イラストあり
どんなに好きだと想いを伝えても「知ってるよ」という答え。
決して同じ想いを返してくれない。
うわーん。
もうずっと、朝陽がかわいそうでかわいそうで。
本気の想いを国吉に躱されてしまい、この気持ちを諦めようと何度ももがく朝陽の姿に、読んでいて何度も涙を誘われました。
昆虫オタクとして喜々と薀蓄を語る朝陽の無邪気な朗らかさと、切ない恋心を抱く朝陽の痛いほどのケナゲさとの対比よ。
もう、先生上手いなーと。
さすがだな、と思いましたよ。
こんな魅力的なキャラ、応援しないではいられませんもの。
だから、朝陽が感情をどんどん失っていって焦る国吉には、内心「ほら見ろ」と。
朝陽の気持ちを蔑ろにしたら、痛い目見ることになるぞ、と全読者が言ってた(たぶん)だろうがーー!と。
思いましたよ。
朝陽の危機を救うべく積極的に動いたり、過去の話や、朝陽へのひねくれた想いも知って、多少国吉を見直しましたが、如何せん、朝陽への仕打ちの数々を思い出すと、完全にはモヤモヤは晴れませんでした。
2人のえっちは、話の雰囲気としては最後まで致しちゃわなくても良かったんじゃないかな。
ただ、ラストシーンの国吉は、朝陽への特別扱いを継続していってくれそうな、そんな終わり方だったので、それはなんだかほっとしました。
すっっっっごく面白かった!!作者様の作品は以前から好きでよく読んでたけど、今作はこれまでで一番好き。キャラクターがすごく魅力的で受けの朝陽くんの一生懸命なところが可愛いこと可愛いこと…。
攻めの国吉くんは一見クールで、中盤までは本当に何を考えてるのか分からないところがあるのですが、その想いが明らかになったときはかなりグッときた。
謎めいた蝶のエピソードもすごく心を掴まれましたし、イラストもすごく綺麗で大満足。強いていうならば、もっと二人のラブラブが見たかった。でもお話のバランスとしてはちょうどいいと思った。
昆虫大好き大学生→くるもの拒まず変人ホイホイ爽やか大学生
昆虫が好きすぎて周囲から孤立気味の朝陽(受け)に声を掛けてくれた国吉(攻め)。
どんなに昆虫の蘊蓄を語っても嫌な顔せず付き合ってくれる国吉に凄い勢いで懐き、好きになってしまいます。
でも、国吉は博愛主義の来るもの拒まずなので、好きだと言っても流されてしまいます。
だから自分から会いに行かないとダメなので、ずっと追いかけています。
何度か諦めようと思いましたが、結局諦めきれず、国吉が結婚するまでは無理だろうと諦め気味です。
他の人の相手をする国吉を見るたびに嫉妬に苦しみ、会うたびに好きだという思いが溢れてきて困っています。
そんな時、国吉の実家である神社で、見たことのない光る蝶を見つけます。
新種ではないかと観察するのですが、国吉にみつかり、光る蝶は神社の御神体で人の感情を吸い取るから不用意に近づいてはダメだと言われます。
それでも、珍しい蝶を観察するのをやめない朝陽でしたが、国吉への苦しい想いを蝶が吸い取ってくれたらいいと思うようになり、ある日突然好きだった昆虫や国吉のことをなんとも思う思わなくなっていたことに気が付きます。
いつも嫉妬心で苦しかったのが嘘のように穏やかに学生生活を謳歌できるようになり友人も増えていくのです。
でも、そんな朝陽になぜか今度は国吉の方が追いかけてくるのです。
執着のすごい朝陽がどうにもならない恋心に苦しむ姿が本当に切なくて切なくて、読んでるこちらも国吉のことを早く諦めた方がいいよと思ってしまうくらいでした。執着心がなくなった時は楽になったんじゃないかと思ったのですが、執着心は無くなったのに、記憶だけは残っていてこれがまた切なくて。
そして、何度告白されても流していた国吉が、全く自分のことを追いかけてこなくなった朝陽に焦る姿は自業自得すぎて滑稽でした。
あれだけ追いかけてもらえればさぞかし気持ちよかったでしょう。
ただ、国吉の生い立ちを考えれば同情しないでもないですが、それでもやりすぎでした。
反省した国吉が必死になることであっさり気持ちが帰ってくるのかと思ったけど、そうは問屋が卸しません。今までズルかった国吉にとってかなりきついお灸を据えられた形になりました。
最終的に朝陽からの矢印しか出ていなかったところを丁度いい感じにお互いを思い合えるようになったことを鑑みると結果オーライだったのでしょう。
