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表題作貴公子の求婚

嵯峨野に隠棲する謎の貴族・蘇芳(偽名)
貧相で書痴の貧乏公家・小野朝家

その他の収録作品

  • 姫君の余情
  • あとがき

あらすじ

「昨晩のそなたは、なかなかの珍味だった」
生まれてこの方一度も恋をしたこともなく、女人よりも書物を偏愛している貧乏公家の小野朝家は、ある重大な決断を迫られていた。苦しい小野家の財政を立て直すため、結婚しなくてはならないというものだ。愛する書物を守るため、憂鬱ながらも嵯峨野に暮らすという姫君のもとへ向かった朝家だが、か弱きはずの姫に反対に押し倒されてしまい…!?
貴公子と貴公子、平安の風雅な婚礼奇譚、登場!!

出版社より

作品情報

作品名
貴公子の求婚
著者
和泉桂 
イラスト
佐々成美 
媒体
小説
出版社
大洋図書
レーベル
SHYノベルス
シリーズ
姫君の輿入れ
発売日
ISBN
9784813011538
4.3

(73)

(37)

萌々

(25)

(10)

中立

(0)

趣味じゃない

(1)

レビュー数
11
得点
315
評価数
73
平均
4.3 / 5
神率
50.7%

レビュー投稿数11

ヤリチン隠居スパダリ?

以前に姫君の輿入れをBLCDで聴いて、そのスピンオフである今作も読んでみようと思いましたが…。

二段組で平安風情の漂う文章。
貧乏公家で書物バカな朝家に帝の弟だけど親友の実親。
そして嵯峨野の姫君。

うんうんいいですね、と読んでましたが…。
なんと!朝家が間違えて違う家に夜這いに行ってしまい、そこの男主人に逆にいただかれてしまう!珍味であったと。

まずここで、ガーン。真っ暗で何も見えないのにいきなり知らない男のアソコを…。そして最後まで…。蘇芳殿、ひえ〜。

そしてまあ書物を通じて交流は続き。
朝家の書物バカぶりと素直さや飾らなさもいいですね。書物のためなら体くらいって…。

恋を知らない朝家ともう恋なんてしないよ絶対?な蘇芳殿と。
あんなけやってきたのに?緩やか〜にお互いの気持ちが進んでいくのですが、やること散々やってるんですよ?

薫物合わせの泊まり込み特訓のあたりで脱落。ここまで読むのに何日もかかりました。このゆっくりさ。いいんですよ、逆にえ?いつのまに?なお話が多い中ゆっくりゆっくり気持ちが育っていく描写が読めて。せめて体の方もゆっくりだったらなあ。

主人公が美形でなく平凡だけど心意気や気持ちの持ち方が素晴らしく、きっと朝家のそんなところが見つかったらさらわれてしまう!と焦る蘇芳殿もよし。

ただ緩やかすぎて…。引っ張るだけの掴みも弱く。ごめんなさいです。手元に残していつか続きを読みます多分。

1

孔雀x地味、実は鬼に金棒CP?

平安時代BL、「姫君の輿入れ」スピンオフ。
こちらのCPは、藤原将久(名家に生まれた殿上人にして古今東西の知識に秀で、その上「鬼神すら惑わす」という当代一の美男、源実親を凌駕するほどの魅力) x 小野朝家(家柄は一段低い学者一族出身で、書物だけを偏愛し頭はいいが出世欲はまるでない、冴えない貧乏公家)。

