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表題作いけない子

幹伸二,25歳,芸能事務所勤務・マネージャー
成川椿,20歳,斎藤天馬の元恋人で新人俳優

その他の収録作品

  • smile(描き下ろし)
  • カバー下イラスト

あらすじ

芸能事務所に勤める幹伸二は、マネージメントをしていた俳優の斎藤天馬を事故で失う。その葬儀に訪れた天馬の恋人・椿の秘められた演技力を目の当たりにし、彼に俳優の道を勧めるが、どこか浮世離れした椿が恋人の死をどう捉えているのかわからずにいた。椿には、そのすべてを独占したいと思わせる不思議な魅力があり、不器用ながらも自分を慕ってくる姿に心を打たれ、幹は次第にマネージャーとして適度な距離を取れなくなっていく。その矢先、天馬にそっくりな俳優が現れて…?

作品情報

作品名
いけない子
著者
吉田ゆうこ 
媒体
漫画(コミック)
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
バーズコミックス・リンクスコレクション
発売日
電子発売日
ISBN
9784344847729
4.2

(65)

(38)

萌々

(15)

(6)

中立

(4)

趣味じゃない

(2)

レビュー数
13
得点
272
評価数
65
平均
4.2 / 5
神率
58.5%

レビュー投稿数13

シーンが印象に残る

ボーイフレンド17が素敵だったので、吉田ゆうこ先生の他の作品もと思ったとき。試し読みで、天馬を演じる椿の強烈な説得力に惹かれたのがきっかけです。

物語の軸に天馬が存在しつつ、椿が中心の物語。椿が徐々に変化していく構成が、扉絵やカバー下も含めて綺麗。ひとりでは何もできなかったところから、天馬を追って死ぬことも、幹さんを一番にすることもできない「裏切り」を経て(多分ここまでが『いけない子』。悪いという意味と、深読みすると「逝けない」という意味もある?)、天馬からの解放を迎える。

椿の演技力に説得力があったし、ガラッと変わる表情に惹きつけられました。視線の力でハッとする。彼にのめり込んだ幹さんに感情移入できました。演じることを通して椿が人の心を理解していくのが自然。
また、エピソードの積み重ねが丁寧。特に、ファミレスで想像するシーンが、天馬との思い出としても演技に入り込むきっかけとしてもリアルでよかった。そこから繋がる自殺未遂のときの幹さんの「想像してくれ」がお気に入り。

死者を仲介にした人物配置が面白かったし、ラストはとてもドラマティックでした。
そして、描き下ろし『smile』が本当に好き。天馬を間に置かない幹さんと椿のふたりの関係にグッと寄っていて、本編ではあまり描かれなかった椿からの視点や、幹さんがどんな人かがわかって、いい関係だなと思いました。愛しさが残る読後感。

ただ、演技中でもない素の状態の新をみて、マネージャーだった幹さんでさえ驚く、というのに少し引っかかりました。天馬の一番近いところにいたのが椿、という表現でしょうが…。生前の天馬と関わりのあった二人で、それをきっかけに出会っているけど、幹さんは思ったよりその他大勢側だったのかと。天馬と幹さんの関係、というのがもう少し語られると、より入り込んだかな。

絵の持つ力というか、表情や言葉と相まってつくられる空気感が、物語の説得力を生んでいる。静かで仄暗いけど、月のような一筋の光と、ぬくもりがある。空気感が圧倒的な個性になりうるのだと、吉田ゆうこ先生の作品で知りました。
また、演出力に長けていらっしゃる(雨の中椿が自殺未遂するところ、広告で天馬の顔が初めて出るところなど)ので、シーンの力がとても強く、無性に惹きつけられる作家さんです。また新刊が出たらチェックしてみようと思います。

読むたびに誰目線で読むかが変わり、感じ方も変わるので評価に迷いましたが、個人的な好みとして、幹さんの掘り下げがもっと読みたかった気持ちもあり、神寄りの萌2に落ち着きました。

1

淡々と

静かで影のある雰囲気に吉田先生らしさを感じた作品。お話は淡々と進んでいくのだけれど、その奥にあるものは決して軽くなく、椿の感情がわかっていくほどに切なさも増していった気がしました。

でも、天馬の死という現実を受け止められなかったり話が噛み合わず子供っぽいところがある椿の言動に人間的魅力を感じるか?と言われるとちょっとピンとこない部分が。
幹と仕事をし始めてからも周りと衝突してしまうのに役者としては成功するし、上手くいきすぎる展開にも「うーん?」となってしまいました。