大学というところは高校と違ってクラスというものがないため、気の合う人とだけ一緒にいられるし、それまでの息苦しさから解放される場所です。
数ヶ月おかしかったの朝陽に対して、あっさり元に戻ってよかったといって笑ってる友人達のおおらかなのかてきとうなのか、朝陽はなんだかんだでいい友人に囲まれていたんでしょうね。
snsで交流していた高名な昆虫博士たちとこれからどういう風に付き合って昆虫道を突き進んでいくかすごく楽しみです。
2人にこれからというよりは朝陽のこれからがとても気になる話でした。
浮世離れするほどの昆虫オタクの朝陽は、虫と同じくらい国吉のことが好き。
国吉のことが好きで好きで、国吉がいずれ結婚して二次会の後に新婦とタクシーに乗り込む姿を見ても諦められないとわかっているけれど、この片思いが成就する可能性はゼロ。
だって「好きだ!」「好きだ!」とどんなに伝えても冗談にされてスルーされてしまう。
こんな不毛な思いは蝶にでも食われてしまえ!と思う気持ち、わかるんですよね。
それほど朝陽の想いは切なくて苦しいから。
で、不思議な蝶に出会って以来、すっきりさっぱり国吉への想いは消え去ってしまった朝陽を見て、国吉はめちゃくちゃ狼狽えるんだけど、今更感でいっぱい。
ふん!!おせーわ!!と思ったし、これは一種の攻めザマァでは??と思って読んでたけど、なんか攻めザマァ的な爽快感がない。(攻めざまぁ大好き人間です)
というのも、あんなに好きだった昆虫愛も消え去ってしまっていたからで……。
前半の隙あらば昆虫話、隙あらば昆虫愛を披露していた朝陽って微笑ましいなぁと読みながら思っていただけに、すっかり別人のようになった朝陽の様子がなんか空恐ろしいよ〜………。
魂の抜け殻っぽくて……。
一緒に山へ向かう途中で、「朝陽は俺の手を取るどころか、俺のシャツの端っこを掴むのすら迷ってたよ」って国吉が言うところがめちゃくちゃ切なかった。
国吉に対しては、おまえ!そんな些細な行動も見逃さず朝陽の気持ち含めてわかっていたくせに!!と思うんですよ。(国吉の事情もわかるけどさ)
それを言われた朝陽の胸にふと蘇ったのかつての切なさ、苦しさが、読んでて胸を打つんです。
いじらしいなぁ、苦しかっただろうなぁ……って。
だからその後に国吉が、「朝陽はずっと、こんな気分で俺のそばにいてくれたんだな」ってところで、わかったか!!って思う一方で、あぁ遅いよ〜……(泣)ともなる。
積み本であらすじを読まずに開いたんだけど、途中でファンタジー展開っぽくなったので、あれ?これファンタジーだっけ??とちるちるを開いた時に目に飛び込んできたのが朝陽の属性「男前」。
え??朝陽って虫オタクだけど、男前?どこが??と思ってたんだけど、最後は男前でしたね!
朝陽、強い。
「好き」という要素がその人を形作るんだなーとか、「圧倒的な好き」がある人は強いなーとか、色々自分の「好き」も含めて考えさせられました。
作家買いです。海野幸先生はお気に入りの作家さんなので、楽しみはもう少し後に取っておこうと思っていましたが、我慢しきれずに読んでしまいました。
途中からは想像以上に切なくて苦しくて何度も泣きましたが、すごくすごく良かったです。
冒頭から朝陽の変人ぶりが際立っていて、度を越した昆虫好きであることと国吉のことが大好きであることが、たった数ページでこれでもかというほど伝わってきました。
この二人は両想いじゃないの? と思わせるような朝陽と国吉のやり取りにニヤニヤさせられ、国吉は朝陽の昆虫を交えた独特な表現を瞬時に理解し、朝陽は昆虫好きであることを肯定してくれる国吉に堂々と「好きだ」と言い、それに対して国吉は平然とした態度で「知ってる」と返し、周囲にとっては日常の光景なので誰一人として突っ込みません。
ところが国吉は朝陽だけと親しくしているわけではなく、不特定多数の人たちにも分け隔てなく接します。趣味に熱中する人の話には興味深く耳を傾け、何かを相談されたら真剣に対応し、困っている人やポツンとしている人がいたら自ら声をかけるのです。
誰もが自分は国吉にとっての特別ではないかと夢を見ますが、時が経てば国吉はただ誰にでも優しいだけという現実を目の当たりにします。朝陽もその内の一人です。
だけど朝陽はそんな国吉を否定せず、同じクラスになった高二以来ずっと恋心を持ち続けていました。その国吉の優しさがなければ朝陽は孤独のままで、今の関係もなかったからです。