前作では、あどけない年下の受けが陵辱される展開が痛かったけど、本作は受けがしっかりした大人であって、無理やりHの展開の部分もあるけれど、書物や学問の深い話を共有できる間柄であったり、仕事での悩み事を相談して一緒に解決策を探ろうとするところなどが心の対等性があって良かったと思います。
また、書物のことばかり考えてあまり仕事には熱心でなかった朝家が、恋をすることで自分に出来る事、やるべき事を考えて誠実に取り組み始める、という成長譚でもある。
身分は将久が圧倒的に高いのだけど、朝家の飾らぬ人柄、表裏のない率直さ、素直さ等に心から惹かれて。(朝家に対する独占欲も感じられる。)
本名も身分も隠していた将久、朝家に何もかもを知られ別れの危機が訪れます。ここで動いてくれたのが前作CPの実親x狭霧。
想い乱れて出家せんとする朝家を牛車からさらう将久!
騙すようなことをしていて悪かった、と許しと愛を乞う将久!
そして…『私が妻だ』と。『求婚してくれ』と。
将久が無冠であり容姿が麗しいことを気にしすぎて気後れしている朝家に事もなげに告げる彼は、やはり当代一の切れ者でありましょう。

「姫君の余情」
前作CP、実親x狭霧のその後。
遠縁の少年を養子にした、という体で暮らし始めて2年。
実親は友の朝家の家を訪れる。すると中では藤原将久と朝家がイチャついているではありませんか。
当てられて、速攻家に帰って狭霧を抱く実親でした。益々仲睦まじい二人です。

5

とっつきにくいかと思ったけど

「姫の輿入れ」のスピンオフらしく未読でしたが、作中でさりげなく説明が入っているので読まなくても大丈夫でした。

冴えない主人公が読みたかっただけなので、平安物に期待はなかったのですが、思っていたよりも情熱的な恋愛模様でとっても楽しめました。
平安時代の風流さにドタバタ感が加わり、ほどよく砕けた雰囲気で読みやすかったです。

書物がお友達の冴えない君、小野朝家(ともいえ)と、完全無欠なスーパー攻め様、藤原将久(ゆきひさ)との恋です。
朝家は妻を娶るために夜這いを試みますが、間違えて男の寝所に侵入してしまうというおとぼけ君真骨頂な出会いでした。
真相はどうであれ、受けからのモーションというのが新鮮でした。
そしてノリノリな将久w

初めは表紙や挿絵のイメージから、攻め様に押され押されてやっと恋心を自覚するという堅物流され受けなのかなと思っていました。
確かに流され受けなのですが、しっかりと恋に身を焦がしているんですよね。
知らないうちに恋人に染まっている朝家に萌えたし、恋愛事になったとたん自分に引け目を感じたりあたふたしてる所が可愛かった。
淡々と日々過ごしてきた草食系が、恋愛の情熱に翻弄される姿に滾ります。
草食系=恋愛ができない、じゃないんですよね…
人生何があるか分からない。

将久も百戦錬磨とはいえ、隠遁した身で今更恋に本気になるとは思っていなかったため彼なりに四苦八苦します。
どこか可愛らしさのある2人に愛着がわいてくる作品でした。

5

「珍味」受け♪

厚めの二段組で、平安ロマンにどっぷりひたれます。
派手さはないけど、地味に面白かったです。
平安時代で宮廷が出てきて、攻めも華やかなのに、なぜ派手さがないのか!?
それは、受けの朝家が地味だからです。十人並みな容姿に色気ゼロな朴念仁。でも可愛い。なんか超可愛いんです。

まず、物語の序盤から朝家の可愛さにやられました。
とにかく書物が大好きで、それ以外には興味なし。収入は書物に消えるので、とっても貧乏だけど、本人は危機感もなくのほほんとしている天然さん。
天然とはいっても、無能で自立できてないかんじではなくて、不器用で欲がないタイプのひとで応援したくなります。人を悪く言わず、悪意を向けられても気づきません。
あまりに貧乏すぎて、乳兄弟に「このままじゃお金なくてどうにもなりません!お金持ちの姫君と結婚してきてください!じゃないと書物を燃やす!」と脅され、とぼとぼと条件に見合う姫君の住む嵯峨野に向かうのですが、なんと忍ぶ家を間違えて、男に夜這いをかけてしまうのです。
え、なんで男!?間違えた!!と混乱する朝家を、男は美味しく頂いてしまいます。
男は自分の本名を明かさず、最初はさえない朝家を手の中で転がして楽しんでいたものの、だんだん本気になり…というお話です。