途中に出てきた成川の立ち位置もよくわからず。椿が成長するために必要な人だったのはわかるけれど、天馬そっくりにする必要はあったのだろうか?と思ってしまったり。
…という感じでひとつ気になったら次々に気になるところが出てきてしまい、今ひとつお話に入り込むことができず…。
読み返したらまた印象が変わりそうな作品なので、また時間をあけて読んでみようと思います。

0

何でもっと早く読まなかったのか

表紙の雰囲気から暗めのトーンの話かな、と思って、暗いお話が好きなので何となく手に取ってみました。

すごい話でした……。
芸能界を舞台にしてはいますが、スキャンダラスな雰囲気はなく、椿と幹さんの切な感情をじっくりと描いているお話です。

物語は、天才的な若手俳優の斉藤天馬が亡くなってしまうところから始まります。
天馬のマネージャーである幹、そして天馬の大切な恋人だった椿。2人は天馬の葬式で初めての邂逅を果たします。

本作の受けである椿は、存在するだけで人の心を魅了してしまう不思議な魅力を持ちながらも、天馬だけを見ているから、天馬だけが一番だから、天馬を失ったとしても他の人を代わりにすることは容易にはできない。
ある意味で残酷な、純真無垢で美しい存在だと感じました。
読んでいるだけなのに、私まで囚われてしまいそうに……。真剣に、丁寧に、美しく、可愛らしく、描かれているキャラクターでした。

攻めである幹さんはそんな椿にどうしようもなく囚われていきます。それこそ、2番目でも良いから、と縋ってしまうほどに。
ここでの幹さんの感情を思うと、胸が痛みます。私まで椿に惹かれている分、余計に感情移入がしてしまって……。

そんな幹さんと一緒に過ごしていくうちに、胸の中に天馬だけを抱いていた椿も、少しずつ少しずつ変わっていきます。
ずっと受け入れることができなかった「天馬が亡くなってしまった」という事実を信じた後の椿の行動は特に痛々しいものですが、幹さんとの関係が劇的に変容していく様は本当に圧巻ですので、ぜひ本編を読んでいただきたい。

そして、このストーリーの根底にあるものは「斉藤天馬」という1人の男の願い…のような気がしました。

素敵なものを目にした時に湧き上がる「この素敵なものは、自分が見つけたんだぞと自慢したい」という承認欲求、「素敵なものを誰にも奪われたくないから独り占めしていたい」という独占欲。
その2つを椿に抱いていた天馬が取った、二つの相反する欲求の均衡点なる選択が、「自分の死後に、信頼がおける人で自分と好きな男のタイプが同じ人である幹さんに託す」というもので。
思わず、なるほどな……と。

また、天馬を巡る演出が素晴らしかったですね。
最初からクライマックスまで、読者は天馬の顔さえも知らない。ただ、彼に魅了された椿と幹さんの口から語られる「天馬像」だけが徐々に形作られていって……天馬のことが気になって仕方なくて、知りたくてたまらないのに、全然教えてくれないんです。

ただ、外見が似ていると言われている新というキャラクターは出てきますが、椿に「似ていない」と断言されているから、余計にどんな人なのかが気になる。
そうやって引き延ばされて、ようやく最後に天馬自身の姿を初めて見れた時、それまでの全てを天馬に奪われてしまうほど、圧倒的な存在感にあてられてしまいました。圧巻でした。

本当に素晴らしい作品でした。もっと早く読んでいればよかったと思いました。でも、今日出会えてよかった。
吉田先生の他の作品も読んでみます。

4

解放するよりもこれくらい執着する男が好き

 恋人だった天馬を失った椿の情緒が、この作品の軸として大きく占めています。天馬が亡くなったことを知らなかったのは、心の自己防衛だったのでしょうか。あからさまに取り乱すようなことがない分、感情が読みにくくどこか危なっかしい印象を与えます。天馬亡き後、新たに椿と出会う幹。天馬一筋の椿に苛つく様子も見せながらも、根気良く椿に付き合う彼に、そうして1人の男を虜にしてしまう椿の罪深い性質を感じました。

