと思いました!
躊躇っている方の背中をちょっと一押し、みたいなあれができればと願ったのですが。とりとめがないので全然無理そうです……。

Q1. どんな嗜好の人に刺さりそう?

A1. 飄々攻め×デレないツンスキーの自分にはドドドストライクでした。あと受けの栄は、体はうすいですが上背は結構ありそうで異性にももてるので、受けさんが一定の男らしさを保ってくれてると嬉しい方に! ぶっささってほしいです。
主人公が天才で大活躍してると、少年漫画では共感が得にくくて敬遠される、という話を聞いたことがある気がするのですが…… その点、この相馬栄さんはお腹いたくなるくらい心の中でぐっっるんぐるんしてるので、幸せになってほしすぎて魂レベルで共感してしまいます……。あとギャップ萌えが甚だしいです。もっといいワードチョイスなかったかね!!!って自分に腹立つくらいギャップ萌えしてしまう。
攻めの設楽さんは掴めないのに滲み出るスパダリ感で、えろいことするときだけちょっと自分本位なとこがあって、そこがまた意味がわからんくらい最&高です。

Q2. 表紙買いしようと思うんだけど、挿絵もたくさんある?

A2. 私も明日記憶喪失になったらこちらのご本を表紙買いしたいと思っていました! なにとぞ握手を!
中身はほぼ挿絵がないので、あれ? と思われるかもしれません。が、それがまたこの「つないで」をBL界の特異点たらしめてる感があって、すごくおもしろいです。
是非この表紙の二人のまま、最初から最後まで揺るがない、えろアンニュイな相馬さんの横顔をお楽しみ下さい。

Q3. 本家イエスノーを読んでないんだけど、全部読んでからっていうのは敷居が高くて……

A3. 途中からデビューし難いスピンオフあるある、わかります!! かく言う私も全然発行順には追えてこなかったクチなので、このお話から入られても大丈夫なのではないかと考えます。
いっそ ①つないで ②ふさいで ③横顔 と遡っていかれるのも、栄の感情の変遷がとても面白いんじゃないかと思います。ただその際には3の後に1に戻って、したさか無限ループから永遠に抜け出せなくなる可能性があるので、ご注意下さい。ようこそ!!

Q4. 潮計、たつなつが大好きなんだけど、彼らの登場シーンは?

A4. 出番としては少なめかもしれませんが、ふさいでに続いて相馬さんが国江田さんのことはめちゃめちゃ買ってくれてるのがわかって安心ですし、なっちゃんは重要な立ち位置だと思います。さすが子分。うしおさんは……! メイビーネクストタイム!
他にも既刊から、まさかこの人が、というキャラクターも登場していて楽しめること請け合いです。

Q5. 気になるけどこの二人をそういう目で見にくい気がして、不安……

A5. もしかして最古参キャラの一人である設楽さんを、お腹周りがゆるみがちな、低身長狸おじさんで思い描いていらっしゃったりしましたか? 絶対あるあるですよね、し、しんどい……!笑
横顔で栄にウッとなってしまった方も、絶対多いと思います。でももし、もしその高いハードルを乗り越えて下さるのであれば、ふさいでをまず読んで、その後に横顔を深呼吸しまくって読んでみて下さい! ふさいでは横顔の相馬さんにとっての挽回の書なので、大量の行間のようなものが見えてくるかも……なんて……(弱腰) 気づけば「おいおいこの二人絶対なんかあるだろ……」的なえろい目で見ておられるかもしれません。
あと、イエスノーシリーズがザ・ニュースとそれに集う仲間たちのお話、と捉えると、ゼネラルPである設楽さんと、彼が一番一緒に番組を作りたかった相手とのお話、というのはあるべくしてあったスピンオフなんじゃないかな? という考えもありです。

Q6. タイトル、何をつなぐ?

A6. ありとあらゆるつないで、是非お手にとって、実際に全用法をご覧ください^^

最初公平で客観的にって、一体どの口が言ったんだ~~!