じっくり丁寧に描かれているので、恋に無縁で無粋な朝家が攻めに惹かれていく過程がゆったり楽しめます。
めらめら激しいラブではなく、どこか微笑ましい温かいラブってかんじでしょうか。
攻めは、作者曰わく「孔雀攻め」。華やかな元遊び人で風流人。
本気になってからは朝家と実親の仲の良さを勘違いしてヤキモチを焼いたりもしますが、朝家の幸せを第一におもいやって行動してくれる包容力たっぷりな大人です。
最初、攻めは朝家を「珍味」と評しますが、だんだん可愛くてしょうがないな~とデレていく展開が読んでいて幸せでした。
それにしても、珍味って(笑)
記憶に残るご感想で、素晴らしいです。



『姫君の輿入れ』のスピンオフなんですね。
今作では前作でのカップル、実親×狭霧も出てくるのですが、とても幸せそうでした。
なんかスピンオフって、無理やり良いところに前作キャラ盛り込んだよ!みたいなのもあるなか、実親と狭霧はなかなか自然に活躍してくれました。
実を言えば、『姫君の輿入れ』は可もなく不可もなくといった印象だったのですが、今作でその後の二人を読んだことでちょっと評価が上がりました。
両カップルとも、いつまでもお幸せに♪

このシリーズの、しっとりとした平安な世界観が好きです。
適度に和歌や源氏物語からの引用があったりで、ちょっと優雅な気持ちになれて萌えもいただける。ありがたいです♪

そして、前作はCD化していて、朝家が神谷さんだったとか…!
やばい、神谷さんの朝家絶対かわいい!!
こちらもCD化していただけないかしら…。切望します。。

4

どストライクでした…!

堅物で天然な朝家(受)が可愛いのですが、滴るような大人の色気を持つ将久(攻)も魅力的でした。と言っても、こんな受いただろうか、と思う位、ガツンと頭をやられました。
可愛すぎて。
王道ではない作品だと思っていましたが、何も知らない朝家を体込みで色々と将久が教えていく過程は、王道かもしれません。
何度も何度も読み返したくなる作品です。

9

正に萌え萌えでした!

貧乏な上に、出世欲もない。あるのは、大好きな書物を存分に読んでいたいという欲。。だから恋だってしたことがない。そんな野暮な性格に加えて、受けの朝家は、十人並みというか、寧ろ夢のいっぱい詰まったBLでは『無器量では。。』という容姿。

しかし、そんな朝家にわたしは萌えました!将久(攻め)の気持ちが良く分かります。

きっかけは、経済的困窮を打破する為(何としても愛する書物を守る為という)、家柄の良い女人との婚姻(←よくある話です)を家人に迫られ、嵯峨野の姫君の元へ。しかし、そこは世慣れていない(というか、単に天然なだけかも)朝家。間違えて忍んだ家で、男性に美味しくいただかれてしまいます。(しかも、珍味とか言われる始末)

その相手こそが、実は朝家が毛嫌いしている将久で、将久の方は自分の正体に気付いていない朝家に偽名を名乗り、そこから二人の交流が始まるわけです。

将久は珍しい書物を所持し、朝家の興味は常にそこへ。元々書物さえあれば。。というような朝家なので、中々艶っぽいムードにはならない。

しかし、そんな朝家が可愛くなってしまう将久。とにかく、何でも揃っているような将久にとって、始めは物珍しさに近い感覚で、朝家の天然ぷりを楽しみつつ、いつ自分の正体を明かそうかと意地の悪いことを考えていたものの、上辺だけの美しさや可愛らしさよりも、朝家の内に秘めた純粋さに、いつしか心を揺さぶられ、恋に堕ちてしまうわけです。