 簡単にまとめれば、天馬→椿←幹という三角関係ではあるのですが、天馬と幹の関係性も対椿とはまた異なった、切っては切れないものだったと思うんですね。好みのタイプが同じだからと警戒しつつも、天馬は幹を最大限信用していたのでしょうし、幹も天馬のことばかり口にする椿に独占欲を刺激されながらも、けっして天馬のことを忘れ去りたいわけでもなければ、椿が自分だけを見るよう矯正することもなかった。幹と椿がくっつくということが、2人が天馬を永遠に忘れない縛りのようなものにもなるのではないでしょうか。死して尚、生者に執着する天馬の傲慢さと、自ら進んでそれを受け入れた幹と椿、この3人の関係性が絶妙だなぁと思いました。

0

導入とラストは良かったけど…

評価が高く、試し読みでも惹かれたので読みましたが、全体的にはあまりピンとこなかったです。
何がと言われると返事に困るのですが、天馬が亡くなったことを受け入れられず、居なくなったと悲しむ椿が役者の仕事を受けて活躍するスピード感についていけなかった…事ですかね。

葬式に行ってなお、天馬の死を受け入れなかった椿がインタビューの場でいきなり理解するというのも、なんで??って感じてしまいました。

終盤の椿が倒れてからの展開は良かったです。
天馬の看板の前での椿の語りとかドラマチックで好きでした。

0

一緒に月を見たい人


吉田ゆうこさんの作品ってヒリつくような痛みが、ゆっくり「かさぶた」になる治癒の過程を描いているようなイメージで読んでいます。
今作も分厚めの1冊の中に、ツラさと同居している登場人物たちが自分の気持ちを確信して自立するような感じでした。

ひとりの俳優「斎藤天馬」の死から話は始まります。
ただ、最後まで生身の天馬はでてこない。
思い出としての場面すらなく、幹や椿が語る姿で浮き彫りにされていくだけなのに存在感がすごい。
死者を交えた三角関係なんて勝ち目ない、って思ってしまう。

天馬のお葬式で彼のマネージャーだった幹は椿に初めて出逢います。
椿の存在は知っていた幹ですが、椿の掴みどころのない雰囲気に惹かれます。

最初はそっけなく接していた椿が幹の話す「天馬」に触れることで次第に心を許してゆく展開の繊細さがたまりません。
天馬を間に挟むことで成り立っていた幹と椿の関係性は椿が「天馬の死」を認めることで、ダイレクトにお互いを意識しするように変化します。

でも、ここで安易にくっつかない。すれ違う。
言葉の少ない椿がうまく言葉にできないじれったさ、一生懸命紡ごうとする姿がいじらしい。

椿は天馬を通して生きていて、幹は椿を見続けることで生きています。
ようやくひとりの「椿」として生き始めて傷ついた椿を見て、やっと2番手から1番になり変わろうと表に出る幹。
椿の脆さを知っているからこその遅いスタートでしたが、大人ならではの優しさだと思いました。

天馬しか興味のなかった椿の照れ顔をベッドの中で見た幹の表情のぬけたような横顔、最高に可愛い。

吉田ゆうこさんて哀感情は衝動的なガッツリ描きこみだけど、喜びの表情はポカンと虚をつかれたようなのが多くてこちらの感情も一緒に入ってしまいそうになって好きです。

■成川椿
The吉田ゆうこさんの受キャラ。
お葬式に参列しても天馬の死を信じず、悲しみに浸ったり自暴自棄になったりせず、天馬をなぞるように俳優の仕事を始める。憑依型。
天馬の言う通り、照れ顔が可愛い。

■幹
こちらもThe吉田ゆうこ年上攻キャラ。
天馬のマネージャー。オジサン呼ばわりは心外のよう。
営業職らしく人当たりが良さそうに見えているけど椿に対しては早めに独占欲が見えている(笑)
人としてのルールなど守らなければならない枠組みは変えずに感情は承認しつつ、椿の葛藤のピークまでずっと見守る姿勢って教育書に書かれていそうなことを実践。

■田辺新
天馬にそっくりな容姿の新人俳優。
ズケズケとした物言いだけど、アテ馬にはならず。
悪いヤツではない。

■斎藤天馬
事故死した人気俳優。
椿を遺して逝くってさぞかし心残りだったでしょうに。そして貴方の想像通り、幹は椿を好きになってしまったよ。
動いている貴方を見てみたかった。

******

なにが「いけない」んだろう。
「いけない子」ってどう言う意味なんだろう。
最後までタイトルが腑に落ちなかった…。

0

深読みで良くなるであろう作品

キャラクターの表情の動きが少なく、淡々と進んでいきます。
物語の緩急も緩やかで、そこが先生の作品の味なのだと思いますが余りにも穏やか過ぎて。

俳優だった故人の恋人と、故人のマネージャーが今回のメインカプです。
故人にそっくりの俳優さんも出てきますが、余り役割を果たしているとは思えません。
最後の方の台詞を言うためだけに呼ばれたのでしょうか。