20

二人の日々がどこまでもつながっていきますように

ふさがれた後は、ひらかれ、そしてつながれる。
「ふさいで」で相馬栄に落ち、本作でさらに奥底へと引きずり込まれて息ができないほどですが、何とか気持ちを落ち着けてレビューします!

【ひらいて】
「ふさいで」がきれいに終わったので、次にどんな展開が来るのか全く予想できておらず。
ですが、思い返せば「ふさいで」は栄が過去、そして設楽と向き合い、前を向くまでの話。
番組を壊してしまったトラウマや葛藤は、まだ描かれていなかったんですよね。夢中すぎて気づいていませんでしたが…

「ひらいて」でフォーカスされるのは、これまでのような自分のやり方を突き通し、設楽の番組を壊してしまうことを恐れる栄の姿。
一方で、設楽が向けてくる憧れや嫉妬に応え「特別」でありたいとも願う。

葛藤する栄に設楽が放つ「お前は俺のことなんか、いくらでも踏みつけにしていいんだ」という言葉には、栄によくもそんなことを!と思ってしまいました…
お互いのためを考えているはずなのに嚙み合わない、二人のエゴがもどかしく胸が痛くなります。

そんな折に浮上してきたのが、他局の番組の〝やらせ問題〟。(テレビが抱える根深い問題を扱っているので、興味がある方はなおのこと楽しめるかと!)
テレビ、そして現実世界の「嘘」と「本当」を追ううちに、栄の気持ちが吹っ切れます。

周囲の人間との関係を自ら変えていく、ひらかれた〝新しい〟相馬栄は必見!才能を発揮したさすがの仕事ぶりに、見事成仏できました。
これも、設楽が作り上げてきた番組だからこそできたこと。やっと二人で楽しく仕事ができるようになって本当に良かったです…

栄が嫉妬や郷愁、少しずつ色々な感情を覚えていっているみたいでそれにも感動。
さらに、だんだんと自分から設楽に対する愛情(としか思えない行動)も見せてくれます。良かったね、設楽P!

また、おなじみのメンバーたちも活躍するのでイエスノー好きにはたまりません。
あの人やあの人が、栄と一体どう絡むのか?!ついに会話した!と興奮すること間違いなしです。

【つないで】
発表されたとき「つながれるなんて…」と早くも泣いたこのタイトル(まだ読んでないのに)。
果たしてどんな意味を持つのか、ぜひ実際に読んで確かめていただけたら!

何よりも衝撃だったのが、度々描かれる甘いシーン。あの栄が…積極的にあんなことやこんなことを?!
まあ、あくまで栄比なのですが。でも今まであれだけうすーい反応を見せられてきたので、もはや夢かと思いました。これほどまでに栄を手懐けた設楽宗介、恐ろしい男…

…こんなことを始めに書いたら、まるでラブラブの新婚生活が始まるのかと思いますね。
誤解させてしまった方、すみません。ストーリーは全然甘くないです。シビアです。

猛スピードで展開する仕事描写は、映画が上映されているかのよう。
臨場感たっぷりの厳しい仕事シーンの狭間だからこそ、ラブシーンがより甘く感じられたのかもしれません。
栄と設楽の脳のフル回転に、ついて行くのに必死でした。このできる男二人の会話がまたかっこよくて。

自然の脅威に対し、テレビができること、やらなくてはいけないことは何か。
それをお互いに確かめるまでもなく理解している、二人の信頼感の強さが素晴らしい!
分かりやすくその信頼を表現した文章には涙腺が崩壊し、しばらく読み進められないほどでした…

栄が設楽に、これまで聞けなかったある質問を投げかけられたのにも涙、涙。
設楽の返事は読者にとっては想定通りだと思うのですが、11年以上の時を経てようやくこうしたやり取りができるようになったんだと思うと…泣(泣いてばかりで要領を得ないレビューで申し訳ありません)
とにかく、身も心もボロボロでふさがれることを願っていた相馬栄のこれほどまでに元気で楽しそうな姿を見られ、幸せな気持ちでいっぱいです。


