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表題作上海夜啼鳥 シャンハイナイチンゲール

建築士・相馬篤彦
声を失った男娼・小鈴(18歳)

その他の収録作品

  • 上海小夜曲 シャンハイセレナーデ
  • あとがき

あらすじ

革命により、家族と言葉を失い、上海の娼館で男娼として働く小鈴。
ある夜、尊大で冷たい雰囲気の建築士・相馬篤彦に買われ、そのまま身請けされる。
娼館の経営者である李に逆らえず、戸惑いながら相馬と暮らし始めるが、喋れない自分の気持ちを理解しようとする彼の優しさに次第に惹かれていく。
そんな中、李から相馬の手がける設計図を盗めと命じられる。
相馬を裏切りたくなかった小鈴だが、自分は相馬が日本に残した妻の代わりでしかないことに絶望し…。

作品情報

作品名
上海夜啼鳥 シャンハイナイチンゲール
著者
華藤えれな 
イラスト
真生るいす 
媒体
小説
出版社
幻冬舎コミックス
レーベル
リンクスロマンス
発売日
ISBN
9784344810402
3.1

(9)

(1)

萌々

(0)

(7)

中立

(1)

趣味じゃない

(0)

レビュー数
5
得点
27
評価数
9
平均
3.1 / 5
神率
11.1%

レビュー投稿数5

異国で歌声を取り戻したナイチンゲール

萌萌(MAX:萌萌萌:神に近い)
妻子持ちの建築士・相馬×声が出ない男娼・小鈴
故郷と家族と声を失い、ロシアの由緒ある貴族から男娼に身を落とし上海で生きる小鈴。
そして自分の居場所を失い、仕事を名目に妻子を日本に残し上海に来た建築士の相馬。
自分の足場を失った二人が、上海という異国の地で仮初めの愛を結びます。

男娼と客というとフィジカルな関係を連想しがちですが、この話ではむしろ精神的な愛が大事にされています。(もしろん肉体関係有りですが)
身請けし、使用人と主人という二人暮しの中で縮まっていく距離。
相手には心から愛している妻がいるということに絶望しながら、それでもいいから抱き締めて欲しい…。
罪深い自分の過去に苦悩しつつも、相馬を手に入れたいという欲求に揺れる小鈴の葛藤が胸に痛い。
勢いで小鈴を買い、しかも妻子ある相馬ですが、決して遊び人というわけではなく無骨で真面目で優しく実は愛情深いという人柄もよかったです。

二人を取り巻く周囲は不穏ですが、全体的にしっとりとした優しい印象のお話でした。

「上海小夜曲」
パリに向かう船中の様子が書かれているこのSSでは、過ぎるほどの小鈴への思いやりが全面に出ていて、相馬という男の不器用さが味わえます。
そんな男に真っ向から自分の気持ちをぶつけ、惜しみなく言葉を注ぐ小鈴。
過去に全てを失ってきたからこその小鈴の強さなのですね。

2

意外と強い子なんだね。

異国シリーズ第3弾。
舞台はタイトルどおり上海。
日本から来た建築設計士・相馬×妓楼にいた男娼のロシア貴族末裔・小鈴。

小鈴はロシアからの逃亡生活のうちに声を失くしていて言葉を発せない。
上海に着いた当日、フトした気まぐれから娼館の立ち並ぶ一角に足を踏み入れた相馬はその中でも一番人気の店で声を掛けられ、踏み入れる。
どうせならとありもしないような条件を述べたのだが、それを満たしていたのが小鈴だった。
相馬はロシア貴族の末裔だなんて嘘くさいとそれほど信じるつもりもなかったが、どうせ一夜の夢と小鈴との時間を持つ。
小鈴は喋れないが、フランス語とロシア語はわかる。
英語は少々。
相馬は喋り、小鈴は場合によっては筆談で会話した。
一夜が明けて、帰る相馬に、思いのほか優しくされた小鈴は彼の手を取って「この店は危険。日本人を嫌っている」と記す。
この店では阿片も取り扱っており、少しずつ阿片中毒にするという一面もあった。
その後、相馬は小鈴を身受けするのだが…。

