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何とも評価のしづらい作品でした。
深すぎて、ちょろっとBL楽しもう!って感じで手に取ると失敗します。
木原音瀬さん的(一緒にするのもどうか、ですけど大きな枠組みとしては同じ匂いがします)な、少々難しい物語になってます。
攻めの歪んだ、というには長い生い立ちと経験、立場。
何の罪もなく翻弄される受け。
監禁されますが、受けの葛藤があまりに特殊で、負けず嫌い?プライド?からくる前向きさが邪魔して攻めの思惑通りに進んでしまうのがどうにも共感できず。
攻めも、これまた何でそうなったのか、箱(コインロッカー)と檻がどう作用するのか私の軽い頭ではイメージ出来ず。
攻め受け双方がどう言ったところからそいう感情に嵌まり込んでいったのかが分からず。愛情がまったくもって読み取れなかったんですよね。情、という意味ではあった気もしますが、彼らの中に芽生えた愛はわからなかった。
人間としての尊厳や憧憬、嫉妬、なんかの感情が入り乱れた発路がこの監禁に繋がったのかな。お話としては面白かったんですが、BL的には一般受けしないだろうなぁ。
「黒い愛情」をきっかけに読むようになった作家様ですが、やはりこの方の人の精神に切り込んでいくお話はグイグイと引き込まれる魅力があります。
本作は、正しい世界に住む人間を変えてやりたいという妄念に取り憑かれている人間(石田)が己の理想のような「正しい人間」の主人公(英司)に出逢い、監禁して調教しようと画策するお話なのですが、読み進めると徐々に分かってくるのは、石田が心の奥深くに抱えている正しさへの強い憧憬と、それを持っている英司へのある種の信仰心のような畏敬の念。
なのにそれを壊したいと強く望む石田のこのちぐはぐな行動の意味は何なのだろうと頭を捻り、あぁこいつは絶対的なものが絶対的であることを証明するために自分にとっての偶像を破壊しようとしているのか、という読解に辿り着けた時、何かストンと腹落ちするものがありました。
壊れてほしくない自分の理想を全力で壊しにかかる石田はサイコパスだなぁとは思うけれど、自分の手なんかでじゃ到底壊すことなんて出来ないと証明できた時に救いに繋がるというのは解らないでもない気がします。
そのうえ英司は石田の想像を更に遥かに超えていたのですから。
9/23のKの日記に出てくる「きみは私の正気」という言葉が読み解く道しるべになったかなと思います。
それはそれとして。
英司の方を理解するのが私には難しいなぁ。
ただ、ストックホルム症候群ではないだろうなぁ。だってそれだと「壊れている」じゃない。
英司は英司で何かから解き放たれてちゃんと自分の意志で戻ったんだ、と読んでいいお話だと思います。
なんとなくだけど、デザイナーという英司の職業を考えると、アーティストとかクリエイターには時には必要な「狂気」を手に入れたんじゃないかな。
昔の正気100%の英司では生み出せなかったものが、石田の狂気に触発されて生み出せるようになった。
つまり石田の逆で、英司にとっての石田は「きみは私の狂気」というところじゃないかな。
そんなふうに読み終えていますが、、、でも私は凡人だから、なんだか命を削りそうな生き方だなぁ、ちゃんと2人で長生きしてよー!なんて願わずにはいられません。
「黒い愛情」同様にこちらも評価がかなりバラけていますが、恋愛を越えたような関係性がお好きな方は面白く読めるんじゃないかなと思います!