「つないで」の後に掌編が2つあるのですが、そちらも最高。お待ちかね(?)のあの人々も出てきますよ~!
涙も吹っ飛ぶ、笑いのひとときをどうぞ。
色々と謎が多い設楽の過去に、新たな情報も。面倒な男がようやくのぞかせる本音、自分にだけ見せるそれに機嫌が良くなる栄がかわいすぎます。

設楽と離れたあの夜、睦人と再会したあの朝。どんなときでも月が沈んで太陽が昇り、新しい日が始まる。
どちらも自分勝手で、でもお似合いな二人の日々が、いつまでも続いていきますように。

気が狂うほど素晴らしい作品を生み出してくださった一穂ミチ先生に、心より感謝します。本当にありがとうございました!

22

本当に存在しているかのよう

このシリーズ、登場人物が本当に存在している人のこと書いてるんじゃないの?っていうくらいキャラクターそれぞれの持ち味とか距離感とかリアルですごい。
だからお仕事大変そうな描写は読んでる方も疲れるし、数日ぶりのゆっくり浴槽→ベッドにはこちらもため息でるような心地がする。
読み出すとあっという間なので購入しても数日温めてから開きたい。

内容はみなさん触れていただいているので一点だけ。
イラストもうちょっと欲しい。
表紙とカラーの口絵以外はほぼ挿し絵なしです。
抽象的なものがちょっとありますが。
シリーズ続いていて、各キャラクターに愛着もあるので文章だけじゃなくイラストで顔もみたいです。
同じレーベルでも本によってイラストの点数が違うのはなんなんでしょう?
そこだけがかなり残念です。

7

仕事と恋愛、丸ごと全部愛して!

TV局を舞台にしたイエスノーシリーズのスピンオフのうち、大人カップルを主役に据えた「ふさいで」の続編。

「ふさいで」では、鷹揚で包容力あふれる、ひとまわり年上の保護者・設楽×才能はあるけれど、とんがり過ぎて傷ついた一匹狼の被保護者・相馬、といった関係性だった二人。
今作では晴れて同じ番組担当の上司と部下となり、共に働くなかで、互いに背中を預けあえるパートナーになっていきます。

二人ともプロデューサーという設定だからか、同シリーズの中でもTV番組制作の諸々の描写の比重が大きい!
TV局の内幕ものとしても興味深いし、お仕事小説としてもまずは存分に楽しめます。
部下である相馬の、番組の作り手としての才能を嫉妬しつつも誰よりも評価し、活躍できるよう全面的にバックアップするリーダー設楽。
他方、作り手としては一流だけど一匹狼だった相馬は、チーム作りが抜群にうまい設楽の元で、今までとは違う人との関わり方をしようと考えられるようになり、その中でその才能を発揮します。
こういう関係性、たまりません。

その上で恋愛小説としても魅力的。
本作品のカップルの恋愛、良くある「モテ要素」の、容姿や一般的な性格の良さや家事能力や肩書きなどではなく、何よりも互いの仕事ぶりに惚れ込んで、という点がとても新鮮なのです。
しかも前述のとおり仕事内容の描写が詳しいので、二人の魅力が生き生きと伝わり、そりゃ、お互い惚れるよなって感じで説得力が素晴らしい。

また、一般的にはマイナス要素ととられがちな性格上の凸凹を認めた上で、互いの凸凹ぶりが互いにとってぴったりだと認める形での恋愛模様も、BLとして新鮮です。
「良い人だから好きになりました」という恋愛も良いけど、互いに相手の面倒くさい部分、難ありの部分にこそ惚れちゃってるなんて、めちゃときめきません?
一見人当たりが良く飄々としているようで、実はなかなか本音が見せられず曖昧でわかりにくい性格の設楽と、愛想の一つもふるえない、本音剥き出しで、ハリネズミのようにトゲトゲした相馬。
2人はそんな互いの面倒くさい部分にこそ、尽きない興味をもち、また癒されています。
破れ鍋に綴じ蓋というか、互いが互いにとっての唯一無二感が見事です。