私の読解力ではよくわからないな、という印象です。
が、他の先生の作品と同じくスルメ作品なのだと思います。

エロは少なめ評価でも良いんじゃないかな。

1

月夜のような静けさ

吉田ゆう子先生作品が持つ"ほの暗さの中にある何か"みたいなものが好き。
今作も先生ならではの独特の空気感がすごく出ている作品だと思います。

1人の俳優の死から始まる物語。
周辺の人々が口々に「良い俳優だった」と語り、椿の最愛の恋人であり、幹がマネジメントを担当していた斎藤天馬という人。
しかし、彼の姿はほぼ0と言っても過言ではないくらいに登場しないんですね。
椿の、幹の、周囲の人々の記憶の中には強烈なほどに彼は残っているけれど、読み手側は彼のことを知らないんです。
だというのに、読みながら作中のあちこちでどうしても"斎藤天馬"の影がついてまわる。
姿は見えないのに、思わずその人の人となりを想像してしまう。これが本当に不思議。
やっと天馬の姿が見られるシーンの演出がなかなかににくい演出で、これはやられたなと。
吉田先生にしか出せないセンスの良さ。すごく好きです。
作中に登場する、2人を見守るかのような月も非常に印象的で、カバー下の月や描き下ろしの月に天馬を勝手に重ねて見てしまったりして。

メインとなるのは、天馬にどっぷりと依存しているかのようだった椿が、天馬の死をきっかけに幹と出逢い、少しずつ新しい1歩を踏み出したり変化していく姿だと思うんです。
けれど、別角度からの読み方となってしまって申し訳ないのですが…
私はどちらかというとメインCP2人の未来や新しい恋よりも、周囲の人々にここまで大きな影響を与える天馬という故人が気になって仕方がありませんでした。
それは多分、幹や椿が天馬を語るひとつひとつのエピソードにどうしようもない愛情を感じたからなのかな。
彼が生きるのは、彼を知る人の記憶の中だけなんです。姿が見えず、もう居ない人のことがこんなにも気になったのは初めて。
斎藤天馬、どんな人だったのだろう。
椿との出逢いも幹との出逢いも気になってしまう。

全体的な雰囲気はしっとりとしていて、低温でほの暗いんですけど、それでいて前向きなお話でもあると思うんですよね。
なんというのかな。本当に独特の空気なのでここが良かっただとか、ここがどうだとか、そういう感想が上手くまとまらないんです。
でもなぜか妙に惹かれるものがある。
理由は分からないけれど好きです。
漫画なのに、漫画を読んでいる感覚ではなかったかもしれません。

静かに、少しずつ前へ。
そんな印象を受ける、不思議な魅力にあふれる作品でした。

1

マイナー調ブレンドで楽しむ芸能モノ

ハンサム敏腕芸能マネージャー×ダイヤの原石美少年
ってなるとすごいキラキラ感なのに、

二番でも良いからとすがる死んだ恋人の知人×恋人の死を受け入れられない魔性受
ってなるとすごいヘビー感。

この全く異なる波長を吉田先生が上手に掛け合わせてくれました。
脅威のブレンド力……。

正直要素だけを取り出すなら、
芸能モノとしては、出会いが葬儀って暗すぎるし、死んだ人の話ばっかりしているし。
未亡人モノとしては、25歳×20歳ってちょっと若すぎるし。
それぞれ単独のテーマだと反発して使いにくい設定だらけなんですよ。

ところが、吉田先生らしいあの憂いを帯びたマイナー調の雰囲気がですね、
芸能と死ネタの二軸をうまーく調和させているんです。
違和感は消え、王道なのにどこか新しい設定に生まれ変わる。
だから読みやすいのに記憶に残る作品になる。

新しさだけを追い求めた作品はついて行くのにパワーが必要だし、
王道だけの作品は読みやすい代わりに他との違いがわからない。

吉田先生はこのジレンマをナチュラルに崩してくれる稀有な作家さんだと思います。

もう、雰囲気作りがとにかくお上手で。
序盤の冷たくジメっと暗い雰囲気から、
幹の椿に対する執着と情熱が徐々に高まる様子から、
天馬の死に葛藤する椿の姿から、
ドラマチックなラストへの見事な着地。

