愛しくて、憎い男……運命の出会いから数年。ずっと一緒にいたふたりだが!?

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表題作もう二度と離さない

佐伯渓舟(画家の父を持つ天才洋画家)
相良司(渓舟の恋人で助手)

あらすじ

日本画の大家を父に持ち、美貌と才能に溢れる若き洋画家・佐伯渓舟は、助手であり恋人でもある相良司とともに暮らしている。小さなトラブルが起こることもあるが、強い絆で結ばれているふたりは幸せな毎日を過ごしていた。そんなある日、司の過去を知る男、そして渓舟の過去を探る男が現れたことにより、平穏な生活は少しずつ狂い始めていき……!?
出版社より

作品情報

作品名
もう二度と離さない
著者
樹生かなめ 
イラスト
奈良千春 
媒体
小説
出版社
講談社
レーベル
X文庫ホワイトハート
発売日
ISBN
9784062558945
3.5

(42)

(14)

萌々

(10)

(8)

中立

(5)

趣味じゃない

(5)

レビュー数
12
得点
139
評価数
42
平均
3.5 / 5
神率
33.3%

レビュー投稿数12

性暴力に対する無理解を感じた

初めてレビューします。
今までレビューは好きな作品だけにしようと思っていたのですが、この作品を読み、どうしても書きたくなり、今回レビューすることにしました。

タイトルにもありますが、この本を読んで、作者の性暴力に対する無理解を感じました。

別に、BLはフィクションですし、レイプした相手と恋仲になることには(現実ではほぼあり得ないことだとしても)文句はありません。
ただ、この作品の書き方はあまりにも酷いのではないかと思いました。最後の方は、モヤモヤした気持ちで文字を追ってもあまり頭に入ってこず、何度か読むのをやめようかと思いました。

渓舟は、和希達に強姦されたことで、人を殺し、深く悔やんでいる司に、仕方なかったんだ、と言っていますが、渓舟自身が過去にしていたことへの反省は正直私にはあまり感じられませんでした。勿論、渓舟は攻めで、主要キャラです。作者も読者も肩入れするのはわかります。確かに彼は司に、お前の嫌がることはもうしない、と言ったり、反省しているような言葉を言ってもいます。しかしそれは、やったことの酷さを悔いているというより、愛する人を傷付けたことに対してだというふうに感じられました。彼は過去に、他の女性に対しても酷いことをしていたようですが、正直、その女性たちに対しても反省の気持ちがあるとは思えませんでした。

「俺はお前が好きだった……ひどいことっていうか、AVみたいなことはさんざんヤったけど、食い物にはしていない。俺はお前に売春なんてさせていないからな」
彼の冷酷さを描きたかったのかもしれませんが、それにしても本当に酷いセリフだと思いました。反省しているならこんな事言うでしょうか。渓舟や緒方や邦彦は、悔やむ司に、正当防衛だ、仕方なかった、といいますが、レイプしたりそれを笑ってみていたりしていた人間が何を言っているんだ、と思ってしまいます。

和弥に暴行をしたあと、
「和弥、あいつはあんなケガには慣れているはずだ。あいつの兄貴は家庭内暴力も激しかったから、お袋さんと和弥は何度も救急車で運ばれている。もしかしたら、あいつが一番打たれ強いかもしれない」
と司に言いますが、このセリフにも違和感を感じます。

渓舟や緒方、邦彦は、もう更正したかのように書かれていますが、私にはあまり変わっていないように感じられました。反省の言葉もありますが、彼がやったことに対して少な過ぎるように思います。反省の気持ちも、少ししかないように感じられます。レイプ加害者と被害者が恋に落ち、それによって渓舟のやったことが不問になっている印象を受けました。結局、彼らが守ろうと思うのは、自分が好きな人だけなんでしょうね。彼らは他者を悪く和弥や原に対しては酷く言いますが、自分たちのしていたことの重大さについては反省しているのでしょうか。

性暴力は、人の尊厳を傷付け、自分を許せないような気持ちにさせ、何年もそのことに囚われさせる、そんな卑劣な行為です。
最初の方に書きましたが、レイプ加害者と被害者が恋仲になることは、物語ですし、構わないと思っています。物語なので、必ず加害者が反省しなければならない、とも思いません。しかし、この作品には、司が渓舟に恋するようになる、言わば必然性や説得力のようなものが薄く感じられました。また、渓舟を未だに道徳観のないままの悪人、人非人として描くのではなく、まるで悪いことから足を洗い更正したかのように描いているというところも、性暴力に対する無理解を感じる原因だったと思います。他にも、司が当時されたことを思い出して頬を赤らめているシーンがありますが、そのような反応をする割には、司が性的なことや被虐的なことに強く惹かれる人物には思えませんでした。他の書き方、キャラクターの描き方だったら、違和感や無理解を感じなかったかもしれません。