前作までは「近づく者皆斬ってやる」って感じだった相馬が、まあまあ無造作に設楽に接触するようになっているのも良かったです。
懐かない野生動物が少しずつ心を開いていく様を見るようで。

このシリーズ、今のところ3カップル登場していて、三者三様に魅力的なのですが、すごいなあと思うのが、行為シーンについても、ちゃんとそれぞれ書き分けられているところ。
本作は、一番大人なカップル(R45×R35)ということもあってか、手練れたおっさん×行為に対する恥じらいからは卒業済みのおっさんという組み合わせらしい致し方をしていて、それでいて必死に相手を求めている情熱もひしひしと伝わるのが大変に魅力的でした。

シリーズ全体のファンとしても、ますます冴え渡る国江田さん、子分から一歩踏み出した深(&皆川)が出てきて嬉しかったです。
好きなキャラが別視点から描写されるのって楽しい!

本作を読んでて、なんとなく次はそろそろ「そうちゃん」こと麻生さんの番なのかな?という予感がしつつも、この大人カップルの行方をもっと見たくてたまりません。
他の登場人物視点からの2人の関係性も読んでみたいし。他カップルからも面白そうだし、麻生さんや奥さま視点で眺めるのも愉快そう。

普段は電書派なのですが、待ちきれず&ペーパー目当てで書籍を購入しました(追って電書も購入予定)が、買って良かった〜!楽しかったです。

20

イエスノーシリーズ最新作

設楽×相馬の仕事のできる大人カップル編。年齢アラフォー×アラサーって感じだったでしょうか。相馬は社内では早熟な天才でしたから。いくら仕事できてもね…芸術家じゃなく会社員なんだから人との輪も大切。大勢のスタッフで作っていく仕事だし。計みたいに二重人格でも公私をきっちり分ける人の方が大人。

でも前半の話も後半の話も生放送トラブルやライブ放送作り上げてく臨場感があって楽しい。麻生アナとか中年メンバー大活躍の巻なのでポーイズというより大人感が強い。ラノベとかお仕事ドラマっぽい所は相変わらず面白いです。時々職場でチュッチュしてて可愛いですがリスク高くてヒヤヒヤします。

後編に初登場の美作くんは若くて生意気だけどお仕事頑張る子でゆかいな仲間が増えました。この子は受けっぽいなーと妄想を楽しんでます。新聞社シリーズもだけどテレビシリーズも社内同性恋愛多すぎ(笑)

7

大人の恋愛

設楽Pと相馬さんの続編。
相変わらずラブラブ!若さ!!なお話よりも低めな温度の会話がとても良いです。『ひらいて』は雑誌掲載時に読んでいたのですが、『つないで』も相変わらず時世の話題を取り入れるのがお上手で今回もリアルなテーマが面白かったです。
個人的に麻生さんがとても気になるので、お顔も、メインになっちゃうお話も期待したいです。
そして、シリーズで1番好きななっちゃんが番外編で大活躍でとても楽しかったです。新しいファンには厳しい、古参あるあるです。
相馬さんが相馬さんらしくいられるのは設楽Pがいるからで、そんな2人の関係がとても良かったです。

5

大好きな2人!続編をいつまでも待ってます!!

執着がすごい・・・!
という言葉がしっくりくるかは分かりませんが、設楽は言わずもがな、栄も栄で、設楽に多大なる影響を受けていたことが明らかになった前作から続いて、今作ではずっと設楽にどう思われるか考えてて・・・めちゃくちゃ萌えました!

期待に応えたいし、設楽の番組守りたいし、必死なところが良かった!