余計な説明よりも、エピソードでキャラの性格や心の距離を描いてくれる所もまた楽しい。
風邪をひいた幹の見舞いにビールを持ってきてしまう椿の非常識さ。
その理由を答えた瞬間の椿のいじらしさ。
説明はなくとも、幹がついポロっと告白しちゃう気持ちが痛いほどわかります。

全体を通して、最初はマウントを取りに行っている幹が、徐々に公私混同甚だしくなり、椿に翻弄されていく姿も良いですね。
吉田作品安定の受重心です。

ラストも華やか!というより、暗い部屋にポッっと間接照明がともったような奥ゆかしさと安心感に包まれます。

雰囲気の好みはあれど、好きな人はきっとすごく好き。
そんな希少なマイナー調芸能BL。
なかなかのハイレベル作品で、おススメです。

9

不思議な空気感

試し読みで気になったので購入してみました。

椿の独特な雰囲気がとにかくすごかったです。
『天馬はちょっと留守にしてるだけ』と言っていたのは天馬が死んだ事を理解しているけど信じたくなくて言っているのかと思ったら、5話でやっと死んだ事を理解していて本当にわかってなかったのかと驚きました。

天馬が幹さんは男の好みが一緒だから椿に会わせなくないと言っていたのがよくわかりました。天馬が亡くなっても椿は天馬の事を忘れられない、けど幹さんの事を好きになる、幹さんも椿を好きだし天馬が一番なのは承知で二番目でもいいと言う、中途半端な関係でどちらの気持ちもわかるので難しいなと思いました。
けど、天馬の死を理解し死のうとしたり仕事に没頭し寝れない日々を過ごして体調崩して椿がやっと天馬のことが整理できて幹さんを選んで前向きになれて、天馬の死をきっかけに椿の人生がガラッと変わって切ないけどよかったのかなと思いました。

0

2020年末ギリギリに揺さぶりをかけられた

今年のランキング(個人的にも)が出揃ったなんて、まだ早かったみたいです。すごい。引き込まれて涙が出ました。
試し読みですぐ、“何か違う”作品だと分かると思います。
タイトルで想像出来ないのが少し残念です。

ストーリーは人気俳優の天馬が事故で亡くなり、通夜に現れた恋人の椿と、マネージャーだった幹が出会うところから始まります。風変わりで不思議な魅力のある椿に幹が演技をすすめ、天馬を含む三人の人間関係とお仕事が絡んでいきます。

ネタバレはコメント欄にしますが、椿を大切にしていた天馬はお話のはじめからいないのです。
居なくても存在し続ける天馬が、椿をどう愛したのか、何を見ていたのか。一人になった椿が一人の人間としてどう感じ、新しい世界で殻を破るのか。
明確に描かれない部分もありますが、その“敢えて描かないことを描く”表現と見せ方がとても好きでした。

恋愛ものとしてドラマティックにときめいたりするお話ではきっとありません。映画を観ている様に情景豊かに、一つのテーマに沿って進む真面目さと演出が素晴らしいです。
基本ビターですが、ほんのり甘可愛い部分もあり、ビタースイートというところでしょうか。

タブレットをお持ちの方は、是非とも見開き表示にして迫力を感じて下さい。文字も読み易いつくりになっています。

3

ひみた

「想像しろ」台詞としても何度も出て来るこれがテーマである筈です。
飼われていたと言ってもいい椿は幹に出会い、演技の仕事でも日常でも問われる。
「(この役の人物は)どんな気持ちだと思う?」
「本当にわかってる?」「想像してくれ…」
椿は感じ、考え、行動していくようになる。
天馬は居ない、再登場しない。どんな風に椿と過ごしたか知り得ない。敢えて描かないことでこちらに想像させる(有り難いことにヒントはちゃんと置いてある)地道な明確さと一貫性が作り込まれている作品で感動しました。

そして何と言っても、天馬の出し方が本当に素晴らしい。某桐島くんよりも濃い存在感とカタルシスと愛がありました。

ダークさと、ほっこりのバランスが絶妙。

作家買い。
吉田さんの、シリアスというかダークな、というか。そんな独特な世界観が非常にツボなのです。

今作品も、そういったそこはかとなく漂うダークな雰囲気は満載。満載なのですが、読後は心がほっこり温かくなる、そんなお話でした。

ネタバレ含んでいます。ご注意ください。




主人公は人気俳優・斎藤天馬のマネージャーである幹。
人気絶頂の中、天馬が事故死したシーンから物語はスタートします。

天馬の葬儀で、幹は出会う。成川椿という青年に。椿は天馬の恋人だった。幹は椿と会ったことはなかったが、天馬との会話で椿の存在は知っていた。

天馬の遺品の中に椿名義の通帳が見つかっており、それを椿に渡したかった幹は椿と会うことにするが―。

というお話。

亡き恋人を想う椿と、そんな椿を愛してしまった幹。
幹の想いは椿に届くのか?