フィクションだ、BLはファンタジーだ、という人もいると思いますが、フィクションならフィクション、ファンタジーならファンタジーなりに、現実に即しながらも説得力のある物語としての面白さ、突飛さ、もしくはこれはファンタジーだ、そういうものだ、と思わせるような、これまた説得力、そういう物が必要だったと思います。

1

設定が良いだけに残念

野沢尚脚本の『眠れる森』という昔のドラマを思い出しました。

幸せそうな恋人とその周囲の人間の衝撃の過去が後半になって明かになるミステリー風の作品。

設定はとても面白かったのですが、肝心の、受けが記憶の奥に眠らされていた過去を思い出してからが残念な展開で、勿体ない。

いくら二人で過ごした穏やかな近年があるにしても、攻めや悪友達が受けにした罪をもっと追及・深堀りしてほしかった。
「若かったから」「どうしようもなく好きだったから」では言い訳にもならないし。悪友たちの前で攻めが受けを犯したことが全ての原因だし。
受けは実は強い人間だから大丈夫だった、めでたしめでたしだと、この設定は勿体ない。過去は自殺未遂と精神異常をきたすほどだったのに、現在は何でこんなにあっさり許せる?「あんなこともあったよね~」とむしろちょっとほのぼのしちゃってるし。
もっと受けに過去と現在の攻めへの感情の間で揺れて葛藤してほしかった。

0

なんとも言えない読後感…

ちるちるさんの「衝撃的な結末のBL小説」の特集記事を読み、興味を引かれて手に取りました。
溺愛スパダリ攻めが実は…、はかなげ受けが実は…、というどんでん返しは面白かったのだが、後半の種明かしからが説明調で、キャラの心理の変化についていけなかった。
特に受けはもっと激昂してもよくない? 私はここからドロドロの愛憎劇を期待したし、攻めを一度突き放す、ザマア展開があってもよくない?と思った。なのに終わり方はあっさり。「受けは本当にいいんか、それで⁉」と思ったまま読み終えてしまった。

なんかなー。過去の攻めの、受けの扱いに愛情が感じ取れなかったのが、萌えきれなかった原因だと思う。性奴隷みたいに慰みものにされてたのに、思い出の場所を巡りつつ「ここであんなことされたよねー」とか言えちゃう受け、案外図太いな!? 
攻めのしたことが、受けを救うためとは言っても、どうも脇役ごと、過去の悪行をなかったことにするためにしたようにしか思えなかったのも一因か。それでみんなして、「あれは若気の至りだ」で済ませてるのが、なんだかなーという感じ。

こういうどんでん返しのある「そうきたか⁉」的BL小説はいくつか読んだが、どうもご都合主義を感じたり、「プロットの面白さ>萌」になってしまうことが多く、自分とは相性が悪いのかもしれないと思った。ストーリーが凝っていて面白い、っていいことのはずなのに、残念。

2

タイトルに裏切られました

ちるちるさんの記事で「衝撃の結末を迎える」作品であげられていたので、気になって手に取りました。

ゆるりと甘ーいムードで流れる前半の後、中盤くらいから衝撃の事実が明かされて、主人公を取り巻く世界が一変します。物語から受ける印象も異なったものになり…。
色々な人達の過ちや若気の至りが描かれていました。皮肉な事に今の彼らより、昔の彼らの方が鮮明に目に浮かびます。育った環境に原因があったとしても、許される話ではないですが、多感な時期の必死さは人間の本能であり、生の証でもあり。荒みの後に一皮向けた彼らの姿にこみ上げるものもあります。タイトルも暗示する贖罪の物語であると同時に依然大切なものを守る瞬間に見せる非情さが垣間見え、過去も現在も何処か物哀しく不穏さを感じさせられる物語でした。