常軌を逸した執着や独占欲からくる監禁ネタではなく、スタートは攻めの意図あっての実験のようなもの。
だからはじめにチラつく愛や恋要素はなく、淫乱にしたいわけじゃないという攻めのおかげで、性的な行為があっても即堕ち完堕ち状態はなくじわじわと楽しめました。
日記を通して双方の心の内も分かるので、話に入り込みやすかったです。
この生活を強制されたA(受け)にとってはたまったものではないですが、それを行うKにとってもAを通して命をかけているようなゾクゾク感があり、檻の中にいる者と外の者…立場の優位は違うはずなのに、終盤は共倒れギリギリのような危うさを感じ新鮮でした。
Aもよく抵抗して頑張っていたと思いますしラストに辿り着く流れも強引ではなかったと思います。
ただメリバになるのでしょうか。
Kがこんな監禁をしたことによりAが変えられたという事実は間違いなく、これがなければ理想的な上司と優秀な部下の関係のまま、何事もなかっただろうなと思うと心が震えます。
ようはKによってAは確かに変えられた、Kの行動によってAの恋愛感情に似ているかもしれない何かが生み出されてしまった、という人工的な感情、落ち着いた関係に恐ろしくもありつつなんとなく惹かれます。
二人ともハンサムすぎて目の保養でした。
「いつかは読まねばならぬな」と思いつつなかなか手が出せなかった本作。
やっぱりハードだ。
重い……
そもそも「これ、恋の話じゃないでしょう」と言いたいのですよ。
凌辱監禁ものではあるのですけれども。
ただ「好きで好きで、でも自分の思い通りにならないから監禁しちゃえっ!」っていうのとは違うんですよ。
KがAを監禁する理由は強いて言えば『自分の運命に対する復讐』。
もうひとつは『真っすぐなAの素質への信頼(適切なの言葉かと言えばちょっと違う気もしますが)』。
前者が勝てばAは壊れ、後者が勝てばAは『化ける』。
この物語のラストは『愛が生まれた』というよりは『典型的なストックホルム症候群』だと思いました。
ただ、唯一の命綱である監禁者に強い愛情を抱かざるを得ないがため起きてしまうのがストックホルム症候群だとすれば、その心のあり様は『虐待する親を慕う子ども』と重なる様な気がします。
そういう意味では「石田の『復讐』は成功したのかもしれないな」と考えたり。
読み終えて、強く心に残ったのは『Kの自己愛』。
互いにあげたり、もらったりする愛情を感じることが出来ず、阿東は最後まで『被害者』としてしか見られませんでした。
ただ、こういう形でしか自己愛を保てなかった石田の心の中を考えると、とてもうすら寒くて、哀れとしか言いようがないのです。
胸糞悪い話ではありませんでしたけれど(ごめん、あくまでも個人的感想です)人の心の動きというものの不思議さ、もうちょっと言ってしまえば『気持ち悪さ』を強く感じまして、そういう意味では『面白い』本でしたよ。萌えなかったけど。
心が弱っている時には読んではいけない本だと思います。
先日初めて監禁モノを読んで、すっかりそのシチュエーションにハマってしまいまして。
監禁といえばピリピリと緊迫した空間、謎、何者かの強い執着が見どころ。
ある日目覚めると突然、デザイナーとして勤務する会社の社長・石田によって檻の中に監禁されていた英司。
身体の自由を奪われ、食事や睡眠、排泄までも管理され、恥辱を与えられる日々が始まります。
何故石田が?仕事はうまくいっていたし、関係だって良好だったはずなのに?
何もわからない中、必死にプライドを守り抵抗する英司でしたが、石田の魔の手は英司の性的な部分にまで伸びてきて…。
執拗な愛撫で絶頂寸前まで追い込んでから「性欲」or「食欲」の選択を迫ったりと、英司を追い詰めていく石田と、与えられる屈辱と性的快感に抗いつつ、自分が変えられてしまう予感に葛藤する英司。
石田は、強引に、でも緻密にじっくりと、精神的・肉体的支配をしようとしてきます。
英司は娯楽ひとつない檻の中、気が狂う一歩手前で死ぬか生きるかの戦いを強いられる。
そしてとうとう高められた欲望を解き放つときがきて…。
もう、ただひたすらにえげつなく、エロい!
でも石田は、英司が快感に喘ぐことは喜ぶのに、英司が快楽に堕ちた淫乱になることは許さない、厳しい支配者なのです。
そこに愛はあるのか?あるのは狂気だけなのか?
あー、わからない。
常人には全く理解できないよ。
繰り広げられる陵辱については「K(石田)の日記」を通じてwhy?の説明はされているにもかかわらず、その理屈は理解出来ないのです。
1ヶ月間と決められて始まったこの監禁生活。
その約束は守られるのか?
解放後2人の関係はどうなるのか?
展開や結末がまったく想像出来ないため、最後までハラハラ。
ラストはやはりそうなるのか…と。
狂気が身を結んだというべきか。
Kの勝利のようでいて、A(英司)が女王的ポジションに君臨したようにも見えて、なかなかに面白いラストだったと思います。
もしこれが対女性の監禁物ならば、力の差による支配が大きすぎて、あまりに悲痛で多分読めないと思います。
男性の、同性に対する“何をされても屈したくない”というプライド、マウントを取られまいとするマインド。
このへんの関係性が、男同士特有のものに感じられて、ものすごく興味深く読むことが出来ました。
萌えはないけど、この手のテイストの小説には無理にそのへんは求めません。下手するとバランス崩れるので。
評価は萌〜萌2の間です。
フィクションでしかあり得ない、あってはならないシチュエーションを読む。
そんなことが、私の中では小説を読む楽しみの一つとなっています。