相馬は中国語・日本語のわからない使用人を探していて。
それは日本の機密を守るためでもあったのだけれど。
小鈴は実は内緒だけれどその言葉も理解していて。
それがまた相馬の独り言のような日本語まで聞きとってしまうことになるのだけれども。

喋れないことで表情や目で相手の意思を互いに察しようとしたり。
少しずつ距離が近付いていくようにも見えるのだけれど、相馬の発する日本語の呟きが小鈴に痛みを与えたり。
当然、そのことを相馬は知らないのだけれど。
思い詰めた小鈴の取る行動がなんだかとても切なかったです。

「上海小夜曲」ではその後の2人が描かれているのだが。
日本で一度失敗して上海にやってきていた相馬はこの恋にもどこか臆病なところがあって。
「小鈴に教育を」みたいな大義名分のもとに少し距離を取り始めたりするのだが。
そこはどちらかといえば引いてしまう相馬ですが、逆に小鈴はそういう意味では強い子だったのかなぁと感じました。
相馬がそういうところで臆病になってしまう人物だってわかってるからちゃんと自分の方から押していくというか。
生い立ちの関係なのか、小鈴はそれまでの挫折にも何度も立ち向かって来たけど、相馬は一度の挫折で折れてしまったような人で。
なので、最後の最後で年齢は全然小鈴の方が若いのに相馬を包み込んでいるように感じました。

1

あっさり塩味。

サラッと読めてしまいました。
華藤さんならばもう少しドロドロとした仕上がりにできそうですが、あっさりな感じにしたかったのでしょうか。

登場人物の設定もよく作り込んであり、舞台も上海。
展開も娼館から見受けされてされ外の世界に出て、日本語を解さないと思っている攻めの家で使用人として働き、彼の時々洩らす日本語に対し心を痛めつつも、娼館の雇い主だった李の命令のため重要機密の設計書を盗むという命令に苦しむ小鈴。
李より阿片を渡され相馬を中毒にしろ、という命令にも悩み、結局自分が阿片を飲んでしまう。
これでもかという切ない設定。
華藤さんのうまさがあらわれている情景描写。
なのに、本当にサラッとあっさりとしており読後、読んだなあ、疲れたなあ、という気持ちと頭の中をその世界で埋め尽くしてしまう勢いがなかったのが本当に残念。

いい作品なので本当に残念。

1

これはよい健気受け

ちょっと変人、偏屈が入った攻めと、国を追われたロシア貴族の受けという組み合わせで、どう見ても波瀾万丈、切ない系で、バッドエンドしか見えない設定だったんですが、なんとかハッピーエンドになってくれてよかったです。
いろいろ無理があるし、ご都合主義な展開も気になりますが、めでたしめでたしでよかった。

それにしても、やたらと長い。ちょっと疲れます。
あと、イラストが微妙。
真生さんは好きだし、作品にも合ってるから悪くなかったと思うんですが、いかんせん、受けのチャイナドレスが全然、まったく色っぽくない・・・それが残念でなりませんでした。
世の中、うまくいかないな。

0

声をなくした夜啼鳥

革命によって家族と言葉を失った、元ロシア貴族の小鈴は今は上海の娼館で男娼として働いている。
ある夜、客として現われた日本人の建築士、相馬は尊大で冷たそうで嫌なヤツだった。
決して甘いだけではない時間を過ごした二人だったが、相馬はそのまま小鈴を身請けすると言い出した。
娼館の主である李には逆らえず相馬の元で働くことになった小鈴だったが、彼は次第に不器用な相馬の人柄に惹かれ始める。
そんな時李から相馬が手がける政府関連施設の設計図を盗み出すように命令されて……

上海の街が舞台の設計士×男娼。
口がきけない受や、背景にいるマフィアや、相馬の過去などおなかいっぱいで満足なのですが、ちょっと登場人物たちの気持ちの起伏が唐突だったかな、という部分も。

素直じゃない男娼は可愛かったけれど、設計士の朴念仁っぷりにはちょっとイライラした(笑)
特に後日談ではせっかく両思いになったのにこんなに早く手を離そうとするの!?とびっくりでした。

本編ラストで李さんがあまりにもあっさり小鈴を開放したのが気になります。
そんなんでいいのかマフィア。
彼にも何か深い事情があったりするのかもしれません。

1

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