と、そういうストーリーを思い描きながら読み進めましたが、いや、さすが吉田さん。そういった王道を行くストーリーとは一線を画しています。

今作品のキモは、言うまでもなく椿です。

彼がねえ、なんて言うのかな。不思議ちゃん、というか。いやいや、そういうありきたりな形容詞では括れない、なんとも謎めいた青年なのです。

天馬が亡くなった、その事実が受け入れられない。
天馬を愛していたから。
でも、それだけじゃない。椿の行動のすべては、彼の恋人、天馬の存在に起因しています。

「天馬」という男性は、作中登場することはありません。
無いのにもかかわらず、すごい存在感を放っている。椿の、そして幹の回想から、読者は天馬という青年の人物像をくっきりと思い描くことができる。

そして、その天馬の呪縛にかけられている椿の想いも。

姿を登場させることがないのに、ここまで強烈なインパクトを魅せる。その吉田さんの手腕に脱帽です。

天馬、椿、そして幹。
三角関係と言える彼らの関係ですが、天馬はすでに故人。椿と幹、彼らは彼ら自身の力で天馬を昇華していく必要がある。ゆえに、単純な三角関係ではなく読みごたえがありました。

が。
うん、だからこそ、もう一声ほしかったな、という感じ。

椿という青年が天馬に傾倒して言った理由の一つに、彼の孤独な環境があります。じんわりと漂う、その椿の薄幸さが、これまた一切描かれていない。なのでなぜそこまで天馬に入れ込むのか、そこに現実味がないっていうのかなあ…。彼の家庭環境とか、そういったものがもう少し描かれていたら、もっと感情移入できる作品になった気がします。

が、総じてとても魅力的な作品ではあります。
ストーリー展開、キャラ、そして彼らの恋の行方。
序盤、天馬という存在を介してしか、その存在が浮かび上がってこなかった椿という青年が、幹と出会い、彼と恋をして、そして「自分」を出すことが気できるようになった。

「恋」というベクトルだけではなく、彼らの「これからの自分」をも描いた作品で、そこがとても良かったです。幹の一途さと献身ぶりに、椿は人として成長していく。そのシーンに心が温かくなりました。

5

独特の雰囲気は健在

吉田先生らしい、不思議な雰囲気の業界ものです。
事故死した俳優とその恋人、マネージャーの三角関係のようなストーリー。


人気俳優・天馬の恋人だった椿は、彼の死後、マネージャーの幹に会います。
天馬の死を受け入れられていない椿と、椿に役者の才能を感じてスカウトする幹。
次第に幹は椿に惹かれていきくのですが、いつまで経っても椿の一番は天馬で……と、いうお話。

椿は天馬の死を理解しておらず(ここ微妙)、とても危うく不思議な子です。
ただ、ハッとするような表情に目を奪われるし、憑依系の演技もゾクっとします。

そんな椿に惹かれていく幹ですが、天馬が一番の椿にとって、幹は二番目でしかなくて──と、ここが切ない。

椿も幹に惹かれながらも、天馬への罪悪感から二の足を踏んでいるように感じました。
そして、椿にとっての幹は精神安定剤です。
既にいなくてはならない存在。

現実逃避をするように仕事に没頭する椿と、それを止められない幹。
二人の葛藤や焦燥が、セリフやモノローグからしっかり伝わってきました。

亡くなってもなお存在感のある天馬でしたが、生きている人には敵わない。
だって、椿の人生はまだまだ続いていくんだから。

天馬に囲われて世間を知らないまま生きてきた椿が、最後の最後に自分で選んだ未来。
天馬好みに仕込まれたHが主体性を帯びてくるところ。
人として、俳優として成長していく様子。
……と、作品を通して描かれる椿の変化がお見事でした。

椿名義で貯金を残していた天馬の思惑は分からないけど、何となくこうなる事を予感していたのかな?という気もします。

どこに終着するのかドキドキしましたが、収まるところに収まってホッとしました。
タイトルにある〝いけない子〟は、存在していなかったように思います。
かなり変わってるけど、椿は寂しがりやのいい子だったと思う。
そして、恋をしてからの幹の一途さが素敵な作品でした。

3

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