平安絵巻のきらびやかさよりも、寧ろお笑いテイスト。それなのに、将久にあれこれ構われ、その中で将久の才能を埋もれさせたくないと、出世に全く関心のなかった朝家が努力する。そんな健気さが可愛らしく、『恋は盲目』とか『痘痕もエクボ』と言われるように、朝家が可愛く見えて仕方がない!(←挿し絵も5割増位?可愛くなっているような(笑))その上、将久の正体を知り、出家しようとして、牛車が動かない位に書物を積み込んだ件なんかは、どれだけ煩悩だらけ?!

地味で不細工な受けなのかもしれないですが、将久は覚悟を決めちゃいます。自分が妻になれば良いと。

個人的には、過去No.1の受けですね~。(基本的には男前受けで、できればクールビューティーが大好物なのですが、その基準を覆すほど、朝家はお気に入りです)

恐らく、今後も将久は朝家に振り回されるのでしょうね~。(勿論、一筋縄ではいかない将久なので、それなりに朝家をいじりながら、可愛いがりそうです)

時代物が苦手でない方には是非オススメです。(苦手な方でも比較的読み易い文面かと。。)

9

萌え~

前作の『姫君の輿入れ』より面白かったです。イラストも好きな佐々さんで、その上平安もの。萌えるな~~~間違えて入った邸で美味しく?食べられ「珍味だった」なんて言われる野暮ったい受け君に思わずにやりとさせられました。 BL小説家では桂さんは好きな人決定ですね。

0

天然朴念仁平凡受けは癒される

萌萌萌。(MAX:萌萌萌:神に近い)
ちょっとズレた鈍感受けがお好きな方、ここに良い子がおります~。
嵯峨野に籠る貴公子・蘇芳(仮名)×書物を心から愛する貧乏公家・朝家の織り成す、可笑しみ漂う婚礼奇譚。

胸元を深くくつろげた色気したたる貴公子が、純朴そうな青年を手中に収めて可愛がっているような構図の表紙に、これは飛んで火に入るナントカのごとく後ろの色男に誑かされちゃうのかな~と予想してました…が。
が、ですよ。
いや、大筋はさほど間違ってはいないんですが、この手前の青年の天然朴念仁ぶりのおかげで、ずいぶんとお間抜けな…いえいえ、和めるお話に仕上がっていました。
これはたのしい。

この主人公の貧乏貴公子・朝家がかわいくて仕方ないです。
大事なものは親友と書物くらいで、家があばら家になろうと自分のナリがどんなだろーと全くの無頓着さん。容姿だって蘇芳の家人に「牛蒡」と呼ばれるような(笑)平々凡々なもの。
垢抜けない印象そのままの純朴で生真面目な気質で、知識はあれど出世欲は全くなく、録の殆どを書物につぎ込んでは家人に叱られても懲りない困った書物の虫。
正直者ででもどこか抜けてて、妙に癒される。
鈍感さは天然の域だと思います。

そもそも「貴公子の求婚」というタイトルの貴公子は朝家(受け)のことだし、その求婚相手の筈だった姫の家と取り間違えて、名も知らぬ美貌の貴公子・蘇芳の元へ夜這いをかけてしまうという抜け作君ですから。
そっちの経験どころか恋すらしたことのない、愛する対象は書物のみという根っからの朴念仁なので、あれよあれよと言う間に初対面の蘇芳にペロリと食べられちゃいます。
珍味だったそうです。大爆笑。

と、縁は異なもの味なものな出会いをした二人。
蘇芳はしばしの楽しみのつもりだったし、朝家は朝家で貴重な書物を餌にふらふら釣られてしまって逢瀬を重ねるんですが、ちぐはぐな二人の中で、徐々に徐々に恋心が育っていく様子にとっても萌えます。
でもどこまでいっても朝家は朝家。
この逸る気持ちの正体を蘇芳の所蔵する書物へのときめきだと勘違いしたり(笑)、肝心の蘇芳の方も妙な誤解をしてしまうし、その上蘇芳の素性も絡み、嗚呼、二人はすれ違い。
でも切ないというより最後までもっとすれ違え!とわくわくしました。笑