前半の不安ターンからの、後半は信頼感!
言わんとすることが伝わっちゃうのとか、設楽がいいって言ったら行くよ〜と堂々と言っちゃうのとか、めっちゃラブラブしてますやーん!

個人的に名台詞は深の「めちゃくちゃニワカやないかい!」
最大にキュンとしたのは、「お互いしか見えてない」的なことを栄が思ってたところです!

「まもって」の視線でイチャイチャするのも良かった!!

15

備えない勇気

 大っ変珍しいものを見せてもらっちゃいました。有事にあたって「備えない」国江田計。だってあの国江田さんだよ。小3で書道の授業が始まるのを見越して小2のクリスマスプレゼントにペン習字おねだりするような人だよ。それが麻生さんからいきなり話を振られるのを半ば予期しつつ、あえて「備えない」選択をした。しかもそのテーマときたら「番組制作における嘘と真実」だもんね。彼ほど日々本音と建前、虚像と実像を見事使い分けて生きてる人もめったにいないだろうに。麻生さん、まさか知っててわざとじゃないよね⁉
 
 でも、だからこそ、計は備えないという選択をした。栄渾身の映像を見た直後の現場の空気を揺らぎや迷いもそのままに、正味で伝えたかったから。視聴者だって分かる。アナウンサーも一人の人間であり、会社員だ。その口から出る言葉が常に本当のことだとは限らない。でも今、この一言だけは、掛け値なしの本音だと思える瞬間も確かにある。それはたいてい、緻密な計算とか周到な準備とかを取っ払ったところからひょいと現れるのだ。

 以前の計だったら、そんな選択恐ろしくて到底できたもんじゃなかったと思う。肚が据わって、なんかまた一回り大きく、いい漢になったよね。この巻、潮の「う」の字も出てきやしないんだけど、計の成長の後ろに、頼もしい相方の存在が透けて見える。これまで二人で時間をかけて一つひとつ積み重ねてきたものがあるから。シリーズものを読む醍醐味ってこんなとこにもある。

 なっちゃんの変化にも目を見張るものがあった。あのとびきり臆病な猫みたいな、人と正面から目を合わせることすらできなかった子が、神とも仰ぐ栄に真っ向から「それはちゃいます」と言える日が来るなんて。こちらもやっぱり恋の浮力に背中を押されているのかな。ただ彼の場合、恋人ができようが「ゴーゴー」を離れようがやっぱり一生自分は栄の「一の子分」だと思ってて。それは「一番長い」とか「一番近い」とかいうよりむしろ「そんなん俺しかおらへんやろ」というオンリーワンの認識だったらしいのだけど、この巻でなんとその地位を脅かすやもしれぬ新キャラが登場し、内心ひどく焦りまくるなっちゃんというのも珍しくて面白かった。

 ここまで長々つづってきて、ようやくですが主役の二人について。正直、栄ってこんなにもナイーブで脆い、壊れもののような人だったっけ…と少々当惑気味で読み進めました。その傑出した映像制作の才能に比して、あまりにも乏しい対人スキルのせいでどこにいっても波風は立ちまくるし、周囲の人間をばっさり切り捨てて返す刀で自分自身をより深く傷つけずにはいられない習性も今に始まったわけじゃない。でもすくなくとも「ゴーゴー」で突っ走ってた頃の栄はそれをつらいとも寂しいとも思ってないように見えた。

 設楽が公私ともに栄のそばに戻ってきて、一気に安定するのかと思えば逆で、再び設楽に自分のせいでいろんなものを擲たせてしまうのが怖くて、せっかくの新天地なのにのびのび仕事ができない。当の設楽は、栄が栄らしくあるためならいつでも自分を踏みつけにしていいと思ってるのに。どうにもかみ合わない二人。エッチシーンの回数と分量は年齢の割にたっぷりめ(大きなお世話)ながら、LOVEの面では大盛り上がり、とは程遠く。このシリーズのもう一つのキモ、っていうか毎回そっちの方をむしろ楽しみにしているお仕事面でも、やらせ問題やら出張先での大災害やら盛り沢山すぎて、少々散漫になってしまった感あり。「これぞ相馬栄」みたいな大仕事が見たかったし、そのためににこやかに暗躍しえげつない辣腕を振るう設楽も見たかった。これも一穂作品の罠。読むほどに欲深くなる読者の沼から抜け出せない。

11

これが相馬栄です!!