贅沢を言えば、最後にもう一捻りあった方がもっと印象に残ったかもしれません。主人公の人物像もぼやけ気味なのも気になりました。

0

前半と後半のトーンの違いに驚きです。

 「答えて姐さん」のどこかで紹介されていて好きそうかも、とゲット。

 新進気鋭と評判の画家である攻め様の渓舟と助手として一緒に過ごしている受け様の司。
読み始めて始めは、司を真綿で包むよう大事にしている渓舟の溺愛ぶり、渓舟の両親をはじめ、絵の師匠や渓舟の友人など、周囲の人間が2人の仲を認めて暖かく見守っている状況に、え!?何このこんなに幸せでいいの!?な状況、と驚きつつ、甘々大好きなので、ほくほくと読み進めていくと、半分ちょっと過ぎたところで驚きの状況に。

 えーーー、なんなの、その重たい過去。
渓舟や悪友達の過去を、若かったから、で済ますんじゃないよ、と苦々しく思うけれど、今の司に見せる姿も本当なのだろうと思うし。
かと思えば、司以外に見せる、司との生活を奪おうとする人間に対しての苛烈さに対して、人間って変わらないんだなぁ、とため息をつきたくなるし。
ただ、司を失いたくない、愛されたい、と願う渓舟の気持ちは本物で、穏やかに愛情深く築いてきた数年間も本当な訳で。
 渓舟の司に対する深い愛情を信じられるので、過去を知ってもイチ読者としては嫌いになりきれず、ともかくも、これからもしっかり司を抱きしめていけよ、とどやしつけたいです。

 そしてまた、過去の罪を忘れて幸せに暮らすことをよしとせず、きちんと罪を背負って渓舟と生きていこうとする司の姿に物語の美しさを感じました。


 読んでいる最中、ムカムカもしたし、これからも2人の生活を脅かす存在が現れたらまた容赦なく排除していくんだろうなぁ、とこの先の心配もして、評価に悩むところでもあったのですが、でもそう思いつつ何度でも読み返したくなる小説なので、やはり゛神゛だなぁ。

1

闇を抱えて

答姐にておすすめいただいた作品。
「予想外の展開」と聞いて構えていたにもかかわらず、まんまと意表を突かれてア〜ッという読後感。
最初の方の甘い雰囲気、病弱な司をとことん甘やかす、美形でセレブで優しい、パーフェクトな渓舟。
前半から種明かしのエピソードがチラホラ出てたんだけど、気付かなかった…。
中盤に、司が2人をつけ回すフリーライターの原に身に覚えのない事を言われたその瞬間!ビビビビッ‼︎
展開分かった〜…怖い〜!と衝撃受けた。
だけど、欲を言うなら。
最後にもう一回何かあるかな?と期待したけど、そこはすんなり進んじゃったので…でもこれは贅沢な要求です。
思ってもみない展開やその真相はミステリー的でもあり、その過去は恐ろしいホラーのようでもあり、抱えて生きるべき未来はスリラーのようでもある。凄まじい暴力や狂気の時間を経て、でもやはり最終的に恋愛。
恋の不条理、愛の不思議、哀しさが何故か漂っている。

1

とにかくすごい作品

洋画家の渓舟と助手兼恋人の司。
渓舟は体の弱い司にいつも優しく過保護なくらい大事に接します。

幸せな二人の現在から話が始まっていったので、渓舟の美貌と才能を目当てにした人達に邪魔されながらも切り抜けていく二人の物語かと思いきや・・・。

司の過去があまりにも酷く衝撃でした。
こんな展開を描く樹生さんってすごい。

司の過去だけを思うとあまりに酷く痛い内容なのですが、
渓舟に大事にされている現在の司を知っているからか読むことができました。
今の二人が幸せであることが何よりの救いです。

そして深刻な話だけど、プチトマトのくだりとイラストは可愛くて微笑んでしまいます。

2

余韻

この作品を読んだのは約二ヶ月前です、執着系としてどなたかが紹介されていたので、興味が湧きました。が、期待していたのと違うなと、読み終えた感想は微妙の一言に尽きました。
主人公は相楽司。身体が弱く、家族もいない彼は若き洋画家の佐伯桂舟に愛されて暮らしています。冒頭のサナトリウムでのシーンからトリックが仕掛けられているのです、催眠療法による記憶操作、本当の司はひ弱な青年ではなく、桂舟も全く違う顔を持った男だった。
何といいましょうか、消化不良気味に思ったのですよね。司を助けようと登場したホストの和弥もボコられてフェイドアウトなのが可哀想だったし、その後が都合よく治まり過ぎなような、釈然としない読後感だったのです。濃い展開の割にはセックス描写に欠けるのも、助平な私には不満でした。
そーれーなーのーにー、忘れられないのですよ。作品全体に漂う奇妙な雰囲気が日増しに色濃く迫ってくるのです。
私、霧笛丸(新人)は定期的に本を処分していて、この作品も一度はドナドナ箱に入れたのですが棚に戻しました。
奈良千春先生の表紙といい、後からじんわりと余韻を引く、不思議な魅力がある作品です。