高三でクラスが離れてから、自分から会いに行かない限り国吉と接点を持つことができなかった朝陽は、本来なら高校卒業を機に国吉をあきらめるつもりだったのに、国吉は朝陽と同じ大学を受験していたのです。しかも同じ学部なので、朝陽は国吉の近くにいるのに特別になれない切なさを大学生になっても感じ続けることになります。
初見でも国吉はずるいなと思いましたが、国吉の事情を知った読後の今はさらにそう感じます。
朝陽の恋愛感情に気付いていながら、特別扱いすることも突き放すこともしないなんて、いつまでも生殺し状態の朝陽が本当にかわいそうでした。想いには応えないけど、自分の振る舞いで朝陽の心を乱して、それでも朝陽に想われ続ける立場はさぞ心地よかったことでしょう。
だから、国吉神社に現れた蝶が人の心を食べることを知った時、真っ先に朝陽の国吉への恋心を食べられたらいいのにと私は思ったのです。その後も朝陽の精一杯の遠回しの告白を受け流した時は特にそう思いました。
いわゆる攻めザマァ展開になればいいと安易に考えていましたが、実際に朝陽の感情がなくなってしまうと想像以上に悲惨な展開でした。
まず、朝陽が失ったのは恋心だけではありません。昆虫への興味関心までもが奪われたのです。朝陽の人生を彩ってきたものはなくなったのに記憶だけは残っていて、時が経つほどそれに苦しめられ、オスのセミは体内が空洞で、それがまさに自分のようだと揶揄する朝陽の姿が辛かったです。
そんな朝陽に追い打ちをかけるのは国吉です。こちらは完全に自業自得ですが、朝陽が変わってから必死に追いかけます。でも朝陽には片想いで苦しんだ記憶がしっかり残っているので、国吉の変化や昆虫関連も含めて記憶と現実のギャップの大きさに戸惑いと苛立ちばかりが生じます。
そこまで朝陽に執着するなら最初からもっと朝陽を大事にしなよ、と思ったのは私だけでなく朝陽もそうでした。
まあ国吉も自業自得とはいえかなりかわいそうな目にあっていたので、この辺で朝陽を元に戻してあげてと思ったけど、海野先生は容赦しません。夏休み前から朝陽をどんどん心の死へ追いやって友人と疎遠にさせるし、国吉はいくら朝陽に拒絶されても毎日メールを送ったり家まで行くという献身的な姿を見せます。
親の心配が深刻になってきた頃にようやく国吉が朝陽の部屋まで入り、そこで朝陽が感情を爆発させた場面はとても良かったです。
国吉の過去や事情も、もっと前から朝陽に話しておけば良かったのにとは思ったものの、打算的だったり八方美人な部分や、それら全てを肯定してくれた朝陽のことを好きになり、恋人になれば別れがくるから友人のままで一生途切れない関係でいたいと臆病になるのも、どれも共感できました。
海野先生の作品は両想いが確定するまで丁寧に書いてくれるので、それだけで心が満たされ、個人的に性描写はなくてもいいとすら思うのですが、本作の朝陽が元に戻ってからの性描写は結構好みでした。早く相手を自分のものにしたいという執着心が二人とも出ていたのが良かったです。
その後の二人も上手くやっていけそうで安心しました。国吉はきっといい執着攻めになれそうです。
朝陽が心を取り戻す場面は想像したらゾワッとしますが、何らかの「思い」を養分にしていた説は幻想的で素敵だなと思いました。
作中で鬼の話が出てきましたが、私は妖怪とかの類いではなく、やっぱり蝶は国吉神社の御神体(縁結びの神様)だと思っています。
朝陽は蝶を見つける前に御神木に触って国吉を想っていたので、それを神様が成就するように取り計らい、二人に試練を与えてくれたのではないだろうか。実際ああでもしないと朝陽と国吉は永遠に結ばれなかったと思います。
蝶の数だけ誰かの恋が叶った、もしくは真の愛を見つけた、と思うとロマンチックです。
お話だけでなく、Ciel先生の絵もどれも本当に素敵でした。
電子ですが、あとがきの後の絵でさらに余韻に浸ることができていい演出だなと思いました。
虫好きではないけれど、知らない虫が出てくるたびに怖いもの見たさでネットで検索するのをくり返したのですが、初回のモモチョッキリで早くも挫折しそうになりました。モモがつくから勝手にかわいいイメージを持っていた私が悪いのです。
でも不思議と愛着がわいてきて、昆虫博物館に興味を持ってしまいました。