凡庸な受けが攻めによって開花する育成っぽい要素もありますが、蘇芳が何よりも朝家の気質を大事にしているのが分かるので、支配感がないのも良かったです。
蘇芳も結構あわわってなっててかわいい。

さてさて、朝家の求婚は成功するのでしょうか。
平安ものですが、気負わないトーンなのでとっつきやすいですよ。

2

BLでなくてはならない話

『姫君の輿入れ』がおもしろかったので、こちらも読んでみました。
攻の親友、書物オタクの人の話。そのチョイスにえーって感じですね。地味な貧乏公家、きっとヘタレ…。と思ってたら、設定にめちゃめちゃ笑った。家人に書物を燃やされないため、後ろ盾になってくれそうな姫君を探すことになり、夜這いしたら家を間違えて、その家の男においしくいただかれてしまう。その感想が「珍味」ってひどくない? BLでなければありえない状況ですね。
孔雀攻、初めてきいた言葉なのですが、うまいこと言うなあ。好きですよ、派手な攻は。でもこの話は受が地味すぎる。十人並みが悪いとは言わないけど、容姿が冴えないのって、BLは夢の世界なのでちょっとね。それでも、攻のためにがんばっている受を見ると、書物と添い遂げようと思っていた彼の成長が眩しく、攻の正体を知ってからの行動に自然と目が潤んでくる。世捨て人の攻が執着したくなる可愛さ。毒されたか。
『姫君~』はその文体に引き込まれたのだけど、こちらは設定萌えだけでなく心情に寄り添ってしまいました。三作目もあるようで、楽しみです。

0

少し地味な宮廷もの

平安ものって結構好きで、このシリーズも気になってたんですが、個人的趣味で不細工受けのこちらを先に読んでしまいました。機会があったらぜひ第一作目も読みたいですね。

さて、こちらは第一作の方のカップルの友人である、小野朝家が主人公です。
朝家は無類の本好きで、本さえあれば何もいらないというほど。しかし、それが災いして、本にかまけて家の事をおろそかにしてしまったがために、ボロボロのあばら家状態。
家人も逃げ出すありさまに、「本を守るために!」と、結婚をして援助をしてもらおうと思い立ちます。
何とか目星をつけた姫君を訪ねて嵯峨野くんだりまでやってきたのはいいけど、肝心のお屋敷を間違えてしまい、そこの色男に逆に手籠めにされてしまいます。

結局この手籠めにした色男の真意は最後までイマイチわかりませんでしたね…。ちょっとつまみ食い的な軽い気持ちであったようですけど、結局その出会いから二人は色々と変わっていきます。
BL的な展開では結構ある話なのかもしれないですが、時代が平安という事で、いろいろな事情が重なって頑張ってみるところや手出しできないところもあって、駆け引き取り引きなどなかなか面白いです。
色男=蘇芳も巣の朝家が気に入ったという事もあり、変に磨きたてはせず、少しだけ手助けして知らず知らずお互いがお互いを高め合ってた感じがいいですね。

初心すぎる朝家の反応や、気持ちの変化に全く自分で気づけないところがイライラしつつもかわいかったです。
蘇芳視点で見てしまったのでしょうね、その辺り。
そしてその蘇芳も変にスレてるせいで素直になれないところがかわいかったです。
お互いがお互いを必要とする気持ち、当たり前なんですけどその辺りが丁寧にゆっくりと書かれていて非常に面白かったです。ゆっくりなのは平安時代だからなんですかね?