4

どんでん返し

すごくおもしろかったです(*^^*)
最初はふつうのカップルの話やんって思って読んでたんですけど、そこからのどんでん返しにびっくりしました。

まさかこんな重い過去が隠されていたなんてなぁ…

昔の渓舟ばかやろうですね。司のこと好きなくせに素直にならないからこんなことになるんだよ!って憤りぱなし(`ε´)

まぁ後悔した分、司にずっと尽くしていた訳ですけど若い頃の行動でも許されることと許されないことがあるんだよなぁ、と真面目に考えてしまいました。

渓舟は司に許されたのでよかったですね。一見弱そうに見える司の強さが見えました。

4

予想外の展開

最初はすっかり出来上がっていて、お互いの信頼もあってと風に見えるカップルの渓舟〔攻〕と司〔受〕
この2人の恋人ライフに、色々女性が絡んできて邪魔したり当て馬が出てくるんだろうなーって感じで読んでたんですが、展開が進むにつれて……ええええええ!!!って今までの甘さが吹っ飛びました。
ともかく渓舟の司への過去の行いが酷過ぎる、酷いなんてもんじゃない。
悪友達と司を性的奴隷扱いで酷い事をやりまくり。
その結果、司は自分を強姦しようとした5人もの男を殺してしまった。

封じられていた過去を思い出す司。
けれどそれでも司は渓舟から離れないし、渓舟も司を離さない。
かなり痛い系な話です。

2

これわ・・

ちょっ・・えーーーΣ(゜ロ゜;)!!
な後半が怖いこの作品。
だけど、執着しちゃう攻が可愛いとか思っちゃうわたしってやっぱりちょっと病気なのではないかと思ってしまう。
思春期ってこんなもん?あれれ。

話の始まりは、何気ないゲイカップル。
仲もよく、お互いにはお互いしかいないという気持ちは揺るがない。
しかし、それは、忘れてしまった過去を受が思い出していない故のこと。
傷んだ心を癒すために忘れさせられた過去。
それが、ふとした再会から呼び起こされ~なお話。
ただ甘い話ばかりじゃない。
樹生さんでもこんなぬるい作品書くんだなと、一瞬でも思って申し訳ない。

隠された過去。
いまは相思相愛、ラブラブ。なんの問題もなくと思っていた二人
けれど、過去、受が攻に与えられた恐怖で支配する淫猥な好意の数々。
むりやりに押さえつけられ犯され続けた過去。
飛び火した相手との行為と、心が受け止められなかったトラウマと

ただ、そんな中でも、描かれた攻の気持ち。
どんなに執着した相手でもほかの仲間にも抱かせていたものを
この受だけは誰にも渡さず自分だけが支配し
自分の目のつくところに置いた。
自分のそばに置きたがる執着。
家族の前でも問答無用に犯し、家族をも黙らせてとか。
心に傷を負い、どーしようもなくなった受のために
更生して~のくだりには思わずキュンときた。
これまでやってきたことは無くならないにせよ
今、現実なエンドはすごくホッコリしました。
やんちゃな時代もあったとさ。そんなラストはすごくよかった。
まぁ、途中がグロいので苦手なかたは・・・苦手かも

1

どんでん返しに萌えられるかが鍵

前半はそれほど急展開はなく、この作者さんにしては普通すぎるかも?と思う展開が怪しくなるのは中盤。

途中催眠療法の話が出て来た辺りで、察しのいい人は話の行方が読めそうな展開に。
そして終盤信じていた攻めや自分の周りの人間の真実に気づく(思い出す)受け。
人間てこんなもんだよ、と思うか。
人間てそこまで変わるのか?と感心するか。
そんな酷い人間が幸せになったら駄目でしょ?と思うか。
受けを幸せと思うか、不幸と思うか。

これは読んだ人の受け止め方次第。
考え方ひとつ。
BLてファンタジーだから……というのが私の感想です。

普通の展開(カップル)でないという意味で「神」作品。

5

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