『ふさいで』の続編です。
前半は、『ひらいて』
設楽の計らいで、「ザ・ニュース」のCPとなった栄は、初日からADとして立ち回り周囲をドン引きさせます。

この二人、恋愛以前に仕事人ですよね。
ラブラブという言葉からは対極にいる。
恋人関係というより信頼関係が強くて、お互いに背中を預けられる存在というところに萌えます^^
前作では、設楽のカッコ良さが際立っていましたが、今回は栄のターンかなと思います。

「ザ・ニュース」の担当になった栄ですが、以前のようにワンマンを通し続けることはしません。
それは、設楽に責任を負わせたくないから……
自分らしい作品が作れないもどかしさと焦り。
そこに一石を投じるのが、なんと麻生!?
麻生からの問題提起で、栄は「テレビのやらせ」と向き合っていくことにーー…

設楽の友人・三芳がPを努めるドキュメンタリー番組で、やらせ疑惑が浮上します。
友人である設楽に内緒で情報を集める栄が頼ったのは、ニューヨークにいる恵です。(ここで絡んでくるとは!)
恵の協力の元、三芳のやらせを暴いていく栄はやっぱり生き生きしていましたね。
やりたいことを見つけて、水を得た魚のように行動していきます。

「本当を謳う嘘」から感じ取ったものは嘘になるのか?
これ、とっても深いなと思いました。

このテレビ業界の闇ともいえるやらせ問題を、同じ作り手としてどう伝えるべきか……ということですが、この手段が独特でしたね。
作り手の迷いや弱さを逆手にとって、そのまま問題提起に利用するという方法。
この時の栄はカッコ良かった!
これが設楽が惚れた才能なんだろうな。

そして、友達だと思っていた三芳に嫌われていた設楽が切なくて( ˃̣̣̥ω˂̣̣̥ )
平気なフリをしてるけど、かなり傷付いてましたね。
栄は癒すタイプじゃないけど、設楽にとってはそこが良いんだと思う。
ひらかれない可能性と、設楽にのみひらかれる体と心。
栄をひらくのはこの世で設楽一人。
この、栄の秘めた想いを設楽に伝えてあげたい!


後半は、『つないで』
栄に講演会の依頼が舞い込みます。
ここで新キャラ登場!美作基くん!!
栄に懐いちゃう子なのですが、この子からスピンオフの香りがするのは私だけでしょうか……?

出向いた新潟で大雨に巻き込まれ、地方局に協力する3人。
「俺には相馬栄がついてる」と言う設楽と、「俺には設楽宗介がついてる」と思う栄。
この関係性にキューンとしちゃいました。
心で繋がってるなぁ。支え合えてるなぁ。

以前より丸くなってきた栄ですが、いつか設楽に愛を伝える日がくるのだろうか?
そのいつかを見てみたい!
私にとって、萌えだけではない感情を与えてくれる貴重なシリーズです。
これからも読み続けたい。


●SSペーパーが良かったので、追記させて下さい。
『まもって』
なにを?と思ったけど、睦人との思い出や今の関係、設楽と栄の秘密の関係含めての意味かなと思います。

妻子不在のため、設楽家で麻雀を楽しむ3人。
やっぱり好き、この3人!会話のテンポが面白い!
睦人の後悔の先で始まった新たな関係……
昔とは違うこの関係も、私は好きです。

そして、「秘密」を共有する事で、設楽と栄はより強い絆で結ばれているんだと思う。
誰にも言えない関係を、〝イーブンの共犯〟として楽しめる2人が最高にカッコいい!!

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