平安宮廷ものなんですけど、印象は少し地味でした。
というのも、朝家の身分が少し低かったのと、蘇芳が嵯峨野に隠遁していて、話がほとんどこの隠遁先の嵯峨野で起こった出来事だったせいでしょうかね?
朝家にも蘇芳にも出世欲がなく、出世して忙しい思いをするくらいなら本を読んでる方がましという変わり者だったせいかもしれません。
宮中行事はちょっとしか出てこなかったので地味な印象でした。
まぁでも平安ものだから必ず煌びやか出なくてはいけないというわけではないし、私自身はこの程度の鄙びた感じが結構好みだったので楽しく読みました。

最終的には収まるところに収まった二人の今後がまた見てみたいなぁと思いました。

3

「姫君の輿入れ」のスピンオフ

「姫君の輿入れ」の攻、源実親(みなもとのさねちか)の親友、小野朝家の嫁取り物語。
朝家は、容姿は十人並み、色恋には全く興味がなく何より書物が大好き。支給される扶持のほとんどを書物に費やしてしまうため、老朽化した家の修繕もできず床は気をつけて歩かないとあちこち踏み抜いてしまう有様で、衣服も同様、使用人もほとんどが辞めてしまっている。
そんな状態を本人は全く気にしていないが、業を煮やした家人の惟信(これのぶ)に、逼迫した財政を救う為に結婚するように迫られる。
「結婚しなければ書物を全て燃やす」と脅され、朝家は渋々嵯峨野に住むという姫君の元へ夜這いをかけるが、夜這い先を間違え、朝家は自分よりも大きく逞しい男の寝床へ忍び込んでしまい、いただくはずが反対に美味しくいただかれてしまうのでした。

翌朝逃げ出した朝家は、大事な書物を男の元に忘れたことに気づき、再び男の元へ行くことになってしまう。
そして「蘇芳」と偽名を名乗るその男に再びいいようにされてしまうのだが、意外に書物に詳しく見識の豊な蘇芳と語らうことは楽しく、朝家にとって蘇芳と過ごす時間はやがて大切なものになっていく。

自覚はないものの朝家はどんどん蘇芳に惹かれていき、蘇芳も朝家を愛するようになるが、「蘇芳」の正体が、朝家が苦手にしていており蘇芳にも「嫌いだ」と公言していた男「藤原将久」であることを知った朝家は、騙されていたと傷つき激しいショックを受け、二人は疎遠となってしまう。
そして初めての恋の苦しみに耐え切れなくなった朝家は、「出家」を決めてしまうのだが。


平安ものなのでいろいろ難しい漢字がいっぱいなのですが、そんなことは気にならず、「朝家の可愛らしさ」に思わずニヤニヤしてしまいます。「時代劇コメディ」かと思った(笑)。
書物オタクな朝家のウブさや朴念仁ゆえの台詞が面白すぎでした。
最初に蘇芳に食われて呆然と帰ってきた朝家が惟信に首尾を聞かれ「あちらは、珍味だ仰せだった」というのからして可笑しいんですけど(笑)。
きらびやかな周囲(実親も蘇芳も華やかで色のある美男子だし、狭霧(前作の受)は美少年だし)に比べると、書物バカな朝家は確かに「珍味」。
蘇芳の家人に「人参」だの「牛蒡」だの言われてしまう朝家は、イラストでも確かに冴えない。でも性格の可愛らしさ面白さ(笑)は朝家をとても魅力的にしている。

ラストで朝家の方が蘇芳(将久)に「結婚してくれ」とプロポーズするのが良いですよね。攻が「妻」。
自分の容姿が可愛くないと落ち込む朝家に、「私が妻ならば、そなたも己は可愛くないなどと悩む必要もあるまい」という余裕が好き(からかってるのか。笑) 
「それもそうか」と納得する朝家がまたおかしい。
大変面白いので、時代物お嫌いでなければオススメ。

4

この作品が収納されている本棚

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